第4回総合規制改革会議 議事概要

1. 日時

平成13年7月10日(火)10:00〜12:00

2. 場所

合同庁舎4号館共用第4特別会議室

3. 出席者
(委員)

宮内義彦議長、飯田亮議長代理、奥谷禮子、神田秀樹、佐々木かをり、鈴木良男、清家篤、高原慶一朗、八田達夫、村山利栄、森稔、八代尚宏、米澤明憲の各委員

(政府)

石原規制改革担当大臣、松下内閣府副大臣、渡辺大臣政務官

(事務局)

[内閣府]坂政策統括官、岡本審議官、梅村審議官、磯部審議官、竹内審議官、吉原総合規制改革会議事務室長、長屋総合規制改革会議事務室次長

(環境省)

太田事務次官、松本官房長、岡澤廃棄物・リサイクル対策部長、石原水環境部長、小島官房審議官

(国土交通省)

小幡事務次官、河崎土地・水資源局長、山本官房審議官(都市・地域整備局担当、松野官房審議官(住宅局担当)

(厚生労働省)

近藤事務次官、渡辺厚生労働審議官、中村大臣官房審議官(医政局・保険局担当)、真野社会・援護局長、石本政策統括官(社会保障担当)、坂本政策統括官(労働政策担当)

(文部科学省)

小野事務次官、田中総括審議官、清水官房審議官(高等教育局担当)、加茂川官房審議官(初等中等教育局担当)、石川高等教育局私学部長


議事次第

  1. 重点検討分野における規制改革の在り方について

  2. その他


議事概要

1.重点検討分野における規制改革の在り方について

重点検討分野毎に関係省庁から資料に基づき説明が行われた後、意見交換が行われた。(○は各省からの説明、●は質問・意見、→は質問・意見に対する回答等、→●は回答に対する意見)

[石原大臣発言]

※ 人材(雇用)、医療、福祉・保育分野のヒアリング後、石原大臣より以下のとおり発言。

(1)環境

○ 廃棄物の定義・区分については今夏から検討を開始。地球温暖化問題については経済的手法を含め各種政策手法の組み合わせについて審議しているところ。

● 廃棄物の定義の見直し等についての検討は何時ごろ終わるのか、アウトプットのイメージはどのようなものなのか。立法化を念頭においているのか。

→ 来年末を目処にとりまとめたい。その後具体的措置を検討。

● リサイクルを行うに当たって必要となる廃棄物処理法の業や施設許可の基準が厳しすぎ、新規参入が阻害されているのはではないか、との指摘があるが、これに対する基本的な姿勢如何。

→ 廃棄物はリサイクル目的でも汚物、不要物であり、不法投棄した方が得という性質を内包しているため、一定の規制は必要。ただし、手続き等の簡素化は必要と考えており、廃棄物の定義、区分、拡大生産者責任の議論と合わせて検討。また、再生利用認定制度等の適切な運用を図っていきたい。

● 不法投棄に関する費用負担については、どのような方向で考えているのか。

→ 原因者負担が原則だが、原因者不明、資力なし等の対応についてどのような費用負担、責任分担がいいのか更に検討を進めていく。

● 環境税の対象、課税方法、使途、既存の環境関連の税(電源立地開発促進税、自動車所税)との関係、経済産業省や国土交通省と調整方針如何。

→ 各省、各界とこれから議論を深めていかなければならず、これから話すことが全てではないという前提だが、京都議定書の目標達成のための手段の一つとして税制が浮かび上がっており、目標は、CO2を中心とする6ガスの削減。ただし、排出削減のためのインセンティヴの税として考えると、CO2が対象となる。基本的には財源対策ではなく京都議定書目標達成のインセンティブが働くような税制になるものと考えている。各省、政府税調、党税調においても検討されておりいろいろな所で議論されることが大事。我々としては、京都議定書目標達成のためにどのような方策があるのかという観点から、この問題を考えていきたい。

● 環境税を一般財源として考えるとすると、産業にとって2重課税になるのではないか。

→ 既存税のグリーン化、炭素税という形の新税という方向もある。どちらの方向を取るかによって既存税制との調整を図る方向が変わってくるが、いずれにしろ、既存税制との調整は必要と考える。

(2)都市再生

○ 不動産取引のオープン化・活性化を進めるため、不動産市場の透明性確保を推進。都市の再生を図るべく各種制度を見直したい。

● 地価公示のために収集している取引事例の開示は困難と言うが何故なのか。

→ 地価公示に関する情報については、鑑定士が任意の協力で収集した情報であり、協力者との信頼関係の観点から、今後の協力を得るためにも公開することには問題がある。個別の取引事例を開示することについて国民の十分なコンセンサスが出来ていない。例えば税情報や宅建情報にも守秘義務が課せられている。
また、生の情報(投売り情報もある)を出すことが市場にとって有益かどうかという問題もある。むしろ、市場で求められている複合不動産取引のメルクマールとなる不動産投資インデックスに焦点を当て、それをつくるためのガイドラインを示し民間に土俵を提供するという観点で対応したいと考える。

● 都市づくりのグランドデザインが必要ではないか。経団連が言っている都市再生戦略地域を作って徹底的にやってみてはどうか。

→ 大きく土地利用の転換が必要な地域について、国民的コンセンサスを得ながら、どういう制度的枠組みを用意すれば民間の都市投資を誘導することができるかという観点から制度的枠組みを用意する必要があると認識しており、都市再生本部でも、そのような方向で取り組んでいる。

● 再開発をするにも着工までに色々な調査・手続き(文化財、アセスメント、近隣説明、都市計画審議会の各段階)が必要だが、同時並行的に進められるようにならないか。

→ 問題意識は共有している。いろんな行政価値を追求しなければならない行政機関が一定の民間プロジェクトに対応する形で、同じテーブル(プラットホーム)に集まって民間都市開発事業を進める観点から何が問題なのか議論した上でスピードをもって処理する枠組みが大事。どのような枠組みが出来るのかこれから努力して構築してまいりたい。

(3)人材(労働)

○ 解雇基準の明確化は慎重に合意形成図る。派遣は法律通り施行3年後見直す。

● 労働市場の情勢が急激に悪化しており緊急に抜本的な見直しが必要と認識。職業紹介の料金規制の大幅な緩和、有期雇用や派遣労働については対象や期間を抜本的に拡大する必要がある。年齢差別の禁止については年齢要件を採用条件に付ける場合には少なくとも雇い主に説明義務を課す程度まではルールの強化が必要ではないか。また、解雇基準についてはじっくり合意形成すべきだと考えるが、それ以外は見直しの検討時期についても前倒しで検討を行うべきと考える。

→ 派遣や職業安定法の改革について、法律の見直し自体については法律の規定にしたがって検討すべきと考えるが、その前段階の実態調査については出来るだけ早く検討に着手したいと考える。
年齢差別については今回の法改正により努力義務を明定しており、当面は法の運用、実情を見ていき、更に厳しい要件を課すかといったことは、まだこれからの施行であるので当面は法の施行を円滑に行ってまいりたい。

● これから不良債権処理で中小企業等の倒産がかなり出てくる。不当解雇が増えてくるので解雇に対する明確なルール作りを急ぐべきではないか。

→ 判例の積み上げにより4基準があるが、個別の事件について解雇権の乱用について審査しているもので法律にこれを明記することは難しい点がある。今般の法改正により個別の労使紛争について地方労働局長が対応できるようになったので今後これを活用してまいりたい。

(4)医療

○ IT化はグランドデザイン描き推進。広告のネガティブリスト化難しい。医療機関の一律な経営情報開示は困難。レセプト電算処理は医療機関の自主性に任せる。混合医療は不適当。支払基金を通さない支払いは極めて限定的には可能。競争導入は非営利の原則から難しい。理事長要件は今後、さらに見直しに向け検討。

● EBMのガイドラインなどルール作りは厚生労働省あるいは第三者的機関がやるのが当然。IT化の推進には厚生労働省が積極的に自ら行うべき。

→ 厚労省としてはEBM、電子カルテについては積極的に推進してきた。今後は行・産・医が役割分担(ルール作りは行政、ハード、ソフト開発は産業界、その導入に当たっては医療機関)をもってやるべきもの。医療分野のIT化の推進については近々基本方針を取りまとめ公表したい。診療ガイドラインについては現在医療担当者側で作りたいという話があり調整が必要となっているが、厚生労働省としては中性公正な機関でガイドラインを作る方向で調整していきたいと考えている。

● 広告規制と情報公開は別物。この分野は国民の保険料負担と税金で大部分が賄われており、その世界の情報をディスクローズするのは当然と考えるが。

→ 医療の情報開示については積極的に進めるべきと考えており、例えば、医療保険の請求書、レセプトは求めがあった場合は、診療に支障がある等の例外を除いて開示すべきとの方針を出している。日本医師会でも自主的なガイドラインを定めて積極的に取り組んでいる。広告の自由化についてはアトピー等問題が指摘された例もあるので慎重な対応が必要。広告規制の緩和については医療法の改正によりポジティブリストを大幅に拡大したところ。

● 医療機関の経営情報の開示が困難な理由は何か。

→ それぞれの医療経営の中で守るべき秘密もあると思うが、医療法人制度等についてもより合理的なものになるようこれから検討していくつもりであり、その中で検討してまいりたい。

● レセプトの電算処理については平成3年厚生省令第51号附則で「電子レセプト請求は厚生大臣の指定を受けたもの」としており、これでは普及するはずがなく省令を廃止して頂きたい。

→ レセプトの電算化が進まない理由としては、技術的に未熟な面があることと医療機関側で保険請求が厳しくなるのではないかとの消極的姿勢がある。我々としては電子請求を進めるべきと考えており、省令は廃止の方向で検討したいと考えている。

● 診療報酬体系の堅持が財政の絡みで出来なくなってきているのが現実。医療費の総額を抑制する意味から痛みを伴ってもやっていく必要があるのではないか。
混合診療については、医師が説明、その効果を説明すれば患者が選ぶという時代になっている。DRG/PPSが有力な方法として考えられており、この精緻化が必要ではないか。

→ 公的医療保険制度の持続可能性がクリアになるような改革を今年中に取りまとめ、来年の通常国会に提出したい。
また、現実問題として公的医療の範囲とそれ以外の部分との分け方のメルクマールについて合意が形成されない。また、基本的な医療は全て保険診療でカバーされ、全ての国民がそれほど大きな負担でなく医療を受けられるという主張が国民、政治にも強くて、そこについては一種の合意がある。平成9年に厚生省(当時)としても審議会に提案したが反対が強く却下されたことがある。しかし、今後高度な医療の出現が予想され、切り分けについての成案はないが、重要な課題として取り組んでいくべきと考えている。DRG/PPSの導入は重要な課題であるが、立ち遅れており時間はかかる。

● 昭和23年の通達によって支払基金を通じければならないことになっている。保険者機能の強化のため通達は廃止すべき。レセプトの電算化が行われれば簡単な話。

→ 支払基金制度は効率的な制度として動いてきており、その制度を阻害しない範囲で、保険者と医療機関の間でレセプトのやりとりをするということであれば両立するので、その方向で検討させて頂きたい。

● 医療法上の「営利」の定義は何か。この規定が手がかりとなって株式会社が参入できない。

→ 医療上の必要性と利潤追求の間で引き裂かれた状況に医師をおかないというのが基本の発想。株式会社の病院は世界でも例外的。多いと言われている米国でも15%程度。株式会社病院を入れることが医療改革に繋がるとは思ってないし、正しい方向とは思っていない。現在の規制改革推進3か年計画でも議論、公開討論を経た上で最終的に落とされたという経過があることを申しあげたい。

→● 「ギルド的な世界に異業種を入れて切磋琢磨しなさい。その手法として株式会社が入って何が悪いのか」ということを言っている。積極的に悪い理由を説明していただかないと納得出来ない。

(5)福祉・保育等

○ ケアハウスは民間参入検討中。民間への補助は憲法89条との関係から難しい。保育バウチャー制度は悪質業者の存在から慎重に検討要す。幼稚園と保育所は機能異なるが両施設の連携強化進めている。

● 私が言いたいのは、介護報酬については類型が経営主体毎に決められているのが問題ということ。

→ 介護報酬の仕組みとしては施設の類型が違うということであって、経営主体による差を考えているわけではない。見方の相違。

→● サービスは受ける側の基準でみるべき。受ける人が同じであれば同じ報酬であるべきではないか。

● 現行の保育制度は限られた人達(認可保育所)だけに最高のサービスを提供。それ以外の人(待機児童や無認可保育所)は無視という極めて酷い状況。効率的とはとても言えないと思うが認識如何。
また、待機児童とは、認可保育所への待機児童3万人のみのことか、認可外保育所に通っている23万人は入っているのか。認可外保育所に何の規制もないという保育の状況を改善すべきと考えるが如何。

→ 高水準のサービスは保証されている。170万人(認可保育所)に措置。22万人(無認可保育所)についても出来るだけ公的なシステムに乗せていく形でやっていきたい。3年間で15万人の供給量を増やしていく努力をしていく。福祉分野でも営利法人の参入について昨年3月に踏み切った。無認可保育所についても視野に入れ、待機児童の解消もそういう方法も視野に入れてやりたい。

● 高齢化社会の中、サービスの量、質ともに拡大が求められている中、非効率的な社会福祉法人で消費者のニーズに答えられるのか。能力のある民間法人を導入すべき。憲法89条との関係については、憲法学者の間でも、「介護、保育は慈善博愛事業ではなく、公共サービスであり憲法89条とは関係ない。」という意見もある。きちっと法律で定義し関係を明確化すべき。

→ 保育、介護分野は公共団体と社会福祉法人だけでは供給できない分野。保育については営利法人の参入の方向を示した。介護についてもPFIで民間企業参入を可能にする方向で考えていきたい。社会福祉法人についても出来るだけ要件を緩和し民間としての良さを発揮できるようにしたと考えている。

● 出来るところをクリアにしてこの会議の目玉とすることを要望したい。

● ライセンス制等により認可外が無くなるのがよいと思うがその場合の弊害はあるのか。保育園、幼稚園の共同運営、一体化に対する問題点があれば教えてほしい。幼稚園は4時間で保育園は幼教一体論で8時間とあるが幼教一体論とは何か。

→ 認可保育所がまさにライセンス。出来るだけそういうことが可能となるような条件整備をしたい。
幼保の一体化については、これまでも幼稚園教諭や保育士の共同研修など各種の努力をしてきた。保育園の8時間は働く母親の需要に対応するというところから出たもの。

(6)教育

○ 国立大学の大胆な再編統合、民間経営手法の導入。大学に第三者評価導入による競争原理導入の推進。

● 博士課程学生の処遇が低い。大学の研究活性化のため博士課程学生の処遇改善の具体的施策を示してほしい。

→ 科学研究費の中で研究機関での雇用が出来るように制度改善を行った。科学研究費等を拡充していく中で研究者、博士課程学生の雇用についてもきちんとやっていきたい。

● 日本の初等、中等教育は多様性がなく画一性が強い。地域の第三者機関によって運営するコミュニティスクールへの要望が強い。中央教育審議会で議論中とのことだが具体的にはいつまでどのようにやってもらえるのか。

→ 今年度中に小中学校の設置基準を策定し独自性のある小中学校が設置できるようにしたい。ただし、コミュニティースクールについては、就学途中で学校が無くなってしまうことも起き得るわけで、教育委員会が責任をもって税金投入の是非を判断すべき。」ただし、設置基準の中で大幅に改革的なことができる学校にするということは可能であり、その具体的な道を探っていきたい。

● 工場等制限法や財産要件、生徒あたりの土地面積等の要件が、都心での設置、産学共同、社会人教育等を進めていく上でマイナスになっており、これを緩める方向で検討して頂きたい。

→ 工場制限法は国土交通省。運用面で産学連携のための学部学科については設置認可で積極的に対応してきており、一方的に窓口を閉めるという施策ばかりとっているわけではない。

● 私学の小学校で学んでいる生徒は1%しかおらず世界的に見ても異常と思う。都心では私学は定員オーバーしているが公立は定員の半分という状況であることにについて疑問に思うが見解如何。

→ 設置基準がないから私立が少ないという指摘が各方面からある。そうではないと思うが設置基準は必要と考えるので早急に制定する。決して公立を守るためにやっているわけではなく設置基準についてはどんどん私学ができるような形で作りたいと考えている。

● 奨学金はすべて有利子化し代わりに大幅に対象拡大して、私学助成を少なくしていく原資にするという考えはあるか。

→ 近年、有利子奨学金を大幅に拡大してきている。但し、成績優秀者で経済的に苦しい人もいるので無利子も必要。私学助成についても私学の研究教育条件を整えることも重要であり、学生に対する支援とともに機関補助も有意義。

● 公立小学校の人事権を校長に委譲してはどうか。

→ 指導力不足の教員には他の事務に移ってもらうための法改正をした。また、校長の意見が県教委に届くシステムを作り校長の意見が十分勘案できるようにしたい。但し、最終的に校長の判断だけで採用を決めるのは難しい面があり県全体で人事をして山中の学校への教師を派遣できる制度となっている現制度の良い面は生かしていく必要がある。

● 英語教育、特に耳から入れる教育を積極的に進めるべきではないか。

→ 国際的に通じる人材教育に力を入れていきたい。

● 海外からの留学生が増えない。ODA資金等を使って日本語教育をしてから日本に留学するといった仕組みは作れないか。

→ 留学生が頭打ちとなっている理由としては、我が国への留学生は東南アジア諸国の方が多く、生活水準、学位取得、住居等の様々な問題がある。日本語教育については国際交流基金との関係もあるが、日本語統一試験も海外でやるような形を考えている。

2.今後のスケジュール

次回(17日)は中間とりまとめの素案審議。

以上

(文責 総合規制改革会議事務室


内閣府 総合規制改革会議