(1) 法律・制度の目的
食品の安全性確保のために、公衆衛生の見地から必要な規制等の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図る。
(2) 法律・制度の概要
食品衛生に関する国、地方自治体、食品等事業者の責務を定めると共に(第2条)、食品等事業者による自主検査の実施及び危害の防止に必要な情報の記録保存に関する努力義務(第3条)を規定している。
また、厚生労働大臣が定めたものを除き、人の健康を損なうおそれのある食品、又は添加物(天然香料等を除く。)は、これを販売し又は販売の用に供するために製造・輸入等をしてはならない(第6条)。厚生労働大臣が、販売の用に供する食品及び添加物並びに販売の用に供し、又は営業上使用する器具及び容器包装につき、製造、表示等の基準、成分規格等を定めたときは、その規格基準に合わないものを販売してはならない(第11条等)。販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、その都度厚生労働大臣に届けなければならない(第27条)。厚生労働大臣又は都道府県知事等は、必要があると認めるときは、営業者等から必要な報告を求め、営業の場所等に臨検し、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装、営業の施設、帳簿書類その他の物件の検査、無償収去(試験の用に供するのに必要な限度)させることができる(第28条)。
また、消費者とのリスクコミュニケーションに関わる規定(第64条、第65条)、食品中に残留する農薬等に関するポジティブリスト(第11条3項)、輸入食品の監視体制関連規定(第23条、第25条、第26条、第27条、第30条、第55条2項等)が定められている。
(3) 政省令
食品衛生法施行令
食品衛生法施行規則
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令
食品、添加物等の規格基準(告示)
(4) 規格・基準、検査等の概要
1)対象品目
食品(すべての飲食物。但し、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は除かれる。)
食品添加物(食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物)
器具及び容器包装
おもちゃ(乳幼児が接触するおもちゃ)
洗浄剤(野菜、果実又は飲食器の洗浄用)
2)規格・基準、検査等の概要
i. 規格・基準
食品衛生法に関係する規格・基準としては、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、「食品、添加物等の規格基準(告示)」等が定められている。
乳及び乳製品については、同省令において成分規格並びに製造、調理及び保存の方法の基準、器具若しくは容器包装又はこれら原材料の規格及び製造方法の基準が定められている。
その他については、同告示において「食品」「添加物」「器具および容器包装」「おもちゃ」「洗浄剤」に分けて規格・基準が定められている。食品については、成分規格、製造・加工および調理基準、保存基準、使用基準、添加物については、通則、一般試験法、試薬・試液、製造基準・使用基準等が定められている。
ii. 認証制度(輸入検査)
食品等を輸入しようとする者は、その都度その旨を厚生労働大臣に届出なければならない。この輸入届手続きは、全国31海空港の検疫所食品輸入監視担当窓口で行われている。検疫所においては、輸入届出について審査を行い、必要に応じ検査等を行うことにより、輸入食品等の衛生確保を図っている。
なお、食品等輸入手続きを簡素化するために、以下に挙げた主な制度のほか、輸入者の端末からのオンラインやフロッピーディスクで輸入届出ができる輸入食品監視支援システム(1996年)の導入、税関の通関情報処理システムとのインターフェイス化(1997年)が図られてきており輸入手続の簡素化・迅速化が進められている。
ア.輸入食品等事前確認制度:外国で製造された食品のうち、食品衛生法に基づく規格基準等に適合していることが事前に確認されたものについては、厚生労働省に登録し、この登録された食品等が届出された場合には、審査後直ちに食品等輸入届出済証が交付される制度。
イ.計画輸入制度:特に定められた食品等(計画輸入対象食品)について、同じ食品等を繰り返し輸入する場合、初回輸入時に、1年間又は3年間の輸入計画を食品等輸入届出書に添付して提出し、審査の結果、問題がないと判断された場合は、次回からの輸入の都度の輸入届出が省略できる(当該期間内に限り)制度。
ウ.品目登録制度:同一食品等を継続的に輸入する場合、輸入する食品等の記載事項について登録を行い、その記載事項に問題がないことが確認されると、その後1年間は、輸入届出の際、登録した記載事項は、登録番号により行うことができる制度。
エ.輸入届出書の軽微な誤記:食品等輸入届出書の記載事項に係るタイプミス等の軽微な誤りについては、不問に付されている(昭和46年12月20日事務連絡、昭和57年8月18日環食第184号各検疫所長宛通知)。
オ.継続輸入制度:同一食品が繰り返し輸入される場合で、一定期間内に行った同一食品の検査成績等が添付されている場合は、その調査項目について有効期間内は輸入時の検査が省略される制度。
カ.輸出国公的検査機関制度:輸出国の公的検査機関(輸出国公的検査機関リストに掲載されている検査機関)で輸出時に検査を受け、その成績書が添付されている場合に、その検査項目について輸入時の検査が省略される制度。
キ.事前届出制度:すべての食品等について、輸入貨物の到着予定日の7日前から輸入届出を受け付けて、検査の結果、現場検査等の必要がないと判断された輸入届出については、貨物の到着前もしくは到着後直ちに食品等輸入届出済書が交付される制度。
ク.検査証明書の電子転送:我が国に輸入される獣畜の肉等が、輸出国政府機関により発行された検査証明書の添付がなければ輸入してはならないとされているが、検査証明書に記載される事項が輸出国政府機関から検疫所の電子計算機に送信され、当該電子計算機に備えられたファイルに記録された場合にはこれを適用しないとされている。
検査証明事項の電子的送信については、我が国とオーストラリアとの間で実施している。
5)最近の法令等改正の要点
食品衛生法は、平成15年5月に大幅改正されている。目的の改正(第1条)、国・地方公共団体・食品等事業者の責務の追加(第2条、第3条)、食品等事業者の記録保存の努力義務の導入(第3条2、3項)、消費者とのリスクコミュニケーションの導入(第64条、第65条)、食品中の残留農薬等に関するポジティブリストの導入(第11条3項)、命令検査の対象食品等の政令指定要件の廃止(第26条第1項から第3項)、輸入食品監視指導計画の策定・公表(第23条、第30条)、指定検査機関の登録制への移行(第31条から第47条)等が行われている。
(6)参考情報
問い合わせ先:
厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課
Tel 03-5253-1111(代) http://www.mhlw.go.jp