1-2 環境問題に対する5 つのイニシャティブ研究 2001 年に政府が定めた第2 期科学技術基本計画(計画期間: 2001 〜 2005 年度)では、研究開発の重点化方針が述べられている。これを具 体化するため、総合科学技術会議は重点分野推進戦略専門調査会を設置 し、特に重点を置く「ライフサイエンス※ 1」、「情報通信」、「環境」、 「ナノテクノロジー※ 2」の4 分野及び「エネルギー」、「製造技術」、「社 会基盤」、「フロンティア※ 3」の4 分野について、それぞれプロジェク トを設けて集中審議を行い、今後5 年間の研究開発の重点領域、目標、 推進方策を明確化する作業を行った。議論の結果は、「分野別推進戦略」 として取りまとめられ、2001 年9 月の総合科学技術会議で決定された。 このうち、「環境分野」の推進戦略を策定するにあたっては、環境研 究の指導的立場にある研究者や民間有識者が「環境プロジェクト」のも とに集まり、総合科学技術会議の環境担当議員とともに精力的に検討作 業を行った。そこでまとめられた結論は、次のようなものである。 環境問題は、起こっている現象相互の関連が非常に複雑で多様である ことから、個別の現象に関する研究を断片的に実施しても問題の本質的 な解決への有効な糸口とならないことが多く、従来の学問的枠組みを越 えた総合的な研究の推進体制を取ることが必要である。環境分野の研究 開発施策を遂行するにあたっては、国際的視野の下で府省間の連携や産 学官の連携・協調を図ることが考慮されるべきである。これまでにも、 複数省庁によって実行される研究プログラムは存在してきたものの、実 際の研究体制は各省ごと、あるいは研究機関ごとに独立して実施される 傾向が強く、環境研究の総合化を阻んできたという実態がある。 こうしたいわゆる「縦割り」の弊害を排除するには、各府省による環 境研究及び技術開発のための戦略やプログラムを見直し、かつ統合し、 政府全体として共通の政策目標とその解決に至る道筋を設定したシナリ オ主導型の研究開発を推進する仕組みとしての「イニシャティブ」が検 討されるべきである。また、この中には我が国の環境研究・開発の人的 資源として大きな割合を占める大学研究者も積極的に参画する体制の構 築が必要である。 このような「イニシャティブ」を創設し、統合した体制のもとで研究 を進めることにより、以下のような効果が期待できる。 ○日本政府全体としての取り組みとその方向性に関して、研究者だけで なく、行政担当者や国民の理解を得やすくなる。 ○研究開発の重複の排除、有機的連携を図ることができる。また、環境 政策形成において、まとまった研究成果をもって支援できる。また、 国際的取り組みにおいて、我が国が主導性を発揮できる 以上の考え方を具現化するものとして、「環境分野」では、次の5 つの 研究イニシャティブを設定した。 (ア)地球温暖化研究イニシャティブ:温暖化抑制シナリオ策定に資す る科学的知見・技術シーズの創出 (イ)ゴミゼロ型・資源循環型技術研究イニシャティブ:廃棄物減量化 目標実現及び環境リスク低減のための技術・システム開発 (ウ)自然共生型流域圏・都市再生技術研究イニシャティブ:自然と共 生する国土再生、特に水系を軸として都市と周辺部を一体として 修復するための技術・システムの体系化 (エ)化学物質リスク総合管理技術研究イニシャティブ:安全・安心を 確保するための化学物質総合管理の技術基盤、知識体系並びに知 的基盤の構築 (オ)地球規模水循環変動研究イニシャティブ:地球的規模での持続可 能な発展を支える水管理手法を確立するための科学的知見・技術 的基盤の提供