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市場開放問題苦情処理推進会議第1回報告書(平成6年5月13日) [本部決定] [フォローアップ]

3-(1) 自動車及び自動車部品の規格基準の国際的整合化及び外国検査データの受入れ

○ 問題提起者:欧州ビジネス協会

○ 所管省庁:運輸省

○ 問題提起の内容

(1) 自動車の新規登録を行うには、1台毎に国の行う新規検査を受け、道路運送車両の保安基準に適合していることについての確認を得ることとされているが、この検査業務の効率化を図ること等を目的として、型式指定制度(TDS)、新型自動車等届出制度(TNS)等の型式認証制度が設けられている。

型式指定制度による場合は、サンプル車の現車審査に加え、完成検査の実施要領、品質管理体制等についての審査が行われる。これにより型式指定を受けた自動車については、1台毎に保安基準に適合していること及び指定を受けた型式と同一であることについて製造業者が確認(完成検査)することにより、国の行う新規検査に代えることができる。

また、新型自動車等届出制度による場合は、サンプル車についての現車審査を受けているので個々の自動車を登録する場合の新規検査を簡素化することができる。

申立者からは、外国製造業者等が完成検査を実施するためには、日本の審査項目及び検査方式に対応するため、費用等の面での負担が大きい。このため、型式指定制度及び新型自動車等届出制度の下でサンプル車についての運輸省による審査を受けている場合には、製造業者の品質管理により型式の同一性及び保安基準への適合性は既に十分に保証されているので、法改正の上、新規検査及び完成検査(抜き取り検査を含む)を廃止すべきであるとの問題提起がなされた。

(2) 耐久試験は、排出ガスの発散防止装置の性能が、長期間の使用後も保安基準を充足しているか確認する試験である。我が国では、3万km(触媒耐久試験については8万km)、米国においては、現在8万km、96モデル年からは16万kmの走行後に試験を行う。

また、日本ではエンジンの型式(排気量等により区別)が異なる車種毎に耐久試験が要求されるが、米国では、排気量等を異にする複数の車種であっても一定の基準を満たす場合、エンジン・ファミリーという考え方が適用され、1車種の試験結果を他の車種に適用することが認められている。

なお、米国の新しい規定では、製造業者の考案による耐久試験方法で排ガス装置に16万kmの走行試験と同程度の負荷を与えるとEPA(環境保護局)が認めたものについては、その試験をもって16万kmの耐久試験に代えることも認めることとしている。

現在、我が国では、輸入車については、米国の耐久試験の結果得られる劣化係数(排出ガス発散防止装置の性能が長距離走行によりどの程度劣化するかを示す数値)を用いて長距離走行後の排出ガス発散防止装置の性能を推定することにより、耐久試験を実際に行わなくともよいこととしている。

申立者からは、米国の耐久試験の結果得られる劣化係数の受入れについて、第1に、米国のエンジン・ファミリーの考え方を受け入れ、一定の範囲で排気量の大きい車両の劣化係数を排気量の小さい車両についても適用できるようにすべきであり、第2に、米国が16万kmの走行試験と同等以上と認めた試験方法により得られた劣化係数についても受け入れるべきとの問題提起がなされた。

(3) 我が国では、排気ガス防止装置(触媒装置)の異常高温による触媒の熱劣化及び車体・部品等に対する悪影響を防止するため、触媒が一定温度に達した時に作動する熱害警報装置の装着が義務付けられている。

申立者からは、欧米諸国では同様の装置は義務付けられておらず、欧米製造業者にとってこの装備要件が日本への輸出に際してコスト等の面で負担となっている。エンジン、触媒技術等の品質、信頼性、耐久性の進歩、エンジンの失火状態等を検知して燃料供給を止める機構やエンジン不調を警告する機構の開発により、現在では熱害警報装置の装着義務は不要となっており、本装置の装着義務は廃止すべきであるとの問題提起がなされた。

○ 検討結果

(1) 自動車生産技術が高度に発達した現在、十分な品質管理体制を有する製造業者の生産する車両については、型式の同一性及び保安基準への適合性は十分確保されていると考えられる。このため、欧州の多くの国においても、型式認可に当たって品質管理体制の審査を行った上で、製造業者において、型式の同一性及び保安基準への適合性が確保されている。

所管省においては、国の定める検査方法に替えて製造業者の品質管理体制に組み込まれている適切な検査方法により完成検査を行うことを認めてきており、近年においてはこうした運用の一層の弾力化に努めてきているところである。その際、申請者の事務負担に配意し、検査方法が適切であるか否かについては、簡易な書面審査によることとしている。また、今般の問題提起等を踏まえ、今後、通達により、こうした方針の一層の明確化及びその周知を図ることとしている。

こうした方針は評価できるものであり、これによる型式指定に伴うコストの低減に伴い、現在、新型自動車等届出制度の下で輸入されている自動車についても、1台毎に国の行う検査の不要な型式指定制度への移行が進展し、輸入ディーラー等にとっての検査負担の軽減が図られるものと考えられる。

したがって、本件は、この方針により解決が図られるものと考えられる。本会議としても、この方針の今後の実施状況を注視していきたい。

(2) 耐久試験については、1型式当たりの取扱台数の少ない外国製造業者や輸入ディーラーにとっては、時間、費用等の面での負担が大きいため、外国検査結果に基づく劣化係数を技術的に可能な限り包括的に受け入れることが適当であると考えられる。

所管省においては、エンジンファミリーの考え方については、米国と同様の方法でこれを受け入れる方向で、エンジン排気量と排出ガス発散防止装置の耐久性との相関性についてのデータ収集を開始したところであり、本年中に結論を得ることとしている。

また、製造業者が米国耐久試験に代替的なものとして各個に考案する試験方法による劣化係数の受入れについては、個別に説明を受けて検討することとしている。

こうした方針は評価できるものであり、これによって、速やかに、可能な限り検査負担の軽減が図られるべきである。

(3) 公害防止、安全性確保等のために設けられた熱害警報装置については、その本来の目的が確保される限り、他の手段による代用を基本的に認めていくべきである。したがって、本装置については、熱害の発生実態、諸外国における制度の実情、代替手段等を勘案し、その義務付けの撤廃又は緩和の方向で、問題提起者の納得が得られる結論を得る必要がある。

所管省では、エンジンの失火状態等を検知して警報する又は問題提起者が例示したエンジンの失火状態等を検知して燃料供給を止める等の新機構については、熱害警報装置との同等性について本年中に結論を得ることを目途に検討し、同等であれば、受け入れることとしている。

こうした方針は評価できるものであり、この方針に沿って速やかに検討を進めるべきである。


OTO対策本部決定(平成6年6月24日) [報告書] [フォローアップ]

3-(1) 自動車に関する基準・認証制度等の改善

輸入促進の観点から以下の改善を行う。

(1) 完成検査については、製造業者の品質管理体制に組み込まれている適切な検査方法により行うことを認めてきており、その運用の一層の弾力化にも努めてきている。また、検査方法の適否については簡易な書面審査によることとしている。こうした方針の一層の明確化及び周知のため、7月を目途に通達を発し、型式指定の取得の円滑化を図る。

(2) 排出ガス発散防止装置の耐久試験に係る外国検査結果に基づく劣化係数の受入れに際しては、米国と同様のエンジン・ファミリーの考え方を受け入れる方向でデータ収集を開始したところであり、本年中に結論を得、速やかに実施する。また、製造業者が米国の耐久試験に代替的なものとして各個に考案する試験方法による劣化係数の受入れについては、個別に説明を受けて検討する。

(3) 熱害警報装置の義務付けについては、安全性の確保等その目的が確保される限り他の手段による代用を基本的に認める方針の下、エンジンの失火状態等を検知して警報する又はエンジンの失火状態等を検知して燃料供給を止める等の新機構と熱害警報装置との同等性について、本年中に結論を得ることを目途に検討し、同等であれば受け入れる。


フォローアップ(平成7年6月5日) [報告書] [本部決定]

3-(1) 自動車及び自動車部品の規格基準の国際的整合化及び外国検査データの受入れ

(1) 完成検査については、製造業者の品質管理体制に組み込まれている適切な検査方法により行うことを認めてきており、その運用の一層の弾力化にも努めてきている。また、検査方法の適否については簡易な書面審査によることとしている。こうした方針の一層の明確化及び周知を図るため、平成6年7月、通達「型式指定を受けた車両の完成検査の運用について」を発した。

(2) 排出ガス発散防止装置の耐久試験に係る外国検査結果に基づく劣化係数の受入れに際しては、平成6年12月、通達「『長距離走行実施要領等について』の一部改正について」により、排気量が一定程度異なるエンジン(米国でエンジンファミリーとして扱われているエンジンを含む。)の試験により計測された劣化係数の準用を認めるよう既に措置したところである(平成7年1月より実施)。また、製造業者が米国の耐久試験に代替的なものとして各個に考案する試験方法による劣化係数の受入れについては、個別に説明を受けて検討することとしている。

(3) エンジンの失火状態等を検知して警報する装置又はエンジンの失火状態を検知して燃料供給を止める装置を備えた自動車については、熱害警報装置との同等性が確認できたことから熱害警報装置の装着義務を課さないこととし、さらにこれらと同等の機能を有すると認められる装置を備えた自動車についても同様の措置を取る方針を平成6年12月に決定した。

現在、このための省令改正を準備中であり、平成7年7月を目途に省令の公布及び施行を行うこととしている。