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Q.MEMS(メムス Micro Electro Mechanical Systems)とは、微小な部品で作られた電子機械であると理解していますが、一般の人にもわかるように、もう少し詳しく説明していただけますか。 A.MEMSとは、普通の半導体の集積回路に別の付加価値を入れていくような技術だと、私は思っています。 Q.先生は、MEMSという分野の非常に広い範囲でご研究なさっており、日本の大学の中でも特に積極的に企業と協力して先進的な取り組みをされているとお聞きしています。現在成果の出てきているものとしては、どのようなものがあるでしょうか。 A.私は大学にいながらかなり産業界に近いことをやっていまして、頻繁に企業の方たちから相談を受けています。MEMS技術はずいぶん前から使われています。例えばトヨタの自動車の安全装備に用いているMEMSは私たちの研究室に15年前に来て研究していたもので、今の日本の自動車の競争力につながっています。また、私たちの研究室の成果であるMEMSスイッチもLSIテスターに用いられています。 Q.医療分野で有望とお聞きしましたが、いかがでしょう。 A.私たちもメムザスという会社をつくり、医療関係のMEMSを取り扱っています。医療の場合、体内に導入するカテーテルや内視鏡を更に精密にすれば、かなり高度なことができる。今まで心臓などにカテーテルを導入して検査や治療が行われていますが、これを脳のように導入し難い患部にも広げることなどを研究しています。 Q.今現在、先生の研究室では何社の企業と共同研究していますか? A.共同研究の契約は35社くらいです。この中で常駐しているのは8社くらいかな。 Q.すごい数ですね。大学の研究室としては、相当多いほうではないでしょうか。 A.はい。でも、この他に共同研究と関係なくても、昔来ていた人については、勝手に来て設備を使って良いよ、と言っているのです。うちの研究室の設備はほとんどが手作りなので、もう最初から設備が壊れているような感じでして(笑)、自由に使っていいけど、壊れたら直してよみたいな、そういう感じでやっています。私は、このように「設備をみんなで使う」方がいいと考えています。日本の場合は研究費がつくと、自分の研究室の設備を買いますが、アメリカの場合は自前で設備をそろえるのではなく、大学や研究所が共用の設備を設置してみんなで共用し、その使用料に研究費をあてています。この点で、日本はお金が有効に使われていないと思います。私たちは、こういう設備有効利用のモデルを提案しているわけです。 会社だって製品を開発するごとに設備投資をしているわけにはいきません。これでは、日本の競争力はどんどん弱くなってしまうと思います。ベンチャー企業などにとっても、設備が揃わないと始められないようでは経営が成り立たないので、我々は「設備投資なんかしないで、どんどん大学の設備を使ってください」と言っているわけです。こういったビジネスモデルを産業レベルでも展開しています。 私は、今の日本は欧米に比較するとまだまだ研究開発に向いていないのではないかと思っています(笑)。日本のシステムでは、まず人が動かないから、ベンチャーなどで人を集めようとしても良い人が集まらないですよね。アメリカでは、優秀な人は大会社に行かないで、ベンチャーに集まる。ベンチャーで優秀な人がチームを組んで開発に取り組んで、良いものができれば大企業がそれを買っていくという仕組みです。 欧米では研究費の調達の仕組みも違います。例えばヨーロッパだと、国の研究所がすごく元気にやっている。研究費の大体三割が経常費、三割が外部からのライセンス料、三割がプロジェクトの資金で構成されているのです。だから最初から産業の将来につながるような研究しているわけです。更に、ヨーロッパに行くと研究者は全部プロパーで、いろいろな会社からの出向とかではないですよ。これは日本と違って流動性があるから人を雇える、やめてもどこかへ行けるからなんですよ。このように欧米と比較すると日本の社会システム自体が現状では研究開発に向いていない気がします。 ちょっと話がそれますが、ヨーロッパでは皆さん長い夏休みを取るじゃないですか。このように豊かな生活をしていけるのは、組織の仕組みにロスがないからなのではないでしょうか。アメリカは裁判なども多く、わりとロスがあるシステムのようですが(笑)。 ただ、日本の流動性がないという点は、逆に産業界は強いというメリットにもなっていると思います。新しい製品なんかはみんな日本から出て行きますよね。研究開発には今ひとつ向いていないけれど製品化には強みが発揮されるというシステムが、日本を支えている気がしています。日本の社会システムには終身雇用制等でいい面もあります。これからは、グローバルな流れにどれだけ合わせていけるかが課題だと思います。 Q.数十社とやりとりされていていると、競合する技術も出てくると思いますが、守秘義務などにおいて心がけていることはございますか。 A.そういう点はほとんど問題ないと思います。先ほどのトヨタの例においても、同時期にフォードもダイムラー・クライスラーも来ていました。インクジェットプリンターの研究でもソニーとフジフィルムが一緒に来ていました。スキャナーもキャノンとペンタックスが一緒です。来る時はいつも同じ時期に競争相手が一緒に来ています。会社の戦略は漏れますが、そんなことはどうせお互いにわかっていることなのです(笑)。ベンチャーの場合はアイデアそのものが大事だから、場合によっては他の研究室を紹介するようにしていますが。 Q.共同研究成果の特許出願はどのようにしていますか? A.以前は私と会社の共願としていました。出願費用や手続きは全て会社でやってもらい、私は出願に必要な知見を提供しています。また、その特許を使わない場合は、公開してもらうようにしています。今は職務発明になるため、大学と会社の共願になりますが、この基本方針はずっと変えていません。 Q.先生が企業と積極的に共同研究をはじめたきっかけはなんでしょうか。また、どこに魅力を感じた点のでしょうか? A.私の大学(東北大学)にはかつて、半導体で有名な西澤潤一先生がいらっしゃいました。その頃、私は学生で別の研究室にいたのですが、西澤先生のところに出向していました。西澤先生の研究は当時発展途上の半導体でありましたが、今のMEMSも同じような状況であり、私としては、大学のメリットを活かして新しい分野を開拓し、産学連携のモデルみたいなものをやっていきたいと思っているのです。 我々が一緒に研究開発をすすめているMEMSコアという会社があります。そこに大学の分室をつくって設備を入れ、いろんな企業が来て使えるようにしています。我々はこのような活動を自主的に運営していこうとしています。 この研究設備の基本的な部分は手作りなんですよ。だから維持費もほとんどかからない。設備を使っている沢山の企業からのお金で基本的にやっていけるわけです。その上で、研究費をいただければ、別の装置などを買って新しい研究に挑戦できます。一方、国の研究費を中心に運営し、新しい研究費をもらうたびに設備を買って研究している大学も多くあります。このように、次々に国のお金を貰わないと成り立たないやり方はおかしいと思っています。私は、実質的な研究にエネルギーを使い、自分たちの価値を高め、いい情報を提供できる状態にし、民間からお金が入ってくるようにする、という考えでやっています。 Q.先生の学生時代のお話をお聞かせ下さい。 A.ある程度、物理や数学が得意で、国語が苦手だった、ということはありますが、それ以上は成り行きです。学生にも人生は成り行きだと言っていますが。例えば若いときに将来なりたいことを考えても、実はその時持っている情報ってのはたかが知れていますよね。どうせ、変わっていくものなのです。 ちょっと話が違うのですが、今、高校生を相手に実際の製品と関係させて物理などを教える活動をしています。具体的には、身近にある機械などを分解してみたり、企業に連れていって実際の研究開発現場を見学させたり、ということをしています。また、研究室の助手が海外経験の話をしたり、大学院生が高校時代の話をしたりしています。彼らもやはり私と同じで、高校生相手に「希望は持ってやってください。でもいずれ変わるよ」と言っていますよ。そういう意味でも学生にはできるだけ情報を与えて考えさせていかないとと思います。学生は情報がないから、とりあえず大企業に入ってそれからどこかに行きましょう、と考えがちですが、これでは人材の無駄遣いですよ。小さな企業に学生が目を向けていない1つの原因は、学生に企業の情報などが届いていないからだと思います。 Q.先生の将来の夢をお聞かせいただけますでしょうか。 A.LSIの上にMEMSを作るような技術で携帯電話等はどんどん変わりつつあるのですが、ヨーロッパなどではこのような新しい技術をやっているのに、日本はLSIしかやっていない。日本は手をこまねいている間に、半導体の工場がどんどん減っていく。日本のシステムLSIにこのような付加価値を与えるようなことを、現場からのボトムアップでやっとていきたいと思っています。 ありがとうございました。 |
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