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市場開放問題苦情処理推進会議第1回報告書(平成6年5月13日) |
○ 問題提起者:駐日米国大使館
○ 所管省庁:警察庁
○ 問題提起の内容
我が国では、自動二輪車に関して、道路交通法令に基づく次のような規制がある。
(1) 高速自動車国道及び自動車専用道路(以下「高速道路」という。)では、運転者以外の者を乗車させて自動二輪車を運転すること(以下「二人乗り」という。)が禁止されている。
(2) 公安委員会は、自動車等の免許を与える場合において、運転の技能に応じて運転することができる自動車等の種類を限定することができる。
これを受けて、自動二輪車の技能試験については、次の総排気量の区分に応じて試験課題に差が設けられており、 1)及び2)についての試験に合格した者の免許については、運転することができる自動二輪車を限定している。
1) 総排気量125cc以下
2) 総排気量400cc以下
3) 総排気量に制限なし
なお、1)及び2)の自動二輪車については、指定自動車教習所における教習を修了し、技能検定に合格した者に対し、公安委員会の行う技能試験を免除する制度がある。
(3) 自動車が高速道路を通行する際の最高速度は、大型乗用自動車及び普通自動車(以下「乗用車」という。)については 100km/時、自動二輪車については80km/時に制限されている。
申立者からは、これら諸外国に例を見ない規制により、我が国では総排気量400cc以上の自動二輪車(以下「大型自動二輪車」という。)の普及が妨げられており、主として大型を製造している米国、及び欧州の自動二輪車の日本市場への参入が困難になっているので、以下のとおり改善して欲しいとの問題提起がなされた。
(1) 日本では、高速道路における自動二輪車の二人乗りが禁止されているが、日本以外の先進国(韓国を除く)でこのような規制を行っている国はない。
多くの交差点があり、交通の流れが複雑で、通行人も多い一般道で二人乗りが許されているのに、交差点も障害物もなく、通行人もいない高速道路で禁止されているのは矛盾している。
したがって、高速道路における自動二輪車の二人乗り禁止を撤廃して欲しい。
(2) 日本では、大型自動二輪車を運転することができる免許を取得するためには、それより小型のものより難しい技能試験に合格しなければならない。しかしながら、大型自動二輪車の免許を取得するために特別な技能試験を課していない米国においては、自動二輪車の事故の頻度とエンジンの大きさには何ら相関関係がないことが明らかになっている。
したがって、総排気量400ccを境に異なった技能試験を課す制度を撤廃して欲しい。
また、現在、大型自動二輪車の技能試験が運転免許試験場のみで行われており(指定自動車教習所における技能検定合格者に対し行う技能試験が免除される制度がない。)、地域によっては実施回数も少ないため免許の取得が困難となっているので、併せて改善して欲しい。
(3) 日本では、高速道路における制限速度が乗用車では 100km/時であるのに対して、自動二輪車では80km/時となっているが、日本以外の先進国でこのような規制を行っている国はない。
高速道路において、自動二輪車の運転者が周りの交通より20km/時遅い速度で運転し続けることは、自動二輪車、乗用車いずれの運転者に対してもかえって危険な状態をつくりだすものであり理解できない。
したがって、自動二輪車の制限速度も 100km/時として欲しい。
○ 検討結果
(1) 高速道路における自動二輪車の二人乗りの適否については、最近の大型自動二輪車の二人乗り走行の安全性について、申立者から提出されたデータ等の検討を行い、安全性に問題がなければ規制を見直すべきである。
(2) 中型・小型自動二輪車については、指定自動車教習所における教習制度があるが、大型自動二輪車についてはない。したがって、大型自動二輪車の免許を受けようとする者に対しては、指定自動車教習所の技能検定に合格した者に対する技能試験の免除の制度が適用されないものである。
所管庁においては、大型自動二輪車についても、指定自動車教習所における教習を修了し、技能検定に合格した者に対し、公安委員会の行う技能試験を免除する制度を導入する方向で法令の見直しを含め早急に検討すべきである。
また、総排気量400ccを境に異なった技能試験を課すことの適否については、事故の頻度とエンジンの大きさの相関関係についての申立者側からのデータの提出に基づき、引き続き検討を行うべきである。
(3) 高速道路における自動二輪車の制限速度については、所管省庁において申立者の納得を得られるよう、根拠となるデータを明示することが必要であり、明示できない場合には規制の見直しを検討すべきである。
OTO対策本部決定(平成6年6月24日) |
(1) 高速道路における自動二輪車の二人乗りの適否については、最近の大型自動二輪車の二人乗り走行の安全性について、問題提起者から提出されるデータ等の検討を行い、安全性に問題がなければ規制を見直す。
(2) 大型自動二輪車に係る免許については、指定自動車教習所における教習を修了し、技能検定に合格した者に対し、公安委員会の行う技能試験を免除する制度を平成8年度を目途に導入する方向で、法令の見直しを含め速やかに検討を行う。
また、総排気量400ccを境に異なった技能試験を課すことの適否については、事故の頻度とエンジンの大きさの相関関係について問題提起者からデータの提出を得て、引き続き検討を行う。
(3) 高速道路における自動二輪車の制限速度については、根拠となるデータを速やかに問題提起者に明示する。
フォローアップ(平成7年6月5日) |
(1) 問題提起者から、その後、新規のデータ等の提出はできない旨の回答があったことから、今後の対応について検討している状況である。
(2) 大型自動二輪車に係る免許制度については学識経験者等や国民一般の意見を聴き、総合的に検討を行った。その結果、総排気量400ccを超える大型自動二輪車を制御し、安全に運転するためには高度な運転技能やその特性について十分な知識が必要となることから、現行の自動二輪車免許を廃止し、総排気量400ccを境に大型自動二輪車免許及び普通自動二輪車免許を設け、それぞれの車両特性に応じた技能試験を課すこととするとともに、大型自動二輪車免許について指定自動車教習所における技能検定制度を導入することとした。こうした制度改正のため、道路交通法の一部改正案を、平成7年2月閣議決定し、第132回通常国会に提出、本法案は4月に成立し、公布された。
今後は、上記法改正に係る下位法令等の整備を行い、平成8年度を目途に改善措置を実施する。
(3) 高速自動車国道における自動二輪車の速度制限の根拠となるデータを問題提起者に明示したが、上記データについて問題提起者から不十分なデータであるとの認識が示されたため、過去の事例に即した調査・分析等を行い、概ね1年後を目途に追加資料を問題提起者に明示することを考えている。