警察庁データからわかること
我が国の自殺の実態を把握することのできる公的な統計は二つあります。一つは厚生労働省大臣官房統計情報部の「人口動態統計」(指定統計第5号)、もう一つは警察庁生活安全局の「自殺の概要資料」です。二つの統計からみた年間自殺者数は、図1からも明らかなように、増減の傾向はほぼ一致していますが、いずれの年も警察庁の「自殺の概要資料」の方が「人口動態統計」よりも多くなっています。この二つの統計に自殺者数に差が生じる理由としては、この二つの統計の対象、範囲、調査方法の違いが考えられます。
「人口動態統計」は指定統計であり、厚生労働省や目的外使用の申請を行った研究者によって分析結果が公表されてきており、今後は「自殺の概要資料」も自殺対策に活用していくことが期待されています。
自殺予防総合対策センターでは、自殺対策に役立てるため、警察庁から、平成16年から平成18年の自殺統計原票をもとにした集計データ(以下「警察庁集計データ」という。)の提供を受けました。現在の分析結果は自殺予防総合対策センターホームページ「いきる」にも公表していますが、ここでは警察庁集計データを読む際に留意すべき点として、発見地における自殺死亡率の問題を指摘しておきたいと思います。
「人口動態統計」では住所地で原票が作成されるのに対して、「自殺の概要資料」では発見地によって原票が作成されます。このため、例えば、都道府県の警察本部単位の集計した自殺者数には、他都道府県に住所をもつ自殺者が含まれる可能性があります。また警察庁集計データには、「職業不詳」かつ「年齢不詳」、すなわち個人を特定できる情報が残っていないような、相当以前に発生した自殺も含まれる可能性があります。警察庁集計データをもとに、「職業不詳」かつ「年齢不詳」の自殺者数は、平成16年から平成18年の間、それぞれ283人、235人、261人であって、全自殺者数の1%に満たない人数でした。しかし、都道府県別でみると東京都(80人、60人、51人)と山梨県(52人、31人、56人)が突出しており、特に山梨県の場合には、通常の発見地による自殺死亡率(41.9、41.8、42.7)と、「職業不詳」かつ「年齢不詳」の自殺者数を除いた発見地による自殺死亡率(36.0、38.3、36.4)との間には大きな差を生じることがわかりました。図2は、18年の各都道府県の発見地による自殺死亡率と、「職業不詳」かつ「年齢不詳」の自殺者数を除いた発見地による自殺死亡率を示しています。二つの自殺死亡率に1.0以上の差があるのは山梨県のみで、16年、17年も同様でした。山梨県の自殺死亡率の高さには、こうした背景があることを認識しておく必要があります。
いずれにしても、地域において自殺の実態把握を進めていくにあたっては、様々なデータの特徴や限界を理解したうえで、それぞれの目的に適した使用に努めることが大切です。
各都道府県における自殺の概要(平成16年〜平成18年)
http://www.ncnp.go.jp/ikiru-hp/toukei1618.html


(自殺予防総合対策センター)