相談開始から回復までの相談・治療・支援機関

1 飲酒問題に対する相談

飲酒問題に対する相談は、家族の相談から始まる場合が多くあります。依存症の本人は相談や治療に行きたがらないのが普通です。
家族の相談は、アルコール依存症を治療している精神科病院や診療所(クリニック)のような医療機関、精神保健福祉センターや保健所・保健センターなどの公的機関、家族の自助グループである断酒会の家族会やアラノン、依存症の回復を支援するリハビリ施設、アルコール依存症者本人の自助グループである断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)など、様々なところで行われています。
家族相談で大切な点は、依存症に巻き込まれて、本人の問題にとらわれている家族が、病気と回復を理解して、家族自身が心身の健康と余裕を取り戻すとともに、本人への前向きの働きかけができるようになることです。

2 医療機関による依存症の治療

依存症の治療は基本的には本人が治療を希望するところから始まります。ただし、幻覚やてんかん発作のような激しい離脱症状、自殺の恐れ、重度の身体的衰弱などの場合には、本人が希望しなくても緊急的な治療が必要となる場合があります。
治療は外来でも入院でも可能ですが、衰弱や肝障害等の身体的な問題が大きい場合には、身体的な治療を内科病院などでの入院によって行う必要があります。また、幻覚やてんかん発作のような離脱症状の治療は精神科病院への入院が必要となる場合が多くあります。手のふるえや発汗・不眠程度の離脱症状であれば外来通院でも治療可能でしょう。

アルコール依存症の治療を離脱症状と身体疾患の治療だけで終了すると「飲める身体に戻すだけ」になってしまいます。飲まないで健康な生活をするために教育的・精神療法的な治療を行っていくことが、アルコール依存症の治療では大切です。そのための1~ 3 か月程度の治療プログラムを設けているところは専門医療機関やアルコール病棟などと呼ばれています。そのプログラムの中では、健康的な生活を取り戻すための日課があり、依存症に対する教育や飲酒体験を話すグループワークだけでなく、運動やレクリエーションも行われます。
毎日、日中を病院の外来やクリニックで過ごす、アルコール依存症を対象としたデイケア(よくアルコール・デイケアと称されます)が開設されている医療機関もあります。

3 リハビリテーション施設による支援

リハビリテーション施設(リハビリ施設)は退院後や集中的な治療の終了後、飲まずに安定した地域生活を送ったり、仕事に就いたりする目的のために利用される施設です。利用の仕方としては入所と通所があります。依存症からの回復者が施設職員となっているところが多くあり、ほとんどの施設が行政からの公的な補助金によって運営されています。
ミーティング中心のプログラムを行っているところもあり、清掃、リサイクル、自主製品の製作・販売など様々な作業が行われて、工賃が支払われるところもあります。
全国的には、アルコール作業所などと呼ばれる場合があります。また、全国マック協議会に入っている施設が17 か所あります。

4 自助グループによる相互支援

断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)は、アルコール依存症の人たちが飲まない生活を続けていくために、自主的に運営しているグループです。基本的な活動は、自分たちの体験談を「言いっぱなしの聞きっぱなし」で行うグループによる分かち合い(ミーティング)です。人数の規模はさまざまですが、平日の夜に1 時間半から2 時間で開催されるのが通常です。休日の昼間にも行われていたり、時には体験の分かち合いだけでなく、大きな大会やレクリエーションとしてスポーツや旅行、バーベキューや海水浴などのイベントを行うこともあります。
アルコール依存症からの回復には、専門家や家族からの支援だけでなく、同じ経験を持っている人たちの支え合いがとても効果的です。同じ病気の人の経験を聞くことは、依存症という病気を認める場合にも、飲まないで生活を続けていくための知恵を会得するためにも、どのような回復の手段と方法を実践していくのがよいのかという実例を知るためにも有効なのです。

アルコール依存症の人が利用できる医療・福祉サービスや制度

病院のケースワーカーや役所の窓口(福祉担当)にもおたずねください

1 障害者総合支援法のサービス(平成24 年度までは障害者自立支援法)

「障害程度区分認定」を受けて、自宅へのホームヘルパーの派遣による家事援助や就労移行支援・就労継続支援などが受けられるサービスです。

2 自立支援医療費支給制度(精神通院医療)

アルコール依存症の通院治療で、医療費の自己負担額が、通常は3 割のところ原則として1 割になる制度です。

3 精神障害者保健福祉手帳

アルコール依存症の病気が原因で長期に日常生活や社会生活に障害のある場合、「精神障害者保健福祉手帳」の交付対象となります。障害者総合支援法に基づく各種福祉サービスなどが受けられます。

4 介護保険法

日常生活に支障を抱えた原則として65 歳以上の高齢者に、適切なサービスを提供し、健康で自立した生活を送れるように支援する制度です。

5 障害者年金

アルコール依存症のために日常生活上の困難が生じており、かつ、受給の用件を満たす場合には、精神障害として障害年金を受給できる可能性があります。

6 生活保護

アルコール依存症で、資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対しては、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度として生活保護があります。

制度やサービスについてもっとくわしく知りたい方へ *治療や生活へのサポート(厚生労働省:みんなのメンタルヘルス)
執筆者:岡崎直人[精神保健福祉士/日本アルコール問題ソーシャルワーカー協会会長/さいたま市こころの健康センター所長]
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