特集 自殺統計の分析

第3節 原因・動機別にみた自殺動向の変化

(1)健康問題

ここ数年の「健康問題」における原因・動機詳細別自殺者数の推移(図6)をみると、「病気の悩み・影響(うつ病)」、「病気の悩み(身体の病気)」による自殺者数が非常に多く、その傾向はほぼ変わっていない。

[図6] 「健康問題」における原因・動機詳細別自殺者数の推移

[図6] 「健康問題」における原因・動機詳細別自殺者数の推移

(「健康問題」への取組が全国に浸透しつつある)

 「健康問題」はきわめて多様な要因が関与すると言われており、「健康問題」との関連指標を特定することは容易ではない。

平成24年10月にとりまとめられた「地域自殺対策緊急強化基金検証評価報告書」によると、特に秋田県や青森県、岩手県など、以前から高い自殺死亡率が認識されていた自治体においては率先して熱心な取組が行われており、こころの健康の分野にとどまらない多様な専門家間での有機的な連携による相談体制などの整備、訪問支援などの既存事業との組み合わせ、など先進事例が紹介されている。

ここ数年の都道府県別の自殺死亡率の変化(図7)をみると、ほとんどすべての都道府県において低下し、特に先駆的に自殺対策に取り組んできた秋田県や青森県、岩手県などにおいては、平成21年には自殺死亡率が高かったものの、24年には大きく低下している。

[図7] 都道府県別の自殺死亡率の変化(平成21年⇒24年)

[図7] 都道府県別の自殺死亡率の変化(平成21年⇒24年)

そのうち、「健康問題」への取組は自殺対策の中でも最も基礎的であり、基金事業の創設以前から、うつ病対策を始め多くの取組が行われてきたところである。

ここ数年の都道府県別の「健康問題」による自殺死亡率の変化(図8)をみると、多くの都道府県において低下し、都道府県間での自殺死亡率の違いが縮小している。ただし、前述の秋田県や青森県、岩手県において、他の都道府県と比較して、平成21年には特段高いというわけではなく、24年の低下幅も特段大きくはない。

[図8] 都道府県別、原因・動機が「健康問題」による自殺死亡率の変化(平成21年⇒24年)

[図8] 都道府県別、原因・動機が「健康問題」による自殺死亡率の変化(平成21年⇒24年)

いずれにせよ、自殺統計について、自殺死亡率が急上昇する前の平成9年の都道府県データが入手できないことから、自殺動向の変化における定量的な判断は難しいが、様々な自殺対策の中でも「健康問題」への取組はいち早く全国的に展開されつつあり、多くの地域において既に成果がみられるようになってきていると言える。

ところで、原因・動機別の自殺死亡率について「健康問題」の推移(図4)をみると、近年にない高水準に達した平成10年から2年後には昭和末期の水準にまで低下しており、他の原因・動機においてみられるような長期間にわたる高水準が持続していない。そもそも、10年における急上昇の引き金は景気の悪化と言われていることから、「健康問題」を原因・動機とする自殺死亡率の上昇はその間接的な波及によるものであった可能性が考えられる。

以上をまとめると、「健康問題」を原因・動機とする平成24年の自殺死亡率は、自殺死亡率の急上昇以降も「健康問題」に関連する要因が大きく悪化していないと仮定した上で、地域における「健康問題」への取組が全国に広がりつつあることを踏まえると、急上昇以前の水準に近づいている可能性が高い。