4-2 農林水産省 ○取り組みの全容  2000 年3 月に策定された食料・農業・農村基本計画「第3 食料、農 業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策」では、「2 農業の 持続的な発展に関する施策」の下に「(12)自然循環機能の維持増進」 という項目を設け、家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進や有機 物の循環利用の促進等について謳っている。また、「1 食料の安定供給 の確保に関する施策」の下の「(2)食品産業の健全な発展」では、食品 産業における環境への負荷の低減及び資源の有効利用の確保に関する項 目を設け、「食品産業の事業活動に伴う環境への負荷の低減及び資源の 有効利用を図るため、食品残さの発生の抑制及びリサイクルの促進等の 取り組みを推進する」としている。  また、2001 年10 月に策定された森林・林業基本計画では、林地残材 や建設発生木材等の木質バイオマスエネルギーとしての利用による化石 燃料の使用抑制・地球温暖化防止への貢献など、木材の有効利用の促進 が環境に負荷の少ない循環を基調とする経済社会システムに資すること を述べている。  一方、2002 年3 月に策定された水産基本計画の「第3 水産に関し総 合的かつ計画的に講ずべき施策」においても、「2 水産業の健全な発展 に関する施策」の「(5)水産加工業及び水産流通業の健全な発展」の下 に、環境への負荷の低減及び資源の有効利用に関する項目を設け、「水 産加工残滓の効率的な回収システムの確立、高度なリサイクル技術の開 発等を推進する」ことを述べている。  また、2002 年12 月に閣議決定されたバイオマス・ニッポン総合戦略 は、循環型社会の構築と密接な関わりがあるものであるが、その詳細は 本書の別項※ 3 に譲る。この戦略に基づくバイオマス関連予算のうち、 本イニシャティブととくに関わりが深いものとして、農林水産バイオリ サイクル研究があり、水産加工廃棄物、食品廃棄物、農林水産施設廃棄 物、林産業にかかわる有機性廃棄物、家畜排せつ物等の有機性廃棄物と いった分野ごとのリサイクル技術や、バイオマスの地域循環利用システ ム化技術の開発が進められている。また、研究開発とともに、バイオマ スの利活用を推進するための実際の施設整備やモデル事業への支援も進 められている。  いわゆる個別リサイクル法との関係では、食品リサイクル法(食品循 環資源の再生利用等の促進に関する法律)、容器包装リサイクル法(容 器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)との関わり が深い。また、一般に、個別リサイクル法には含められていないが、 「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」も、産業 廃棄物発生量に大きな割合を占める家畜ふん尿の有効利用促進に関する ものであり、本イニシャティブにも直接かかわるものである。 ○食品リサイクル法  食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法) は、食品の売れ残りや食べ残しにより、または食品の製造過程において 大量に発生している食品廃棄物について、発生抑制と減量化により最終 的に処分される量を減少させるとともに、肥料・飼料・油脂及び油脂製 品・メタンの原材料として再生利用するため、食品関連事業者(製造、 流通、外食等)による食品循環資源の再生利用等を促進させることを目 的に、2001 年5 月1 日より施行されているところである。 同法の概要は、以下のとおりとなっている。 (1)基本方針の策定等 1)主務大臣は、食品循環資源の再生利用等を総合的かつ計画的に推進するた め、基本方針(目標、方策など)を定める。 2)消費者及び事業者は、食品廃棄物の発生抑制に努めるとともに、食品循環 資源の再生利用により得られた製品の使用等に努めるものとする。 ※再生利用:再生利用、発生抑制、減量(乾燥・脱水・発酵・炭化) (2)食品関連事業者による再生利用等の実施 1)食品関連事業者は、主務大臣が定める再生利用等の基準に従い、再生利用 等に取り組むものとする。 2)主務大臣は、食品関連事業者に対し、必要があると認めるときは、指導、 助言、を行うことができるものとする。 3)主務大臣は、再生利用等が基準に照らして著しく不十分であると認めると きは、食品関連事業者(年間の食品廃棄物の発生量が100 トン以上のもの) に対し、勧告、公表及び命令を行うことができるものとする。 (3)再生利用を実施するための措置 1)食品循環資源の肥料化等を行う事業者についての登録制度を設け、委託に よる再生利用を促進。この場合、廃棄物処理法の特例等(一般廃棄物に係 る運搬先の許可不要、料金の上限規制をやめ事前の届出制を採用、差別的 取り扱いの禁止)及び肥料取締法・飼料安全法の特例(製造・販売の届出 不要)を講ずる。 2)食品関連事業者が、農林漁業者等の利用者や肥飼料化等を行う者と共同し て再生利用事業計画を作成、認定を受ける仕組みを設け、三者一体となっ た再生利用を促進。この場合、廃棄物処理法の特例及び肥料取締法・飼料 安全法の特例を講ずる。 ○プロジェクト研究の概要  農林水産技術会議事務局の委託プロジェクト「農林水産バイオリサイ クル研究」においては、農業・生物系特定産業技術研究機構、農業工学 研究所、食品総合研究所、森林総合研究所、水産総合研究センターなど、 農林水産関係の独立行政法人研究機関が参画している。このプロジェク トにおいて、農林水産系バイオマスの循環利用を支援するシステム、物 理的および化学・微生物処理により木材廃棄物を再生・利用するための 技術、多糖類の可溶化技術・効率的脱水技術・膜技術による有用物質の 回収技術・効率的な発酵技術、農林廃棄物からメタノールを合成する技 術などの開発研究を行っている。水産分野においても、加工廃棄物や投 棄魚等から有用物質であるセミラド及び生理活性ペプチドを抽出する研 究や廃棄物減量化システムの構築に向けた研究が行われている。  一方、農林水産技術会議事務局の別の委託プロジェクト「地球温暖化 が農林水産業に与える影響の評価及び対策技術の開発」においては、食 品総合研究所、農業・生物系特定産業技術研究機構、森林総合研究所な どの参画のもと、農水産系廃棄物からエネルギーを取り出す技術開発が 進められている。その中では、セルロースを糖化・発酵させてエタノー ルを合成する技術、畜産廃棄物を材料にした多段階ガス化コジェネレー ションシステムの開発、などの技術開発研究が行われ、試験プラントな どによる実証段階に入っている。