株式会社、NPO等による学校経営の解禁について

○宮内主査 それでは、まず第1のテーマといたしまして「株式会社、NPO等による学校経営の解禁」につきまして、意見交換を行いたいと思います。
 本テーマにつきましては、お手元の資料1をごらんいただきたいと思います。資料1の1ページ目にございますように、全国レベルでは、当会議の昨年12月の第2次答申の中で、職業実務教育分野に限り、株式会社参入等の在り方を15年度末までに結論づける旨の決定をいたしております。
 他方、特区におきましては、今年に入ってからの第2次提案を受けまして、更に大きな前進を見ました。具体的には今年の秋から施行される予定の改正特区法案に、株式会社や不登校児童生徒に教育を行うNPOが学校を設置する際には、ほぼ全面的に参入が認められる旨が織り込まれることになりました。
 こうした中で、私どもといたしましては、本テーマにつきまして、残された課題は大きく2つではなかろうかと考えております。
 1つ目は、ただいまの資料の3ページ目をごらんいただきますとありますように、地方公共団体等が自ら設置した公立学校について、株式会社、NPO等に包括的な管理委託を行うという、いわゆる公設民営方式の導入が未だに禁止されていることです。文部科学省は学校については、設置したものが管理運営しなければ責任放棄につながるというお考えかと存じますが、設置者と運営者との間にきちんと条件を定めた契約を締結することができれば、設置者は引き続き責任を果たし得るものと考えられます。
 2つ目の課題は、次の4ページ目にございますが、せっかく参入が可能となる株式会社等については、学校法人が通常受けているような私学助成金が受けられないという点で、未だに不平等な扱いということになっている点であります。これは学校法人以外に、国は公金を支出してはならないという、いわゆる憲法89条の問題にも関わる問題ですが、以前行われました当会議の特区ワーキング・グループでは、文部科学省として、過去に学校法人以外のものに対しましても、私学助成金を交付された実績もあると、このようなお話もうかがっております。その辺りの過去の実績、あるいは憲法論との整合性等につきまして、御意見も賜れればと思っております。
 ただ今申し上げたような課題を中心に、まず文部科学省から御意見を頂戴いたしまして、我々委員との間で意見交換をさせていただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願い申し上げます。

○玉井文部科学省総括審議官 文部科学省の総括審議官の玉井でございます。本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。関係の部長、審議官、課長も参っておりますので、議論をさせていただければと思っております。
 まず最初のテーマでございますが、株式会社やNPO法人の学校設置についてということでございます。私どもは1枚の紙を御用意いたしましたので、それに沿って御説明をし、また意見交換をさせていただければと思っております。
 私どもの御用意いたしました1枚のペーパーですが、「基本的な考え方」として資料の一番後ろに2枚お付けしております。その最初の方が株式会社等の学校設置についてでございます。
 まず「基本的な考え方」を1番に書いてございます。この点が一番この会議でも議論になってきたところでございますけれども、私どもは学校教育というのは公共性、安定性、継続性というものが非常に重要になってまいりますので、したがって、設置者についても、やはり国、地方公共団体以外は学校法人に限定されている。それは学校の持つ特性からだということを御説明申し上げてまいりました。私どもは基本的にはこういう考え方を持っているわけでございます。ここは従来からずっと御議論になられて、それは株式会社でもこういうことはあり得るのではないか、ほかでもあり得るのではないかという御議論をずっと続けせていただいたわけでございます。資料の下の方、3の方で後で御説明いたしますけれども、本会議での相当な御議論の中で、学校の公共性、安定性、継続性についての私どもの懸念ということもいろいろ申し上げたところ、それはそれとして、では、第三者評価や、あるいは情報公開、更にはセーフティーネット、こういったところを十分考え前提とするならば、いろいろ考えられるのではなかろうかという御指摘もいただいてきたところでございます。これが昨年の12月に総合規制改革会議の指摘という形になったわけでございます。
 その後、それらの議論を踏まえるとともに、特区制度、いわゆる構造改革特区というところで、今年の1月15日締め切りまでにさまざまな具体の提案がなされました。株式会社を例にとりますと、34の構想が、各地域のいろいろな発意ということで御提案があったわけでございます。
 そこで、「2.特区における対応」でございますけれども、私どもは総合規制改革会議におけるこれまでの議論を十分に踏まえるとともに、現に出てまいりました具体の構想というものを十分見させていただいたわけでございます。そこで特区制度という、言わばその地域のそれぞれの発意を生かして、そして、それぞれの試みをできるだけ生かしていこうということに私どもは十分留意をいたしまして、その結果として、1つは、地域の特性を生かした教育の実施や地域産業を担う人材の育成の必要性など、特別なニーズがある場合に株式会社ということで、その試みを特区制度の中でやっていこうと判断をしたわけでございます。
 もう一つは、不登校児童生徒や学習障害、いわゆるラーニング・ディスアビリティーと呼んでおりますけれども、更に注意欠陥/多動性障害、ADHDというお子さんたちがいます。実は普通教室の中に、今までなかなかわかりにくいところがございましたけれども、通常の読み書きの力はあるがある部分だけが必ずしも十分ではない、あるいは昔で言いますと落ち着きがないと見られた子どもたちの中には実はある種の障害がある場合があるということが近年の医学の進歩によってよくわかってまいりました。欧米ですと、この数が4%とか6%とか言われている場合がございます。我が国も実態調査を既に行いまして、かなりのパーセント値あるということが大体わかってきておりますので、通常の学校に入っていらっしゃるお子さんたちの教育というのは大変難しくて、それが現に通常の学校以外のところで行われている例もあります。そういうことも踏まえまして、不登校児童生徒やあるいは学習障害、注意欠陥/多動性障害のある児童生徒に対する教育を現に行っているNPO法人がありますので、その一定の実績を有する者に着目いたしまして、そこに設置主体としての一定の要件を課すとともに、ここの御議論でございましたが、情報公開、それから、評価、これは特区制度というのは申請する自治体、市町村なら市町村が、発意を生かしながら責任を持ってやろうという趣旨でございますので、そこにセーフティーネット、万が一の破綻が起きた場合の転学のあっせん等のことは、きちんと当該申請自治体にやっていただこうという趣旨でございますけれども、そういうことを図っていただきながら、学校設置によって、なかなか通常の学校で行い難い面についての活動を期待を申し上げたいということにしたわけでございます。
 そういう形で現在、今通常国会に、いわゆる構造改革特区法の一部改正法案という形で既に御提案を申し上げておりますので、これから御審議が国会で始まるということになるわけでございます。
 そこで、この総合規制改革会議でございますけれども、先ほども少しお触れいたしましたけれども、資料の下の方に3番ということでございますが、総合規制改革会議におきましては、この12月の1つの結論として、情報公開、あるいは第三者評価、更にはセーフティーネット、こういうものの整備等を前提として、教育の公共性、安定性、継続性の確保に留意つつ、特に大学院レベルの社会人のための職業実務教育等の分野について、その在り方を検討すべきであるという御指摘をいただいたわけであり、政府としてはこの報告を最大限尊重するというのが基本的な姿勢としてあるわけでございますし、これを規制改革の3か年計画の中に盛り込んでいくという形になるわけでございます。
 そこでこの在り方を検討するということでございますので、私どもとしては教育の基本的な考え方、あるいは在り方を議論する場というのは、中央教育審議会がございますので、この3月まで教育基本法の見直しというものをメインテーマとして動いてまいりましたけれども、この3月20日に答申を行っておりますので、この中教審において、これらの関係につきまして、十分議論をさせていただきたいと思っているわけでございます。
 先ほど申したとおり、特区法がいよいよ国会で御審議になるわけでございますから、その審議の状況とか、これが成立いたしますと、具体の申請というのが出てまいりますので、その申請の状況など、あるいは現に動き出した場合の動き出す状況を十分見させていただいて、検討させていただきたいと考えているわけでございます。
 ここで先ほど宮内主査からの御指摘で、後ほどの中でそれぞれ担当の方から御説明を申し上げたいと思っておりますけれども、残された課題、いわゆる公設民営ということでございますけれども、私どもは既に公設民営ということに私どもなりの方法としては、地方公共団体が施設等を用意し、それを学校法人が経営するという形の、私どもから見た公設民営というものを近年進めてきているわけでございまして、そのために2つの措置を講じました。
 1つは、近年公立学校が非常に少子化のために廃校になったり、教室自体が空いてくるわけでございますから、それを積極的に活用しようということで、その場合には補助金で建てられている学校なものですから、補助金の返還という問題も実もあるわけでございますけれども、既にその点は措置を講じまして、学校法人が全面的に無償で借用する場合には、補助金の返還も要らないし、さらに承認よりも報告で済ますという形で補助金問題も実はクリアーをさせていただきました。
 なかなか私立の小中学校がつくりにくいというのは、今申し上げた最初のイニシャル・コストの問題が結構大きいのが1つございますけれども、今申し上げたようなところによって緩和できると同時に、私立の小中学校をつくる場合基準がなかなか厳しいという実状が県によってございます。厳しいところでは、公立学校に準じたものを求める審査基準を持っているところもございます。そうすると、私立の小中学校もかなりの規模のものを用意しなければならないとなると、なかなかつくりにくい。小回りのきくような私立の小中学校は作りにくいということもございました。これはこの総合規制改革会議の御指摘も受けまして、小学校、中学校、それぞれについても最低基準として設置基準というのを昨年の春につくらせていただいて、今、それが現に適用になっております。その設置基準自体は非常に最小限のものにしておりまして、各地域の実情に応じて、更に弾力的に扱えるような基準にしているわけでございます。それにのっとって現在、各都道府県における認可のシステム、審査基準についても見直すように指導しておりまして、できるだけつくりやすいようにというふうにしております。そういう観点、私どもは公設民営を進めてまいたりたいと思っております。
 ただ、公立学校そのものを民間に委託するという形になりますと、これは学校の基本的な運営を誰がどう責任を負うのかという問題がございます。併せて御案内のとおり、特に義務教育につきましては、国、都道府県、市町村それぞれが責任を負って、同時に協力しあうシステムにしておりまして、具体的に申し上げますと、例えば、教員の人件費については国が2分の1を負担し、都道府県が2分の1を負担する、市町村は負担していないという特別なシステムにしているわけでございます。
 そういったこともありますので、そこは慎重な考え方にならざるを得ない、難しいのではないかと思っているわけでございます。
 先ほど申したような形での公設民営は是非私どもとして、多様な教育形態は必要と思って進めたいと思っております。
 それから、私学助成関係でございますけれども、これは私どもは構造改革特区におきましては、従来型の助成、財政措置はしないという前提でございますので、私どもとしては、この特区において行うのはそもそもいかがかと思っております。
 それから、主査が先ほどお触れになりました憲法との関係でございますけれども、確かにここでの議論、こういう解釈もできるのではないかといった議論がなされていますけれども、政府側の解釈というのは、89条というのは公の支配に属するか、しないかという目で教育を見てきているわけでございまして、そういう目で見た場合に学校教育法、私立学校法、私立学校振興助成法という法体系の中で仕組みということをきちんとしている中で、初めて憲法89条をクリアーしていると考えているわけでございまして、株式会社等に果たしてそういう議論ができるのか、難しいのではないかと思っております。
 確かに学校教育法では、幼稚園ですと学校教育法102 条の中に「当分の間」という形で学校法人以外の場合も認めているわけでございます。これはまだまだ幼稚園なども少ない時期に、それを促進するための特例でございまして、しかもそれは5年以内に学校法人化せねばならないという法的義務を課した上での特例ですので、これについても、だからと言って、株式会社等に私学助成を出すというのは難しいのではないかと思っているわけでございます。
 この辺りは、意見交換の中でも議論をさせていただけると思っております。
 以上、全体について概括という形で御説明させていただきました。

○宮内主査 ありがとうございました。それでは、ただいまから意見交換をさせていただきますが、先ほど申し上げたとおり、このテーマにつきましては、特区ワーキンググループで既に先行的に議論が行われておりますので、そういう点も踏まえまして、特区ワーキンググループで御担当になっておられます八代、福井両委員から口火を切っていただければと思います。

○八代委員 ありがとうございました。この問題は既に特区ワーキンググループでさんざん議論したわけでありますけれども、まず、文科省が提出されました資料1について議論させていただきたいと思います。「基本的な考え方」という中で、公共性・安定性・継続性ということを繰り返し言われるわけですけれども、この中で教育サービスの質というのが3本柱に1つも入らないというのはなぜなのでしょうかということを聞きたいわけであります。
 なぜならば、教育サービスの質の評価というのは、消費者が決めるものである、消費者が望む教育を提供するのが教育サービスであると考えれば、それは消費者に判断を委ねなければいけないわけで、文科省ではないのではないか。その場合、消費者に選ばれないような事業者は淘汰されなければいけないわけで、これが普通のサービス産業の常識なわけです。
 ところが、安定性、継続性を過度に強調されますと、消費者に選ばれないような質の悪い学校も、継続性、安定性だから残さなければならないということになってくるわけで、これは教育の3本柱の考えがおかしいのではないか、消費者ニーズということをどう判断されるのかということを是非お伺いしたいと思いますし、また、質の悪い教育を行っている学校法人等の認可というのは取り消すべきではないだろうか、現に今までどのくらい取り消されたか、あるいは今度とも問題を起こすようなところは取り消されるのか、そういうことについてまずお聞きしたいと思います。
 公設民営のところでありますけれども、廃校を利用するのは構わないけれども、今やっている、生きている学校はだめだということでありますが、これは例えば厚生労働省等では、保育園や介護施設について公設民営方式を活用していますが、なぜ文科省だけがあえてこれに反対されるのか。基本的にその地域のニーズに応じて、高コストの公務員を使うのではなく、もっと民間の活力を使うことによって同じサービスが留保されるのであればやるという考え方が、なぜそんなに排除されなければいけないのかということです。補助金の問題はわかりましたが、補助金の問題さえクリアーされればいいのかということです。
 義務教育では特に大変だということですけれども、そうであれば、公立の高校とか大学を民間委託するというのは構わないのか、それについて是非お聞きしたいと思います。それから、私学助成について、構造改革特区では財政措置をしないことが原則だから特区で認められた学校には助成しないという論理は全くの誤解でありますし、そのような解釈をしているのは文科省だけであります。特区に対して旧来型の財政処置をしないというのは、特区であるからといって全国ベースではないような新たな補助金をしてはいけないということにすぎないわけで、私立学校振興助成法に基づく補助金というのは、普通の学校法人であれば全部もらっているものであり、同じ待遇を特区内で文科省が認めた学校について特区についてだけ排除するという根拠にはなりません。仮にそのようなことがなされれば、差別の問題になります。同じ学校教育法第1条の学校として認められたものに対して、これは特区の学校だから助成金を出さないという根拠がどこにあるのか。それは、教育の機会均等のルールに反するのではないか。これに対してどう考えられるのかということをお聞きしたいと思います。

○加茂川文部科学省私学部長 私学部長ですが、八代委員からお話のあった教育の質の話と私学助成についてまずお答えをいたしたいと思います。特区ワーキング・グループの際にもお話をいたしましたが、公共性、継続性、安定性と私どもが申し上げているのは、教育の質と全く関係のないところで申し上げているのではなく、教育を受けることになる児童、生徒、もしくはその責任を全うすべき親のことを考えたときには、教育の質を、または教育の水準を維持し、向上していくためには、何より学校の設置主体としての公共性、継続性、安定性が必要だと申し上げておったのでありまして、教育の質の確保、サービスの質の内容と、この3要素は一体のものでございます。あえて教育の質ということを申しませんでしたのは、この3要素を申し上げることが、すなわち教育のサービスの内容の向上につながり、質の確保につながるからにほかならないからでございます。

○八代委員 それについて異議を申し上げているので、先ほど言いました、悪いサービスの質の学校が淘汰されなければどうやって教育の質が維持できるのですかという質問に答えていただきたい。

○加茂川私学部長 順序を追ってお話ししようと思いますが、実際、私立学校も今、淘汰の時代、関係者は冬の時代とも申しますが、淘汰の時代、少子化の波を大変厳しく浴びております。御承知のように募集停止といった形で学校の設置運営ができなくなってきている学校も、短大、四大も含めて出てまいりました。経営が成り立たなくなって、学校の自主的な廃止に追い込まらざるを得ない状況が増えてきたということでございまして、まさにいいサービスを提供していない、保護者に対して教育の質、研究の質が確保できていない学校は淘汰されていく時代になっているのです。
 その意味では、株式会社と学校法人制度では分野、制度の仕組みは違いますけれども、同じように選択と厳しい結果を当事者が受けなければならない時代になってきておりますし、現状としても、そういうことが生じていきているということでございます。
 おっしゃるように、例えば学校の認可の取り消しですとか、閉鎖命令の例があるのかということをおっしゃいましたけれども、また、法令上の根拠はありますけれども、例えば閉鎖命令でありますとか、解散命令の例はございませんけれども、こういった厳しい時代になって、十分に児童生徒、保護者の要請に応えきれないような場合には、または学校法人制度の、かなり自由な自主性を尊重する制度、仕組みになっていますけれども、それを悪用して市場という言い方がいいのでしょうか、学校教育分野から撤退できないような法人に対しては、そういった強権の発動も十分視野に入れながら、きちんとした質の向上や責任ある学校運営、教育行政の全うを考えていかなければならないと思っております。
 例はありませんけれども、制度的にはそういった強権の発動も整備されておりまして、今後はそういったことも念頭に置きながら対応しなければならない厳しい時代だと学校経営者も思っておりまし、私ども教育行政を担当するものも思っておるところでございます。

○八代委員 まだお答えが不十分なので、ちょっと補足させていただいてよろしいですか。
 私が申し上げているのは、過去1回もそういうことを法律上ありながらやっていないということが、まさに文科省は教育サービスの質の確保というものを十分考慮しておられない。例えば具体例を挙げれば、文科省が定めている定員をはるかにオーバーするような学生を恒常的に入れているような大学があり、あるいはさまざまな不祥事を起こしている大学は学校法人の中にあるわけですが、それに対して一旦つくったら、継続性、安定性が至上命題だという形でこれまで保護するという護送船団方式をされてきた。そうではなくて、もっと競争を通じて学校サービスの質をよくしなければいけないのではないかというのがこちらの質問でございますので、その点についてどうやって、今まで法律上認められてにもかかわらず、一切閉鎖命令とかそういうものをしなかった、そういうものでどうやって質の担保ができると考えておられるのかということです。

○加茂川私学部長 これも特区ワーキンググループでお話をしたことですが、アプローチの違いだと思います。要するに、すぐ市場からの退場命令を出すのが消費者保護につながるのか、それとも、改善努力をして経営の向上に努める、あるいは現に学生がいるわけですから、学生に対する当面の教育サービスの継続を前提に考えながら、再建も考えていくというように助力のアプローチをもっていくか、 また、その双方を見合いながら対応するかのアプローチの違いだと思っております。学校法人の運営形態が不適切なもの、もしくは入学定員の不適切な例をおっしゃいましたけれども、決して放置してきたわけではありません。是正の指導もしてまいりましたし、実際、仕組みとしても経営助成のスキームを使いながら適正化には努めてまいったところでございまして、それについてまだまだ不十分ではないかという御指摘については、私ども真摯に受け止めて、なお必要な改善をしていきたいと思っておりますけれども、学校法人制度、または学校法人に対する指導行政も含めて、一切合財何もしてこなかったわけではないわけであります。
 ただ、実際、学校法人制度を悪用して、社会から非難を受ける学校法人の例が出たのは確かに残念なことでございますけれども、それに対しても厳しく対応してまいりましたし、今後もその基本姿勢は変わらないつもりでございます。
 それから、継続性について、何でそんなに護送船団で強調するのかと、盛んに特区ワーキンググループでもおっしゃいますが、株式会社に株主として投資するときには、失敗をすれば会社を変えればいいのです。学校の場合には、失敗したからもう一回学校に入り直しましょう、そういう方もいらっしゃるかもしれませんが、しかし、教育という特殊性は、そこで教育サービスを受けるだけではなくて、人生のある大事な時期に、学問をし、研究をし、保護者としてみれば親権を行使しなければならない時間をどう確保するかというときに、単純にやり直せばいいんだでは済まない部分が教育についてはあります。それがすべてだとは申しませんけれども、単純にやり直しがきかない部分が教育についてはあるのだということを御了解いただきたい。是非、御理解いただきたいと思うのです。そこで継続性を言っているわけでありまして、不適格者をすぐ市場から退場命令をするのではなく、とりあえずは教育を受けている者の立場を考えながら、入り口、事前規制について言いますと、継続性をまず確保した上で、それがすべて一旦でき上がったら、すべて何でも認めるのではなくて、事後規制も上手にかけながら、不祥事案に対しては厳しい指導もしながら、その保護者に対する教育の質のサービスの確保を図りたい、安定的に図りたいというのが今の学校法人制度であり、学校教育制度なのであります。是非御理解をいただきたいと思います。
 今の学校法人制度をすべて見直す必要がないと申し上げているのではありませんし、見直しもしてまいりました。基本的な姿勢はこれからもかわりませんけれども、是非御理解をいただきたいと思っております。
 それから、私学助成については誤解があるのではないかと、私が聞きそびれたのかもしれませんが、学校であれば株式会社でも同じように私学助成を受け入れるべきであるというお話であったかも思いますが、学校法人であれば私学助成制度を受けることに、もしくは学校法人制度を前提とした税制上の優遇措置を受けることに何ら異論もないわけでございますが、学校法人でないものに特別な私学助成、あるいは税制上の優遇措置を講ずることについて言いますと、今の学校法人に対する私学助成がなぜ憲法上、法制度的に許されているかということとの整合性を、憲法89条の観点からも、それから、学校法人制度、もしくは株式会社がそれぞれの法人制度が持っている本来の制度の趣旨が、私学助成を受けることによって、もしくはそれに必要な規制を受けることによって、本来の制度を損なうことにならないのか、特性を減殺することにならないのかといったことを総合的に判断する必要があると私ども思っているわけでございます。
 繰り返し申し上げますと、学校法人になっていただきたいと思っております。多くの株式会社が学校経営に参入する際には、これまでも例がございましたが学校法人を設立していただいて、学校経営に参入していただいております。そういう点についてたいへん見識ある発言を、つい最近も新聞紙上でなさった大きな会社の社長さんもいらっしゃいますけれども、私どもはそれがあるべき姿だと思っておりますから、学校法人になっていただく分には、私学助成については何ら差別をしておらないのであります。是非御理解をいただきたいと思います。

○樋口文部科学省審議官 公設民営のお尋ねがございます。廃校になった学校以外、生きている学校について云々というお話がございました。私どもの基本的な考え方、我が国の公教育というのは国公私で相成り立っているわけでございますが、国公私が多様な発展をするとによって教育が充実するだろうということで、国立はパイロット的な実験教育を中心に、公立学校教育は基礎的、共通的な教育を中心に、私学は建学の精神に基づいて個性的で特色ある教育をということで、それぞれが役割を果たしながら公教育全体の発展が図られていくと考えているわけであります。
 公立学校教育については、特に義務教育を中心にして、憲法の無償教育の要請がございますので、これは当然国民にその子女を普通教育を受けさせることの義務を課する反面で、地方公共団体に設置義務を課して地方公共団体において良質な無償教育を提供するという責務を課しているわけでございます。それに沿って我が国の財政負担制度や標準法の在り方、教職員の制度の在り方が成り立っているわけでございます。地方公共団体は責任を持って地域住民に対して無償教育を提供していく責務があるいうことで、例えば施設の管理運営の一部委託であるとか、教育の外的な、外縁的なサービスを外部委託するとか、そういった一部委託はあり得るわけでございますが、その問題については検討の余地は十分あるわけでございますが、教育本体ということになりますれば、これは基本的に設置者が責任を全うすべきものだろうと考えております。ちょうど子どもを産んだ人間が子育ては面倒見ないということではなくて、子どもを産めば子育ても自らが責任を負うというように、設置と管理運営というのは一体として考えたいと思っているわけであります。
 したがいまして、今回、設置者が多様化して、私立学校についてもNPO、株式会社等多様な参入があるわけでございますので、それぞれが自己責任においてそういった私立学校的な枠の中で御活動いただければと思うわけであります。
他方、先ほど保育所ができてなぜ公立学校でというお話もございました。保育所の事例を見させていただきますと、事実上の行為というところで管理運営を委託されている。公立学校教育は教育活動の部分だけでなく、教育活動に伴って当然学校長による単位の認定や進級認定、卒業認定等のさまざまな法的な効果を伴う処分性のある教育措置が行われたり、あるいは児童生徒についてのさまざまな非行問題があったときの懲戒の措置というものがあるわけでございます。これについては多数の教育裁判が戦後ずっと教育措置処分をめぐってあるわけでございまして、これは処分性のあるものでございます。保育所の場合には、入所措置については地方公共団体の方が留保されているようで、事実上の行為が委託をされているようでございますが、公立学校教育は御案内のように教育活動と教育措置というものが密接不可分一体のものとなっているということで、これを全体として民間委託することは、やはり保育所等と異なるのではないか、保育所のような単なるサービスと教育のサービスはそこの点において微妙に異なるのではないかと思います。
 それから実際にアメリカでチャータースクールという形で株式会社に委託をしているケースがございます。教育というのは非常に労働集約的なところです。ある意味では若干市場性の弱いところがございます。実際にアメリカで、なかなか教育事業がうまくいかなくて、株式会社が撤退したり、学校が閉鎖するというのが1割近くあります。私がちょっと調べさせていただきますと、2,874 校中のチャータースクールのうちの271 校が実は契約が取り消しになったり学校閉鎖になっているケースが1割に上っているわけです。先ほど教育の非可逆性の問題もちょっと申し上げておりますけれども、教育の一回性から見ると、そういう学校がつぶれる、十分な成果を上げ得ないということで、その影響を受けるのは子どもだということで、この管理運営委託については、十分そこら辺のことを考えながら対応してきたいと思っております。アメリカのチャータースクールも評価は定まっておりません。私どもとすれば、アメリカにおける民間委託のそういった成果、問題、課題も十分に踏まえなから、我が国における政策判断も考えていってはどうであろうかととりあえず思っております。

○玉井総括審議官 1点だけ、先ほど八代先生が教育の質の問題をおっしゃいました。我が国で、率直に言って弱かった点は評価だと思っております。したがって、大学については、自己点検、自己評価から始まって、第三者評価まで今、制度的に整うところまできました。高等学校以下というのがそういうシステムがなかったものでございますから、したがって、設置基準を定めるときに、国公私立を通じまして、高校以下につきましても、やはり自己点検・自己評価という形でまず学校評価をスタートしております。事前に学習指導要領があるから、あるいは設置基準があるからだけで、必ずしも水準が保てるわけではないわけでありまして、したがって、評価の仕組みが非常に重要になっていくということは十分認識しております。

○宮内主査 安居委員、どうぞ。

○安居委員 基本的な考え方に絡んで御質問したいのですが、現実に今、学力が低下してきている、あるいは国際的なレベルから考えても高くないといういろんな評価が出てきていると思うのです。また、一方でいろんな国際化に伴ってニーズも変わってきている。人も画一的な能力ではなくて、いろんな意味での能力を伸ばすというニーズに基本的に変わってきていると思うのです。そういうことを考えますと、従来のシステムがいいのだ、したがって安定性だ、継続性だというお話はちょっとおかしいのではないかなという感じがするのです。やはりこういうものを満たしていくためにはいろいろ選択肢を考えるということだと思うのですが、その点は基本的にはどうお考えでしょうか。

○玉井統括審議官 御承知のとおり、日本はどちらかというと追い付き追い越せ型で、しかも高度工業化社会に向けて、ある一定の平均値の高い力を身に付けようということでやってまいりました。これは別に学校に限らず社会のシステム全体がそうであったのだろうと率直に思っております。
 その中から、時代の変化の中で、なかなかそうではなくなってきていると思っております。やはり一人ひとりの個性、能力をどう伸ばしていくのか、本当に早く伸びようとする子どももいれば、むしろじっくり型の子どももいるわけでありますから、それぞれに応じた教育が必要だろうと思っております。
 そういう目で今、私どもは学校のシステム、つまり指導方法・内容も含めて変えていこうとしております。一番の典型例は新しい指導要領の理念、それからそれを裏打ちする教職員定数、それは個に応じた指導であり、習熟度に応じた教育、を明確に打ち出してまいりました。つまり、何でも同じクラスで常に同じにやっていくのではなく、基礎・基本は必ずに身に付けますけれども、それ以上に伸びる子どもたちにはより発展的な学習もあり得る、じっくり型の子どもにはじっくり型の子どもに応じた教育もあり得る。
 指導方法としては、従来は受け身の教育でございます。どちらかというと知識を受けるという教育でございますけれども、それも基礎・基本に必要でありますけれども、併せて発信型の教育と言いますか、ディベートだとか、あるいは実験・実習だとか、あるいは調査だとか、自らやってみる学習というのを今回非常に重視しております。それぞれの中に取り込んでおります。そういう観点でやっていきたいし、そういう意味で学区制についても弾力化がどんどん進んできております。つまり、それぞれに選択をしながらよりよいものを目指そうという方向には来ているわけでございます。
 ですから、そういう観点と同時に教育が持っている基本的な安定性、継続性はあるわけです。ある程度基礎的なところはどうしてもすべての子どもたちにある共通力だけは持ってもらわなければならないというところはございますが、そのバランスをどうしていくかということで、さまざまな施策を展開しているところでございます。

○宮内主査 時間の制約がございますので、的確にそのポイントを具体的にお答えいただけると大変ありがたいと思います。福井専門委員、お願いいたします。

○福井専門委員 憲法89条の問題について、前回のヒアリングでは、憲法の公の支配が十分だという要請をクリアーするためには、諸規制が必要不可欠だというお答えがありまして、それを特定して教えていただきたいという要請に対して、今回資料を出していただいていると認識しています。この資料でよく意味がわからないのは、各種の監督規定例でございますが、これは限定列挙ですか、それとも、これは一部にすぎないという意味でしょうか。

○加茂川私学部長 あくまでも例でございまして、すべてリストアップするのであれば、もっと細かな報告聴取義務とか、権限規定は幾つかございますけれども、権限としては、割と大きな規制に、内容としては重たい規制が及ぶような規制です。

○福井専門委員 それだと質問に答えていただいていないので、要するに、憲法89条を満たすために最低限必要な規制を限定列挙で教えていただきたいというのが前回の趣旨ですから、例はこれですというのはお答えになっていない。これは後で出し直していただきたいと思います。

○加茂川私学部長 整理をさせていただきますけれども、いろいろ規制というのは、これは特区ワーキング・グループのときには申し上げましたけれども、学校教育法と私学法と私学振興助成法の3法でさまざまな規制が及んでおるのですが、私どもはトータルとして憲法89条に言っている公の規制の、必要な規制をクリアーできていると思っております。

○福井専門委員 トータルというのは、どの条文かを具体的に条項を特定してトータルという概念を整理していただきたいということです。これではお答えになっていないのは間違いないので、89条をクリアーするために必要な規定を限定列挙で再度お示しいただきたいと思います。

○加茂川私学部長 いろいろ工夫をして、資料の出し方でございますから、私ども別に隠し立ているわけではありませんので、御趣旨がそういうことであれば、勿論、整理をして再提出をします。

○福井専門委員 それでお願いします。今回の資料の冒頭に、憲法89条については、当省は述べる立場にはないと書かれていますが、前回は明確に憲法解釈論を提起されておられますので、一体どちらでしょう。文科省としては憲法89条解釈にコミットされるのかされないのか、どちらのおつもりでしょうか。

○加茂川私学部長 これは特区ワーキング・グループで申し上げたのですが、憲法89条については、私ども有権的に解釈できる立場にはございませんが、私どもが教育行政の立場で行っております私学助成について申し上げますと、私学助成が憲法89条との関係で合憲である、問題はないという考え方の整理は私どもはさせていただいておりまして、できると思っております。
 それから、例えば89条については諸説あるわけでございます。私学助成についても諸説ありますし、89条全体についていろんな考えがある中で……。

○福井専門委員 やめてください。時間がもったいないので端的に、質問にだけお答えください。

○加茂川私学部長 質問に答えようとしているのです。

○福井専門委員 いや、いいです。その件はもういいですので。憲法89条について……。

○加茂川私学部長 それについては申し上げる立場にないと申し上げたのでございます。

○福井専門委員 もういいです。わかっていますから。それで質問の答えの中にある多くの憲法学者、最高裁裁判例、国会における内閣法制局答弁などが、いずれも総合規制改革会議の説を取っていないとあります。具体的に89条について2つ論点があるのですが、まず89条の目的が何かという論点と、公の支配は何かという2つ論点がありますが、それぞれの2つの論点について、どのような説があると認識されているのか、この場で手短にお答えいただきたいのですが。

○加茂川私学部長 2つ要請があるだろうと思っています。教育については、本来その実質的な要素を勘案しながら、その分野の発展が図られるべき性格を持っている。したがって、その間、公の権力が関与することなく、自主性を発揮することを前提に、もし公の財産を使用、提供するのであれば、必要な規制がなされるべきであるということが1点。
 学者によって違いますけれども、併せて言う場合と、別に触れない場合があるかと思いますが、教育分野においても教育という理念という言い方をしたでしょうか。公金公費が無駄使いされないような観点からの配慮が求められる。そういった2つの要素が89条の議論をするときに出てきた要素だったと思っております。

○福井専門委員 法制局見解はどのようなものですか。

○加茂川私学部長 法制局見解につきましては、資料でお示しをいたしましたのは、あくまでも私学助成との関係で整理させていただいておりますけれども、現在の私学助成について、これは憲法上の公の支配に属しているかということが国会で議論になりました際に、少し古くて恐縮でございますが、昭和50年代に2度ほど法制局長官の答弁があったかと思いますけれども、それは諸法律、学校教育法等の関係の法律の整備により公の支配に属しているという明確な答弁がなされておりまして、その限りで資料を提出させていただいたわけでございます。

○福井専門委員 目的の方では、過去の法制局に該当する組織の答弁で、政教分離原則、公金の濫費と2つあるのですけれども、御存じないですか。

○加茂川私学部長 政教の分離についての説があることは承知をしておりますが。

○福井専門委員 政府見解にあるということは御存じないのですが。

○加茂川私学部長 89条の公の支配に属しない教育事情云々解釈についてでしょうか。

○福井専門委員 89条の目的についてです。

○加茂川私学部長 教育の事業についてでしょうか。

○福井専門委員 そうです。

○加茂川私学部長 教育の事業について政教分離の原則を徹底するために、憲法の規定があるのだということが政府の見解として出されているということについては、承知をしておりません。

○福井専門委員 1949年に法務庁の長官回答というのがあるので、それはお調べになった方がいいと思います。重大な事実の認識の齟齬だと思います。
 関連してお聞きしますが、1979年の国会答弁について、具体的に答えている答え方を申し上げますと、「学校閉鎖命令、解散命令、特別の監督を総合すれば現行の法令体系は89条による公の支配という憲法の要請を満たしている」と言っておりますが、ここでは学校法人という具体的な法人形態について一切使われていないということを御存じないでしょうか。

○加茂川私学部長 使われていないというのは、その答弁で学校法人という文言が出てきない、言及していないということでしょう。

○福井専門委員 学校法人の形態でなければならないという法制局見解は存在しないということを認識の上でそういう御主張をしておられるのでしょうかということです。

○加茂川私学部長 必要な法律上の規制が求められるということで、現行法の学校教育法、そこでは閉鎖命令、解散命令等例示されておりますけれども、現行制度を前提に必要な規制がなされておって、それでもって公な支配がクリアーできているという解釈がそこで開陳をされていると理解をしております。

○福井専門委員 ここに具体的に書いてある命令はどうですか。

○加茂川私学部長 解散命令は学校法人に対する解散命令が前提になっておると理解をしておりますが。

○福井専門委員 それは当たり前です。今はそういう制度しかないのですから。

○加茂川私学部長 前提になっていないとおっしゃられたものですから、学校法人制度を前提に解散命令がそこで言及されているということを今答弁申し上げておるのでございます。

○福井専門委員 ここの監督規定により回答でお示しになられた認可とか閉鎖命令というのは行為規制ではないのですか。要するに、こういう主体でなければならないとか、法人の形式について規定するものについて、これは冒頭の質問とも関わるのですが、具体的な行為規制のみを書かれているわけですけれども、この具体的な行為規制というものと学校法人であるという属性とか連動しているという認識ですか。

○加茂川私学部長 それは特区ワーキング・グループのときにも申し上げましたけれども、制度設計ですから、私ども今の学校法人制度が制度のすべてだと申し上げているつもりはありませんし、憲法上の公の支配をクリアーするための制度設計というのはいろいろなふうにあり得るのだと思います。制度論ですから。法律論としてあり得るのだと思います。ただ、現行制度に関して申します限り、今の答えになるということを何度も繰り返して申し上げているのです。

○福井専門委員 そういうことをここで議論しているのではなくて、ここは立法政策を議論する場です。現在の学校法人という制度だけでいいのかどうかということを議論しているのです。それは勘違いなさらないでいただきたいと思います。学校法人以外の主体に私学助成をすることが合憲か違憲かということが当会儀の一貫した問題意識ですから、現行制度の御説明をここでなさって、あるいは合理化根拠を御説明なさっても余り意味がないわけで、現行制度をはみ出る部分が合憲か違憲かという論点ですから、そこは誤解のないようにお願いしたいと思います。

○加茂川私学部長 これも特区ワーキング・グループで……。

○福井専門委員 続きの質問ですが……。

○加茂川私学部長 意見交換なわけですから、一方的でなく、意見交換をさせていただきたいのですが。

○福井専門委員 ですから、これが意見交換です。

○加茂川私学部長 いや、私の意見をお聞きいただきたいのですが。一方的な先生の憲法解釈論で、私ども、とても、満足できないのですが、意見交換として。

○福井専門委員 どうぞ、おっしゃってください。

○加茂川私学部長 先生がおっしゃっておられるのは制度論、立法論だとおっしゃいますから、申し上げますけれども、公の支配についてどれだけの規制をかければ憲法上の要請に応えることになるのか、確かにいろんな議論の考え方もあると思います。今おっしゃっただけではないと思います。私どもが申し上げておりますのは、私学助成が前提となっている学校法人制度の下では、今の3法、関係する法律でクリアーと申し上げました。もし別の法人で考えるのであれば、私ども法政局長官の国会答弁を前提に考えますと、少なくとも今の程度の、学校法人と申し上げているのではありませんが、今の程度の解散命令権でありますとか、役員に対する退職勧告でありますとか、予算の変更命令権でありますとか、そういった強い権限、規制が及ぼさなければ、憲法上の公の支配に属さないんだと思っておりまして、仮に同じものを別の制度で求めるのであれば、それはとりも直さず学校法人制度と同じものを求めることになるのです。

○福井専門委員 その議論はその議論でいいのです。今は学校法人という主体でないとだめかどうかという論点に関して申し上げているのです。

○加茂川私学部長 性格論として重要であるということは繰り返し申し上げているところでございます。

○福井専門委員 それでは、5年以内に学校法人に転換という条件で、さまざまな学校法人以外のものを助成した例があるということですが、こちらについては都道府県に詳細を聴取することとしたということですが、実態は現時点でまだわかっていないのでしょうか。

○加茂川私学部長 この私学助成の仕方は、国が直接助成をするのではありませんで、都道府県は高等学校以下、幼稚園についても同じですが、高等学校以下について、都道府県の助成したものを前提に国が助成をいたしますので、その私学助成の根拠になる基礎資料というのは都道府県に存在するのでございます。ですから、国は持っておりませんので、もし事細かな一件一件ごとの法人名でありますとか、助成の金額が必要だということであれば、都道府県にこれから照会をしなければならないということをお伝えているのでございます。

○福井専門委員 これは照会していただけませんでしょうか。5年以内にすべてが学校法人に転換していれば合憲だという理解でいらっしゃいますね。

○加茂川私学部長 そうではなくて、前に特区ワーキング・グループで何度も繰り返し申し上げたんですが、5年のうちに法人化しなければならないという義務の履行ができたところもあれば、残念ながら若干できていないケースもございます。しかし、私学助成を受ける間、必要な法的な規制が及んでいるかについて申しますと、この102 条校、102 園についても私学振興助成法の必要な規定が適用になつておりましたので、その助成を受けることについて憲法上の問題はないだろうと繰り返し説明申し上げました。
 それを踏まえて、学校法人化の義務が履行できたかできないかということと、助成を受けることに対する憲法の合憲についてとは、また別の問題ではないかと私ども考えておるわけでございます。

○福井専門委員 ということは、5年間以内に、要するに、もともと5年以内に学校法人に転換することを条件として出した私学助成で、後で転換しなかったとしても憲法89条に照らして合憲であるという御主張ですか。

○加茂川私学部長 法解釈としてはそういうことになると思います。

○福井専門委員 わかりました。それで、先ほどの論点にもやや関連しますけれども、この法制局長官答弁は、おっしゃったような具体的な監督規定例を全部挙げて答弁しているのではないので、法制局長官の答弁の言わば射程距離の問題ですが、それを前提として、どういう公益性があれば89条上合憲なのかということについて、後ほどでも結構ですけれども、御見解なり資料をお示しいただけませんでしょうか。

○加茂川私学部長 その点は何度も申し上げておりますが、私ども憲法89条の全体について有権的に解釈ができる権限も立場にもないので、今、行っております私学助成についての関連では、それ以外の制度設計を前提にどういう制度設計であれば憲法上の要請をクリアーできるのかというのは私ども分を超えている話題なのでございます。

○福井専門委員 こういう規定をもって、これが必要十分条件だという御主張をされているわけではないということですね。これは合憲の領域の1ゾーンにすぎないという理解でよろしいですね。

○加茂川私学部長 何度も申し上げますが、制度設計、法律論としては、別の制度設計もあり得るだろうと思います。私どもの考えは、今の制度、私ども制度運用の前提から申し上げますと、同じことが最低限規制として必要になって、同じことを求めれば、それは学校法人の設立、学校法人に対する規制と同じものを求めることになって、学校法人に対する私学助成と同じこと、すなわち今の制度でいいではないかということに私どもの感覚としてはなるのでございます。

○福井専門委員 それは行為規制がどこまで政府見解、あるいは内閣法制局見解の最低条件かということにかかっています。現学校法人でやっていることすべてが必要条件だということではないので、勘違いなさらないでいただきたいと思います。
 もう一つ、憲法89条というか、憲法論について申し上げれば、憲法が合憲か違憲かというのは、基本的に立法が合憲か違憲かということを議論しているわけですから、ある立法が合憲か違憲かというときの議論は、現在の学校法人制度だけではないということは当然の前提です。しかも、この会議では今の学校法人制度枠内のものにしか私学助成をしないというのは狭過ぎるのではないかというのがもともとの一貫した議論なわけですから、現行制度以外のところについての議論が主たる論点だということは誤解のないようにしていただきたいと思います。
 それから、別の論点の方、公設民営についてですが、先ほどの八代委員からも御指摘がありましたけれども、公設民営について保育所とか特別養護老人ホームについては事実上の行為だとおっしゃいました。事実上の行為だからこっちは構わないけれども、教育は−よくわからなかったのですが−事実上の行為ではないから公設民営はだめだということでしょうか。その違いについて端的に教えていただけませんでしょうか。

○樋口審議官 私どもがお聞きしている限りでは、入所措置処分等については、地方公共団体の方に留保されているとお聞きしております。後の保育という具体のサービスについては、これは民間委託が行われているという枠組みだろうとお聞きしております。

○福井専門委員 そうすると、入学の時点で最終責任が自治体であればパラレルでそれで構わないということですか。

○樋口審議官 私どもは当然入学許可、それから就学処分、就学校の指定処分から始まって、入り口のところと、具体の教育活動に伴って、単位を認定したり、進級を認定したり、最後出口のところで卒業認定をするということで具体の中身のところで、教育サービスの提供と、処分性を伴う教育措置というものが一体になっているということで、この教育措置だけを地方公共団体に留保して、では、教育サービス、具体の教育活動だけ民間委託するということは、ちょっと保育所のサービスと違うのではないか。

○福井専門委員 入所のところを自治体が担保しているからいいとおっしゃったのではないですか。それにパラレルなら構わないのですか。

○樋口審議官 そういう構造になっているということです。ですから、私どもは処分性を伴う教育措置をやるわけでございますから、公立学校教育というものは。

○福井専門委員 処分は保育所だって養護老人ホームだって、何だって処分に近いものはあります。

○樋口審議官 それは入所措置の問題でございましょう。あとは事実上のサービスの提供にすぎないわけですから、何も保育所を卒業するときに、卒業認定があるわけではございませんし、それに対して懲戒処分が法律上決まっているわけではございませんので。

○福井専門委員 懲戒処分とか具体的な学生に対する処分のところの責任が自治体にあれば構わないのですか。

○樋口審議官 そういったことは、具体の教育活動を抜きにして、そういう教育措置というのはあり得ないわけですから、教育措置だけ公共団体に留保して、そういう教育活動を委託するということは、私どもとしては想定できない。

○福井専門委員 保育所は、入所のところは中身のところが別でよいのですか。

○樋口審議官 入所だけでございますから、入所と料金決定だとお聞きしておりますが。

○福井専門委員 教育と保育所なり老人ホームとの違いについて、勿論、定性的にも違うのですけれども、それが公設民営を許すか許さないかというほどの違いになるかどうかというところがやはりよくわかりません。

○樋口審議官 そうですか。私どもは、もともと何故公設民営か、そこら辺の理由もよくわからない。ですから、私どもは考えてみれば、自己責任でおやりになられればいいと思うのです。国公私の多様な発展があるわけでございますから、そこの中で私立学校的な教育としておやりいただく。いわゆる施設も使って、公費も丸抱えでやるということは、ある意味ではリスク回避をして、全面的に地方公共団体に負わしてやる。これは地方公共団体にとっても意味がないわけですし、また、リスク回避を行いながらやるということは、ある意味でのモラルハザードも生じかねない問題を含んでいるのではないかと思わざるを得ません。

○福井専門委員 そもそも公立学校と株式会社とか私塾の類との多分中間的なところに学校法人があるわけです。学校法人だって国庫補助の度合が大きい小さい、いろいろ段階であると思うのです。おっしゃる主張は、100 %官がやっているのは構わない、100 %民で、学校法人形態であればそれも構わない、しかし、学校法人と全面公設・公営の間に、制度的には中間的な領域があるわけですが、その中間形態になったら一切だめだと、両端だけよくて真中だけいけないという奇異な主張に聞こえるのですが。

○樋口審議官 私どもは、学校の施設の管理運営を一部委託するとか、教育措置処分に絡まない教育外延的なサービスを委託するということは考えられますし、そういったことについてどこまでが学校教育の基本的な役割を堅持しながら外部委託できるのか、そのことによって効率的、効果的な教育かできるのかということは十分検討できると思うのです。
 また、地方公共団体において、地域の活性化の観点から、人材育成の観点から、学校法人等に誘致をして、さまざまな支援を行いながら、特色ある教育をその地域において行っていただくという枠組みは、引き続き私どもとして支援することはできるだろう思っております。

○福井専門委員 それは学校に具体的なニーズ、消費者なり学校の教育サービスの提供の具体的なニーズに応じて、どの部分を民間に頼んで、どの部分を公に留保するのかというのは、文部科学省が決めるのが最適というよりは、現場の実態に近い人たちが決めるのがむしろ実態に即していると考えてはいけないのですか。

○樋口審議官 私どもとしては、我が国の公教育制度、公立学校を取り巻く公教育制度全体の制度的な枠組みがありますから、そこの中で整合性を持ちながらどういった委託が可能なのかどうかということは、これはきちんと検討しないといけないだろうと思っておるわけであります。

○福井専門委員 公立学校である限りにおいてとにかく介在が必要で、全部学校法人の私学であれば自由だということですか。

○樋口審議官 これは結局その部分だけ取り出してというわけにはいかないわけです。我が国の公立学校教育制度の枠組みの中でどういったものが可能であるのか、可能でないのか、そしてそれは当然そういったことを行えばいろいろな副作用の問題、先ほどアメリカのチャータースクールのお話も申し上げましたが、そういうことについては、制度全体との絡みをよく考えながら考えていかないといけないと思っております。

○宮内主査 それでは、他の委員の皆様方も御意見がございましたら。ちょうど時間ではございますけれども。
 それでは、第1のテーマ、今、お聞きいただきましたように、相当な意見の隔りが見られるわけでございまして、私どもの問題意識といたしましては、やはり教育を受ける立場を中心に教育というものはある、社会は非常に動いており、グローバル化が進み、人々の選択肢は増えることを求めている。現在までやってこられた日本の教育というのは、世界に誇れるものかどうかということについて、相当な疑問符が打たれてきた。そしてそれを主導されてこられたのが文部科学省である。そして、今までやったのがまずかったから、今度はうまくやりますという教育改革を国民は全部支持するのだろうかというような面も、おそらく社会は持っている。もっと国民の側に、教育を受ける受け手の方に教育の担い手、担い方、あるいは実態の主導権を持たすべきではないか。この一番基本的なところが違うような気がしてならないわけでございます。これは、議論のすれ違いということで、今日はそういう意味で相違がわかるということが一番の趣旨でございますので、第1のテーマはこの辺りにさせていただきまして、次に移らせていただきたいと思います。

○八田委員 1つだけ、先ほどの福井委員の質問で、憲法89条が禁じている項目についてリスト、公の支配に属するという意味として要求している項目をリストしていただきたいという要請がありましたので、それに関して1つだけ付言しておきたいのですが、米国で連邦政府が補助するときに、その学校が特定の宗教に属する学生だけを入れるということは禁じていますし、それから先生が特定の宗教に属するだけというのも禁じています。それから、多くの公立学校でキリスト教教育などをやるときに、そこの部分について会計分離をして、補助金が宗教教育の方に向かないようにしているということがあります。 憲法89条を英文にすると1文ですけれども、その前段では、政教分離のことをうたって、宗教団体に対する補助の禁止をうたって、後段で学校とか慈善団体に対するものについては公の支配に属するということですから、後段で完全に政教分離と言わなくても、少なくとも政教分離を要求する要件が入ってもおかしくないと思うのです。したがって、後でお出しになる条件のところで、政教分離についてどう考えてらっしゃるかということを是非入れていただきたいと思います。
 特に日本の学校では、教育がキリスト教徒だけであるというような大学にまで補助金を出していますし、それから実際に宗教教育をしている学校に対しても、きちんとした会計分離をせずに補助金を出していると思います。これは、憲法的に私の観点から見たら、大変な問題だと思うのですが、そこについて文部科学省としてどうお考えになるか、御回答のときに付け加えていただきたいと思います。

○加茂川私学部長 一言だけ端的に申し上げます。資料の中で整理させていただきますが、今の憲法の89条とは別に、今の学校教育法の制度で申しますと、学校教育の中で私立学校に限っては宗教を教科として教えることができることが法律上規定をされてございまして、具体には道徳の時間を宗教に変えることができるというのが、私立学校の場合には認められておりますので、憲法89条とは別に、学校教育制度として今はそういう制度になっていることを付言させていただきたいと思います。

○福井専門委員 今の質問の趣旨は、憲法よりも法律は下位ですから、もし法律がその宗教教育の時間を設けてもいいというふうに規定しているとしても、その部分の教科を担当する人件費だとか施設費に、89条上公金が入ってもいいのかどうかという論点ですから、やっていいかどうかと、それに補助が付くかどうかという論点は独立の問題です。

○加茂川私学部長 資料として両方整理させていただきますけれども、その89条とは別に学校教育の中身としてはそういう制度になっていることを付言させていただいたのでございます。

○福井専門委員 ですから、そういう場合に、その部分の人たちや施設にお金が入っているのかどうかという実態と、入っているとしたらそれでいいのかどうかという評価をお聞きしたいという趣旨です。

○加茂川私学部長 資料を整理いたしますが、今の私学助成は、特定の宗教教義に基づいた教育を行う学校法人についても出されておりまして、私どもそれは憲法に違反しないと思っておりますので、そういった観点も踏まえながら資料を整理いたしたいと思っております。

○鈴木副主査 公設民営の話ですが、私も去年官製市場という問題をテーマとして取り上げて、約二十ぐらい、公が持っておるというものの民間に対する包括的な委託という問題をやったのですが、今日お話を聞いておりますと、さすがに責任放棄になるという言い訳まで聞かなかったと思います。地方自治法の方でも公の施設の管理というのを、かなり大幅に民間に委託していくということも現実に行われているし、その流れの中で幾つも進んでおるということは是非知っておいていただきたいと思います。そうしますと教育はそういう箱物だとか、保育園だとかとは違うとおっしゃるけれども、私はそれはものの考え方で、今、議論しようとは思いませんけれども、しかしその学校管理者の責任の放棄だとおっしゃるけれども、その責任というのは何だといったら、きちっとした教育がやられるということの責任であって、自分の手を下してやるということが必ずしも責任の要素ではないと思うのです。
 そうすると、先ほど生んだら育てろと言われたが、育てられないような人であったとしたならば、そのときにはやむを得ないのではないか、もっと育てることのできる人に取り替えるという選択をするのが責任を全うするゆえんではないか。そういう視点をやはり持ってもらわないと、何もかも官でやれば公正であり、そして民でやると間違ういう考え方の延長を引きずっておるだけだという感じがしました。去年の幾つかの例からも考えて、御省はさすがにお考えがお古いなというふうに感想を申し上げておきます。

○宮内主査 実はいろいろ資料を請求いたしまして、お出しいただいた内容がまさに木で鼻をくくったみたいでございまして、もう少し我々と議論を深められるような資料を提出していただきたい。おわかりになっていることも、おっしゃっていただけてないのではないかというふうな疑いも持ちたくなるような形でございまして、もう少し誠実に資料提出にお答えいただきたいし、今日の幾つか申し上げました点につきましても、できるだけ早く詳細に責任ある資料をちょうだいしたいと、文部科学省に対しまして特にお願い申し上げたいと思います。

○福井専門委員 一点だけ資料で、中途になっております公設民営についても、官の関与の程度が全部ある場合と全然ない場合、民間全部の場合との中間が絶対だめだということを、もう少々具体的にわかる形で資料をいただければと思います。


内閣府 総合規制改革会議