平成14年度 第12回総合規制改革会議 議事概要

1. 日時

平成14年12月5日(木)15:30〜17:00

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室

3. 出席者
(委員)

宮内義彦議長、鈴木良男議長代理、奥谷禮子、佐々木かをり、高原慶一朗、八田達夫、村山利栄、安居祥策、八代尚宏、米澤明憲の各委員

(政府)

大村大臣政務官

(事務局)

坂政策統括官、岡本審議官、福井審議官、竹内審議官、田中参事官、千代参事官、宮川事務室長、白川企画官、下山企画官


議事次第

  1. 案文審議

  2. その他


議事概要

 議事に先立ち議長から、11月22日の経済財政諮問会議に石原大臣とともに出席し、総合規制改革会議で議論している重点事項について、別添資料に沿って説明したことを報告。主として、医療、都市再生、官製市場、競争政策の4分野について報告。
ここで行われた議論の内容は、別途配布している資料「4.今後の規制改革の推進に当たって―経済財政諮問会議との更なる連携強化―」に反映。

(1)案文審議(各分野の案文の報告)

 主査毎に担当WGについて各主査から現況報告を行った(新しい事業の創出、競争政策、法務、金融、事後チェックルール整備、雇用・労働WGは事務局から報告)。その後、質疑応答を行った。

○鈴木主査説明<官製市場見直し、医療、エネルギー、運輸WGの案文審議状況>

<官製市場見直し>

・ 問題意識は文案上のリファインの必要があるということでP扱い。

・ 独立行政法人について、各省は、同制度がスタートした直後であるため見直しは困難という論理で反対。これに対して当方は、そもそも独立行政法人はこれに止まるつもりで発足させた制度ではなく、廃止、民営化等の次のステップがないと特殊法人の二の舞となる危惧を持っており、それゆえに見直しを要求。各省の反対は強固であったが、今朝漸く合意し、本項目を議論の土俵に上げることができた。

・ その他、「公の施設」の管理等について検討。また、駐車違反対応業務は今後、世の中に大きな変化を起こす話と期待。

・ 株式会社の参入については、その方向感を示した「中間取りまとめ」を再掲。その上で、当会議の提言と各省意見との隔たりは大きいものの、来年度においても規制改革における最重要課題の一つとして本課題に取り組むという思いを述べた。

<医療>

・ 株式会社問題については、昨年の答申を越えることはできなかったが、問題意識で思いを述べる予定。

・ 混合診療、包括払い・定額払い制度については、昨年の答申をさらに進める形で書くことができた。

<エネルギー、運輸>

・ 基本的には前回説明した通り。

○高原主査説明<事業活動円滑化WGの案文審議状況>

・ 当WGの主要テーマは、燃料電池、コンテンツ、「民間事業活動を阻害する規制」の3つ。

・ 燃料電池は、燃料電池自動車、水素インフラ、家庭用燃料電池の3つの観点から項目を取り上げた。

・ コンテンツは、市場でより自由で公正な競争が行われるための環境整備と資金調達の多様化の観点から項目を取り上げた。

・ 「民間事業活動を阻害する規制」は、詳細は別表にまとめた。全部で77項目、このうち行政手続きの簡素化が51項目、法令解釈の明確化が5項目、基準認証・危険物・保安・資格制度の見直しが21項目となっている。

○八田主査説明<環境、住宅・土地、公共工事WGの案文審議状況>

<環境>

・ 前回から新たに加わったのは、リサイクル市場の形成促進、廃棄物の適正処理対策の推進。具体的には、環境大臣の指定に基づき地方公共団体ごとの廃棄物処理業の許可を不要とする広域指定制度の積極的拡充等。

<住宅・土地、公共工事>

・ すべて合意済み。

・ 都心部における混合用途地域については、容積率制限の目的を明確にし、他の手段との役割分担を進める一環として、混合用途地域を創設することで合意。

・ 市街地再開発事業については、再開発が進んでいくと残る地域は再開発に反対する人ばかりとなる。これに関して抜本的改革を検討することで合意。

・ この他、事務局の尽力で合意を得たものには、加圧防排煙システムに係る手続きの見直しがある。すなわち、安全性が確保できるエレベータについて避難時の使用を検討することを合意。

・ 一方、議論をしたが取下げとなった項目には、担保執行法制の検討がある。不良債権処理に際して、担保物件に反社会的勢力が居座り処理が進まない問題があるが、これに対して、短期賃貸借の保護、最低売却価格の一律強制、物件内覧権等の問題について改正を要求するというのが、「3か年計画」の趣旨。法務省は、短期賃貸借の保護については検討するが、他は一切やらないスタンスである、これでは、反社会的集団が存続する制度を以前にもまして悪用しかねない。これらの対策は、一体のものとして行う必要がある。

・ 最近判明したことは、法務省が、債権回収の最前線の実務家からの実態認識や意見の聴取を全く行っていなかったことである。公開される議事録で明らかなように、様々な本WGからの提案に対して、法務省は実のある答えをしてこなかった。法務省は、「3か年計画」通りの記載を行うことにも反対。各省合意が得られない以上、項目自体を取り下げるしかない。こうした状況について報告しておく。

【前半発表分野についての意見交換】(●質問・意見、→質問意見に対する回答)

●官製市場については、大変なご苦労をされたと承知しているが、官製市場という言葉は明確に定義する必要あり。案文には「公的関与の強い市場及び公共サービス分野」という簡単な定義があるが、中身を読むと政府直営事業のみが官製市場と誤解されるリスクがある。一方、経済財政諮問会議は「株式会社の参入を抑制している分野」と定義しており、両者で概念が異なる危険性がある。考え方に相違がないことを示すために、諮問会議の考え方も踏まえて明確に定義する必要あり。株式会社のところは「中間とりまとめ」からの引用となっているが、自分が自分の成果を引用するのは変な話。むしろ、全文をそのまま本文としたらどうか。ここは形式の問題であるが。住宅については、調整未済のところは問題意識に書けるのではないか。

→官製市場の定義については、命名者である八代先生に相談したい。株式会社のところは引用ではない。あくまで我々の考え方を示したもの。

●「『中間とりまとめ』の時こう考えたが、今もびくとも動いていない」ということが分かる表現振りにしたらどうか。

→その趣旨は分かった。八田先生の話だが、我々が命令権を持たない人達と議論する際、彼らが理由もなく嫌だと言っても我々にはなす術がない。勧告権等、何か対抗手段がないと進まない。今年は、こうした仕組みを本当に考えなければならないことを特に強く感じた。議長の方でご考案いただきたい。

→第2次答申の冒頭ではそういう点も含まれている。

●勧告権の付与は大切と思う。同時に、省庁側が積極的な論拠を示さず規制改革の趣旨にもとる他省庁からの提案が行われている時に、当会議はそれに反対できる。従って、担保執行法制については、今般の法務省の一方的な法案内容のままであれば、これを法案化して閣議で決定する事を認めることはできないという判断を、住宅・土地、公共工事WGの委員間で行った。他省庁と同じ土俵に立つためには、拒否権を示す必要があることを今回は特に痛感した。

●官製市場だが、特殊法人の中に漏れているものがかなりあると思う。それらを含めて官製市場ととらえるべき。

→今回はそれらを含めて取り上げた。64がすべてではないと思うが、本年はこれらを取り上げたということで、特殊法人も当然官製市場の中に含まれている。

●これから追加されてくるものもあるということか。

→そういうことだが、現在は特殊法人を扱う組織が別にあり、そこがやるということもある。

●ある程度、連携していく必要があるのではないか。

→その通りで、そのことも書いてある。

○八代主査説明<規制改革特区、福祉等、農林水産業WGの案文審議状況>

<規制改革特区>

・ 前回から進展したことは次の通り。まず、「残された課題」で今後特区としてやっていくことを宣言。各省庁からの反発はあるが、これについては各省庁の現在の考え方を別紙に付記することで現在調整中。

・ また、具体的施策では、「全国において実施する」とされた事項の深堀とあるが、これは後ろについている表のこと。大部分は調整済み。

・ 「現行制度で対応可能」とされている事項の中には、かなり問題があるものも含まれている。そこで、対応可能ということを通達等で速やかに周知徹底するべきであるということが書かれている。この考え方については合意済み。

<福祉等>

・ 問題意識では、株式会社による特別養護老人ホームへの参入について、特区における特例措置の効果や影響等の評価と同時並行的に、検討を続けていくべきであると明記。

・ 福祉分野で新たに加わった点は、特別養護老人ホーム等における利用者負担の見直し、訪問介護における身体介護業務の範囲の明確化、介護保健施設定数の調整、および米田副大臣から指摘のあったセイフティ・ネットに関して、有料老人ホームにおける一時金の保全措置に関する取組の充実を明記。

・ 保育分野については、保育所の調理室必置義務の見直しにおいて、安全性が確保される場合には、保育所の調理室の共同利用を可能とするという点で若干の前進が得られた。

<農林水産業>

・ 調整がなかなか難しく、問題意識が長文になった。「農協への規制」では、信用・共済事業の収益で経済事業など他の部門の赤字を補填しているということが農協の最大の問題であることを明記。

・ 「農業経営の株式会社化等の一層の促進」では、特区制度の推進と検証を行いつつ、同時並行的に、農業経営の株式会社等により経営形態の多様化を推進することが必要と明記。

・ 具体的施策では、大村政務官のご尽力もいただき、「農協への規制」が進展。すなわち、農協系統事業の見直しにおいて、区分経理の徹底を図るとともに、信用・共済事業のあり方、信用・共済事業を含めた分社化等の組織再編が可能となる措置を検討すべき、という点で合意ができた。

・ 独禁法に関しては、「公正な競争条件の確保」で公取の合意が取れた。また、農協に関して「多様な組合の設立が容易となるような条件整備等の措置を講ずるべき」と書いたのは、現在農家は単一農協との取引しかできないが、これを欧米のように複数の農協と取引できるようにすることで、農協間のサービス競争を図るという趣旨。

○米澤主査説明<教育・研究WGの案文審議状況>

・ 現在なお折衝中なのは次の3点。

・ 第一は、教育分野における株式会社の参入。現時点では着地点の予想すらつかない状態。一両日中に決着させたい。

・ 第二は、国立大学教員の企業での兼業の促進。細かい字句調整が残っている。

・ 第三は、国立大学教員等の勤務時間内兼業に係る基準等の明確化。大学教員に係る労働基準法上の勤務時間規制に関しては、雇用・労働WGと調整し、文章を転載する予定。

○事務局説明<新しい事業の創出、競争政策、法務、金融、事後チェックルール整備、雇用・労働WGの案文審議状況>

<新しい事業の創出>

・ 「中間とりまとめ」の内容は文言にいたるまですでに合意済み。いくつかの項目については、秋以降、各縦割りWGで深掘りを実施し、その成果を集約。

<競争政策>

・ 平成16年通常国会に独禁法改正を予定していることから、平成15年度中に独禁法のエンフォースメントの見直しを実施することで合意。

・ 公取委における審査機能・体制の強化については、独禁法違反事件に関する審査機能・体制の見直しと企業結合に関する審査機能・体制の見直し・強化の2つの側面から見直すことで合意。

・ 公取委以外の分野については、専門分野におけるエンフォースメントの強化ということで、証券取引分野、各事業分野(電気通信、エネルギー等)を取り上げた。主として行政処分に頼ってきたこれまでの仕組みを複線的なものにするという趣旨で見直しを提言。

・ 政府調達の直しについては、官公需法に基づく「中小企業者向け契約目標」設定に係る透明性の確保等で合意が得られた。

<法務>

・ 年間の司法試験合格者数について、平成22年頃までに3,000人程度に増員されても、これが上限を意味するものではなく、その後のあるべき法曹人口について更なる研究・検討を行うことで合意が得られた。

・ 弁護士法第72条の見直し、弁護始業に係る規制緩和(いわゆる外弁問題)、動産・債権担保法制の整備による資金調達の円滑化、等について見直しの合意を得た。

<金融>

・ 主な項目について紹介すると、「信託業法における受託財産制限の緩和」において、特許権、著作権等の知的財産権を信託業法の信託の対象となる財産権に追加することを検討し、結論を得ることで合意。

・ 「損害保険に関する契約者保護制度の見直し」は、平成15年度中に検討することで合意。

・ 「エスクロー制度」は、昨年度は他のWGでは準備不十分で取り下げとなったものを、神田主査のご尽力により、今回はこうした形で取り上げることができた。

・ 「適格機関投資家の範囲の拡大」は、「中間とりまとめ」では14年度中に検討開始で合意したが、一歩進めて、平成14年度中に検討・結論で合意できた。

<事後チェックルール整備>

・ 前回からの変更点なし。

<雇用・労働>

・ 前回ご説明した方向で、厚生労働省と折衝中。

・ 問題意識は最後までもつれたが、主査をはじめ各委員のご尽力により、事後チェック等の環境が整えば、派遣労働者に関する制限や求職者からの手数料徴収に関する制限については、原則撤廃が望ましいことについて文言を強く入れることができた。

【後半発表分野についての意見交換】

●株式会社参入について、特区での推進の検証を行った上で検討していくと言う省庁が多いが、八代先生も私もここは「先行的かつ試行的に」と言っている。福祉、農業ではこれをはっきりと書くべき。教育は、ペンディングの3点が最終的に合意できない場合は、問題意識に書くことを考えてほしい。これら3分野は書きぶりを揃えておいた方が良い。また、先ほどから「問題意識でもめている」ということを聞くが、ここは我々の思いを述べる場所で、合意を得る必要はない。そもそもの仕切りはこうではなかったか。

●仰る通り。特区で取ったばかりに全体の規制改革の進行を妨げてはならないと思っている。農業で「検証を行いつつ」としたのは、元々先方はもっときついことを言ってきた。一方、当方も一切検討しないことはないので、こうした書きぶりとしたが、基本的に我々の言い分を書いている。また、最初に議長が仰ったことには全面的に賛成。特に勧告権はここで言わないと規制改革の更なるスピードアップは出来ないと思う。

●金融でペンディングとなっている「貸出銀行による担保不動産の競落の仕組みの検討」は、銀行本体が米国のOREOのような別勘定で担保不動産を一時的に保有することを認めるもの。OREOのような制度はノンリコースローンを実施する際にも必要。金融庁は検討してもよいと言っているが、国土交通省からものすごい抵抗がある。私としては、ここは特に通していただきたいと思う。また、勧告権と拒否権は是非つけていただきたい。当会議の決定は閣議決定される訳であるが、それは「最大限尊重」というもので、そこに抜け穴があることは否めない。

●各分野について申し上げると、競争政策は、公取の話は日本の産業競争力を高めるために必要。証券分野は、ここは規制改革の場であるので監視機能の強化という切り口から入ったが、これは資本市場をどうするかという大きな問題でもある。その点、私から金融庁にも意見を言っており、引き続きフォローしたい。電気通信分野も今回はこういうことだろうが、引き続き言っていきたい。教育のコミュニティ・スクールも大変結構と思う。具体的に進めていけるようによろしくお願いしたい。農業は、農政改革の一環で私も思いがある。農政改革と農協改革はセットでやらないといけない。

●勧告権は一番大事なところ。「今後の規制改革の推進に当たって」の最初にもってくるべきではないか。

→経済財政諮問会議の4人ペーパーではこの順番で書いてあった。ここはそれを引用した。議長と相談して調整したい。

●当会議は当会議の意見を出すべき。

●ドスは最後に置いた方がドスらしくてよい。

●当会議は勧告権なしで始まった会議。途中でこうしたものをつけられることについて、どれだけ実現可能性があるかという問題はある。

(2)その他

 事務局より、「次回第13回会議は12月12日(木)14:00〜14:30に、官邸4階大会議室で開催し、答申の決定、総理への手交及び総理との懇談を行う予定である。」旨報告がなされた。

以上

(文責 総合規制改革会議事務室


内閣府 総合規制改革会議