平成14年度 第6回総合規制改革会議 議事概要

1. 日時

平成14年7月23日(火)15:00〜16:00

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議室

3. 出席者
(委員)

宮内義彦議長、生田正治、奥谷禮子、河野栄子、佐々木かをり、鈴木良男、清家篤、高原慶一朗、八田達夫、森稔、八代尚宏、米澤明憲の各委員

(政府)

石原規制改革担当大臣、熊代内閣府副大臣

(事務局)

[内閣府]坂政策統括官、岡本審議官、竹内審議官、磯部審議官、宮川事務室長、長屋事務室次長


議事次第

  1. 中間とりまとめ案文審議決定

  2. 議長談話について

  3. その他


議事概要

(1)中間とりまとめ案文審議決定

中間とりまとめの副題について

議長より、「委員からの提案により中間とりまとめについて副題を付すことととし、副題を『経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革』としたい。」との提案がなされ、満場一致で決定された。

「はじめに」について

議長より、「前回会議の議論を踏まえて、各章ごとの要約を入れた議長案を各委員に送り、意見をお聞きした。本日の案については修正意見を取り入れ、各主査とのすり合わせを行ったものである。」との説明があった。その後事務局より内容の詳細について報告がなされた後、満場一致で決定された。

次に、各章の内容について、各担当主査より、前回会議以降の折衝経緯と主な修正個所の説明がなされた。

第1章「新しい事業の創出」について

主査が欠席のため、事務局より説明。

○ 主査より「第1章「新しい事業の創出」については、関係各省と時間をかけた折衝を行い、全ての部分について合意を得ることができた。今後はここで指摘した規制改革が着実に進展することを期待する。」とのコメントが寄せられた。
前回の会議での報告と変った点については、P8のフランチャイズの環境整備のところで、当初は法的な措置も記述してあったが、各省との調整の過程で、「契約締結時の情報開示」と具体的に記述した。
P9の政府調達のところは、ペンディングとなっていたが各省と合意できた。入札参加資格の見直しについては、平成14年度以降継続的に検討となり、新規事業の技術力を持っている企業についても、入札参加資格を得ることができるような措置を徹底して考えるべきとなった。公共事業契約の入札資格の見直しについては、「入札に参加する者の事業所の所在地」等に関する必要な資格を定める地域要件についても見直しを図るべきとなった。官公需法の在り方の検討、分離分割発注の推進についても見直しを検討すべきであるとなった。日本経団連からの要望事項についても、各省からの回答があり、P5の有価証券届出書の効力発生期間の短縮、P8の証券取引法上の強制公開買付規制(3分の1ルール)の見直しについても、合意ができた。加えて個人保証の見直し(差押財産の範囲拡大等)についても法務省が積極的に見直しを行い、次期通常国会に法案上程を検討している。P7の新事業創出促進法の改正(商法の特例)であるが、最低資本金について創業5年以内であれば資本金は1円でも良いと見直しが行われることになった。

第2章「民間参入・移管拡大による官製市場の見直し」について

○ 題が「官製市場の活性化」となっていたが、これは官製市場を見直すことで経済を活性化するという意味であったが、端的に「見直し」と修正した。
官製市場のWGでは、4分野への株式会社参入容認と事務事業の民間移管を視点にした。参加主体をしぼることによる事前規制から、多くの主体参入による官製市場の活性化が中心となる。株式会社参入については、医療・福祉・教育・農業の各分野はかなり違う条件下にあり、横串的に一気に廃止という結論というわけに行かず、こちら側の意見に各省の反対意見というものが付加されている。
民間移管の問題では、民間が行えることは官が立ち入らないという原則を立てて、民間移行の方法は民営化・包括委託・個別委託というものがあると示し、さらにこのような原則に当てはめて65の事務事業を例示して、検証と積極的実施を求めてきた。同時に65の事業の中で上下水道、公営ガスを移管する代表として特別に取り上げた。民間移行にあたって障害となる、公の施設は公の主体によるという地方自治法とか、行政財産に私権を設定することを禁じた会計法の規定とか、運営主体が変化したときに補助金を返済を求めるとか、地方債の繰上げ償還を求める規定の見直し、PFIにおける競争入札運営の見直しとか、特に補助金・税制における同一市場における官民の競争条件の均一化とか、教育・福祉における憲法89条の問題を、それぞれ民間移管の弊害の除去という視点から取り上げた。最後に機関補助から利用者補助への切り替えによって競争導入をということを取り上げた。結論的には、民間移管のところは、バウチャーのところを除いて、基本的に合意している。あえて65の事業を提起したが、始めはすべて反対があったが、あくまで例示であり、これから各省において検証して実施してもらうものであるから、その点を修正して合意に至った。反対の内容は、それぞれの事務事業が公権力の行使であるから、民間には一部分でも渡せないというものがほとんどであった。また委託できる事務事業は、真摯に検証して、できる事柄に対して深堀していくことを求めている。現在各省より意見が出ているものは、今でも運用で委託することができるものであるというものが中心となっている。運用でできるというものは、裁量行政を認めることになるので、運用であるなら法の規制を直すべきであるというのが、我々のスタンスである。厚生労働省の特別養護老人ホームで、あくまで慈善博愛の事業であると主張している。最後にバウチャーに関しては、全面的に反対を受けており、その反対意見を付記している。バウチャーについては、研究して考えていかなければならないと思う。

第3章「活性化に資するビジネス・生活インフラ整備」について

○ 公益事業については、P29(1)市場参入の促進及び競争ルールの整備については、3カ年計画を基本的に踏襲している。前回の会議での報告と大きく変わったところでは、P32の5)卸市場の整備のところを横串で言ったこと、またP32の6)インフラ整備の促進である。ここで例に挙げているのは熱導管であるが、小規模な場合には事業法の適用を受けないが、その場合でも公共財的な性格が法令上位置付けられれば、義務占用に準じた道路占用を認めることに合意できたことである。 次にP35の(3)競争監視体制の構築とのところであるが、電力やガスでも専門的機関を速やかに整備すべきであると合意できたことが大きい。その際に前回の会議で公正取引委員会の制度的な位置付けがおかしいとの指摘があったので、4)公正取引委員会の機能強化で触れている。また証券等の監視でも制度上中立をきちんとするべきであるとの指摘もあったが、(3)有効な競争監視体制の構築で触れている。
なお、IT関係では「1.公益事業関係」の最初の説明書きが、前回と違う。
司法サービスに関しては、弁護士法に関するところ以外は、各所管官庁と基本的なベクトルは同じであるが、こちらの提案が時期早尚であるとか、踏み込み過ぎているとの指摘が多かった。2)の予備試験のところについては、最後まで意見の一致は見なかった。P38の(3)専門分野に通じた法律家の養成のところは、法曹人口の拡大にあたっては、あらゆる分野の実務経験のある者が、教育に当たるべきであると考えており、提案し、各省の賛成は得た。P39の(6)弁護士法72条見直しについては、我々は、弁護士に認められる業務独占の範囲を必要最小限にする、会社から権限を付与された社員が、当該会社の訴訟代理人となれるようにすることなどの主張をしたが、所管省庁は、いずれも非専門家が入るのは望ましくないとの意見で、司法サービスの拡大という我々の主張と全く相容れないところである。 都心高度化については、建築基準法、消防法、航空法とかの重畳的規制が不必要に厳しいものになっているのが好ましくないというのが観点である。前回の会議と大きく違う点は、P42の3)の加圧防排煙の規定で、防火に関することであるが、現在の排煙設備よりも優れている場合が多いにもかかわらず、その設備を導入するのに大臣認定までとらなければならない。それをもう少し自動的にして欲しいとの主張。P42の(2)立体道路のところは、その地区の住民が賛成した場合には、一般の道路の上に建物を建てたいとの主張であるが、所管省庁はその必要性を認めつつも、合意には至らなかった。航空法は、高さ制限・航空障害灯について、合理化に向けて検討することになった。

第4章「事後チェックルールの整備」について

○ 情報の公開、第三者評価、苦情紛争処理システムの整備ということで、各省と折衝してきた。前回の会議までに基本的な合意は得ていた。大きく違う点は、前回大臣から指摘のあった会計基準について、企業の会計についても引続き検討するということを加えており、金融庁とも合意済である。今回のとりまとめは、基本的にはものの考え方を示したことで、具体的な内容については、今まで検討するということになっていたものについて、少しでも前に進めるかたちで記述した。
残っている大きな課題としては、事前規制から、事後監視、事後チェックへということをもっとはっきりとメッセージとして示すためには、例えば行政資源を事前規制分野から事後チェック分野に重く配置することなど踏み込んだ議論が必要である。具体的には、金融の規制が緩和されるのであれば、金融監督官を増やさなければならないし、雇用等の規制が緩和されるのであれば、労働基準監督官はもっとたくさん要ることになる。或いは医療等についての評価、医薬品、食料品の検査等について、行政資源を重く配置するといったような、事前規制を緩和する代わりに事後チェックを重視することを行政資源の再配分といったかたちで示さないと、事前規制から事後チェックへという動きが説得的できないし、人々に理解されないと思う。

第5章「規制改革特区の実現に向けて」について

○ P56(1)基本理念、(2)実現に向けた基本方針というところは、全く変っていない。あくまで規制改革特区は、全国一律の規制改革を促進するためのものであって、決して代替するものではない。できる限り幅広い範囲の規制改革を特区で実現したい。ポイントととして、P57の「特例措置を請ずることが可能な規制を、あらかじめ法律上、一定の基準を満たす範囲内で可能な限り幅広に列挙しておき、この中から地方公共団体が選択・申請し、国が認定する通則法形式」を基本とすべきであるということを強調している。
今後の問題として、P61の3.(2)推進母体の構成というのがある。既に7月初めに内閣官房に特区推進室というものができたが、「企業経営や具体的事業に通じた民間や地方公共団体の人材を、積極的に活用することを検討すべきである」というように提案している。この問題については、官房長官の記者会見でも、これに沿った方向で実現するように動かれている。各自治体から挙がってきたものをそのまま受け取ると、必ずしも最適な規制改革の提案でない場合がある。そのような場合に地方公共団体のアイデアをリファインして、より具体的な法律改正に結びつけるようなかたちで、民間のビジネスの経験を持っている方の知恵を活用することが特区の内容の質を高めるために必要である。特に(3)の推進母体と総合規制改革会議の関係については、推進母体が行う関係各省との折衝・調整等に対して最大限の協力を行うことなど、必要に応じて意見を述べることを明記している。
具体例としては、P62からP67まで規制改革特区の構想例としてできる限り挙げているが、これはあくまで地方公共団体等の提案を例示したものに過ぎず、これをそのまま法制化するわけではない。必要に応じて追加が可能である。

引き続き、全体を通じての質疑応答が行われた。概要は以下のとおり。

○ 「経済財政諮問会議の構造改革特区と総合規制改革会議の規制改革特区に違いがあるのか、意見の対立があるのか」と数社の新聞記者から質問を受けた。「基本的な意見は一致している。財政措置の在り方について、若干の意見の違いはあるが、それは事実上解決している」と答えている。経済財政諮問会議と総合規制改革会議の意見調整を密にすることが必要である。例えば今後宮内議長が規制改革の問題を経済財政諮問会議が取りあげるときは参加する等が重要ではないか。

○ 先程中間とりまとめ案を総理にご説明した際に、経済財政諮問会議との連携をよくとって進めていきたいと申し上げたが、総理から実際にそうやって欲しいと言われた。そのような考え方はある。

○ 経済財政諮問会議と総合規制改革会議が別々に動いているように一般の方から言われる。経済財政諮問会議の委員もこちらに来るなどの交流のかたちを見せて欲しい。IT戦略会議も聖域みたいになってしまって、総合規制改革会議がIT戦略本部にものを言えないかたちになっているのはおかしい。これから、通信、放送、NHK問題、NTT問題とかいろいろ出てくるわけで、総合規制改革会議が積極的に取り組んでいけるように、強く意見を言って欲しい。

○ 私もIT戦略会議のメンバーであり、総合規制改革会議を代表して出ているが、そういう意見は毎回言っている。担当の省庁があるわけで、委員の賛同を得られるまでには至っていない。

その後、議長より中間とりまとめについて決定を委員に諮り、満場一致で決定された。

(2)議長談話について

議長より、「中間とりまとめの公表にあたって、議長談話というかたちで、全体について当会議のコメントを発表したい。」との提案があり、事務局にて案文を説明した後に委員に諮り、満場一致で決定した。

(3)その他

議長より、会議の前に石原大臣とともに中間とりまとめについて概略を小泉総理への説明したとの報告があった。また、小泉総理から、経済財政諮問会議との連携の点、中間とりまとめについて「刺激があっていい内容だ。特区については一つでも実現し、見本ができるといい。できるところからでも早くスタートさせて欲しい。重要なのは、地方が自分たちでやりたいという意志を持つことだ。」とのコメントがあったことが披露された。

また、石原大臣から、経済財政諮問会議との連携について、「私から担当大臣と担当事務局に強く申し入れしておく。」とのコメントがあった。

以上

(文責 総合規制改革会議事務室


内閣府 総合規制改革会議