4-3 経済産業省 ○循環経済システムの構築をめざして  経済産業省において、循環型社会形成は、地球環境対策、化学物質対 策、環境ビジネス振興などと並ぶ環境関連政策の柱の一つとなっており、 同省のウェブサイトには、循環型社会形成に関するホームページ※ 4 も 設けられている。そこでは、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済活 動を続けてきた我が国が直面する課題として、廃棄物の最終処分場のひ っ迫や処理に伴う環境影響といった環境制約とともに、将来的な鉱物資 源の枯渇に対する懸念などの資源制約を明示している。主な経緯を辿る と、旧通商産業省時代の1991 年には、リサイクルの促進を狙いとした 「再生資源の利用の促進に関する法律(再生資源利用促進法)」が制定さ れ、1994 年に策定された産業環境ビジョン(産業構造審議会地球環境 部会報告書)では、廃棄物・リサイクル産業を環境ビジネスの主要な分 野の一つと位置付けている。また、1995 年には容器包装リサイクル法、 1998 年の家電リサイクル法、2002 年の自動車リサイクル法と、主要製 品分野ごとの「個別リサイクル法」の制定が行われてきた。  この分野における政策の基本的方向は、産業構造審議会の地球環境部 会、廃棄物・リサイクル部会合同基本問題小委員会が、1999 年7 月に とりまとめた「循環型経済システムの構築に向けて(循環経済ビジョン)」 と題する報告に示されている。この報告では、最終処分場の制約、資源 の制約、その他(地球環境問題、有害化学物質)の3 つの制約の中で、 大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済システムから脱却し、循環型経 済システムの構築が急務であるとした。循環型経済システムの中心は環 境と経済の統合にあるが、その柱は次のとおりである。 ・資源・エネルギー効率の最大化(投入・排出の最小化) ・事業者・消費者・行政のパートナーシップ(社会全体としての便益 の最大化) ・新たな産業技術体系の確立(循環型技術体系の確立) ・環境関連産業の進展(新規産業フロンティアの開拓、企業の競争力 強化)  そこでは、環境・資源制約への対応が経済成長の制約要因になるので はなく、むしろ、新たな経済成長の要因として前向きにとらえ、環境と 経済が両立した新たな循環型経済システムを構築するという考え方をと っている。また、それまでのリサイクル偏重ではなく、リデュース(廃 棄物の発生抑制)対策、リユース(廃棄物の部品等としての再使用)対 策の本格的な導入により、3R(Reduce、Reuse、Recycle)を強化すべ きことを指摘している。  この報告の翌年(2000 年)には循環基本法が成立し、リサイクル全 般を統括する位置にあった再生資源利用促進法は、「資源の有効な利用 の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」と改称された。このいわ ゆる「3R 法※ 5」は、個別リサイクル法と循環基本法との中間に位置し、 これらの橋渡しの役割を果たしている。そこでは、3R への取り組みを 求める対象を、旧法の3 業種30 品目から、10 業種69 品目へと大幅に 拡充した。業種指定されるものとして、副産物の発生抑制等を求める 「特定省資源業種」、再生資源又は再生部品の利用を求める「特定再利用 業種」、副産物の再生資源としての利用の促進を求める「指定副産物」 がある。また、製品指定されるものには、原材料等の使用の合理化、長 期間の使用の促進その他使用済み物品等の発生抑制を求める「指定省資 源化製品」、リユースまたはリサイクルが容易な製品の設計・製造を求 める「指定再利用促進製品」、分別回収の促進のための表示を求める 「指定表示製品」、自主回収及び再資源化が求められる「指定再資源化製 品」があげられる。 こうした法体系と並んで、地域に即した循環型経済システム作りの支 援策の主な事業として、エコタウン事業があげられる。エコタウン事業 は、「ゼロエミッション構想※ 6」(ある産業から出るすべての廃棄物を 新たに他の分野の原料として活用し、あらゆる廃棄物をゼロにすること を目指す構想)を地域の環境調和型経済社会形成のための基本構想とし て位置づけ、併せて、地域振興の基軸として推進することにより、環境 調和型の地域経済形成の観点から既存の枠にとらわれない先進的な環境 調和型まちづくりを推進することを目的として、1997 年度に創設され た制度である。具体的には、それぞれの地域の特性に応じて、都道府県 または政令指定都市が作成したプラン(市町村や一部事務組合が作成す る場合は都道府県等と連名で作成)について承認を受けた場合、当該プ ランに基づき実施される中核的な事業について、地方公共団体及び民間 団体に対して総合的・多面的な支援を実施する。この事業は再生資源の 利用を推進する経済産業省と、廃棄物の適正な循環的利用・処分に関す る行政を担う環境省(制度創設当時は厚生省)との連携事業となってお り、プランの承認に際しては環境省と経済産業省との共同承認の形とな る。2003 年11 月までに全国19 地域が指定を受けている。  一方、ソフト中心の施策としては、地域3R 推進事業がある。地域 3R 支援事業は、循環型社会形成の重要な担い手である児童・生徒を含 む市民を対象に、生活に身近な容器包装、家電などのリサイクル関連法 への理解を促進し、循環型経済システム構築に向け、事業者、行政など と連携しながら、市民としての役割を確実に果たしていけるよう、3R 問題に対し高い意識を持った市民を地域に育成することを目的としてい る。この事業では、3R に知見を持つ講師を紹介したり、3R 活動に取り 組んでいる全国の事業所等を紹介したりしている。 ○ NEDO の研究開発など  経済産業省の環境関連の研究開発支援は、主として独立行政法人新エ ネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)を通じて実施されて おり、主に産業技術開発関連事業や新エネルギー・省エネルギー・環境 技術開発関連事業が実施されている。これらの事業は、(1)国の政策的 ニーズに基づいて提示されるプログラムに沿って技術課題を選定し、そ の技術課題ごとにNEDO が公募を行い、その中から優れた民間企業、 大学、公的研究機関等を選び、それらを最適に組み合わせたプロジェク ト推進体制を構築する「研究開発プロジェクト」、(2)民間における優 れた技術の実用化等を促進するため、技術開発のテーマを公募する「テ ーマ公募型研究開発事業」とに大別される。前者では、2003 年度現在 で19 のプログラムが実施されており、その一つである「3R プログラム 〜ごみゼロ社会を目指して〜」は本イニシャティブの対象分野、とくに リサイクル技術・システムプログラムとほぼ合致した内容である。3R プログラムでは、2003 年度現在、「環境調和型超微細粒鋼創製基盤技術 の開発」、「建築廃材等リサイクル技術開発」、「アルミニウムの不純物無 害化・マテリアルリサイクル技術開発」、「非鉄金属の同時分離・マテリ アルリサイクル技術開発」、「高塩素含有リサイクル資源対応のセメント 製造技術開発」、「電炉技術を用いた鉄及びプラスチックの複合リサイク ル技術開発」の6 テーマがNEDO の事業として実施されている。また、 最近終了したものとして、「非鉄金属系素材リサイクル促進技術研究開 発」、「製品等ライフサイクル環境影響評価技術開発」などがある。後者 で進められてきたLCA に関する研究開発は、「製品等ライフサイクル 二酸化炭素排出評価実証等技術開発」に引き継がれている。  さらに、高効率廃棄物発電技術開発(高効率廃棄物ガス変換発電技術 開発)、先進型廃棄物発電フィールドテスト事業など、廃棄物を利用し たエネルギー技術(いわゆる「サーマルリサイクル」技術)の開発・普 及も行われている。  また、経済産業省関連の試験研究機関での資源循環技術に関連する調 査研究・技術開発に関しては、旧工業技術院傘下の各研究所で行われて いたものが独立行政法人産業技術総合研究所として再編されたことに伴 い、資源環境技術総合研究所から環境調和技術研究部門など、いくつか の部門に引き継がれている。