久間議員 オランダ、ドイツ現地調査【平成27年6月28日~7月4日】

LED照明を用いた作物生育調節システムに関する研究を視察する久間議員
ワーゲニンゲン大学リサーチセンターのLED照明を用いた
作物生育調節システムに関する研究を視察する久間議員

ドゥアイフェスタイン・トマテンの会社概要の説明を受ける久間議員
ドゥアイフェスタイン・トマテンの会社概要の説明を受ける久間議員
 
 

プリバ社の環境制御装置の説明を受ける久間議員
プリバ社の環境制御装置の説明を受ける久間議員

グリーンキュー社の教育・デモ用温室での記念撮影
グリーンキュー社の教育・デモ用温室での記念撮影


ライクズワーン社のトマト品種の展示場で説明を受ける久間議員


ワーゲニンゲン大学フゥーヴェリンク博士による
オランダの施設園芸研究についての説明

概要説明をする野口サブ・プログラム・ディクター
ワーゲニンゲン大学にて「SIP次世代農林水産業創造技術」
概要説明をする野口サブ・プログラム・ディクター


導入されたデラバル社自動搾乳ロボットによる搾乳の様子 
 

DFKI スマートファクトリーの概要説明を受ける久間議員
DFKI スマートファクトリーの概要説明を受ける久間議員


DFKIスマートファクトリーにおいて拡張現実による
作業支援システムを用いて作業する久間議員


 久間和生 科学総合技術・イノベーション会議議員は、(1)オランダにおいてトマトの施設園芸栽培に関する技術開発・技術普及の戦略や産学官連携についての調査、(2)ドイツの牧場において自動化機械による生産性向上効果の調査、および、(3)ドイツ人工知能研究所において情報通信技術を活用した農業やIndustrie4.0への取組の調査を行い、総合科学技術・イノベーション会議が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:エスアイピー)等の取組と今後の事務局運営方針の参考とすることを目的に、6月28日(日)~7月4日(土)の日程でオランダ、ドイツを訪問しました。

1.トマトの施設園芸栽培(オランダ)
(1) ワーゲニンゲン大学、ワーゲニンゲン大学リサーチセンター研究温室
ワーゲニンゲン大学では、久間議員より日本の科学技術政策に関する紹介を、サブ・プログラム・ディレクターである北海道大学・野口教授より「SIP次世代農林水産業創造技術」の取組の紹介をそれぞれ行いました。続いて、ワーゲニンゲン大学フゥーヴェリンク博士からオランダの施設園芸栽培に関する研究について説明を受け、意見交換を行いました。研究温室においては、施設園芸技術の開発研究や植物生理に関する基礎的研究について紹介を受けました。 ワーゲニンゲン大学リサーチセンターは、ワーゲニンゲン大学とオランダ農務省の公的研究機関との官学連携研究機関で、広く農業および環境、生命科学に関連する研究を行っています。運営費の約半分近くが民間からの資金も含む競争的資金です。常に実栽培現場での活用を意識した研究が行われ、農業者と研究開発機関との距離が極めて近いと感じられました。 オランダでは、施設園芸栽培における新技術導入がかねてより進められており、養液栽培システム、統合環境制御システムの導入や高収量品種の導入により高い生産性を達成しています。最近では、エネルギー利用効率を高めるために、コジェネレーションや風力発電の利用、地下熱を利用した高効率暖房システムの導入や、水や肥料等をリサイクルして外部に排出しないシステムの導入により、環境への影響を極力排除した、持続可能な生産体系の構築を目指しています。2020年までに石油由来燃料ゼロを実現し、二酸化炭素の総収支において二酸化炭素を外部に放出しないシステムに移行することが目標となっています。
(2) ライクズワーン(Rijk Zwaan)社 (トマト等野菜の種苗会社)
レタス、ホウレンソウ、メロン、パプリカ、トマトなど多種類(約30種)の野菜を中心とした育種を行っている世界的な種苗会社です。世界各地で採種を行っていますが、品質を維持するために包装や検査などは必ずオランダにおいて行い、オランダから約100か国に輸出しています。最先端技術を導入するための研究開発を常に行っており、競争力の源泉となっています。種苗ビジネスに関する研究で重要なポイントは、輸送技術の高度化、地域特性を踏まえた種苗の開発や、生産者だけでなく消費者も視野に入れた10年から20年先の市場を考えた開発です。
(3) プリバ(Priva)社 (温室環境制御システムの販売会社)
作物を栽培する温室内の環境(温度、湿度、光量、二酸化炭素濃度など)の最適化や、水管理、エネルギー管理を行う温室環境制御システムを販売しています。今後、水資源、エネルギー資源の安定的な確保は世界的な問題となると予想されるため、少ない水や少ないエネルギーで栽培できるシステムの開発を目指しています。どのような環境が最適であるかは作物、地域によって異なるため、温室を所有する農家がコンサルタント会社からアドバイスを受けて決めているそうです。
(4) グリーンキュー(GreenQ)社 (施設園芸コンサルタント)
施設園芸分野において、作物の生産性向上、品質向上を主な目的として新規栽培技術を開発し、農家に対して栽培技術のコンサルティングを実施しています。オランダ国内だけでなく、海外にも技術を輸出しています。 オランダでは、以前は公的機関が無料で農家に技術を教えていましたが、現在グリーンキュー社では、有料で農家にノウハウを教えています。その理由は、質の高いノウハウを提供できること、受講者がノウハウにより多くの注意を払うことにつながり、イノベーションが進むと考えているからです。
(5) ドゥアイフェスタイン・トマテン(Duijvestijn Tomaten) (トマト生産者)
2015年に、国際的なトマト生産者のイベント「Tomato Inspiration Event」において、「Tomato Inspiration Awards」を受賞したイノベーティブな生産者です。トマト生産量は約1万トン/年であり、オランダ全体のトマト生産量の内、1.5%程度を占めます。通年での生産のために、カナリー諸島にも生産施設を持ち、冬季も出荷を行っています。雇用数は夏場の繁忙期には80名、冬場でも40名です。主にEU圏に出荷しており、全出荷量の内50%は英国に、30%はドイツに出荷しています。
環境負荷を抑えた持続可能な農業システムとしての運営を目指しています。温室内で使用する水には天水を貯蔵して使用し、作物に吸収されず排出された水は全て回収して再利用しています。温室内に導入する二酸化炭素は、パイプラインを通じて石油化学工業地域から購入しています。暖房などに利用するエネルギーは、生産コストの約3割を占めますが、主に地熱と風力発電を利用しています。

2.自動化機械(搾乳ロボット)を導入した牧場(エメリッヒ、ドイツ)

80haの圃場を管理し、自動化機械により120頭の乳牛を飼育している牧場を視察しました。家族に手伝ってもらっていますが、経営者と合わせて実質1.2~1.3人で作業を行っており、自動化機械導入前と比較して労働力を大幅に削減できています。 搾乳はすべて自動搾乳ロボット(2台)で行っています。牛は乳が貯まると自主的に搾乳室に行き、ロボットにより搾乳されます。搾乳ロボットの導入効果としては、それまで1日あたり4時間かかっていた人手による作業が、1.5時間まで削減できたことです。搾乳ロボットは、光学カメラとレーザで牛の乳頭の位置を検知し、油圧式ロボットアームにより乳頭の洗浄を行った後、搾乳用のカップを乳頭に装着して搾乳します。また、牛にはタグが付いており、個体管理をしています。搾乳した牛乳の乳量、流量、電気伝導度、血乳や体細胞数、搾乳間隔時間等のデータから、乳房の健康に問題がある牛を早期に発見でき、対応が可能です。

3. ドイツ人工知能研究所 (カイザースラウテルン、ドイツ)

ロボット技術、言語認識、画像認識、拡張現実(Augmented Reality)、ナレッジマネジメント(Knowledge Management)等を研究しているドイツ人工知能研究所(DFKI)のカイザースラウテルンにある研究拠点を訪問しました。 DFKIは有限会社で、1988年に設立されました。出資者は企業及び自治体です。連邦教育研究省が出資者と同額の資金を提供しています。49.4百万ユーロの予算(2014年)で、200以上のプロジェクトを行っており、700人以上を雇用しています。 大学の基礎研究と、事業化のための開発を行う出資者(企業)やDFKIからのスピンオフ企業及び研究委託している外部企業との間を橋渡しする機能を有しています。創立以来、スピンオフで60以上の企業が生まれ、1,500以上の職を生み出しました。DFKIが成功した理由の一つは、「Living Lab」と呼ばれる施設で、新しい技術を実際に近い環境で実証できることです。 以下に今回調査した2つのプロジェクトの概要を紹介します。 i-Greenプロジェクト: ICT(情報通信技術)を利用した農業技術を開発するプロジェクトで、20以上の企業が参画しています。現場の情報に関する公共データと私有データを解析・活用して、実施すべき農作業を場所ごとに判断し、携帯端末に表示します。最大の問題点は、農家が費用を負担したがらないことだそうです。 SmartFactoryKL プロジェクト: 「Living Lab」の一つで2005年に開始されました。生産ラインの自動化と通信技術の統合を目標に研究開発を行うデモ工場です。2012年からはIndustrie4.0の取組開始を受けて様々な実証プロジェクトを実施しています。参画する企業数は視察時点で39団体。Industrie4.0全体で目指すのは、工場内にとどまらず、バリューチェーン全体、流通、労働管理までを含めた大きな枠組みです。


出張日程及び訪問先等

1.出張日程

平成27年6月28日(日)~7月4日(土)

2.出張者

  1. 久間 和生 総合科学技術・イノベーション会議有識者議員(常勤)
  2. 野口 伸  北海道大学大学院農学研究院教授(SIP「次世代農林水産業創造技術」 サブ・プログラム・ディレクター)
  3. 守屋 直文 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 政策企画調査官(共通基盤)
  4. 山田 広明 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 企画官(資源配分)
  5. 福田 直也 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 上席フェロー(国際)
  6. 木澤 悟 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 上席政策調査員(共通基盤)

3.訪問先

  1. (1)ワーゲニンゲン大学リサーチセンター 研究温室(オランダ 南ホラント州ブレイスウェイク)
    <応対者> Mr. Filip van Noort, BSc (Crop Specialist)
  2. (2)ドゥアイフェスタイン・トマテン(オランダ 南ホラント州ブレイスウェイク)
    <応対者> Mr. Ad van Adrichem(トマト生産者)
  3. (3)プリバ(Priva) 社(オランダ 南ホラント州ウェストラント)
    <応対者> Mr. Dennis de Wit (Marketing Manager)
  4. (4)グリーンキュー(GreenQ) 社(オランダ 南ホラント州ブレイスウェイク)
    <応対者> Mr. Aad van den Berg (Managing Director, GreenQ/Director, GreenQ Japan) Mrs. Irina Bezlepkina (Manager Education, GreenQ)
  5. (5)ライクズワーン(Rijk Zwaan)社 トマトトライアルセンター(オランダ 南ホラント州クウィントスフーウル)
    <応対者> Mr. Hans Bouman (Business Manager), Mr. Friso Klok (Area Manager)
  6. (6)ワーゲニンゲン大学(オランダ ヘルダーラント州ワーゲニンゲン)
    <応対者> Dr. ir. Ep Heuvelink (Associate Professor, Wageningen UR, Horticulture)
  7. (7)デラバル社自動搾乳ロボット導入牧場(ドイツ エメリッヒ)
    <応対者> Mr. Christian Scheers (牧場経営者), 新谷 聡 常務取締役(デラバル株式会社), Mr. Johan Ter Weele (Business Development Manager System VMS, DeLaval International)
  8. (8)ドイツ人工知能研究所(DFKI) (ドイツ カイザースラウテルン)
    <応対者> Dr. Ansger Bernardi (Deputy Director, Knowledge Management Department, DFKI) Mr. Udo Urban(Corporate Communication, DFKI) Mr. Christian Olczak (Deputy Director, Knowledge Management Department, DFKI) Dr. Rüdiger Dabelow (Managing Director, SmartFactoryKL, DFKI) 他