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市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書(平成8年3月18日) [本部決定] [フォローアップ]

1-(4) 食肉中の薬物残留基準の国際的整合化

○ 問題提起者:東京商工会議所

○ 所管省庁:厚生省

○ 問題の背景

我が国においては、食品衛生法に基づき、厚生大臣は公衆衛生の観点から、販売の用に供する食品等に関する規格基準を定めることができ、当該規格基準に適合しない食品等は販売等が禁じられている。家畜や養殖魚介類の生産段階に使用されている動物用医薬品のうち、抗生物質、合成抗菌剤については、これらを含む食品を摂取することによる国民の健康への影響が懸念されるため、食肉、魚介類等に含有してはならないとされている。

現在、国際機関(FAO/WHO合同食品規格委員会)において、食品中に残留する動物用医薬品の国際基準(コーデックス規格)の設定作業が進められており、平成7年7月現在、15物質の国際基準が勧告されている。

諸外国における状況は、米国では抗生物質、合成抗菌剤のほか、ホルモン剤、内寄生虫用剤等を含む約80物質の動物用医薬品について残留基準値が設定されている。また、EUでは、EU域内で動物用医薬品として用いられている全ての物質について、平成8年末までに残留基準値を設定することとしており、現在、40物質についての残留基準値が設定されている。

我が国においても、近年、抗生物質、合成抗菌剤を含む食品を摂取することの人の健康への影響について、科学的な評価が国内外で確立し(評価手法の確立、試験データの蓄積)、これらの物質を含む食品を摂取しても人の健康への影響(消化管内の細菌に対する影響を含む。)がないレベルとして、食品中の安全基準を設定することが可能となったものがある。所管省では、EU、FAO/WHO合同食品規格委員会などと同様にMRL(最大残留基準値)の考え方を導入し、国際基準が設定される等、安全性評価のために必要な資料が整備されたものについては、順次、残留基準値の設定を進めていくこととしており、平成7年12月には6物質について、残留基準値の設定を行った。今後も安全性評価のために必要な資料が整備されたものから残留基準値の設定を進めていくこととしている。

なお、問題提起者によって指摘されているナイカルバジンについては、米国では鶏肉中4.00ppm の残留基準値が設定されているが、我が国、EU及びFAO/WHO合同食品規格委員会では残留基準値は設定されていない。

○ 問題提起内容

本件については以下のとおり問題提起があった。

日本では、食肉中の薬物の残留が一切認められておらず、0.1ppm程度(薬物によって相違)の残留を認める国際基準とは差がある。例えば鶏のナイカルバジン(抗菌剤) の国内における許容量は検出限界の0.03ppm に対し、FSIS(米国農務省機関)の許容基準値は4.00ppm と国内基準の100 倍以上あるので、国際基準並みに緩和すべきである。所管省においては、ナイカルバジンについて、国際機関での安全性の評価がまだ行われていないため、直ちには基準値の設定を行わないとのことだが、日本独自で基準値を設定をすべきである。また、ブラジルからの鶏肉の輸入については、ブラジルの検査合格書をもって、国内検査を省略すべきである。

○ 検討結果

所管省においては、本問題の提起に例としてあげられているナイカルバジンについては、国際的にも安全性評価のために必要な資料が整備されておらず、直ちには残留基準の設定ができないとしているが、米国で約20年にわたって、大きな問題が起きていないといわれており、これは十分な安全性のデータとなりうるものと思われる。

我が国は米国、EU等の残留基準値の設定状況に比べ遅れているのも明らかであり、より積極的な対応が国際的にも求められているので、所管省においては以下の対応を取るべきである。

なお、所管省においては、ブラジルからの鶏肉の輸入の際義務づけられているナイカルバジンの国内検査については、ブラジル国内で適切な検査の実施を含めた残留防止対策をとれれば省略可能と考えており、現在ブラジル政府と話し合いをしているとのことである。

(1) 所管省においては、すでに国際基準が設定されているものについては、食品衛生調査会における検討スケジュールを明確化し、できる限り速く、国際基準との整合化を図っていくこととしている。この場合、残留基準設定予定の動物用医薬品とその設定時期を明確にし、公表すべきである。また、国際機関における基準設定作業がある程度の段階に達したら、我が国においても当該動物用医薬品の残留基準の設定の準備に着手しできる限り早く残留基準の設定を行うべきである。

(2) 国際基準が未設定であっても、資料収集を行い、米国、EU等の基準値を受け入れることも含めて、食品衛生調査会の意見を聴き、早急に国内の残留基準の設定を進めるべきである。

なお、残留基準の設定の必要性が高いと考えるものについては、安全性に関する資料を国際機関に提出する等、国際基準の設定に貢献すべきである。

(3) 食品中の動物用医薬品残留基準の設定に関する食品衛生調査会での審議の一層の迅速化を図るべきである。

(4) 個別の動物用医薬品に係る残留基準の設定につき、内外の要望等に基づきプライオリティリストを作成し、設定の時期的目途を含め平成8年度中に内外に公表すべきである。


OTO対策本部決定(平成8年3月26日) [報告書] [フォローアップ]

1-(4) 食肉中の薬物残留基準の国際的整合化

(1) すでに国際基準が設定されているものについては、食品衛生調査会における検討スケジュールを明確化し、できる限り速く、国際基準との整合化を図る。この場合、残留基準設定予定の動物用医薬品とその設定時期を明確にし、公表する。また、国際機関における基準設定作業がある程度の段階に達したら、当該動物用医薬品の残留基準の設定の準備に着手しできる限り早く残留基準の設定を行う。

(2) 国際基準が未設定であっても、資料収集を行い、米国、EU等の基準値を受け入れることも含めて、食品衛生調査会の意見を聴き、早急に国内の残留基準の設定を進める。 また、残留基準設定の必要性が高いと考えるものについては、安全性に関する資料を国際機関に提出する等、国際基準の設定に貢献する。

(3) 食品中の動物用医薬品残留基準の設定に関する食品衛生調査会での審議の一層の迅速化を図る。

(4) 個別の動物用医薬品に係る残留基準の設定につき、内外の要望等に基づきプライオリティリストを作成し、設定の時期的目途を含め平成8年度中に内外に公表する。


フォローアップ(平成9年5月12日) [報告書] [本部決定]

1-(4) 食肉中の薬物残留基準の国際的整合化

(1) FAO/WHO合同規格委員会において食品中に残留する動物用医薬品の国際基準(コーデックス基準)が勧告されたものは12物質あるが、我が国において既に基準値を設定していた(平成7年12月、施行は平成8年7月)オキシテトラサイクリン等6物質に加え、スルファジミジン等の5物質について、平成9年3月に基準値を設定した(平成9年10月施行予定)。

(2) 安全性等に関する資料の収集及び残留基準設定の必要性が高いと考えられる物質の国際基準設定への貢献については、毒性評価を行う国際機関(JECFA)において我が国の委員を通じ、幅広く資料の収集を行うとともに、安全性に関する資料の提出も実施している。

(3) 動物用医薬品の残留基準の設定に当たっては、個別専門的な評価(毒性や薬剤耐性等)を行う分科会の活用により、食品衛生調査会での作業の合理化を図り審議の迅速化を進めているところである。

(4) 残留基準値を設定する動物用医薬品についてプライオリティーリストを公表し(平成9年3月)、その中で、早急に基準値設定を検討する品目(モキシデクチン等4物質)及び必要な資料が整備され次第、基準値設定を検討する品目(アザペロン等14物質品目)を示したところである。