法制審議会建物区分所有法部会第11回会議議事録

第1 日時

平成14年6月4日(火)  自 午後1時30分 至 午後4時39分

第2 場所

最高検察庁大会議室

第3 議題
第4 議事
(次のとおり)

議事

● 時間が参りましたので,第11回の建物区分所有法部会を開催したいと存じます。
本日は,皆様御多忙の中おいでいただきましてありがとうございました。
前回,3月に第10回の部会を行いましてから,いわゆる中間試案というのを公表してパブリックコメントを求めてまいったわけでございますが,それからちょあきましたが,また再開したいと存じます。そしてまた,これから少しハードスケジュールで何回か開催したいと思いますので,よろしくお願いいたします。
(委員,幹事の異動紹介省略)
では,まず初めに配布資料につきまして事務局の方から説明をいたします。

● 御説明いたします。まず,部会資料14ですが,これは審議スケジュールの案ということでございます。この中身ですけれども,一応ここに書かれているような内容,といいましても,既に中間試案を発表した上で,それを前提とする議論ということになりますので,しかも期間もかなり限定されているということですから,状況によってはいろいろと変えなければいけないかなと思いながらも,一応こういった目安で進めていったらどうかという提案でございます。
さらに申し上げますと,9月の上旬に法制審議会の総会に答申して,要綱を確定させるということを予定して作業を進めたいということを考えております。そういたしますと,その1か月前の8月上旬に部会では要綱案を決定していきたいということでございます。それからさかのぼりまして,6月,7月の2か月の間にどういうことができるかということがございまして,今回と次回につきましては,フリートーキングというわけではありませんけれども,従前の問題点の洗い出しということを分野を区切ってやる,それからパブリックコメントと意見照会の結果について御報告をさせていただいて,それを踏まえて議論を更に深めていただくということでございます。
それから,13回目,14回目で更に要綱のたたき台となるものを具体的に案として絞っていこうというようなことを考えているところでございます。
部会資料15の方ですけれども,これは先ほど申し上げました今回の議事の趣旨に従って資料を作ったものでございます。後ほど,御説明を詳細にさせていただきます。
それから,席上でお配りさせていただいた資料でございますけれども,意見照会の方は実は5月末締め切りということでございましたので,事務局の方でどういう意見分類になっているかということを今整理している最中でございます。ただ,本部会において委員として参加されている方の推薦を受けた団体,そちらから出された意見書で既に届いているものにつきまして,委員の方に御確認したところ,配った方が好ましい,配布することを希望されるということでしたので,席上配布させていただいております。これは,それぞれ意見を述べていただく際に参照にしていただければよろしいのではないかと考えております。
それからもう一つは,「建物区分所有法改正要綱中間試案」に関する意見募集の結果について」ということで,これはパブリックコメントの意見集計の結果でございます。これについても,後に事務局の方から説明させていただきたいと思います。

● 今の配布資料につきまして,よろしいでしょうか。
それでは,本日の議事に入りたいと思います。
本日は,まずこの配布されております「中間試案に関する意見募集の結果について」というのに基づきまして,パブリックコメントの結果について事務局から最初に報告していただくことになります。
それから,これも配布されております部会資料15「建替え決議の要件・手続及び団地の部分に関する問題点の整理」につきまして,後で御審議をいただくということにしたいと思います。
それでは,早速事務局から,パブリックコメントの結果等につきまして説明をしてもらうことにいたします。

● それでは,本日,配布いたしました資料に基づいて,建物区分所有法改正要綱中間試案に対する一般からの意見募集,いわゆるパブリックコメント手続の結果について御説明させていただきます。
お配りしました資料に書かれております内容に入る前に,まず今回の意見募集の概要について申し上げます。
前回,3月5日の部会において決定された中間試案は,3月15日に法務省のホームページで,意見募集の要領とともに公表され,またそれより少しおくれて3月28日に中間試案についての事務局の補足説明が公表されました。また,この中間試案及び補足説明と意見募集手続につきましては,幾つかの雑誌等でも紹介されております。
意見募集の期間は,3月15日から4月30日まで,意見提出の方法は,電子メール,郵送又はファクシミリとなっております。
なお,先ほども申しましたが,この一般からの意見募集手続とは別に,関係機関,大学の法学部等への個別の意見照会もさせていただいております。こちらは5月31日までということでお願いいたしましたところ,現在のところ約30か所から御回答をいただいております。このうち,本日御出席いただいている日本弁護士連合会,不動産協会,全国マンション管理組合連合会の御回答につきましては,本日お配りしております。全体についての取りまとめは,現在のところまだできておりませんので,全体につきましては次回の部会で改めて概要という形で御報告させていただく予定でございます。
では,席上配布いたしました資料を御覧ください。「建物区分所有法改正要綱中間試案」に対する意見募集の結果について」と題する資料でございます。
まず,第1の「意見数」でございます。期間内に寄せられた意見数は,全部で46通でございました。
次に,第2として書いてあります今回の「意見の取りまとめの方法」について御説明いたします。資料に書いてありますとおり,提出された意見は中間試案の全部の項目についての賛否を明らかにするというものではなく,一部の項目について述べるものがほとんどでございます。そして,一部の項目を特に取り上げて書いているというものは,当然ながら試案の当該箇所につきまして反対であったり,あるいは基本的には賛成であっても一部修正意見があるといったものがほとんどになります。記載のない項目につきましては,試案に対し異論がないとみなして賛成と扱うとするのも相当ではないでしょうけれども,逆に何か書いてあるもののみを取り上げて,反対意見が大部分を占めたとすることもできませんので,この資料では,試案に対する反対意見の数とその主な理由,それからその他の意見の中から主だったものを取り上げるという形にさせていただいております。
また,資料に記載した反対理由やその他の意見は,それぞれ一言に表現し,同じ趣旨のものをまとめるという形をとらせていただいておりますので,例えば複数の理由を述べる意見などにつきましては,それぞれの箇所に件数として取り上げられております。
以上,少し前置きが長くなりましたが,ここからは資料の第3として書かれております意見の中身について申し上げます。
まず,資料の「1 共用部分の変更について」でございます。
共用部分の変更の決議の要件を一部緩和するという中間試案に対し,反対意見は5件ありました。主な理由は,資料にあるとおりでございます。
なお,中間試案では,本文に書きました,共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴うものに限り,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数決によるという案のほかに,(注2)といたしまして,費用の多寡にかかわらず,普通決議で決することができるのは,一定期間の経過ごとに計画的に行われる大規模修繕に限るものとし,それ以外は従前どおり特別多数決によるとする案も示しておりますが,共用部分の変更の要件の改正に賛成するということを明らかにした意見が5件ございましたが,このうちで(注2)の案を支持するとしたものが2件でございます。
次に,資料の2番目。「管理組合及び管理者等」について申し上げます。
(1)は,中間試案の本文に掲げた案,すなわち共用部分等の維持管理に関する訴訟における管理者の当事者適格を認め,また管理組合の法人化の人数要件を撤廃することについてでございます。
これに対する反対意見は1件でございました。また,その他の意見としまして,中間試案では,規約による授権と集会決議による授権の両方を認めておりますが,規約による包括的な授権は認めるべきでなく,個別の決議による授権のみを認めるべきであるとする趣旨のものなどがございました。
次に,(2)でございます。(2)は,中間試案で後注として掲げました規約の適正の担保に関する規定を設けることについてでございます。
これについて意見を述べたもののうち,規定を設けるべきであるとするものが10件,設けるべきでないとする意見が4件ございました。設けるべきでないとする理由のうち,主なものは資料にあるとおりでございます。また,その他の意見としまして,第三者機関による審査などを取り入れるべきであるとするものなどがございます。
次に,3の「集会・決議及び規約・議事録等の電子化(IT化)」について申し上げます。
試案のこの項目について反対する意見は3件で,その理由としては,区分所有者間で不均衡が生ずるおそれがあるとするものなどがございました。また,その他の意見として,本人確認の方法やデータ改ざん防止についての必要性を述べるものなどがございました。
次に,4の「復旧」についてでございます。
まず,(1)の復旧決議に賛成しなかった区分所有者の買取請求に対する買受人の指定に関する規定を設けることについてですが,このこと自体について特に反対する意見というものはございませんでした。その他の意見としまして,買受人の指定は復旧決議の賛成者の全員一致ではなく,決議に賛成した区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数決によるべきとするもの,それから決議に賛成した区分所有者の責任について,指定買受人との連帯責任という試案本文の案ではなく,試案の(注2)として記載しましたように,検索の抗弁権に準じた主張を認めるべきであるとするものなどがございました。
次に,(2)は復旧決議に賛成しなかった区分所有者の買取請求の行使期間でございますが,これについて試案に反対とするものは1件ございました。その他の意見として,4か月の催告期間は長過ぎるとするものや,試案にあるような集会を招集した者からの催告だけでなく,指定買受人からの催告も認めるべきであるとするものなどがございました。
次に,5の「建替え決議」についてでございます。
まず,(1)の建替え決議の要件のうち,アの老朽化の場合に関する意見を述べたものについてでございます。中間試案の本文では,30年又は40年の年数要件と特別多数決とする甲案と,それに修繕積立金に関するただし書の要件も加えた乙案の二つの案を示しておりますが,この試案全般に対して反対である旨の意見を記したものが17件ございました。その理由として多く挙げられているのは,年数を要件とすることにより,その年数を経過したマンション等が一律に老朽化による建替えの対象と考えられてしまうおそれがあるから,年数は客観的な要件として適切でないというものでございます。その他の意見として,資料に記載したようなものがございます。
なお,冒頭に申し上げたとおり,中間試案の提案に単に賛成とするものにつきましては,特に数として取り上げておりませんが,この建替え決議の箇所につきましては複数の提案を行っております。そこで,どの案にどの程度の支持が集まったかを御説明する必要があるかと思われます。そこで,この点について付け加えますと,試案に示した複数の案のうち,どれに賛成するかを明確にした意見のうち,甲案の30年に賛成するものが3件,甲案の40年が1件,乙案が2件でございました。
資料の3ページになりますが,イの「損傷,一部の滅失その他の場合」に関する意見を述べたものについてでございます。
中間試案の本文では,建物の効用の維持又は回復に要する費用が,現在の建物の価額を超えることを要件とする甲案と,現在の建物と同等の建物の建築に要する費用の2分の1を超えることを要件とする乙案を示しております。
これについて,特に反対である旨の意見というのはございませんでした。
中間試案の複数の提案のいずれに賛成するかを明らかにした意見としては,乙案に賛成するとしたものが13件ございます。
次に,資料ではウとしておりますが,老朽化と損傷等という,試案で示した二つの場合分けによらず,建替え決議の要件全般に関する意見を述べたものについてでございます。
試案の全般に対して反対とする意見は4件あり,その理由として,そもそも建替え決議の要件を緩和すべきでないとするものが1件,それから中間試案本文のように客観的要件を設けることは不要とするものが3件ございました。
次に,(2)の「建替え決議の手続」についてでございます。
中間試案では,建替え決議のための集会の招集通知の発出時期を,会日の1か月以上前とし,招集通知とともに建替えの要否の判断に必要な事項も通知しなければならないとするものとしております。
これについて,反対する旨の意見は1件でございます。資料にはありませんが,その理由としては,各マンションによって手続が全く異なるのであり,法が建替えの手続を定めるべきでない,あるいは試案の内容では不十分であるといった趣旨のことが書かれておりました。その他の主な意見につきましては,資料に記載されているとおりでございます。
次に,6の「団地内の区分所有建物の建替え」についての意見でございます。
中間試案では,団地内にある1棟の区分所有建物の建替えについての団地の敷地利用権者による承認は,敷地利用権の持分の4分の3以上による多数決によることとした上で,建替え後の建物の敷地としての利用により,特別の影響を受ける区分所有者については,その全員の承諾を要することとしております。
これについては,特に反対とする意見を述べたものはございませんでした。その他の意見としまして,特別の影響の内容を限定すべきであるとするものなどがございました。
最後に,中間試案に取り上げた事項以外に関する意見もございましたが,その主なものは資料の最後,7として記載しております。
パブリックコメントの結果につきましては,以上でございます。

● このデータにつきましても,そのデータが持っている意味ですとか,あるいはこれはどういうふうに考えるべきかとか,いろいろ御議論があるかと思います。また後で具体的な論点に関連して御議論をいただけるとは思いますけれども,もしこの際,この段階でもって何か御意見等ございましたらお願いいたします。
当然,パブリックコメントはこの審議会でもってもちろんそれに拘束されるわけではないと思いますけれども,やはり出てきている意見を尊重しながら議論を進めていくということだと思いますので,基本的にはそういうスタンスで扱いたいと思います。
それでは,次に,部会資料15に基づいて議論をしていくことになりますが,最初に部会資料15のうち,第1と第2の建替え決議に関する部分につきまして,これも事務局の方から説明をしてもらうことにいたします。

● それでは,事前に配布いたしました資料15について御説明いたします。この資料は,中間試案の建替え決議の要件とその手続,それから団地の部分について,これまで審議の中で出てきた御意見やパブリックコメントでいただいた御意見等を踏まえまして,事務局の方で問題点を整理したものでございます。既に中間試案の取りまとめの前に時間をかけて御議論いただいたところですので,重複するところもありますが,改めて全般的な問題状況を確認するとともに,新たに指摘すべき点も踏まえながら御審議の参考にしていただく趣旨でございます。
まず,第1の1(1)でございますけれども,建替え決議の要件。この中の,中間試案の各案に関する問題点の整理をもう一度したものでございます。
まず,アの甲案,これは年数要件のみとする案でございますけれども,この点について御説明いたします。
まず,問題点として指摘してございますのは,年数の経過のみをもって建替え決議をすることができることとする根拠をどのように説明するかという点でございます。従前から御説明しておりますとおり,現行法の費用の過分性の要件は,所有権の処分は所有者が決すべきであるという個々の所有権の絶対性,それから社会的,経済的な効用を失った建物のために阻害されている敷地の利用価値の回復を望む大多数の区分所有者,全体の利益,この両方に配慮しつつ,区分所有権相互間の適正な調整の方法として維持が客観的に見て不合理となった場合に限定して建替え決議をすることを認める趣旨で設けられたものと考えられます。そして,費用の過分性の要件は,具体的には建物が建物としての社会的,経済的効用を果たすために必要とされる一定の性能を失っている場合に,その効用を維持し,又は回復するのに必要とされる費用が,建物の価額,それからその他の事情に照らして相当の範囲内にとどまっているかどうかで判断することとされております。すなわち,現行法では決議の対象とされた建物に関する個別事情を考慮して建替え決議の要件を満たしているかどうかを決するものとしていることになりますけれども,甲案は,築後年数の経過という建物の個別事情を一応は捨象した形式的基準を採用しておりますので,これを建替え決議の要件とすることの根拠をどのように説明するか,考える必要があるように思われます。
この点についての説明としては,次のようなことが可能ではないかと考えられます。
まず,一般的には,建築後の年数経過に伴って建物が物理的に劣化していきますし,設備等も陳腐化していくために,建物の価額は下落していくと思われます。これに対しまして,経年劣化に対して必要となる修繕工事,こういったものに要する費用は,増えることはあっても一般的には減ることはない,このために建物の客観的価値と比較して,その維持に相対的に多額の費用を投じることになり,その傾向は年々拡大していくと思われます。さらに,その結果,一定の築後年数の経過によって多数者の意思に反して建物を維持していく合理性が失われる,こういう事態が生じ得るということができるのではないかと思います。一方で,築後年数の経過という事実は,一義的に判断できる具体的かつ明確な基準であるとも言えます。これらのことから,老朽により建物を維持する合理性が失われる場合,この場合の建替え決議の客観的要件として,年数の経過を基準とすることも妥当性を根拠づけることができるように思われます。
ただ,今,一応の説明をしてみましたけれども,年数の経過のみをもって決議をすることができることとする根拠について,このような説明で十分かどうかということについて,なお御審議をお願いできればと考えております。
続きまして2番目ですけれども,中間試案に掲げた年数が適当か。これは,御承知のとおり30年と40年を択一的に記載しておるところでございます。この点に関しましては,部会の審議におきましても短か過ぎるのではないかという御意見もあったところですし,パブリックコメントや意見照会に対しても,一定の年数経過を建替え決議の要件とすることはいいとしても,30年や40年では短いのではないかという意見があったところでございます。そこで30年あるいは40年という年数が適当なのかどうか,その適当であることを根拠づける理由について一応の説明を事務局の方で検討してみました。
まず最初に,先ほど御説明したように建築後の年数経過に伴いまして建物の価額が下落すること,これを年数要件の根拠としていることからすれば,不動産の鑑定評価で建築後の年数経過によってその価額がどの程度下落していくのかという点を確認しておく必要があると思われます。ここで,建物に関する主要な鑑定評価の方法である原価方式について見てみますと,再調達原価について減価修正を行って対象不動産の価額を求めるとされております。この場合の減価修正の方法としましては,耐用年数に基づく方法,それから実際の不動産の維持管理の状況を踏まえまして,これを調査して求める方法,観察減価法ですけれども,この二つを併用するというのが一般的な手法とされておるようでございます。
このうちの耐用年数に基づく方法の中には,御承知のように定額法,毎年一定額を減額していく方法と,それから定率法,その年当初の残存価額に一定の割合を乗じて減価額を求める方法でございますけれども,この二つが用いられております。仮に,不動産評価上一般的に用いられている数値として,耐用年数が40年,それから当初の建物価額に対して耐用年数,この場合でいえば40年経過後にどれだけの残存価値があるかという割合でございますが,これも一般的に用いられている数値として5%という数値を用いますと,経過年数が30年経過した時点での価額,これは当初の価額に対して定額法で29%,定率法では11%という価額の割合が残っているということになります。
もちろん,実際の評価額は耐用年数を何年に設定して,残価率を何%に設定するか,それから観察減価の有無や大小によっても異なってくるものですので,確かなことは言えませんけれども,一般論としましては築後30年経過時には大幅な減価が生じることになるということが言えようかと思います。それから,40年経過ということになると,更に数値としては減少した割合になろうかと思います。
次に,建築後30年,40年を経たマンションの維持のためにどのぐらいの費用が必要かということに関するデータも必要であると考えられますが,これは建物の構造,規模,それから施工の方法や,いつ,どの程度の修繕工事を行っているかといった様々な事情の違いによって変わってくるものと考えられます。このような事情もあってか,この点を直接調査の対象として資料は見当たりませんでした。もっとも,長期修繕計画が数多くのマンションで定められている,これは従前の議論の場でも御紹介したとおりでございますけれども,更に長期修繕計画を立てる際の目安としては,例えば相当多額の費用を要すると考えられる外壁の補修を9年とか15年の周期で定める,あるいは給水管の取替えについて12年ないし20年といった周期をもって工事期間を定めるという扱いがされているようでございます。それから,国土交通省の調査によれば,築後年数が古いマンションほど1戸当たりの修繕積立金の徴収月額は大きなものとなっているというような調査結果もございます。これらのことからいたしますと,少なくとも建築後30年,あるいは40年を経た建物の場合に,その価額に照らして維持のために相当多額の費用を要する場合が一般的に生じているのではないか,それからそれが,費用の額が合理的な範囲を超える場合も相当程度あり得るのではないかというように,一応推測されるところでございます。
それから,更にこれを裏づけるものといたしまして,以前の部会でも申し上げたものも含めて次のような事実がございます。すなわち,まずこれまでに老朽化を理由とした建替えが行われたマンションでは,建築から建替え工事竣工までの期間が30年以上のものが75%,40年以上のものが約30%で,その平均は38年である。それから建替えを正式に発意してから工事が進行するまでの期間に平均7年を要しているということがございます。
それから,2番目といたしまして,国土交通省のアンケート調査によると,現在建築後30年を超すマンションの19.4%が建替えを検討中である。それから,建替えを検討しているマンション全体のうちでは,建築後30年を超すマンションが70.1%であるという結果が出ているという事実がございます。
さらに,これは繰り返しませんけれども,建築後30年前後で建物の建替えが必要となる事態が生じ得るということを示す立法例といたしまして,借地借家法,公営住宅法,都市再開発法等があることは以前の部会で御紹介したとおりでございます。
これらの事実を総合いたしますと,建築後30年又は40年を経過したことを建替え決議の要件とすることもできるのではないかと考えられます。もっとも,年数要件として適当な年数に関しては様々な御意見があるところは先ほど申し上げたとおりですので,ただいま説明したような考え方をたたき台として,改めて御意見をちょうだいできればと考えております。
次に,(2)のアの乙案,これは年数要件にいわゆるただし書を付加した案でございます。
この内容ですけれども,建物の個別事情を反映させる要件として,修繕計画の有無,それから積立金に関する定めがあった場合に,積立金の範囲内で計画に基づく工事を行うことができる場合,これを建替え決議の対象から除くものとする案ということでございます。
この案につきましては,以前の部会の審議においても様々な御意見をちょうだいしているところでございます。まず,規範としての明確性を欠いて紛争を招くおそれがないかという点でございます。この問題点の中には,一定期間の経過ごとに行う修繕の計画,それから「修繕積立金」という用語,それが明確性を欠いているのじゃないかという話と,それから区分所有者に新たな費用の負担を求めないで計画に基づく修繕を行うことができるという,そういう判断の規範の明確性,この両方について問題があるのじゃないかという指摘があったものと承知しております。これらの点につきましては,長期修繕計画に該当するか否か,あるいは修繕積立金の範囲内で計画に基づく工事ができるかどうかの判断は,さほど困難が伴うものではないのではないかという指摘をさせていただいたところですけれども,ただ計画に基づく修繕工事に要する費用を確定する場合には,実際にその計画の中身として建築後何年目に外壁を補修するというような項目が定めてあるわけですけれども,その計画に基づく工事の実施時期になったときに,実際に対象部分の劣化の度合い,あるいは工事方法の種類によって工事に要する費用が異なってくることもあり得るということは考えられます。したがいまして,要件に該当するか否かについて一義的に明確であると言えるかという点については,なお検討が必要であろうかと思われます。
続きまして,乙案に対する問題点といたしまして,ただし書に該当するような状況であっても,長期修繕計画を集会の決議で廃止することができる,その結果,建替え決議の要件を満たすようにすることが可能である,こういったことからすると,客観的要件としては機能しないのではないかという御指摘がございました。確かに,建替え決議に賛成する者が5分の4以上の多数を占める状況になれば,当然修繕計画を廃止することも可能ということになりますので,乙案のただし書が多数決原理の影響を受けないと,こういう意味での客観的要件と必ずしも言えないというのは問題点として指摘されているとおりでございます。この案につきましては,以前から御説明しているとおり,客観的要件としての機能は十分ではないかもしれませんが,建替えを検討する際に,建物を維持した場合と建替えを実施した場合との費用負担の比較検討が区分所有者に求められ,その検討材料も提示されることになるなど,慎重な検討過程を経ることがおのずと担保される,こういった手続保障としての意味合いは否定できないのではないかというふうに考えているところでございます。
それから,3番目といたしまして,乙案に対して区分所有者に新たな負担を求めずに所要の修繕工事をして建物の維持ができる,こういう建物を建替え決議の対象から外すことにしますと,適切な管理をしている建物について建替えを制約するものとならないかという問題点がございます。確かに,乙案のただし書自体は,年数要件に付加して建物の個別事情を反映する要件として,年数の経過のほかに,ただし書に示されるような適切な管理を行っている建物であれば,建替え決議の対象から除外するという規範を定めているものですので,一見しますと適切な管理をしている建物について建替えを制約しているようにも見えるところがございます。この点については,このただし書のよって立つポリシー自体はよいけれども,書きぶりをもっと工夫すべきではないかという御指摘もあったところでございます。中間試案の発表後も,事務局の方でいろいろと検討を加えてみたところですが,客観的要件の一部としてこの点を取り込むという方針を維持しますと,建替えの制約にならないことを文言上明らかにするというのはそれほど容易なことではないというのが正直な現時点での検討結果でございます。
それから,最後でございますけれども,これは乙案に対する問題点というよりは,検討事項として御説明させていただきますが,乙案の趣旨が先ほどの御説明のように修繕計画の内容でありますとか,建物の維持管理の状況を踏まえて建替えの要否を検討させるという趣旨であれば,それを客観的要件として設けるのではなく,手続面の整備を図る方向で対応すれば足りるのではないかということが考えられます。この点は,以前の部会の審議でも御意見があったところですが,乙案のただし書の意義を手続保障に求めるのであれば,当然に検討すべき方法であろうと思われます。すなわち,乙案のただし書の趣旨が区分所有者に対して建物を維持した場合,それから建物を建替えをした場合との比較検討を求めることにあるとすれば,少なくともその検討のために必要な情報,例えば長期修繕計画の内容やその計画に基づいて行う修繕工事に要する費用など,こういったものの情報を提供することが必要と考えられますが,乙案のように建替え決議をする前に必ず修繕計画の内容を見直して,更に廃止するなどの措置をとることを要求までしなくても,このような情報が区分所有者に渡ることが保障されるのであれば,区分所有者としては必ず建物を維持した場合と建替えをした場合との比較検討をすることになると思われますので,慎重な検討過程を経るという要請も相当程度満たされるのではないかというように考えられます。
続きまして,イの甲案,これは建物の損傷等が生じた場合の要件についての議論でございます。
まず,イの損傷,一部滅失の場合のうちの維持,復旧に要する費用と,現在の建物の価額とを対比する案についてでございます。この問題点としましては,これは重ねて指摘のあるところですけれども,現在の建物の価額の算定は困難ではないかということでございます。確かにこの点の算定は容易ではないということはありますけれども,先ほど申し上げたように,建物価額の鑑定の方法は存在しているということと,例えば現実に不動産執行の現場では建物の価額を算定しているということもございますので,算定ができないということにはならないだろうと,これは相対的な評価の問題ということもあると思われますけれども,そのような点が指摘できようかと思います。
次に,2番目といたしまして,一般的に建物の価額は築後年数の経過に伴って下落していきますので,甲案のように,建物の価額を基準としますと,損傷の規模はさほどのものでなくても,年数が経過するに従って建替え決議の要件を満たす建物が相当割合を占めてくる,この結果,中身としては建替え決議の対象が広がり過ぎるのではないかという指摘をすることが可能かと思われます。
それから,3番目といたしまして,これは甲案・乙案共通の問題点でございますけれども,建物の効用の維持又は回復を要する場合,こういうのはいかなる場合を指しているのかということを改めて検討する必要があるように思います。これは,以前の部会でも御指摘がございましたけれども,技術の進歩とか生活水準の向上に伴い,建物に求められる機能,それから設備が変化した,こういったことに対応することを理由とした建替えを多数決によってすることが認められるのかどうかという問題でございます。
建替えを必要とする理由といたしまして,具体的には新たな耐震基準を満たすために建替えができるのかどうかということが具体的に議論に挙がったというふうに記憶しております。この中間試案の「建物の効用の維持又は回復」という用語でございますが,これは現行法の「効用の維持回復」という用語をそのまま受け継いでおりますので,この言葉がどのような場合を含むのかということを考える必要があります。現行法の解釈について,改めて検討を加えてみる必要があるように思われます。
この点につきましては,建物が建物としての社会的,経済的効用を果たすためには,社会通念の上で必要とされる一定の性能を保持していなければならないというように考えられます。それで,建物の老朽化や,災害等によって受けた損傷等の事由により,その性能が損なわれた時には,社会通念上必要とされている一定の性能を満たすようにするために,修繕工事等をする必要があり,その工事等に要する費用を建物の効用,維持,回復に要する費用,その費用が維持,回復に要する費用ということになるのではないかと思われます。
そういたしますと,建物としての社会的,経済的効用を果たすために,社会通念上必要とされる性能とはどのようなものかということが問題になりますが,地震によって建物の一部が滅失した場合のように,突発的な事故によって一時に建物の性能が損なわれた場合であれば,その事故の前の建物,これは社会通念上保持すべき性能を有していたということで区分所有者の考え方,あるいは社会通念上の要求水準とも事故前の状態が一致するというふうに考えられますので,その判断は比較的容易であるように思われます。これに対しまして,一時に建物の性能が損なわれるのではなくて,例えば年数経過による老朽化によって徐々に建物が劣化していくというような場合には,建築時の建物からの劣化の程度,それからその内容というのは外部から見て区分所有者にとって明らかではないというふうに考えられます。それから,技術の進歩などの要因によって建物に求められる性能の水準も変化していきますので,建物が保持すべき性能について,各区分所有者の考え方も異なり得るというふうに思われます。そういたしますと,社会通念上,建物がその効用を果たすために本来保持すべき性能はどのようなものなのか,その判断は必ずしも容易でないように思われます。
具体的な例として,先ほどの新たな耐震基準を満たしていない建物について考えてみますと,一定規模以上の地震があったときには,耐震基準を満たしていない建物というのは相当程度の倒壊,損壊の危険があるという実態があるようでございます。これは,阪神淡路大震災の経験からそういうことが実証されているという御報告を聞いているところでございます。
そういたしますと,耐震基準を満たしているかどうかという点は,建物が保持すべき性能の中で最も根幹にかかわる安全性に関する事柄であって,社会通念上建物が保持すべき性能に含まれると考えてよいように思われます。このように考えますと,現在の耐震基準を満たすために要する費用,こういったものは建物の効用の維持,回復をするために要する費用に該当することになるのではないかというふうに考えられるところです。
若干問題点が整理されていない嫌いもございますけれども,この問題点を掲げた趣旨は,効用の維持,回復を要する場合というのはどういった場合を指しているのかという点,あるいはいかなるものを含めるべきなのかということを確認しておく必要があるのではないかと。あるいは,更に中間試案のような要件の書き方でよいのかということも含めて,御審議をいただければという趣旨でございます。
それから,(4)のイの乙案について説明させていただきます。
こちらは,イの甲案と表裏をなす問題でございますが,逆にこちらであれば対象が狭くなり過ぎるのではないかという点が指摘できようかと思います。この点は,以前にも御説明したように,現在の建物と同等の建物の建築に要する費用というのは,建築後の年数によって変動することは余り考えられませんので,建築後の年数の経過によって一般的に価値が下落する建物の価額を基準としている甲案に比べますと,建替え決議の対象が狭くなるということは間違いないのないところでございます。
それから,現行法のもとでこの費用の過分性の要件が争われた裁判例を見てみましても,このイの乙案の基準をとることによって,現行法では建替え決議は可能と判断されたものが,逆に決議の要件を満たさなくなるおそれはないかという心配がございます。実際問題として,損傷が生じた現在の状態での建物価額,これがその復旧に要するための費用を上回っている事案,要するにイの甲案の要件を満たしている事案でございますけれども,イの甲案の要件を満たしている事案において,このイの乙案の要件をいまだ満たしていないということで,その乙案の要件を満たしていないことを理由に建替え決議が無効であるという主張を一方当事者が主張して争われた事案がございますけれども,そういった主張は裁判所の裁判例では明確に排斥した事例がございます。この事案を見ましても,現行法の費用の過分性の要件と比べまして,より厳格な基準になってしまうおそれがあるのではないかという問題点を指摘できようかと思います。
次に,イの乙案に対する問題点でございますけれども,2番目に書いてありますように,現在の建物と同等の建物の建築に要する費用,これは必ずしも区分所有者が建替えの要否を判断する際の比較検討の対象にならないのではないかという点でございます。この点は,若干従前の説明の内容を修正するところがあるかもしれませんけれども,現実に建替えを行う場合に,区分所有者が支出する費用,こういったものを考えてみますと,実際の建替えの場面では現在の建物と全く同じものを建てるという例は考えにくい。そういたしますと,一般的には規模が大きかったり,あるいは仕様としての水準が高かったりする建物を建築することになると思われますので,この場合,建替えに要する実際の費用,これを乙案が掲げております現在の建物と同等の建築に要する費用と比べてみますと,一致しないことになるのではないかということでございます。これは,基準の立て方として実際に建てる建物というものを基準にしますと,それは区分所有者の趣味嗜好,あるいは希望によってどんな建物を建てるか,費用が幾らかかるかということは恐らくフリーハンドで決まってしまいますので,それだと基準として機能しないということから,同等の建物という枠をはめた趣旨でございまして,それはそれで一つの理由として成り立っておるわけですけれども,この案を掲げたときの理由づけといたしましては,区分所有者の比較対象,あるいは思考過程に沿っているのではないかという説明をしてきたところですが,詳しく考えてみると必ずしもそうは言えない面があるのではないかという指摘でございます。
それから,3番目でございますけれども,これは維持,回復を要する場合の中身につきまして,これは甲案に対する問題点と内容は同じでございます。
それから,更に2の「中間試案(本文)以外の案に関する問題点」について御説明いたしたいと思います。
まず,(1)といたしまして,中間試案本文以外の案として,多数決のみで建替えができるものとする案について御説明したいと思います。
先ほど,席上に一枚紙が配られていると思います。これは,「規制改革推進3か年計画(改訂)」というふうに書いておりますけれども,既に新聞等でも取り上げられておりまして,皆さんも御承知のことと思いますけれども,総合規制改革会議の方で取りまとめて,本年3月29日に閣議決定がされた「規制改革推進3か年計画」の中の「都市再生」の項目の中に掲げられている事項でございます。これを見ていただきますと,資料にありますように「区分所有法の建替え要件を5分の4以上の合意のみとすることや,隣接敷地との敷地共同化による建替え,住宅部分以外の床の大幅な増加を認めること等も含めてマンション建替えを円滑に実施するための方策を早急に検討し,14年秋までに改正法案を作成する」ということが掲げられております。
この計画では,建替え決議要件の改正案として,多数決のみで建替えができるものとする案が例示されております。この案を含めて,マンションの建替えの円滑な実施のための方策を検討することとされております。この点は,中間試案では注記にとどめたところではありますけれども,前記3か年計画に具体的に掲げられている趣旨にかんがみまして,当部会においても多数決のみで建替えができるものとする案を更に御審議いただいて,検討を深めていただこうという趣旨でございます。そこで,今回の資料にもこの点についての問題点を掲げてございます。
ここに掲げてある問題点につきましては,以前御指摘したとおりでございますけれども,1点目といたしましては,特段合理的な理由がない場合に多数決のみで処分を強制することを所有権の性質との関係でどのように説明するのかということでございます。例えば,区分所有権と所有権という区別はあるわけですけれども,所有権ということに準じて考えますと,例えば土地収用法の収用の制度上では,一方で高い公益性が存することを要件として初めて財産権の処分の強制が認められておりますので,こういったこととのバランスをどのように考えるのかという点を指摘しておく必要があるように思われます。
それから,2番目といたしまして,現行制度との隔たりが大きいのではないか,それから今回の改正の趣旨といたしましては既存の建物に適用するということを前提として検討をお願いしておるところでございますけれども,その点の説明が困難なのではないかという点でございます。
ただ,一方で,中間試案の中身につきまして,例えば年数を要件として掲げておるわけですけれども,年数経過前に陳腐化した場合に建替えを希望する人たちの希望をどうするのかというふうなこと,あるいは多数者と少数者ということになりますと,多数者の立場も考える必要があるのではないかという指摘も受けておりますところですので,その点を含めて御検討をいただければというふうに考えております。
それから,(2)ですけれども,これは全く逆な立場からの指摘でございます。これは,中間試案以外の案では多数決のみとするということではございませんで,多数決のほかに客観的要件を維持しつつ,中間試案とは異なる形でその具体化を図るという案,こういった意見もパブリックコメント等では述べられているところでございます。具体的には,建物の効用の維持,回復をするのに要する費用の算定方法をより具体的なものとして統一する,あるいはその判定をする第三者機関を設けるといった制度を整えるということが考えられるという指摘がございました。しかしながら,この点は従前の議論でもかなり御審議いただいたというふうに考えておりますけれども,老朽化の場合には,建物が効用を果たすために保持すべき性能というのが必ずしも基準が明確ではないということがございますので,効用の維持,回復を要する費用,これをより具体的かつ明確な基準とすることは相当な困難が伴うのではないかということが指摘できようかと思います。この点は,問題点として資料に掲げております。  それから,第三者機関の設置ということでございますけれども,最終的には裁判所の判断に委ねざるを得ないと思われますところですし,それから判断基準が具体化,明確化しない限りは,結局は建替えの実施の円滑化につながらないのではないかという疑問がございます。この点につきましては,技術的な観点から法令で効用の維持,回復に要する費用,こういったものを算定する基準を細部にわたって明確に基準を定めるべきじゃないか,そういう手段によって裁量が介入して判断が分かれる余地,こういったものを極力排除すべきではないかという提案もございました。ただ,今言ったような方法を突き詰めてみますと,建替えの可否について結局はどこかで線を引かなければならないということがございますので,それでは技術的細目に依存した建替え要件を定めることについて,何らかのコンセンサスを得ることが可能なのか,そういう目途が立つのかということが問題点として指摘できようかと思われます。
最後に「建替え決議の手続」のところについて説明いたします。
中間試案の建替え決議の手続に関する問題点といたしましては,まず中間試案では,招集通知の発送時期を集会の1か月前としたところでございますけれども,これでもまだ短いのではないかという意見が述べられているところでございます。
それから,これは三つ目の問題点と関係してきますけれども,仮に区分所有者に対する説明会の開催を義務づけると,その上で招集通知の発送を行うということになりますと,1か月の間にそれを行うことは難しいのではないかというふうに考えられます。そこで,説明会の開催の義務化,そういったことと関連づけながら,招集通知の発送時期の繰上げの必要性について御審議いただく必要があるのではないかというふうに思われます。
次に,2番目ですけれども,中間試案に掲げた事項のほかに,通知すべき事項はないかという点でございます。中間試案に掲げた通知すべき事項でございますけれども,この点は建替えの理由,それから建替えの効用の維持又は回復をするのに要する費用の概算額というのを試案の方では掲げたところでございます。この点に関しては,例えば先ほどご説明申し上げましたが,中間試案の建替え要件,老朽化の場合の乙案,いわゆるただし書の案ですけれども,この乙案であれば建替えの理由として長期修繕計画の有無,それから新たな費用負担の有無,それからその前提として修繕積立金の額等を通知すべきことになると思われますけれども,乙案をとるかどうかにかかわりなく,これらの事項を通知事項に加えるべきではないかということがまず考えられます。さらに,先ほど乙案のただし書の趣旨を手続要件として純化させることが考えられないかという問題指摘をさせていただきましたが,そのこととも関連して,どういった通知をすべきかということを考えてみる必要があるように思われます。以上のことを含めて御審議いただければと考えております。
それから,手続の中の3番目といたしましては,先ほど触れましたけれども,部会の審議でも取り入れるべきではないかという意見が複数の委員・幹事の方からいただいておりますけれども,説明会の開催の義務づけの点でございます。この点は,意見照会に対しても積極的な意見が複数寄せられておるところでございますので,部会で更に御審議いただければと考えております。

● 大変いろいろな論点,多岐にわっておりますけれども,これから御議論いただきたいと思います。
特に順番は決めませんけれども,大体今の説明の順番に沿って御議論いただけたらどうかと思いますが,いかがでしょうか。
これから何回かの会合を持ちますけれども,最終的には中間試案みたいに幾つかの案を併記という形ではなくて,集約をしていくことになりますので,できれば皆様方の忌たんのない御意見を御披露いただくと同時に,必ずしも積極的には賛成・反対,あるいはいろいろな御議論を重要な論点についてされていない方もおられるかもしれませんけれども,是非積極的に御意見をいただければと思います。

● 建替え決議の要件の,年数要件についてでございます。先日,法律の先生,経済の先生,それから我々建築,都市計画関係,主に三者で構成している都市住宅学会という学会がございまして,その学会でマンション建替えについてのセミナーと申しますか,フォーラムがありました。座長は,○○先生だったのですけれども,パネリストがほとんど技術関係の方でした。その3人の技術関係の方が口をそろえて言っていたのは年数要件の件で,30年あるいは40年と規定することが問題ではないかという主張でした。よくよく聞いてみますと,その主張の裏には,今,一生懸命マンションの長寿命化の技術的な開発がある,そういう状況の中で区分所有法の中で30年,40年が老朽化要件だという,そういう年数を示されることのその問題点を指摘されているのです。今,技術的に一生懸命,場合によっては100年ぐらいもつマンションを作ろうと,マンションというのはそういうものだということを社会的なイメージとして是非植え付けたい。一方で,そのマンションにかかわる非常に重要な法律が,30年,40年という期間を老朽化要件,あたかもそのような形で出てくることについての懸念でございました。
よく考えてみますと,確かにそういう面はあるのですけれども,我々,特に私が議論しているのは,むしろ現在あるマンション,現在既にあって,これから30年,40年経過しようとしているマンションの建替えについてどういう判断を下したらいいのかということを議論したいと思っておりまして,そういう意味では今日パブリックコメントの資料がございまして,建替え決議の年数要件についてかなり反対,不適当だという意見があったのですが,この不適当だとする意見の内容が,私が今御紹介申し上げたようなそういう意味での意見が多かったのかどうかということも,もし可能であればお知らせいただきたい。特に,反対とするものの下に,「30年を要件とする場合は10年後に見直すものとする」と書いてあるのは,恐らく10年後に技術的な進歩が具体化するマンションがこれから出てくる,そういう時代を見据えて,先には法改正をして30年ではなくて,もう少し長期間マンションは維持できるのだというふうに改正すべきではないかという主張ではないかなと思っているのですが,その辺,そういうふうに理解していいのかどうかということも含めて,私の意見と,それから若干の御質問をさせていただきました。

● データの方がどういう根拠−−データといいますか,パブリックコメントの方がどういうバックグラウンドから出てきている反対意見なのかということについて,もし分析ができるものであれば……。あるいは,そこまでは分からないということであれば,それでも結構だと思いますが。

● すべてを網羅的にきちんと申し上げられるかどうか分からないのですけれども,○○委員がおっしゃったように,実際に既存のマンションと今建っている,あるいは直近のマンション,今後のマンションというのを区別して考えるべきじゃないかという立場の方もおられますし,それからそういうことを離れて,やはり年数としては,一つは形式的基準に過ぎてよくないということのほかに,期間として短すぎるという,それはもう古いマンションも含めて一般論として短すぎるという立場の人と,あるいは水準が違ってきているのでそこは多少区別して考える必要があるというふうに,二通りあったというふうに考えております。もちろん,そこまで詳しく書いてないで,一般論として年数について反対,あるいは年数が短すぎるということしか述べていないものもございましたけれども,大体そういったことと思っております。

● 私はやはり既存のマンションと,それからこれからのマンション,あるいは現在でも新しく建てたようなマンションとでは,本来,やはり仮に年数要件というのを設けるとしても,恐らく同じではないだろうと。どうもそれは,一緒にやらなければいけないというのがやはり無理があって,本当は技術的にできるかどうかは詰めてみないと分かりませんし,そういう例があるのかどうか分かりませんけれども,仮に年数要件を設けるにしても,そういう対象によって少し年数を変えるとか,そういうことが検討されてもいいのではないかということは,ちょっと個人的には思っております。ただそれは,なかなか難しいなというのも,反面思っております。
それからもう一つ,そもそも年数という形で客観化といいますか,要件を設けるのがいいのかという問題と,それからそういうふうにしたときに30年,40年,あるいはもっと長い期間,どういう期間がいいのかという,二つ問題を本来分けて考えるべきだと思いますけれども,仮に具体的な年数の方についても,これはちょっとまた私の個人的な意見ですけれども,先ほどから減価償却とか幾つかの指標が挙げられましたけれども,これはある意味で建物の価額が下がるという問題で,建物の価額が下がるという問題と建物が効用がなくなるということが完全に連動しているのかどうかというのは,若干私,専門ではありませんけれども気になっておりまして,価額が下がっていても,しかし効用というのはあるという場合があるかもしれない。そういう意味で,建物の価額を一応,これは既存の法律も価額を一つの基準にしておりますけれども,どこまで絶対的なものなのか,極端なことを言えば建物価額はそういう税法とかいろいろな観点からゼロになっていても,なお効用はあるという場合が恐らくあるのじゃないかという気もして,そういう意味では建物価額というのを使う場合には少し注意しなければいけないのだろうと。そこから出てくる帰結としては,したがって減価償却だとかいうことを理由として,30年,40年というのは簡単に正当化できるのかなというのを,ちょっと個人的には思っています。そういうことも含めながら,年数の要件については慎重に私たちは考えたいと思いますけれども,これも皆さんのいろいろ御意見を伺いながら,この部会としては決めていきたいと思っております。

● 今の件について,確かに○○委員がおっしゃるとおりで,現在建っているマンションも,マンションを施工した技術によって物すごいバリエーションがあるのですね。そのバリエーションがあるマンションにどういうふうに建替え要件を考えていったらいいかというときに,例えば30年経過して,これはやはり建替えしなければいけないというマンションも当然出てくる。しかし,そういうものは例えば全体の中の数パーセントにすぎないから,むしろもう少し高い水準を設定したらいいのではないかという考え方も私はあると思うのですが,しかし一方で,例えば数パーセントのマンションが是非建替えをしたいというふうに考えたときに,30年以上の要件を設定して,例えば40年を設定して10年間そのマンションに住み続けなければいけない。その結果として,そのマンションが極めて老朽化し,ある意味では周辺に悪影響を与える可能性も出てくる。空き室化していろいろ問題が起きる。そういうことを考えてもいいのかどうかと。ですから,大きな集合として,その中に数パーセント出てくるものも救うというふうに考えるのか,そうではなくて,それは数パーセントだからもっと高い水準に設定すればというふうに考えてみた場合に,私はやはり居住ということですから,最低限の居住水準が維持できるということを考えると,やはり数パーセントのものが出てきた時点で年限を考えるべきではないかというふうに思っております。

● ちょっとその点,一言だけ私の考え方を。
これまた弁解というか,個人的な意見ですので,この試案そのものとはちょっと違うかもしれませんけれども。
今のように30年たって,しかし老朽化が著しいというのは,むしろイの方で救えばいいのではないかと。これは,そういう意味では実際の老朽化しているということを証明することになりますけれども,それで救えばいい。年数一律でいくのは,それを証明しないでいくわけですから,これは一応救済の道はそっちにあるかなと思っております。

● 今,○○委員が言われたことと○○委員が言われたことに関連をして,私の考えというか,そういったことを若干意見を述べさせていただきますと,○○委員の御意見をちょっと別の言い方を変えて言えば,30年というのは決して建物の耐用年数とか,老朽化をする年数を区分所有法で定めたのではなくて,建替えか修繕あるいは改修かという選択肢ができると。ですから,逆に言いますと,これは先ほど伺った多数決のみで建替えができるものとするという案についてと関連をするのですけれども,30年なり40年なりという期間は,イの要件があれば別だけれども,そうでない限りはたとえ社会的に陳腐化しても,30年ぐらいは,あるいは40年ぐらいは建替えという選択肢はありませんよと,そういうことだろうと理解すべきだろうと。決して技術系あるいは建築系の先生が,誤解ではないのでしょうけれども御懸念になっているような,30年,40年というのが決して建物の耐用年数など,あるいは建て替えなければいけないという年数を定めたわけではない。それをスタートとして,以後は私的自治といいますか,区分所有者の5分の4以上で決めると。逆に言うと,それまではそういったものが制約される,いわば区分所有権ということで単独所有をその住戸部分については認めたわけですから,そのぐらいの期間というのはお互いに,多数者の方も,5分の4以上の方も制約がある,そういうものだろうと理解します。そういった意味では,私は明確化ということから,積極的ではないですが,消極的に明確化をする,過分の費用にかえて明確化を,いわゆる老朽化の場合にこの基準しか今のところいい知恵がないのではないかというふうに考えております。
それからもう1点,○○委員がおっしゃったことにも賛成で,すなわち価額と効用との関係ということで,確かに何番目かの理由づけというか,こういうこともありますねということで価額に注目するのはよろしいかと思いますが,すなわち区分所有権というか,マンションは財産権,財産であることは否定できないものですから,その側面から経済的な側面に注目することはいいわけですけれども,区分所有法の何よりもの目的というのは,財産権の権利調整ということ,そして正にここの場面で一方では建替えを望む人と,他方は建替えを望まない人,それの権利調整をどうするか,もう少し別の言葉で言えば,建替えに反対する人に対していかなる理由づけで,根拠づけで,もうこれだけの年数がたったらあなたたちの権利というのも制約を受けるのですよと,多数の決議に拘束されるのですよという理由を言う。
そのときに,恐らく建替えに反対する人は値段が下がったということではやはり納得できないのだろうと思うのです。やはりその人は,現に住めるじゃないか,住んでいるじゃないか,そういった効用ということがあるので,そうするとそれは先ほどから事務局の方で繰り返し言われていますように,建物維持の不合理性というか,あるいは逆に,ちょっと言葉を言い換えれば,建物を維持するのに相当の年限がたてば合理的ではなくて,建替えという選択肢もある,そういう時期がやがては来る,マンションの新築時にそういったことを予定しているだろうということだろうと思います。ですからそういったことで,先ほど言ったように価額ということのみを特にここの老朽化の要件のときに,一つの理由にはなるでしょうけれども,余り一人歩きさせるべきではないというのが私の意見でございます。
ちょっと時間が長くなりますが,もう1点だけついでに言わせていただきますと,だからこそ−−だからこそというのは,30年あるいは40年たったら修繕かあるいは建替えかということをいわゆる私的自治というか,そこの区分所有者の方が共同決定をするという,そういったときに,やはり一つの指標として,従前乙案で言うような長期修繕計画があって,そしてそれが新たな費用負担なしに修繕ができるという,そういった意味では修繕できる実効性があるわけですね。そういったマンションにおいて,やはりそのことを考慮しなくていいのかということですと,そういった意味では乙案というのはそれなりに意義があると。客観的要件ということではないですけれども,今言ったような,私の基本的な考え方からしてなお意味があるのではないか。それを技術的ないろいろな問題,先ほど御指摘がありましたように,むしろ手続の方に落としてという案もあるのでしょうけれども,なお甲案というのも私の考えでは捨て難い,そういった意見でございます。

● ただいま,○○委員の御意見,私,非常に共感を持って受けとめたのですけれども,基本的な最初の分かれ目として,多数決要件のみでよいのではないかという,こういう議論も従前からあるのですけれども,やはりたとえその際の手続を最大限実質化したとしても,効用増ということのみを理由として,建築後間もないマンションの建替えを可能にするということが法律上可能になることになりますので,それは相当ではないだろうというふうに考えております。そうしますと,年数要件というのは老朽化の目安ということと切り離して,一応それぞれの区分所有者の権利をそういった効用増を専ら理由とした建替えという,そういうことから防止する防波堤的な,そういう意味合いを持っている,そういうふうに位置づけて,その観点から何年が適切か,そういうような正当化の方法も考えられるのではないかというふうに思っておりまして,○○委員の先ほどの御意見もそういう内容を含むのではないかと思われますので,賛意を表したいと思います。
そして,その際の従来のアの乙案ということですけれども,これは先ほど御指摘がありましたように,あるいは従来の議論にございましたように,私としてはやはり手続要件として純化するという,そういう方向性がより分かりやすいのではないかというふうに考えております。
その際に,二つの要素があると思われまして,一つは情報を十分開示する,理由を十分示して自己決定していただくということと,それから従来必ずしもその点の認識は一致していなかったと思いますけれども,若干期間を置く,つまり1回の集会で修繕計画の廃止とそれから建替え決議を同時にやれるかどうかという,そういう問題があったかと思うのですけれども,それができるという理解と,もう一つはやはり1回修繕計画の廃止の決議をして,再度議案を立てて,それから集会を招集すると,したがってそこに一定の冷却期間が設定される,そういう意味合いもあると思います。その両面から,手続要件として純化する方向で再検討されるのが望ましいのではないか,そういうふうに考えております。

● 年数要件につきましてですけれども,建った時期とか,そういう対象によって分けるとか,あるいは技術もいろいろ変わってくるわけですから,そういうことに応じて柔軟に変えていくというようなことも,特に行政官庁の法令ですとそういうことも比較的考えやすいのかもしれないのですけれども,やはりこういう区分所有法の場合は民事の基本法だということで,ある程度法律に書き込むと。法律に書き込む場合には,正しいかどうか分かりませんけれども,余り細かく書き分けるということは難しいかもしれませんし,民事の基本法としての法的安定性みたいなこともひょっとしてあるのかなということで,そういう意味で一律何年というやり方も,そういう意味もあるのかなと思いますし,またそういう観点から規範としてみんなに分かりやすい,明確だということもあろうかと思います。
また一方で,そういうふうに法律で一律に決めるという場合には,機能としては甲案で何十年と書きますと,それは一律にもうその年数内は決議禁止といいますか,建替えができないという効果でございますので,その場合にはこれまでの建替えが起きている年数とか,そういったことを考えるとやはり余り長いと実態に合わないという面も出てくるかもしれませんし,余り禁止の期間を長くするのもどうかなという感じもいたすわけでございまして,私どもとしてはこれまでも意見述べさせていただいておりますように,年数は30年というのがよろしいという意見でございます。

● 主婦連合会は,住宅部というのがありまして,そこで最初の案を,これに対するパブリックコメントを出そうというので議論してくれて,それで全体会の方に上げたのですが,とても難しくて,結局パブリックコメントには出していないはずです。それから,全国消費者団体連絡会の方も,なかなかいろいろなほかの用件もたくさんあったということで,手続的に間に合わなかったのですけれども,結構議論はしました。
やはり一番大きかったのは,30年,40年という数字を書くべきじゃないのじゃないかという意見が多かったです。それはなぜかというと,そういう数字を書くことによって,このころになりかけるところの住民の生活の浮遊化というのですか,落ち着かないというか,それでそういうことはむしろ管理組合が管理がしにくくなる,そして修繕だとか必要なものでやらなければならないことに対して手当てがしにくくなると,そうするとそのとき住んでいる人たちが良質な環境を保持できなくなる,そういう雰囲気づくりがされてしまうと。現に,30年過ぎているところに住んでいる人もたくさんいるし,もうじき40年を過ぎようとするようなところに住んでいても,人様から見れば,何だあんな古ぼけたところにとおっしゃっても,本人たちがそれでいいとすればそれでいいじゃないかと,要するに私的自治に任せてもらいたい,そういうふうなトーンがすごく多かったです。
では,私的自治に任しておくとスラム街化するのだとか,その住宅に住んでいる人以外の人が見るに耐えかねるような状況になってくることに対して,どこまで人はせっかいをやいていいのか,こういう哲学になっていくのじゃないかというのが普通の人の感覚だったと私は思っています。
それで,その場合に自治に任せるということはどういうことかというと,やはりさっきどなたかおっしゃいましたけれども,修繕計画の廃止と建替え決議を一括にやってしまうのじゃないといったようなことを事例といたしますが,その以前に,やはり古くなってきたということを自覚する人は必ずいるわけですから,その人たちが意見が出やすくて,そして建替えというところに至るまでのプロセスが丁寧に法律にもう少し書き込まれれば,人は良識に応じてその手続にのっとって自分たちの自治的な力で建替えに向かっていくだろうと,そういう手続をむしろ法律としては用意してもらった方がいいという感じです。
それで,特にこれは環境団体の人たちからの大きな声なんですが,そんなに政策的に日本中のマンションを古いのみんなつぶしてしまえといって,どこに埋めるのだと,海なんかも汚染の問題がすごくあるじゃないかと。これは笑い事じゃないですよ,本当に。ちょっと飛びますけれども,今,衛星放送を増やす増やすというけれども,宇宙のごみだって大変なんですよ。私たちは,軽々にいろいろなことを簡単に経済政策的に物事を進めて,どれだけの環境汚染をしてきたか,今度のこのマンションを日本中がわあっと建て替える,建て替えるにしては住んでいる本人たちがどんどん貧乏になって来ているから,国がどこまで政策的にこれを助けてくれるのか分かりませんが,その政策的な国の補助があればこういうことも実現するのかもしれないけれども,環境問題でやはりこの法律を本当にきちんと,単なる形としての構造改革の一端としてやっていくというのじゃなく,本当に良質な住宅を国民のために供給するための法律を作ろうとしていくのだったら,この間円滑化法案の方で建替え決議後の手続のことが出てきましたけれども,あれと同じように,やはり環境庁と一緒になって国土庁はきちんとごみの始末のビジョンを作っていただきたい,そういう声がすごく環境団体からありました。そのことは是非気にしていただきたくお願いします。もしかしたら環境団体の方から出ているかもしれませんけれども。

● 基本的には皆さんの議論に賛成ということでいいかと思っているのですが,デベロッパーとして現場にかかわっている立場から,やはり○○委員がおっしゃったように不動産業界の中でもいろいろ意見がありましたので,ちょっと意見を御紹介したいと思います。
この建替え決議に関して,やはり各社,協会の下に小委員会という形を設けて議論をしたのですけれども,結構意見がばらばらになりまして,やはり最初は30年という年数に対して,30年たったら建替えなのかと,建替えを促進するようにとれるねということで,やはりそれについて一つ問題があるなという話が出ました。
それからあと,乙案については,文面だけ見ると,議論の過程を知らない人たちが見るわけですから,そうすると管理がしっかりしている建物が建替えができないねというような話で,やはり甲案・乙案とも問題がある。そういう中で,議論として出てきましたのが,もう年数要件を取り払って,5分の4だけでいいではないかという議論も出てきまして,結局それがいろいろな意見が絡み合ってなかなかまとまらなかったのですけれども,最終的にはやはり現場をやっている立場からすると,今まで69件なのか70件なのか,老朽化によって建て替えられた事例がすべて全員合意でやられていると,それで区分所有法の5分の4を使ってやろうとしたところが裁判で争いになっている,そういうところから,やはりもう不明確なのは絶対避けるべきだ,明確にできるだけしないと,今後の建替えの問題には対処できないだろうと,そういうような流れは中にはみんなあったのだろうなというふうに思います。結果として,不動産協会の意見,資料として今日配布されておりますけれども,最終的に全く一つに統一しておりませんで,意見としてはもう年数なしに5分の4の決議にすべきだと,ただしそれがだめであれば,甲案の方でいくべきだというような意見になっておりますのは,その辺の議論を踏まえてそういうことになったということでございます。
それで,あと一応最終的には今日出た意見でいいかと思うのですが,やはり○○委員がおっしゃった,30年というのは,30年たったら建て替えるのではないよということをしっかりと押さえておく必要があって,30年間はむしろ逆に建替えはしてはいけないのだという制約があるのですよという逆の考え方でいくのがよろしいのではないかというふうに思っております。
それと,あと建替えのところで議論として出てきたのが,ちょっとこの後と関係あるかもしれないのですけれども,耐震診断の結果,耐震性を備えていない建物,これが30年たっていない建物でもあるのですけれども,具体的な例として,耐震補強した場合に,費用としては莫大な費用がかからないのだけれども,1階のある部屋の窓が片方なんか全部なくなってしまう,そういうようなのというのは建替えできないのかというような議論があって,むしろアの方ではなくてイの方の問題になるかと思いますけれども,実はそんなことが出ていまして,そういう意味合いもあって30年というのはなしでもいいのではないかというような議論が出ていました。それに関しては,やはりイの問題ではないかなというふうに思っているのですけれども。

● 今まで,いろいろな論点が錯そうしている気がしますけれども,私の整理がいいのかどうか分かりませんけれども,この30年というものが持つ意味というのが幾つか恐らくあるのだと思うのですね。一つは,30年間は建替えの決議ができなくて,大体30年を超えると私的自治といいますか,そこに住んでいる区分所有者たちのもちろん私的自治によるわけですけれども,建替え欠格等が動き出す,そういう意味での一つの指標。これは,ある意味でマンションの老朽化とか,あるいは過分の費用とか,そういう客観的なものをある程度反映している,そういう基準なんですね。
それからもう一つは,これは○○委員とかあるいは○○委員も指摘されましたけれども,こういう30年とか40年とかいう年数要件が持っているもう一つの意味は,それを超えた場合には今度は多数決ならば建替え決議ができますよと,そういう意味では反対派がいてもその人たちは抵抗できませんと,そういう意味で少数者の反対をも超えて建替えができる,そういう要件でもある。その二つ,二つだけなのかもっとあるのか,それはなかなかこの年数要件を考える際に一つの重要なポイントだろうと思います。
例えば,30年という要件,あるいは40年という要件がどうも適当ではないので,多数決だけで5分の4とか,そういうのだけでいくというのはさっきから可能性としては案としてあり得るわけですけれども,今度はこれは少数者の反対があったときに,それを反対していても建替えという形で追い出されます。そういうところがありますので,果たして5分の4という決議だけでいいのかどうかという形の議論になっていくのではないかと思います。済みません,ちょっと勝手に整理いたしました。

● 全体の議論の整理の仕方ですけれども,私自身の意見は前から申し上げておりますように,建替え決議の中でそれを実質化していくという方向で,従来客観的要件と言われていたものは多数者の濫用をチェックするために何らかの歯どめが必要だろうと,そういう機能ですから,ただそれが後々訴訟になってリスクが残るようだと建替えのいろいろな阻害要因になりますので,手続的な要件としてできるだけリスクを残さない形で,しかし建替えに至る意思形成のプロセスの合理性を担保する仕組みを用意して,そのあたりのバランスをとるのが望ましい方向だと私は思っております。
ただ,従来の議論の仕方が客観的要件を維持すべきかどうかというところで,今日の2ページ目にありますように,多数決のみで建替えができるというのは合理的な理由なく多数決のみで処分を強いることになる制度だと,それはちょっと乱暴なので,何か客観的要件が必要でしょうと。どういうものが考えられますかというと,いい案はなくて,消去法として残ってくるのは年数で,30年あたりだろうかと。またその30年という要件についても異論がかなり強いということで,今日2の(2)のところで客観的要件を維持しつつ具体化を図るその他の案はいずれもコンセンサスが得にくいだろうというお話でしたけれども,年数要件についても同じことは当てはまっているわけで,残しつつ具体化を図るというのは,本来無理があるというふうに私は考えております。
今,○○委員がおっしゃった多数決のみで建替えができるものとする案はおかしいだろうというのは,しかしじゃ30年という甲案をとったときには,30年たってしまえば合理的な理由なく多数決のみで処分を強いることを所有権の性質の関係でどのように説明するかというふうに問題を立て直したときには,説明できないのだと思うのですね。それだけで,本当に合理的な理由なく建替えが認められてしまっては30年超えてもまずいので,やはり手続的な要件のところでそのあたりの歯どめをしっかりかけた上であれば,現在の客観的要件を外してもよいだろうと,そういう形で議論がいくべきなので,議論の進め方としましては,まず手続要件でどこまで合理性が担保できるのかという点をかなり詰めていただいて,どうしてもそれでは不安が残るという場合に年数要件を残すのがいいかどうかという形で議論をする方が生産的ではないかと。まず年数要件残しても,30年たってしまえば要件はないわけですから,じゃ合理的な理由なく多数決のみで決めてよいかということになると,そうではないのだと思うのですけれども,そこの点,年数要件で客観的要件は具体化されたと説明する場合には,30年たってしまえば合理的理由なく建替えしてよいという説明をされるというおつもりなのか,その点が気になります。
甲案・乙案につきましては,今日のお話から,あるいはパブリックコメントの結果からも乙案のただし書というのはやはりいろいろな問題があるので,ここでねらっていることは手続的な要件の中でむしろ議論していくのが理論的にも筋だろうと思います。
今日御指摘になったほかに,既にほかで指摘されていることでありますけれども,長期修繕計画の見直しの決議が必要だということになりますと,見直しの決議はなされたけれども建替えの決議はなされないという状態が生ずることをどう考えるかという,別の問題があるかと思います。これは結構深刻な問題で,見直し決議をしてしまったけれども建替えのコンセンサスが得られないという場合には,修繕計画もなければ建替えの計画もないというとんでもない状況が出てくるわけであります。前にここで確認しましたけれども,同じ日に修繕計画の見直し決議をやって,建替え決議もやるということで,そのタイムラグは生じないようにすることは可能ですけれども,その場合でも修繕決議の見直しは可決されたけれども建替えは否決されたということがあり得るわけですから,そういう状態が生じ得るような法制度を作っておくということはどうかと思いますと,乙案のただし書のコアの意味,つまり見直しの決議が必要であるという点については,それを要求すること自体が妥当でないというふうに私は思いますので,年数を残すのであれば甲案にするというのが望ましい選択肢だろうと思います。
そうしますと,私のような見方からいきますと,手続的な要件でどこまで建替えに至るプロセスの合理性を担保できるのかという点をぎりぎりまで詰めていただいて,それでもどうしても不安が残る,多数者の濫用というのが防げないから30年間は建替えができませんよというような要件を残す必要があるのだというか,そこまできちんとすれば,30年という要件もなくていいでしょうということにするのか,最終的にはそこの決断になるという,そういうふうに整理した方が問題が分かりやすいようにも思いますけれども,どうしても第1の方ばかり議論して,客観的要件を残すけれどもどういう案がいいかという議論の立て方をしていくのが,どうも全体の議論のバランスからいって,実質的には第2の方が重要ではないかと思うものですから,ちょっとその点について意見を申し上げました。

● 恐らく,今こういう形で議論をしているのは,現在の62条というのを改正するということから議論が出発していまして,62条自体は一応老朽化とか滅失とか,ある種の客観的な要件,こういう場合に建替えを多数決ですることができるという前提でできている62条なものですから,それとのできるだけ連続性,それでこの62条が必ずしも十分機能していないというので客観的な要件というのをそれなりに残しつつ,ただ30年とか年数だけでもって客観的な要件が62条で本来考えていられたものを置き換えることができるかどうか,これは恐らく相当問題だと思いますけれども,出発点は恐らくそういうことで議論してきたのだと思うのですね。そちらから議論をしても,あるいは一遍全部御破算にして,手続の合理化だけでもってどういうふうにできるかというところから出発しても,恐らく最後行き着くところはそんなには違わないと思いますので,○○幹事のような御意見を十分尊重しつつ議論はしていきたいと思いますけれども,今出ている今日の論点の整理につきましても,最初の方から行くかあるいは後の方から行くかというだけの違いなのではないでしょうか。

● 要件なしの多数決だけの場合に考慮すべき要素として,濫用防止のための措置だけでいいのかということは一つ問題点ではないかというふうに思っております。それはどういうことかというと,濫用という場合だと,典型的には地上げみたいなことを想像されるのですけれども,要するに5分の4というかなり重い要件ですから,そこで判断された以上,しかもある程度経済的合理性があったら,少数者が嫌がってもそこは甘受すべきなのだというふうなことが評価できれば,それは恐らく一般的な意味では濫用には当たらないというふうに考えられるのじゃないかと思います。
結局区分所有権ということを最初にどういう権利として設定したのかということを考える必要があって,これは最初は何もそういう権利がなかったというか,民法に一部しか規定がなくて,多少実態としてマンションみたいなものがにょきにょきとできたときに,どういう規律をするかということはかなりフリーハンドで政策として決める余地があったというふうに,過去の資料などを見て思っています。ただそのときに,名称としても「所有権」だし,「区分」という言葉がついているけれども,最初は多数決の建替え制度さえなかったということで権利を設けたということが出発点としてあるわけです。仮に,実際にマンションというようなものが社会的実態として存在している場合に,法律を作って規制する場合に,ほかの諸外国の立法例としてはあると思いますけれども,かなり絶対性を薄めたような形の,使用権の設定契約に近いような形の立法例というのはあり得るわけです。そのときに,これは非常に漠然とした話になるのかもしれませんけれども,マンションというか区分所有建物の区分所有権というのは,これは所有権に準ずるものとして,権利の性質とか実態としては持ち家に準ずるものなのだと,そこでどの程度権利を強いものとして設けて,法律上の規定を置いたのかということが一応考えてみる必要があるのではないかと思うのですね。
先ほどの話で,濫用のことだけでいいのかと言ったのですが,そこで,言いたいことというのは,要するに,多数決だけだとやはりどうしてもそこを乗り越えられないような問題が残ってしまうのではないか,そこが正に所有権の性質から導かれるものではないかと考えているところです。ただここの話の最終的にあいまいなところは,ただ一方では今回の改正というのは多少それを緩和して,もう少し簡単にできるような,あるいは円滑化できるような方向で議論していることをどういうふうに説明するのかということは問題としてあるのですが,ただ所有権として位置づけられているものと,区分所有権特有の拘束,団体的拘束があるということは否定はしないのですけれども,そこではやはりもともと所有権として設定されたものとしての限界というのは,出発点としては認識すべき必要があるのじゃないかというふうに考えているところです。

● 今日のお話を伺っていまして,30年までは建替えができない,30年を超えたら5分の4で建替えができるようにというのは,大体皆さん共通してここで認識していらっしゃることではないかと思うのですけれども,中間試案の形で発表され,補足説明を読みますと,老朽化の要件の方が先に出てきて,それ以外のが後に出てくる。それで二本立てで並列ということになりますと,先ほど30年というのはマンションが老朽化したということを客観的に示すような年数ではないかというような,ある種の誤解が出てくると思うのですね。そこの点をまずクリアにするためには,この案でいきますとイに相当する,第5の「建替え決議」の1のイの「損傷,一部滅失その他の場合」と一応書いてありますけれども,こちらの方をむしろ原則として掲げて,30年あるいは40年という年数が経た場合には,この最初のイの方の要件が緩和できるという趣旨なんだということを明確にされた方がいいのではないかと。法案の作り方の問題になるかと思うのですけれども,それが第1点です。
それから,第2点目ですが,どっちにしましても30年とか40年の年数というものを一応の要件として置くとしますと,乙案のただし書の問題がやはりあるというふうに思いまして,基本的なところは○○幹事がおっしゃったのと同じような意見ですけれども,補足説明の方を読ませていただくと,一生懸命管理しているところが何か建替えができないという問題があるというお話が,ではないということが書いてあるのですけれども,先ほど○○幹事がおっしゃったような問題が出てきますし,それからもう一つ,もっと悪いケースというのは,修繕計画は一応あるのですが,私の知っているような範ちゅうでは修繕計画というのは大体20年ぐらいまでなんじゃないかと思うのですね。30年とかもっと先までもつような修繕計画を立てていないで,これ自体についても規約の改正とか見直しができない,しかしそういうものがあるということを理由にして建替え決議の手続ではこの種の修繕計画がないということを理由として挙げないと手続に入れないシステムになっていますので,結局修繕計画の見直しも建替え決議の発議といいますか,そういうこともできないという場合が出てきて,結局事態は何も改善されないということになるのではないかと。非常に悪いケースで,レアなのかもしれませんが,そういうおそれを感じます。
それを改善する一つの方策としては,先ほど○○幹事がおっしゃったような形で乙案のただし書についてはむしろ手続を明確にするという形で改善をするという方向が一番望ましいのではないかというふうに思います。
それから,最後,3点目になりますが,○○幹事がさっきおっしゃった客観的要件,○○幹事との間で御議論になった点ですけれども,客観的要件を定めようと定めない案でいこうと,区分所有権については基本的には団体的な制約を受けた所有権であるという点は変わらないですし,どちらの案でいったって絶対的な所有権を個々の区分所有者の所有権を保証するということは,これはできない話なんですね。現実に専用部分について区分所有権があり,これが独立した所有権の対象だといっても,実際上は建物は共有部分であるところの廊下とか建物の構造部分だとか,そういうものなくしては存在し得ない,そういう所有権なわけですから,そうしますと結局少数者の保護,あるいはその建替え決議に反対する人の保護を考えるとしたら,手続的な合理性を与えるのがいいのか,実体法的な要件を定めるのがいいのか,どちらがいいのかという,そういう選択の問題だと思うのですね。ですから,そういうふうな議論の立て方をされた方がいいのではないか,どちらの方が普通の人にとって説得的なのだろうかという議論をされた方がいいのではないかというふうに思います。
そういうふうに考えますと,どっちにしても解決をしておかなければならないのは,先ほど被災マンション法との関係で,公益性がないと所有権について極度の制約になるような立法はできないじゃないかという問題,どうするかという問題,やはりどうしても残ってしまうと思うのですね。その点については,基本的に先ほどのマンションの専用部分の区分所有権の性質論との関係で,十分回答は可能ではないかというふうに思います。それはどうしてかといいますと,先ほど例として挙げられたのは,土地収用法における公益性の要件といいますか,公益性があるということを言わなければいけないという問題が出てきましたけれども,ここで問題になっているのは所有権に対して社会的公共性と言われている問題であって,所有者内部の問題について議論しているわけではないわけです。そこのところをはっきり区別する必要があると。我々が今やっているのは,先ほど申しましたように共有部分によって制約された区分所有権の性質論を議論すべきであって,そこの線引きをまずはっきりする必要があるというふうに思います。

● それ自体も恐らく大変な議論ができる部分ですけれども,ちょっと休憩いたします。

(休憩)

● それでは,時間になりましたので,審議を再開したいと思います。
先ほど,最後に,○○委員から何点かにわたって御議論いただきました。今の案のアとイの関係とか,これはむしろイの方を原則にすべきではないかとか,かなり重要な提言があったと思います。私もある種共感する部分もあるのですが,更に御審議をいただければと思います。

● 先ほどの○○幹事の説明の中で内閣の閣議決定の話が持ち出されましたが,これがどの程度拘束力があるのかよく分からないのですけれども,しかし,ここをきちっと踏まえておかないと,我々の議論の中でも影響が出てきているのではないかという心配があります。ただ,この閣議決定は,前に出ました「規制改革の推進に関する第一次答申」の中の「都市再生」の中に出てくる一項なのですが,その「都市再生」の総論のところに,分譲マンションについてということで,現在,既に築30年を超えているものが約12万戸あるということで,そういう老朽化マンションへの対応で早急に制度を整備することが必要であるという,そういう前提がありますので,この内閣の閣議決定が言っているのは,あくまでも老朽化を前提とした指示といいますか提案であるということに限定して考える必要があるのではないかと。そうだとすると,また振り出しに戻って,では老朽化というのはどういう場合を指すのかということをどうしても議論として考えざるを得ないのか。つまり,どんな場合でも多数決にしろということまで内閣が言っているわけではないということは認識しておくべきではないかと思います。
それで,前半の議論を聞いておりまして,同じような問題意識を私は持っておりますし,日弁連でも,意見に申し上げていますように,その問題意識の中から日弁連の意見としてもまとめたものがあるわけですが,一つは,老朽化の定義として,30年,40年という話の中で,結論としては,日弁連としては,もし決めるとすれば50年という長期にすべきではないかということを提案しております。なおかつ,損傷等につきましては,これはより明確な基準ではないかということで,建物の建替えの費用を基準として出すべきではないかという結論を出しております。
その中で,どうしても……,先ほどの議論の中に出てきておりますのは,30年に満たない場合でもそういう建替えが必要な場合が出てくるのではないかと。例えば旧耐震でもうかなり傷んでいる建物もあるでしょうし,陳腐化ということも出てくるわけですが,そういう場合に,これだけの要件で足りるかどうかという問題が確かにあろうかと思うのです。
その場合に,一つの考え方としては,今日のあちこちの団体の意見にざっと目を通したわけですけれども,特に,多数決要件を10分の9に加重してそういう場合を認めるべきではないかという意見もありますけれども,日弁連としては,こういう考え方が可能かどうか,ちょっと分からないのですが,一つは,円滑化法の中に,そういう危険な建物,マンションについては建替えの勧告ができるという規定が設けられました。そういうふうに円滑化法の基準そのものを用いるか,あるいは,そういった場合,都道府県知事からそういう勧告が出たというマンション,あるいは,同じような要件で非常に安全を欠く危険な建物については要件を緩める,そういう規定を別途例外的に設けることによってその辺の矛盾の解消ができないだろうかということを考えております。
ただ,陳腐化ということにつきましては,これはなかなか陳腐化の要件が難しいと思うのですが,現実にこれまで既に60棟ぐらいはあると思うのですが,全員一致で建替えがなされているマンションがあるわけでして,今回,62条の改正をする中で,建替えができるかできないかという議論をするときに,これはあくまでも法定建替えの話であって,建替えが必要である,つまり区分所有者全員の方が,陳腐化して建替えをしたいということであれば,それはその時点で全員一致で建替えができるわけですので,陳腐化のたぐいについてはむしろ全員一致で決めるべきではないかなというふうに思っています。
今回の62条の議論もそうですし,ほかのところもそうなのですけれども,区分所有権という権利の性格はどういうものかということが余り議論されないまま議論が進行しておりまして,例えば62条の緩和という点でも,見方によると,建替えを円滑化しなければいけないということの目的から,非常に便宜的に緩めようという議論が先行しているのではないかという印象があります。
しかし,一方では,例えば,建物全体を壊してしまうというか,区分所有関係を解消するについて多数決でできるようにしたらどうかという提案もありましたが,それについては採用されていないわけで,区分所有権が従来の所有権の絶対性というところからどこまで緩められていくのか,その限界はどこにあるのか。従来は,そういう絶対性というのがかなり尊重される中で区分所有法の改正が進んできたわけですが,現行法では,例外として二つの場合が認められているわけです。一つは,こういう建替えの場合です。もう一つは,暴力団等の不良入居者を追い出す場合に所有権そのものを排除するという規定が現行区分所有法で設けられたわけです。ただ,それは所有権を剥奪するわけですから,それなりの厳しい要件が現行区分所有法に課されているわけでありまして,特に,追い出しの規定なんかにつきましては裁判所の判断が入ってきますので,それなりの手続が保障されているわけです。
その現行法の状態を更に緩めていくということについては,やはり,区分所有権とは一体何だということをきちっと議論して確認しておく必要があるのではないかと。それをしない限り,安易に,なし崩しに法律改正で崩していくということについては,本来,実務家が言うことではないかもしれませんけれども,抵抗があると思っております。
それから,手続の問題が出ました。これは,手続について,手続がきちっと成立すれば,客観的要件については余り考慮しなくていいのではないかという議論が展開されているわけですが,それについては,一つは,やはり,そういう区分所有権そのものの性格の問題の議論が当然前提に必要であろうと思いますし,手続の問題だけで解決するのは難しい。つまり,客観的要件と手続の整備と両方のことをきちっとやることの中で,初めてそういう所有権を剥奪するという,まあ少数者の方についても権利保障されてくるのではないかと考えております。
手続についてどこまで整備するかということについても,まだ議論が足りないことは確かですけれども,しかし,多分,幾ら議論したとしても限界があるのではないかなと思います。
ただ,一つ,手続の問題で,従来の議論をしている中で,今回出されております問題点の整理の中で抜けていると思いますのは,情報開示の問題が抜けていると思っているのです。
前回の議論の中では,情報開示の重要性ということについては,たしか(注)の中にも入っていたと思うのですけれども,単に事前にいろいろな項目を知らせるということではなく,その裏づけになった資料・情報を区分所有者が自由に閲覧できるという体制を保障しない限り,形式だけに終わってしまう可能性があります。
ただ,これについて私どもで検討している中で,現行区分所有法の中でも,そういう情報開示については非常に条項が整備されていないですね。例えば,議事録とか管理規約についての閲覧権というのはあるわけですが,謄写権までは明示されていません。帳簿類等についても何ら規定はないわけです。ですから,それについては,建替えのところだけ情報公開をきちっとするというのはちょっと片手落ちな感じがするのですが,もしそれを整備するとすれば,全般的な形で情報開示というものを制度化すべきではないかと考えております。
ちょっと幾つかの論点で混乱しておりますけれども。

● いずれも重要な問題だと思いますけれども,多岐にわたっていましたので,別に私が整理する必要はないかもしれませんが,ちょっと私が感じていることも付け加えさせていただきますと,比較的明確といいますか,問題点としては明確。情報開示に関してもですね。私も,最低限,建替えについての書類であるとかそういうものを利害関係者,区分所有者が閲覧を請求することができる権利というのがあった方がいいのではないかと思っております。ただ,今,○○委員が言われたように,そういう問題は別に建替えだけではなくマンションの管理一般にあるかもしれないので,一般的な規定として設けたらどうかということも感じております。
ただ,問題点といいますか,難しいのは,一体だれにその義務が……,情報開示する方の義務ですね。それから,だれがその書類などを保管する義務があるのかとか,そういうのがもしかすると余りはっきりしていないかもしれない。特に,建替えの場合には一体だれが義務者になるのかとかいう点はもうちょっと詰めなければいけないかなと思いますが,基本的にはそういう方向で規定ができれば,それは好ましいと思っています。
それに,マンションの管理組合は,法人格を持った場合には基本的には中間法人的な団体になるわけで,中間法人の方はそういう規定を整備いたしましたので,そういう観点からも,マンションの管理組合について同じような規定があっておかしくない。現在,いろいろな税法との関係で公益法人に類する扱いをしていますけれども,これはあくまでも税法との関係の問題ですので,中身としては中間法人的なものであっていいのではないかと思っております。
それから,ある意味ではもっと大きな,先ほどから続いている議論ですけれども,客観的な要件の方から出発するのか,あるいは手続といいますか,合意の方から出発するのかという問題の延長だと思いますけれども,多数決なり,手続をちゃんと踏まえた上での多数決という場合にも,これは○○幹事が言われたように,あるいはほかの委員も言われたように,恐らく,そこでの合意というのは,どんな合意でもいいというわけでもなくて,例えば先ほどから問題となっている純粋に効用増だけをねらったような合意というのはだめであると。これは,もし全員が賛成すれば全く問題ありませんけれども,反対者がいるときに,その反対を押し切っても単純な効用増の建替えができるということにはならない。となると,やはり何らかの限界があって,それが,老朽化であるとか,先ほどからいろいろ,その基準の明確化は難しいわけですけれども,やはり限界があって,その客観化の要件をどうするかということが先ほどから議論になっていたのではないかと思います。
陳腐化とか,あるいは危険な建物についてどうするかというようなのは,これも一つの大きな問題で,今の案では余りはっきりしていませんので,これは是非,何かの形でもってそういう場合の建替えについての規定というものをうまく入れた方がいいと思いますけれども,これはまた更に議論したいと思います。ちょっと勝手な整理をいたしました。

● 先ほど申し上げたことに関連しまして。
「多数決の濫用」という言葉を使いましたので,ちょっと誤解を招いたかもしれませんけれども,私が「多数決の濫用」という言葉で申し上げたかったのは,単に数だけそろえばいいということではなくて,多数決をとる前提として具体的な理由が必要だと。それで,建て替えた方がいいのか,修繕してそのまま使った方がいいのかということについて,それぞれ,建て替える場合はこういうプランだ,修繕する場合はこれだけの費用がかかるということを通知しなければいけないということに中間試案ではなっていたわけですから,できるだけそこに判断の基礎となるような客観的なデータを提供させて,その適否を自分たちで考えるというのが,手続的な要件で縛っていくという考え方で,先ほど○○委員がおっしゃいました客観的要件というのは,最終的には,疑義があるときには裁判所に行って,裁判所に判断してもらうという形になっているかと思います。そうなりますとリーガルリスクが残りますので,むしろ情報開示をしっかりして自分たちで判断するということなので,それが,合理的な理由なく,多数決だけで,数だけそろえばいいということになっているかというと,そういう案は中間試案には盛り込まれていないかと思いますし,また,「規制改革推進3か年計画」というのが,多数決のみというのが,もしこの手続的要件も充実させるのはまかりならんということであるとしますと,乱暴な議論だと思いますけれども,そうではないと理解するのが合理的だろうと思いますから,できるだけ自分たちが判断できるだけの情報をきっちり出させなさいというのが,この合理的な理由なくということではなくて,それがあれば多数決の濫用がチェックできるでしょうと私が申し上げた趣旨であります。
それで,先ほど,所有権の絶対性というのが現行制度として前提となっているというお話でしたけれども,そうなりますと,所有権の絶対性は30年という改正案だということになると思いますけれども,なぜ絶対性が30年になるのかというのは,これは先ほどの○○委員の御指摘のとおり,そういう説明は理論的にはできないのだと思います。それから,既存の建物にも適用するという前提で,既に30年たっている建物については客観的要件が外れる,所有権の絶対性もなくなっているということになって,多数決要件だけで建替えができるということはやはり説明が難しいのではないかと思いますので,現在の客観的要件にかわるものとして,こういう保障がなされているから遡及適用もできますよという形の説明が必要になってくるので,手続的な要件の中でそれは十分担保できますよという説明をしないと,遡及適用はやはり難しいのではないかと思います。その点,補足させていただきます。

● 私どもの方は,5月に全国の代表者会議を開催いたしまして,今回の改正要綱案について検討いたしました。そのときにいろいろと出ました経緯のような話をちょっといたします。
意見書にもございますように,30年,40年という客観的要件については非常に問題がある,客観的要件とはならないのではないかということです。補足説明にございますように,公営住宅法とか都市基盤整備公団法,あるいは都市再開発法,所得税法,こういう法律は政策ではないのかと。政策を,個人の財産であるマンションというものの建替えの客観的要件に持ってくること自体に合理性がないというような話でございました。
したがいまして,以前に私,この場でも申し上げたと思いますが,むしろ何もない方がいいと。不動産協会の方にも何か出ていたようですけれども,何もない方がいいと。そのかわり,建替えに至る手続については,十分な情報公開,それと説明会というようなものを開催して,区分所有者に十分判断ができる材料を提供していくという筋道をつけていただいた方がいいということでございました。
そして,もしそういう形になるならば,判断するものとして必要なものは何かということになりまして,それにつきましては,建替えのイの乙案,損傷,一部滅失の場合の,「現在の建物と同等の建物の建築に要する費用の2分の1を超える費用」というのがございますが,これが私どもが前々から主張しております米国のFEMAの50%ルールに合うものではなかろうかということで,老朽化の場合もこれを導入していただいて,そして,きちっとした基準・ルールを,公平な第三者機関のようなものができて,そこできちっと数字等をはじき出していただいて,だれが見ても理解できる内容ならば,建替えに至るまでの筋道に十分に役に立つものではないか,こういうような話でございました。それを文章化したものが,大分長くなっておりますが,私どもの意見の中に入れてございます。

● ある意味では,○○委員の先ほどの御意見に少し似たところがあると思うのですけれども,一応,今のアとイというもののイの方ですかね,50%ルールと言われましたけれども。そういう意味での客観的な要件は残しつつ,年数の方はない方がいい,そういうふうに私は理解しましたけれども。

● 先ほど,情報開示の話が出たのですけれども,今回の区分所有法の再検討をするについては,建替え問題だけに絞らず,せっかくなので建替えをする管理組合の在り方といったようなところも,きちんと手をつけられるところはつけてほしいと思っているわけです。
前にもお話ししたと思うのですが,やはり理事さんとか理事長さんの暴走というのもありますし,それで,帳簿とか議事録の管理をきちんとしたいし,特に,大規模修繕したときの資料類が,終わってしまうとどこかに行ってしまったという例があって,その次のときに参考にしたくても,なくて,困ったこともあったわけです。この辺の義務づけがないので,要するに近隣のよしみで我慢してしまうという,こういう権利義務関係というのはおかしいじゃないかというようなことも思うわけです。不払者に対する請求でも,お願いしてもだめな場合は賠償の手続なんかをとっていくわけですけれども,理事長が,何でおれがそれをしなければならないんだという,普通の生活者の感覚で,そのぐらいのことだったらもう泣いてしまうという感じで,取立てをしないということはあるわけです。管理会社が入ってぴしぴしやってくれているところは別かもしれませんけれども,御近所よしみの自治会的な管理組合というのが結構あるのです。しかし,やはり財産権の問題なので,本来こういうことはあってはいけないわけですから,書類の管理だとか閲覧権といった組合員と管理組合の理事会側との権利義務関係をもう少し明確にした形にならないかと。となると,やはり法人格を持たせるということをもう少し義務づけるべきではないか。今は,自主的にやれば法人格を持つけれども,持っていないところがいっぱいあるわけです。いつかデータも見せていただきましたけれども。そういうことを感じています。是非それを一緒にやってもらえないだろうかと思っています。

● 先ほど,仮に情報開示といいますか,帳簿閲覧とかそういうのの請求権を認めて,かつ,同時に義務者を決めることになると思いますけれども,そのときに,例えば具体的にだれに義務を負わせるかとか,そういう問題と関連しますね。ただ,権利能力なき社団であっても,同じように……。

● 本来はそうであるはずなのですけれどね。

● ただ,それにも至っていないようなのもありますので,そういうところが問題。

● 1点だけ。
先ほどの○○幹事のお話で,所有権の絶対性が30年というのは説明がつきにくいのではないかというお話で,なるほどなという気もしたのですけれども,ただ,翻って考えますと,今回のこの話は,客観要件の明確化の必要性ということが一方であって,それとの兼ね合いということがあると思います。それがまたこの議論の出発点でございますし,法律には調整ルールとしての機能性みたいなものも求められるわけですから,そういったこととの兼ね合いでその30年ということが説明つくのかなという気がいたしました。

● 区分所有権というものをどう見るかという議論も,今まで時々議論に顔を出しはしていたのですけれども,今日に至るまでそんなに本格的には議論しなかったような気もしますけれども,これはやはり出発点といいますか,基礎にある非常に重要な問題で。それで,○○委員が,前から,比較的,区分所有の場合,従来の普通の共有と違って団体的な規制があるのだということを言われていたと思いますけれども,問題は,正にどの程度規制されるかという問題,またどういう場合に規制されるかという問題で,また逆に,規制の及ばないといいますか,各区分所有者の権利が所有権として−−もちろん制約のある所有権ですけれども−−保障されるときに,どの場面でもって必ず保障されるのか,そういう問題だと思うのです。30年という期間でもってその限りは絶対的に保障するというのも確かに説明はしにくいのですけれども,ただ,そこは一種の,そういう年限という形ではあるけれども,その間は建物区分所有者の所有権というものが多数決では奪われない,そういうものとしてある種の最低限の保障をしている,そんな説明も可能なのかもしれません。

● 管理業協会として何も言いませんといけませんので。
私どもも議論をしましたが,実は十分なまとめができておりません。そういう中で言いますと,この法律に触れる前に,長期修繕計画とか修繕積立金という法の規定そのものが実はないじゃないかと。そうすると,ここにいきなり長期修繕計画というものが出てきたときに,ではその長期修繕計画の具備すべき要件というのは一体何なんだというようなことで,新たな火種になりかねないというようなこと。それから,ゼネコンさんがお作りになったり,関連会社が作ったりというようなことで,最近は長期修繕計画が幾つかあるのですけれども,必ずしも十分統一されていない。レベルの高いものもあれば,かなり低いものもあったりとか。その辺のことを含めても,長期修繕計画というのはそんなに絶対性のものかなという疑問が出てしまっているというようなことでは,乙案よりは甲案だという考え方でございます。
では,甲案という話になってきたときに,年数要件が,建替えを発意する目的あるいは目安として30年あるいは40年ということであるならば,それは何も法文上に定めなくても,別の手立てで対応が可能ではないのかと。それは,いわゆる手続を明確にということになるのだろうと思いますが,建替えを議論していく過程では,1回の総会でもってぽんと決まるということはまずあり得ない。その中では,建替え円滑法は決議後のこと,今度の区分所有法はその建替えの決議要件というようなことをやっているわけですが,その裏に,だれが建築主になられるのか分かりませんが,建替えを進めていく上でのコーディネーターというようなものが当然いるのだろうと思いますが,そのコーディネーターの役割,あるいは,そこで議論されてきている折々に触れての情報開示の方法とか情報開示すべき内容,そういう手続的な,決議に至るまでのルールというものがちょっと欠落しているのではないか,こういうことになってきておりまして,あわせてこの辺のところをどう考えていくのか。今度の区分所有法のこの部会ではないにしても,国土交通省内部のその辺の指針を私どもとしては待っているといいましょうか,早くその辺を明確にしたいと期待しているところでございます。

● 印象に過ぎない点もありますが,この機会に幾つか申し上げたいのですが。
一つは,多数決要件だけでよい,そこの手続の実質化でおかしなことにならないように担保したらよいのではないかという議論もかなり有力のようですけれども,仮に築後間もないマンションについて,10年,5年等で,効用増を専らの目的として建替え決議の発議がなされ,しかもデータについてはもう十分,うそはついていない,ちゃんと説明している,こういうふうに新しくしたいんだと。それで決議が5分の4で通った場合に,手続の実質化ということでそれは結局どうなるのか。効用増だけを目的にしているということであれば,手続的に問題があったということで,裁判上後で争われることになるのかどうか。その際に,それは手続的合理性の範ちゅうの問題なのか,実体的合理性の問題となるのか,その辺が,少なくとも私にはまだ明確でないように思われますので,その辺を明確化した上で議論することが必要なのではないかと思います。
それに関連して,実体的合理性か,手続的合理性か,その選択の問題であるという御指摘もありましたけれども,私はそういうふうに考えておりませんで,仮に30年,40年という期間要件を設けましても,だから手続的合理性がなくてよいということにはならない。その上で,5分の4の決議を得る過程において,やはり手続的な実質化というものは十分図らなければいけないと考えておりますので,これは単純な選択の問題とはとらえられないのではないかという感じがいたしました。
それから,イとアをひっくり返すという案ですけれども,これも私が十分理解していない可能性が大ですけれども,イをそういうふうにひっくり返すことによって,30年,40年という期間がいわば老朽化の目安と受け取られる,誤解される,そういう懸念を払拭するためにということであれば,必ずしもひっくり返して……,ひっくり返してどうなるのかということですね。その辺がまだ私には十分理解できておりませんので,その辺も明確にされて説得されれば賛成したいと思いますが,その辺が,少なくとももう少し御説明をいただきたいということです。
それから,区分所有権の性質論ですね。「絶対性」という言葉を使うことがいいのかどうか。絶対性という場合,それは物権の絶対性とか債権の絶対性という,そういうレベルの問題なのか,そうではないのか。その辺の言葉。若干それが,「絶対性」という言葉を使うことによって揚げ足取りになると。やはり,より相対的……,ポリシーの問題だと思うのです。区分所有権という独特の権利,それを組合的に見るか,所有権に近づけて見るか,それはなかなかどちらかに割り切れないわけで,その線引きをこの建替え決議というところで,どの辺で妥協案というか,それを見出すかという問題なので,余り権利の性質のところで絶対性とかいう言葉を使わない方が,端的な言葉で分かりやすいのですが,ベターかなと思いました。
最後にもう1点ですけれども,アの乙案で,手続的要件として純化すべきだという意見を前に申し述べましたが,その際に,修繕計画の廃止があって,建替え決議も否決された場合,宙ぶらりんになってまずいのではないかという御指摘があり,それについては確かにそうかなという感じもいたしました。したがって,手続的要件として純化する際に,廃止まで求めない,必ず廃止を求めることにするのかどうか,その辺については柔軟に考え,廃止を必ず必要とするというふうにしないというのも十分考えられる選択肢かと思いました。また,手続的要件の整備に際しては,大規模修繕計画があるマンションだけがそういう手続的要件が必要だということにもならないだろう,そうでないマンションにおいてもそれは必要であると。その際に,修繕計画があるマンションとないマンションとで手続的要件に差を設けるべきかどうか,その差を設けることについて合理的な理由の説明ができるかどうか,そんなことも,ちょっと今,具体的な提案という形にはならなくて恐縮ですが,論点として,あるいは考慮すべき点として考えていただきたいし,私も考えたいということです。

● ○○委員が最初に言われたのが,今,一番中心的な争点になっていると思うのですけれども,やはり何らかの意味での,つまり手続がきちんとされていれば効用増でも構わない,場合によってはいろいろな客観的な周辺の事情−−地上げだとか再開発だとかいうことが雰囲気として起こってきて,マンションの多数の住民がその方向で行きたいと考えたときに,それでも手続的にちゃんとやれば5分の4でいいのだというふうに言うか,建替えのための客観的な要件を何か残すかですよね。それが一応,言葉としては「老朽化」という形で抽象的には言われていますけれども,それを具体的にどういうふうにあらわすか。
それから,アとイをひっくり返すというのは,これは私はあり得ると思っているのですけれども,ただ,それから出てくる一つの問題は,イの方を原則にして,イの要件を満たさないといいますか,それを証明しないでも,年数が一定たてば建替えができるのだというふうにしたときのその年数が持つ意味というのが,もしかしたら微妙に違ってくるかもしれない。一つは,イの方に合わせるように,イも必ずしも老朽化とは違うのだけれども,建物の効用を維持するための費用と建物の価格との比較でもって建替えが合理的だという基準だと思いますけれども,それが,30年とか40年とか一定年数たったときには,建替えをする,その今の二つの比較,効用維持と建物現存価額ないし建替えの価格との比較で出てくる建替えの合理性というのを示す指標だというふうになったときに,年数というのが,先ほどから問題となっています30年でいいのか,あるいはもうちょっと長くなるのか,その辺にも一つの問題があるような気がするのです。先ほどから出てきている一つの議論は,30年というのは,ある種の少数者の権利が絶対的に保障される期間であって,それ以後は私的自治でもってある程度自由にできるのだという考え方ですと,そういう立場からの一定の年数と,もうちょっとはっきりと,老朽化の指標としての年数だというのでは,恐らく年数が少し違ってくるのだろうという気がちょっとしています。
それから,もう一つだけ補足したかった点は,所有権なのですけれども,これも確かに難しいといいますか,そもそもマンションの建物区分所有法というのは一定の団体的な決議でもって建替えを認めていますし,そういう意味では絶対的に所有権が保障されているわけではないけれども,しかし,ここでも,単に政策の問題なのか,例えば効用増というような形でもってみんなが賛成したときには所有権というのは奪われてもいいんですよという,そういう意味での,それも選択肢に入ってくるようなポリシーの問題なのか。それとも,やはりそこまで,つまり少数者の反対を押し切っても所有権が奪われるというか,買い取られるわけですけれども,有用な法律制度を作るためには,やはりそれなりに,それを正当化するある種の理由が必要なのか。そういう問題で,単純にポリシーの問題なのかどうかというのは,ちょっと私は危ぐを持っています。

● 話をちょっと戻しますが,○○委員が先ほどおっしゃっていて,やはり建替えということになると,建替えまで行く間の情報開示の内容だとか時期なんか,決議に至る手続がここで……,国土交通省のガイドラインなんかに期待していらっしゃるとおっしゃったのですけれども,やはりガイドラインというのは,どうしても時の公の御都合に振り回されてしまったり,あるいは,逆にガイドラインというものの限界というのは守られないということもあるので,ここは必要最小限を法律できちっと明記していくということの方をお願いしたいのです。

● 先ほどの意見の継続みたいなものなのですけれども,区分所有権をどう考えるかということの中で,先ほど,○○委員の方から,組合的権利という考え方もあるという話も出たのですが,正にそこが……。従来,我々がずっと考えてきているのは,あくまで民法の共有から発して出てきている権利なので,いまだ絶対的所有権を引きずっている権利であるということで,裁判所もそういう理解でかなりの判決を出している現実があるのです。確かに団体法的な制約ということも出てくるのですが,それがどの程度なのかというと,まだかなり限界があるわけです。
ただ,私どものようにマンションの事件をかなりやっていますと,その辺が従来の区分所有権と全く変質したものとして,いわば組合的なものというぐらいの権利設定をもうそろそろしていいのではないかなというふうには考えているのですが,今回,更になおこういう区分所有権に対する制約を法律で明確にするとすれば,極端に言えば,例えば30年と決まれば,この権利は30年後にはもうなくなってしまう権利ですから,30年しかない所有権だというふうになるわけですね。なおかつ,いろいろこういう制約もあるのだということの中で,そうなってしまうと,例えば規約をどう作るかというときも,管理組合としては,その規約の中でそれぞれの権利をどう制限するのか,どこまで制限するのかというのは絶えず非常に大きな議論になっているわけです。区分所有権そのものを制限するような,例えば賃貸・賃借についてまでは制限できるけれども,所有権そのものについてまでは制限できないとか,その辺の限界を引いて今の規約改正をしている部分がありますし,それから,裁判所においても,例えば規約改正とか共用部分の変更の場合のただし書といいますか,特別影響がある場合は認められない,その特別影響を受ける者の同意が必要だという規定が現行法でありますけれども,これがかなりいろいろと制約を作っていまして,裁判所はどちらかというと,正当事由ということは言っておりますけれども,この特別影響というものをかなり認めている傾向があるわけです。その背景には,多分,所有権の絶対性というものが裁判所の頭の中にあるのではないかと思うのです。
ただ,今回の審議の過程で,例えば30年,40年であればもう建替えできるんだと,言い換えれば所有権の剥奪もできるのだとしてしまった場合,要はこの改正をもって区分所有法が変質したのだという理解で承認するのかどうかというところまで,そこで決めるとすれば,是非そういう認識を持っていただきたいと思うのです。そこは全然考えないで,便宜的にそうしたということだけでは,この法律の改正をしたことの歴史的な意味合いというのは何もないのではないかなと考えております。
もう一つ言えば,30年,40年にした場合に現実にそれがどう動いていくかということの中の一つの心配は,銀行が担保評価をどう考えるのかということがあります。これは,住宅ローンが,今,かなり長期のものが認められている中で,所有権そのものが消えてしまう可能性があるとした場合に,果たして今後も銀行にこれまでのような担保評価をしていただけるのかどうか。その辺の現実的ないろいろな諸影響ということも考慮しておく必要があるのではないかと思います。

● 今の議論とも関連するのですけれども,先ほど○○委員の言われていたことを別の視点からお話しさせていただきたいのですけれども。
基本的には,やはり法体系全体から見て,区分所有権,その住戸部分,専有部分に関して,所有権という,それがあるいは所有権の亜種なのかどうかはともかくとして,そういったことは外せないと思うのです。そういった意味では,原理的に考えても,あるいは実態的にも,そのマンションを買ったときに,そういった所有権というのは,相当な期間,財産権として保障される,そういうのが一方であろうかと思います。他方で,とはいっても,専有部分といっても宙に浮いているわけではありませんので,躯体・共用部分に支えられてという,いわば内在的制約ということもあろうと思うのです。ですから,一方を強調するのではなくて,やはり区分所有権という姿はそういったものだと,そこから出発すべきだろうと思います。
そうすると,前者の立場は,所有権の保障,それから実際に利害が対立したときに,その人たちの所有権を奪う合理的な根拠というときに,全面的に私的自治に任せていいかというと,やはり私的自治に任せてはおけない,いわば手続的な要件を完備しただけでは任せておけない部分が残ろうと思うのです。そうすると,幾ら所有権を保障するといっても,未来永劫というわけではなく,それなりの年数ということになるでしょうから,どこかで線を引かなければいけない。そうすると,そこの段階で,30年,40年,あるは50年というのが絶対的に所有権の内容だということではなくて,それは恐らく政策判断になろうと思うのです。現状に照らしてどのあたりで線を引くべきか,あるいは今後の,今,○○委員も言われましたようなことも踏まえて,実際に人々がマンションを管理するときに,余り短いとそういったことがうまくいかないとか,いろいろな配慮というか,最終的には,何年にするかというのは政策的判断。それで,そこではどうしても不合理な部分が起こると。ですから,これは,一定のところでエイヤッとやるほかないと思うのです。ですから,仮に30年,あるいは50年といっても,真の意味での合理的な理由は立たないと思うのです。ですから,そこはもう私的自治に任せて,多数決というのは正に合理性で担保できない部分があるので,ある意味では両方正しい,両方の言い分は分かるというところを,最終的に多数決と。そして,区分所有法の場合には,基本的には5分の4という所有権を奪うについて特別多数ということなんだろうと思います。
そして,その多数決をする段階で,合理的な判断を人々がなせるような同じ土俵の上に立った上で手を挙げるというようなことで十分な手続というのが一方では保障されなければいけない。ですから,私は,基本的には,手続的に解消できなくて,実体面ということもまず押さえておくべきだし,他方では,情報開示という面から手続要件というのもそれなりに合理性がなければいけない,そういうふうに考えます。

● 区分所有建物の法的な性格については,学問的な議論は,私は研究者ですので,論文を書いて明らかにしたいと思いますけれども,先ほどから出ている議論で,政策的にというのは,融通無碍で,何でも政策的にと言えば説明できてしまいますので,適当でないと。
効用増の話が出ていますけれども,30年間は効用増を理由とする建替えはだめだというのであれば,30年たったら効用増を理由とする建替えはよいという改正を,今まではだめだったけれども今回はするのだということになりますから,それを政策的に説明されるのだと思いますけれども,そのあたりは,効用増という議論自体が,何をもって効用増と言うかという難しい議論になってきますので,余り効用増の建替えがいいか悪いかという議論をここで入れてしまいますと,議論がいたずらに錯そうするかと思います。
区分所有権の性格づけ自体については余り長くお話ししませんけれども,基本的には,現行制度は,ある建物が社会的・経済的な効用を終えたというときには,もはや区分所有関係を維持するのが適当でないので,解消して,新たな建替えという次のフェーズに移行すると。民法の共有というのは,これは所有権は絶対でありますけれども,しかし共有者間でうまくいかないときにはいつでも分割できるというのが民法の共有で,建物区分所有法というのは,分割できないという関係を共用しているから団体的な規律に服せしめると。しかし,それは未来永劫ではなく,建物が社会的・経済的な効用を終えるまでの期間でありますから,建替えの問題というのは,団体的な強制をするのがいつまで続くかというその周期をどう明確にするかという問題だと思います。現在の客観的要件というのは,社会的・経済的効用をいつ終えたかという認定は,社会通念に照らして最終的には裁判所が決めるという案ですけれども,これだといろいろな問題があるので,そうではなくて自分たちで認定しましょうと。それで,その認定の合理性をどういうふうに確保しましょうかというのが,手続的要件の実質化と私が申し上げていることでありまして,これは区分所有法の性格に反するものでなく,むしろ,だれが認定するかという問題を正面から議論していけばおのずと出てくる方向ではないかと思います。
手続的要件で,今日も中身についてそれほど詰めた議論をする時間はないかと思いますけれども,今日の1ポツの,「1か月前より更に繰り上げる必要はないか」というのは確かに非常に重要な点でありまして,中間試案によりますと,建替えをするのであればこういう形になる,現状維持するのであればこのぐらいの費用がかかると。その一定の議案の要領とか,一定の情報を得た後で,果たしてどちらに賛成するのか反対するのかという点について決断するための時間も必要でしょうし,そのための一定のデータ,これは一体どういう根拠に基づいてはじき出された数値なのだろうかというようなことが当然知りたくなると思いますけれども,そういったことで,説明会の話もありますし,先ほど言った,この算定根拠の客観的なデータを示せというのは書類等の閲覧請求という形になるかと思いますけれども,それをきちっとして,データをとって,場合によってはそれとは違う見積もりをとるなどして,十分な検討を各自できるだけの期間は,1月でいいのか,2か月,3か月必要なのか。建替えに至るプロセスというのはもっと長い期間あるわけですから,その最後をどのぐらい確保するかというのは,2か月,3か月にしてもそれはよいかと思いますので,そのあたりの期間と,その間にどういうデータだったら要求できるか,だれがだれに対して,どのぐらいの要件でできるかというあたりは,是非詰めていただいて,具体的な案をこの後の検討の中でお示ししていただきたいと思います。
マンションの管理全般の情報開示の問題があるというのはその通りかもしれませんけれども,やはり限られた時間内で,今,建替えの問題がメイン・イシューですので,そこに限ってそういう情報開示の規定を置くと。マンション管理全般につきましては,今後,更なる法改正の中で検討していけばいいと思いますので,差し当たり次の検討のときには,説明会のほかにデータをどういうふうにして出させるのかという,その合意性確保のためのすべというのを更に整理していただいて,それが決議の瑕疵に結びつくのはこの部分とこの部分だといった法的な整理までしていただきますと,リーガルリスクを避けるという意味では重要かと思いますので,そのあたりの議論を,次回になるか次々回になるか分かりませんけれども,是非お願いしたいと思います。

● 今の点は非常に重要な指摘ですね。是非そういう準備をしたいと思いますが。
今日はまだ若干時間が残って……,ほとんどないのですけれども,ちょっと私の不手際で,今日の資料で言いますと,第1の,おまけに半分ぐらいしかほとんど議論ができなかったのですけれども,なお若干時間がありますので,今の手続の点とか,あるいは,ア,イのうちのイの問題というのは,実はアと非常に密接に関連していますので,今日もかなり議論できたとは思いますけれども,いかがでしょうか。

● 今の手続に関するところで,集会までの通知期間が1か月ということですが,これについては,私どもは,1か月あればいいのではないかということです。
ちょっと○○幹事は誤解をされているのではないかなと思うのですが,通常,集会を開いて決議をするときは,5分の4以上がとれるとなると,集会を開いて,やるのです。その前に,事前に何回も何回も説明会を開くのです,現実に。ですので,私は,1か月あっていいと。その前に何か月もかけて,長いのは10年も12年もかけてやっているのですから。ずっと段階を踏んで,もう大丈夫となると初めてそこでやるわけですので,この中で,1か月というのは短いから,もっと長い期間にした方がいいんじゃないかということは,これは,私は,1か月でいいと。ただ,その前に,先ほど申し上げましたように,情報開示,閲覧権,それから謄写権というようないろいろ意見が出ていましたけれども,そういったものをある程度設けるということにしておけば,十分に区分所有者の方には判断できる材料は行き渡っていくのではなかろうかということでございます。
それともう一つ,先ほど一つ言い忘れたのですが,私どもの方は,老朽化についても50%ルールというふうに申し上げました。これをやりますと,アとイと同じになるわけですね。ですので,一緒ということ,一本でいいということになるということでございます。

● 今の○○委員の御指摘は,多分,皆さん,そんなに認識にそごはないと思っているのですけれども,あくまでも1か月というのは,案が確定して,それで通知して,議決をとるというところですから,そこはもう限界があって,余り前にずらしてしまうと,それはかえって手続の進行の制約になるということは十分意識していると。
ただ,今回,ちょっと頭出しみたいな形で申し上げたのは,○○委員がおっしゃっている説明会とは違って,案が確定した段階でも,やはり,これについてどうなっているんだということを聞きたい場合があって,案が確定した後も説明会を何か開かなければいけないとなると,1か月では若干足りないのではないかと。もちろん,いろいろな発想としては,案が確定する前の段階も法制化するという選択肢はないわけではないと思うのですが,そこは余りにも計画の進め方というのがいろいろありすぎて,法律で枠をはめるのは無理だろうということでございます。ですから,期間の問題と説明会の問題にしても,今言った,とりあえずはそういう限度で御議論いただいて,多少拡張するかどうかというあたりに絞って審議いただければというふうに思っているところでございます。

● 実は,私,4月に国会の国土交通委員会に参考人で意見聴取で出席したわけですが,議員の先生方から,最後に,円滑化法ができたとして,区分所有法が改正されたとして,あとどこにまだ不足するものがありますかということを言われたのです。残っているのは,今申し上げましたように,集会の決議をするまでの段階が残っているのです。これがきちんとしていないと,そこへ持っていくまでに物すごく時間がかかるのです。先ほど,10年,12年と申し上げましたけれども。ですので,この辺をある程度きちんとルール化していただくということが必要ではないでしょうかということは一応申し上げたのです。
もう一つは,現在の法律では,建替え決議はしていいということになっていますが,ではそこまでに至る費用の負担はだれがするかというのはないんですよね。それについてもありませんので,その辺のところをひとつ検討していただきたいということは申し上げたのですけれども。ちょっと付け加えさせていただきます。

● 先ほどの1点の補足だけ。
情報を出せという場合に,どの情報を出せというのかというと,その対象の特定をしませんと法制度としてはなかなか組みにくいので,招集通知があって,そこに一定のことが書いてあれば,これは一体どういうデータに基づいているのかという情報を出せと,そういう,法制度として組むときの組み方として,情報開示と招集通知を結びつけるという在り方があるのではないかということで,そうなると,もう少し前にしないと,1月間だと短いのではないかということですので,そごはないのだと思いますけれども,法制度として組むときには,だれに対してどういう情報を出せと言うかという,その特定の仕方を詰めていくと,そういう議論もあるのではないかというのが私の真意であります。

● イについて私の意見を若干述べさせていただきます。
私は,基本的には,イの場合には乙案の方がよろしいのではないかということでございます。
ここに書いてある,例えば乙案の同等の建物と維持,回復費用とを比べるというときに,これはあくまでも修復の場合と建替えの場合とを比べるシミュレーションというか,その過程ですので,そのときに,現行法で言うと過分の費用があるかどうかというのを具体化するということですので,ですから,それが必ずしも足かせにはならないのではないか。
それを前提に意見を述べさせていただきますと,アの場合と違いまして,イの場合には,いわば30年たたない前の状態でございます。そして,災害などによって一部滅失あるいは損傷したという建物。基本的には,そこの区分所有建物というのは,恐らくそれを改修する方向で働く,あるいはそういう議論をすべきだろうと思います。それをどういうふうにもとどおりにするかということだろうと思います。ですから,アの場合のように,建替えを望む人と建替えを望まない人との対立,権利の調整ということではなくて,いわばそういった修復をする過程での路線の違いといいますか,この際建て替えよう,あるいはこのまま使おうということで考えればいいのではないかと。
そうすると,その場合に,いわば現行法を引きずった甲案というのは,現行法上はそれなりに,過分の費用ということで老朽化も入っていますので,現在の建物価額ということを比べる一つの基準にする意味合いがあるけれども,そういった意味での老朽化というのはアの方に追いやられたわけですので,純粋に一部滅失,損傷ということで,災害復旧をどうするかという方向で考えればいい。そうすると,そこでは,災害復旧の場合,建物の現在の価格を比べても余り意味はないのであって,すなわち建替えを望まない人に対して余り説得的根拠にはならないであろうと。恐らくその人たちからは,現在の建物価額は非常に低いんですよと言われても,それは直さなければいけないのでしようがないでしょうという声しか跳ね返ってこないとも考えられます。そうすると,そこでは,やはり,維持,回復するという方向は非常に割高なんですよ,建替えをした方が割安なんですよ,過分の費用はかからないんですよと。それを具体的に示したのが乙案だと思います。
そうすると,ここでは,アとイを分けた以上,イの方はそういった意味で純化して,乙案の方が妥当なのではないかと,そのように考えます。

● ちょっと今日はもう十分議論する時間がございませんけれども,恐らく,アとイとの関係をどういうふうに見るかということとも関係して,もうちょっと見直さなければいけないのではないかと思いますので,今日の残りは,次回,団地の部分も残っておりますし,それから,規約の問題に関しても次回は御議論いただきたいと思っておりますので,それを次回にしたいと思います。
次回の日程等については,○○幹事から。

● 4月にメンバーが入れ替わって,ちょっとフラット5が余り機能しなかったみたいで,議論が残ってしまいましたけれども,次回はきちんと進められるように事務局の方でも準備したいと思っております。
次回の議事日程でございますけれども,今月の17日の月曜日,午後1時半から,法曹会館の高砂の間でございます。よろしくお願いいたします。

● 曜日が今度は月曜日ですので,ちょっと変わりますので,御注意いただきたいと思います。
それでは,本日は,どうも皆さん,ありがとうございました。また次回よろしくお願いいたします。


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