4-5 環境省 ○廃棄物・リサイクルをめぐって 2001 年1 月の省庁再編以前、ゴミゼロ型・資源循環型技術研究と関 連が深い、いわゆる「廃棄物・リサイクル行政」のうち、廃棄物の処理 に係る現業等は主に旧厚生省が担当してきた。一方、2000 年5 月に成 立し、同6 月に公布された循環型社会形成推進基本法(循環基本法)は、 旧環境庁が中心となって進めてきた検討が基になっている。現在はこれ らが一体となり、環境省が所管する行政分野の一つの柱として、大臣官 房廃棄物・リサイクル対策部が担っている。 循環型社会形成推進基本法は、(1)廃棄物・リサイクル対策を総合的 かつ計画的に推進するための基盤を確立するとともに、(2)個別の廃棄 物・リサイクル関係法律の整備と相まって、循環型社会の形成に向け実 効ある取り組みの推進を図ることを目的に制定された、いわばこの分野 の行政の枠組みを定めた基本法である。 この循環基本法の制定と同時に、廃棄物の処理及び清掃に関する法律 (廃棄物処理法)や関連法令の改正が行われるとともに、リサイクル関 係では、再生資源利用促進法の改正(名称を資源有効利用促進法に変更) のほか、個別分野ごとのリサイクル法の整備が進められた。循環基本法 と関連法との関係を図4-1 に示す。       環境基本法         |       循環基本法     ┌───┴───┐  廃棄物処理法  資源有効利用促進法      容器包装リサイクル法     家電リサイクル法     建設リサイクル法     食品リサイクル法     自動車リサイクル法  グリーン購入法  図4-1 循環基本法と関連法の関係  循環基本法では、「循環型社会」を[1] 廃棄物等の発生抑制、[2] 循 環資源の適正な循環的利用及び[3] 適正な処分が確保されることによっ て実現される、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低 減される社会、と定義した。また、従来、無価/有価の区別を、廃棄物 行政の対象としてとらえる際の主たる拠り所としてきた考え方を改め、 法の対象となる物を有価・無価を問わず「廃棄物等」とし、廃棄物等の うち有用なものを「循環資源」と位置づけ、その循環的な利用を促進す ることを定めた。また、廃棄物・リサイクル対策における「優先順位」 を初めて法律で定め、[1] 発生抑制,[2] 再使用,[3] 再生利用,[4] 熱回 収,[5] 適正処分との優先順位を与えた。但し、この優先順位について は、「定めるところによらないことが環境への負荷の低減にとって有効 であると認められるときはこれによらないことが考慮されなければなら ない」との規定が設けられており、再生利用をやみくもに熱回収や適正 処分に優先させるものではない。「循環型社会」の英訳が、Recycling based Society からSound Material-Cycle Society に改められたのは、 上記の優先順位があるにもかかわらず、リサイクル偏重と解釈されるこ とを避ける意味もある。また、循環基本法は、国、地方公共団体、事業 者及び国民の役割分担の明確化を図り、事業者・国民の「排出者責任」 を明確化するとともに、生産者が、自ら生産する製品等について使用さ れ廃棄物となった後まで一定の責任を負う「拡大生産者責任」の一般原 則を取り入れている。  一方、循環基本法は、循環型社会の形成を総合的・計画的に進めるた め、政府が「循環型社会形成推進基本計画(循環基本計画)」を策定す ることを求めていたが、法で定められた期限よりも半年余り前倒しして、 2003 年3 月に閣議決定された。循環基本計画は、「大量生産・大量消 費・大量廃棄」に特徴づけられた20 世紀型の活動様式が非持続的なも のであると認識した上で、天然資源の消費の抑制と環境負荷の低減のた め、循環を基調とする社会経済システムの実現と廃棄物問題の解決を課 題としている。計画では、循環型社会のイメージとして、廃棄物等の適 正な循環的利用・処分システムといった従来からの処理処分技術の視点 に加え、良いものを大事に使ったり、地域の自然的特色の中で、再生可 能エネルギーの利活用や旬の食材への嗜好など、自然と共生した暮らし、 いわゆる「スローな」ライフスタイルへの転換、環境保全志向のものづ くり・サービス提供といった、暮らしやものづくりのあり方にも言及し ている。また、循環型社会形成のための数値目標として、物質フロー指 標に関する目標、取り組み指標に関する目標を環境行政の基本計画では はじめて本格導入した点にも特徴があり、物質フロー指標については、 経済社会におけるものの流れについて、入口(資源生産性)、循環(循 環利用率)、出口(最終処分量)の3 つの指標を採用し、各々、2010 年 度の達成目標値を定めている。  特に、リサイクル関連施策については、基本法以前から整備されてい た容器包装、家電分野のリサイクル法に加え、建設、食品、自動車の各 分野でいわゆる「個別リサイクル法」の整備が進んでいる。また、図4- 1 にも描かれているとおり、リサイクルされた製品(再生製品)の利用 を需要面から支援するものとして、国等による環境物品等の調達の推進 等に関する法律(グリーン購入法)が制定されている。こうした環境保 全に資する製品の普及促進に係る行政施策は、環境ラベルやLCA に関 する検討とともに、環境省総合環境政策局において、横断的に取り組ま れている。  廃棄物の適正な処理に関しては、従前から廃棄物処理法の定めるとこ ろによるが、一般廃棄物の処理責任を担う地方公共団体の施設整備への 助成、事業者責任による産業廃棄物の適正な処理の支援、不法投棄の防 止などの課題に取り組んでいる。「ゴミゼロ型・資源循環型技術」によ り、発生抑制、再使用、再生利用が進んだとしても、依然として廃棄物 は一定量排出されるため、その適正な処理・処分が求められる。 ○研究・技術開発のための競争的資金  環境省が所管する競争的研究資金は、地球環境研究総合推進費、環境 技術開発等推進費、廃棄物処理等科学研究費の3 種類あり、競争的資金 に関する総合科学技術会議のウェブサイト※ 7 にも概要が掲載されてい る。これらの中で、「ゴミゼロ・資源循環型技術」に直接関係するのは、 廃棄物処理等科学研究費補助金である。同研究費の概要を表4-1 に示す。  このうち、廃棄物処理対策研究事業は、大学や研究機関等の研究者個 人を対象にしたもので、表4-2 に示す3 つの分野に分類されている。こ のうち、循環型社会構築技術研究という分野は、2002 年度分の公募か ら新設されたものである。当該事業の採択課題数は2001 年度29 課題、 2002 年度43 課題、2003 年度45 課題である。  一方、次世代廃棄物処理技術基盤整備事業は、技術開発を行う法人を 対象とし、廃棄物に係る諸問題の解決及び循環型社会形成に資する研 究・技術開発を目的として実施している。対象とする技術分野について は表4-3 に示した。  一方、この分野での調査研究を担う機関として、独立行政法人国立環 境研究所がある。省庁再編前には、厚生省国立公衆衛生院廃棄物工学部 が廃棄物分野の研究を担当していたが、2001 年1 月の再編時に環境省 国立環境研究所廃棄物研究部となり、その3 カ月後に同研究所の独立行 政法人化に伴う組織再編により、循環型社会形成推進・廃棄物研究セン ターへと拡充された。同センターは7 研究室から構成されており、政策 対応型研究「循環型社会形成推進・廃棄物管理に関する調査・研究」に 取り組んでいるほか、上記の廃棄物処理等科学研究費補助金をはじめと する競争的資金による研究も多数実施している。