特集 自殺統計の分析

第3節 自殺者数の動向全般について

1 ライフステージと自殺の原因・動機の変化

自殺者数の動向全般を見ていく上で、重要な視点の一つは、自殺と各ライフステージとの関連を捉えることであろう。実際、性別、年齢別に自殺の原因動機を見ていくと、自殺とライフステージとの間に密接な関連があることがうかがわれる。

例えば、性別では、女性は全年齢を通して「健康問題」の占める割合が高く、男性は「経済・生活問題」、「勤務問題」の占める割合が高い。また、年齢別では、若年層では「学校問題」や「男女問題」の占める割合が高い一方、中年層では「経済・生活問題」、「勤務問題」の占める割合が高くなる。また、高齢期では「健康問題」の占める割合が高い(図15、16)。

[図15] 性別、年齢別に見た自殺の原因・動機の内訳(2009年-2011年平均、男性)

[図15] 性別、年齢別に見た自殺の原因・動機の内訳(2009年-2011年平均、男性)

[図16] 性別、年齢別に見た自殺の原因・動機の内訳(2009年-2011年平均、女性)

[図16] 性別、年齢別に見た自殺の原因・動機の内訳(2009年-2011年平均、女性)

これは、個人がライフステージのどこに位置づけられるかで、自殺へ至る経緯が異なることや、対策にもこうした違いを踏まえる必要があることを意味するだろう。

以下では、こうした観点から自殺者数の動向を見ていく上で、重要と考えられる2つの属性について検討していきたい。

(1)中年男性の自殺

平成以降の自殺者数の動向を見る上で重要なのは、平成10年に自殺者数及び自殺死亡率が急上昇したという点であろう。この点については、いくつかの先行研究において、9年の急速な景気後退により、中年男性の間で「経済・生活問題」による自殺者が増加したことが背景にあるとされてきた。

図15からも、中年男性の間では、自殺の原因・動機における「経済・生活問題」、「勤務問題」の占める割合が高いことが示されており、こうした経済状況の悪化の影響を最も強く受ける層であることがわかる。この点について、例えば年間の企業倒産件数と50~59歳男性の自殺死亡率の推移を比較すると、両者とも10年に急上昇をした後、ほぼ同じ動きを示していることがわかる(図17)。

[図17] 50~59歳男性の自殺死亡率と企業倒産件数の推移

[図17] 50~59歳男性の自殺死亡率と企業倒産件数の推移

以上のことから、これまで指摘されてきたように、自殺者数の動向を見ていく上では、経済状況の悪化に伴う中年男性を中心とした自殺者数の増減に注目することが重要であるといえよう。

(2)若年層の自殺

経済状況の相対的な改善とともに、中年男性の自殺死亡率が低下しつつある一方で、近年、20代以下の若年層の自殺死亡率の上昇が見られる点が注目される。若年層においては中年層に比較して、「勤務問題」の占める割合が高いことが特徴であり、若年層の自殺死亡率が上昇していることと関係している可能性が考えられるだろう。

若年失業率と20~29歳の自殺死亡率の推移を比較すると、両者は近い動きを示すことがわかる(図18)。こうしたことから、若年層における自殺死亡率の上昇は、経済状況の相対的な改善にもかかわらず、派遣社員、契約社員、パート、アルバイト等の非正規雇用の割合の増加など、若年層の雇用情勢が悪化していることも影響している可能性があるものと思われる。なお、特に20歳代以下の若者の「就職失敗」による自殺者数が平成21年を境に急増していることにも注意が必要である。

[図18] 20~29歳の自殺死亡率と若年失業率の推移

[図18] 20~29歳の自殺死亡率と若年失業率の推移