内閣府の人材育成について

人材育成の取組

  内閣府が政府全体の「知恵の場」としての役割を果たすためには、職員の政策企画立案力、分析力の向上が必要不可欠です。そのため、積極的な研修受講を可能にする環境整備、研修成果の人事配置への活用などを基本方針として、人材育成に取り組んでいます。
  具体的には、多様な業務を幅広く経験する中でのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)だけではなく、知識やスキルを高め、職員同士の人的ネットワークを構築することを目的とした研修・育成課程を実施しています。
  基礎的な技術や、業務に関する知識を身に付ける講座から、各職員のレベルに応じてより専門性を高めるプログラムまで、幅広い機会があります。

内閣府人材育成の主な取組

内閣府人材育成の主な取組の年間スケジュール

政策分析専門家育成プログラムについて

  内閣府内の先輩職員等が育成主任となり、約半年間にわたりゼミのような形式でディスカッション、演習等を行うプログラムを実施し、実務に資する知見・技能の継承を図っています。

令和4年度テーマ例

  • SNA(国民経済計算)入門
  • 国際機関での勤務に必要なスキル
  • 中国経済
  • Rを使った分析 等

経済理論研修について

  政策分析の基礎となる経済理論を体系的に習得する機会を提供し、政策分析専門家としての能力の向上に資することを目的としたプログラムです。

令和4年度テーマ例

  • 内閣府業務に役立つ経済政策論
  • 応用マクロ経済 等

国際機関で活躍する先輩からのメッセージ

「国際機関業務と国際機関から見た日本経済、及び国際機関で活躍するためのスキル入門」

育成主任 篠﨑 敏明(経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部参事官)

  内閣府はこれまでOECDなどの国際機関に幅広い人材を出向者として送り出していますが、その候補者を育成することが本プログラムの主な目的です。内閣府からの出向者を含む国際機関の職員からオムニバス形式で講義及び意見交換を行いました。
  OECD職員からは、国際機関の実際の業務や分析手法に加え、他の先進諸国の分析結果の活用方法について紹介していただきました。JICA職員からは、発展途上国と日本の所得格差、技術格差が縮小する中で、現在の我が国の開発政策の方向性や今後の途上国と我が国の関わり方について紹介いただきました。
  また、国際機関で活躍するためには、留学による学位取得や英語能力の向上が重要であることや、今後の課題として他の先進諸国が取り入れている生産性の向上策や人口政策が講義で取り上げられました。
  受講者の中から国際機関に出向希望者が出ており、内閣府と国際機関をつなぐ一定の役目を果たすことができました。
  少子高齢化・人口減少などの先進諸国に共通する課題が、我が国では先行して出てきます。今後、国際機関の知恵を活用すると同時に、内閣府職員が課題解決に貢献することの助力になることができればと考えております。

アメリカ経済学会(AEA)派遣レポート

由井 啓太郎

男女共同参画局総務課課長補佐(総括担当)

  令和5年1月にアメリカで開催されたAmerican EconomicAssociation(アメリカ経済学会。以下 AEA)の年次総会(ASSA AnnualMeeting)への職員派遣プログラムに参加しました。AEAの年次総会では、当代一流の研究者が集い、経済学の多様なトピックについて世界最先端の研究内容を踏まえた活発な議論が行われます。今回の派遣で私は、担当業務と関係の深い「ジェンダー格差」や「労働市場政策」の分野を中心に複数のセッションに出席し、女性活躍と経済成長の関係、男女間賃金格差の是正に向けた政策、最低賃金の引上げが労働市場に及ぼす影響等に関する議論を見聞しました。構造的な課題に対する骨太な分析に触れて視野を広げるとともに、最新のデータや分析手法を駆使した政策効果分析からは今後の業務に直結する実践的なヒントを得ることができました。普段の業務の中で直面している問題を理論や国際比較の面から深く捉え直し新機軸の発想に繋げるチャンスになったと思います。派遣の前後で関連する海外の研究論文を精読する機会を持てたことも知的刺激となりました。今回の経験で得た知見を十分に咀嚼吸収して、世界最先端の研究と政策の橋渡しができるよう努める所存です。

経済理論研修受講者の感想

櫻井 綾

政策統括官(経済社会システム担当)付参事官(総括担当)付政策企画専門職

  本年受講した「内閣府業務に役立つ経済政策論」では、その名のとおり、マクロ経済理論の主な論点に触れながら、内閣府の業務ではどの部局のどんな業務に役に立つのかを関連付けた講義だったため、実践的で勉強になりました。特に講師が内閣府経験者だったこともあり、ご自身のご経験に照らしながら講義をしてくださった点が良かったです。私は大学時代経済史専攻だったこともあり、経済理論の知識が不足している自覚があったのですが、例えば、「市場の失敗はなぜ起こるのか→自然状態では独占・寡占が起きてしまうがどうすればいいか→規制政策と緩和はどう考えるべきか」といったように、理論的アプローチから具体的な政策につなげる形でご講義いただけたので、初学者でも理解しやすいのではないかと思います。
  また、研修の最後にこれまで学んだことを活かして、受講者から政策提案を行う回を設けてもらいましたが、挙げられた政策課題に対して、内閣府各部局の視点からフリーディスカッションをするかたちになり、とてもよい刺激になりました。
  大学で経済学を学んでこなかった方でも、こうした研修制度が充実していますので、臆さず内閣府を志望していただけたら幸いです。

留学について

  人事院が実施する「行政官長期在外研究員制度」に基づき、入府4?10年目の職員の中から選抜され、行政学、経済学等を研究するため、諸外国の大学院等に留学しています。

最近の主な留学状況

(平成23年~令和4年 行政官長期在外研究員派遣実績)

イギリス 12名
アメリカ合衆国 29名
フランス 1名

年度 留学先及び人数 合計
平成23年 イギリス1名、フランス1名 2名
平成24年 アメリカ合衆国3名、イギリス2名 5名
平成25年 アメリカ合衆国2名、イギリス3名 5名
平成26年 アメリカ合衆国4名、イギリス1名 5名
平成27年 アメリカ合衆国2名 2名
平成28年 アメリカ合衆国3名 3名
平成29年 アメリカ合衆国2名、イギリス1名 3名
平成30年 アメリカ合衆国3名、イギリス1名 4名
令和元年 アメリカ合衆国3名、イギリス1名 4名
令和2年 アメリカ合衆国1名、イギリス1名 2名
令和3年 アメリカ合衆国4名、イギリス1名 5名
令和4年 アメリカ合衆国2名 2名

留学中職員からのメッセージ

武藤 裕雄 (平成26年採用)

長期在外研究員:米国ニューヨーク市立大学

武藤さんの写真
官庁エコノミストとしての分析・政策立案に資する学び直しを

  私は今、米国のニューヨーク市立大学の大学院で経済学の勉強・研究をしています。内閣府で経済・財政の分析・予測に従事したり、海外の経済官庁や国際機関の人たちと意見交換したりする中で、改めて最先端の経済学を学び直し、より良い分析・政策立案につなげていきたいと考え、留学を志望しました。
  大学院では、コアコースと呼ばれる必修基礎クラスを終え、研究分野であるマクロ経済学(特に、期待形成の特質や経済に与える影響について勉強・研究を進めています)や、計量経済学の手法、あわせて公共経済学関連のクラス等を履修しています。経済学の新たな知見はもちろんのこと、公共経済学のクラスでの、「アメリカの社会保障制度を軸に、各国の制度を比較する」という、留学ならではの経験が特に印象的でした。
  内閣府の経済系の部局は、日本の経済・財政政策の大きな方向性を決める、日本や世界経済の現状や先行きを分析する、という大きな2つの役割を持っています。それらを担う「官庁エコノミスト」の一人として、マクロ経済学や計量経済学の最新技術を身につけ、知見をアップデートするとともに、自身の研究力も磨いていきたいと思います。

経歴
平成26年
採用
政策統括官(経済財政分析担当)付参事官(総括担当)付
平成27年
政策統括官(経済財政分析担当)付参事官(企画担当)付
平成28年
計量分析室
平成29年
同 政策企画専門職
平成30年
政策統括官(経済財政運営担当)付
参事官(国際経済担当)付政策企画専門職
令和3年
同 参事官補佐
併任 政策統括官(経済財政運営担当)付
参事官(経済見通し担当)付参事官補佐
留学(米・ニューヨーク市立大学)

EBPM研修について

  内閣府ではこれまでもEBPMに関する研修を行ってきましたが、令和4年度から新たなEBPM研修が始まりました。
  本研修の特徴は、1回60分間程度の授業が全7回で構成されており、オンデマンド方式なので、業務の合間など、職員はいつでも好きな時に受講できるということです。研修内容は、EBPMの考え方やデータ分析、因果推論、Rを使った回帰分析を含んでおり、データの特性を理解した上で、基本的な分析を行うスキルが身につきます。
  内閣府は職員一人ひとりの力を源泉とする組織です。今後も、その時々のニーズにあった研修を常に用意するなど、皆さんが潜在能力を最大限に発揮できるよう、人材育成に引き続き全力で取り組んでいきます。

研修のプログラム

1.EBPMとは

  • エビデンスの種類
  • 文献調査に基づくエビデンス探し
  • ロジックモデル

2.データに関する知識

  • データの種類
  • 記述統計の作成、グラフ化
  • データ収集

3.データ分析の基礎

  • 母集団と標本
  • 統計的推論
  • 標本設計と検出力計算

4.因果推論の理解

  • 反実仮想
  • 無作為割付(RCT)
  • 回帰分析

5.因果推論の具体的手法

  • 単回帰分析、重回帰分析
  • パネルデータと固定効果
  • 差の差分析

6.Rの活用法:短いコード

  • Rの特徴と使い方
  • 記述統計表
  • 可視化

7.Rの活用法:長いコード

  • R言語の文法構造
  • データ整備
  • 回帰分析

研修受講者の声

服部 高明 (平成20年採用)

経済社会総合研究所国民経済計算部
企画調査課長補佐

業務に直結するデータ分析の基礎を学ぶ

  EBPM研修を受講することで、データ分析や政策の効果測定の手法など、統計データを基に政策立案を行うための基本的考え方を体系的に理解できました。
  私はGDP統計の作成に携わっていますが、統計とEBPMは密接な関係があり、統計データが積極的に利活用されることが重要であると思います。
  内閣府では、経済財政白書や経済財政諮問会議の基礎資料において、統計を用いた経済社会の動向・構造の分析が行われるなど、EBPMが重視されています。また、統計の作成の際も、GDPは生産等の様々な基礎統計を用いて推計・作成されますが、基礎統計のデータの特性を踏まえ適切に推計する必要があり、データに関する深い知識が必要です。
  このように、内閣府で政策立案や統計作成等を行う中でEBPMは大変重要であり、知見を活かしていきたいと思います。

栗山 博雅 (令和4年採用)

経済社会総合研究所景気統計部

エビデンスベースドの意識と手法を基礎から押さえる

  「EBPM研修は事務次官が直々に力を入れているプロジェクトだ!」と入府当初の研修で聞き、どんな内容か好奇心を抱き受講しました。エビデンスに基づく政策形成という概念から、高度な分析・推論手法まで幅広く学べ、入府1年目で経験に劣る分、こうした研修を通じて考え方を身につけようと高いモチベーションが持て、時には数学科にいる友人に統計分析手法の質問をしてみるなど(急にどうしたと驚かれました)、研修の内外で成長できました。景気動向指数を始めとした景気統計の作成に携わっていることもあり、プログラミング言語Rの活用など、特にデータ分析の手法が日々の業務で大いに役立っています。上級テスト成績優秀者の表彰式でも、次官から経済部署のみならず、あらゆる政策形成の場面でEBPMを推進するという熱意を伺い、エビデンスベースドの意識の重要性を改めて感じました。