イノベーション・ジャパン2012
東京工業大学 グローバルエッジ研究院
村上 陽一

太陽光エネルギーの変換効率向上を実現する光アップコンバーター
 
 
低炭素・エネルギー
出展分野 低炭素・エネルギー プレゼンテーション
情報
PA-25 
プレゼンテーションA 
9/28 14:30-14:50
出展ゾーン 若手研究者による展示
展示会小間番号 P-03

研究成果概要

技術の概要

光アップコンバージョンとは,太陽電池・水分解光触媒・人工光合成などにおいて,エネルギー変換に利用されない閾値エネルギーより低エネルギーの光子(閾値波長より長波長の光)を,エネルギー変換に利用可能な閾値エネルギーより高エネルギーの光子(より短波長の光)に変換する技術である. これにより,従来は捨てられていた太陽光スペクトル部分のエネルギーが利用可能となる. 本成果では,世界に先駆け,「高効率・弱励起光に適用可能」という長所を持つTTA方式(後述)において,エネルギーキャリア分子の媒体にイオン液体(不揮発・難燃な常温溶融塩)を使用可能にする方法(および常識的予想に反してこの用途にイオン液体が使用可能である事)を発見した. 不揮発なイオン液体を用いる事により,揮発性有機溶媒を用いていた従来報告と比べて試料の脱酸素・封止が格段に容易となり,光アップコンバーターのデバイス化が格段に容易となった(下記写真参照). これらの利点によって,開発した光アップコンバーターは大気中放置条件でも長期安定性(> 2年)を有しており,これは従来類似研究には無い応用上の強みである(従来の最長報告動作期間は100日). また,開発した試料は太陽光に適用可能である事を確認している(下記写真参照). これにより,従来は困難と思われてきた太陽光に対するアップコンバージョン技術の応用が現実的な視野に入ってきた.

マッチングを想定する業界

太陽電池・光触媒・人工光合成・Solar-Fuel生産分野.これらの技術分野における太陽光利用効率の向上.

従来技術に対する新規性・優位性

■希土類元素を用いた従来方式では,強励起条件下でも効率は限定的(<< 1 %)  ■本技術が基づくTTA方式では0.1~数W/cm2程度の弱励起条件でも数%のアップコンバージョン効率が比較的容易に達成可  ■しかしTTA方式による従来報告はエネルギーキャリア分子の媒体に揮発・可燃な有機溶媒を使用し,これが応用上の障害であった  ■本発明は(常識的予想では溶媒-溶質間の極性ミスマッチにより使えないと思われた)不揮発・難燃でしばしば「グリーン・ソルベント」と称されるイオン液体を使用可能とし,従来のTTA方式がもつ問題点を解決,不揮発・難燃・長期安定・デバイス化容易・比較的高効率な光アップコンバーターを世界に先駆け開発

実用化に向けた課題

■現状効率は約10 %に達しているが,実用化には30~40 %が必要  ■効率を支配しているメカニズムが依然不明であり,着実な効率向上のためにはメカニズム解明に立脚した指針構築が必要

太陽光からバンドパスフィルタ
太陽光からバンドパスフィルタ(中心波長625 nm, 半値幅10 nm)で赤色部分を取り出し,開発したプロトタイプデバイスで青色光にアップコンバートしている様子.本デバイスの動作はYouTube( http://youtu.be/TrvGDZWaS-Y )に公開中.
 
 
 
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関連論文・特許、件数・概要

関連論文・特許、件数・概要1 2件 Chemical Physics Letters, vol. 516, pp. 56-61, 2011.(原著論文 http://dx.doi.org/10.1016/j.cplett.2011.09.065 ) PCT/JP2011/073443 (国際特許出願 http://patentscope.wipo.int/search/en/WO2012050137 ) 

お問い合わせ先

連絡先:東京工業大学産学連携推進本部 松林 真奈美(産学連携コーディネーター)
TEL:03-5734-2479
FAX:03-5734-7694
URL:http://www.global-edge.titech.ac.jp/faculty/murakami/default.html
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