第8回住宅・土地、公共工事WG 議事概要

1. 日時

平成14年11月13日(水)10:00〜12:00

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室

3. 議題

(1) 国土交通省ヒアリング 「土地収用法の積極的活用について」

(2) 法務省ヒアリング 「競売の実効性の確保について」

(3) 素案審議

4. 出席者
(委員等)

八田主査、村山副主査、森委員、浅見専門委員、福井専門委員

(事務局)

福井審議官、千代参事官、下山企画官、宮川室長、事務室担当員

(国土交通省)

総合政策局:岡田国土環境・政策課長、山下同課調整官、小川土地収用管理室長

都市・地域整備局:西植街路課調整官、宮原同課課長補佐、菊池都市計画課課長補佐

(法務省)

民事局:谷口参事官、筒井民事局付検事


議事概要

(1)国土交通省ヒアリング「土地収用法の積極的活用」について

(八田主査)第8回の住宅・土地、公共工事ワーキンググループの会合を始める。本日は議事録を公表する。最初は国土交通省から土地収用手続の更なる改善についてヒアリングを行う。

(国土交通省)国土調整・環境課長の岡田です。宜しくお願い致します。
 前回のご説明が不十分で申し訳なく思っています。その後、検討を急ぎまして、関係者の共通の認識に到達した点について今日は御説明する。
 私どもとしましても公共事業の効率的な実施は重要な命題である。その観点から事業のスピードアップを図るべく省をあげて取り組んでいるところであり、土地収用の積極的活用を含めた用地取得のスピードアップにも積極的に取り組んでいる。
 お手元の資料、収用法の積極的活用も含めた公共用地取得の促進の取組ということでまとめている。
 最初の柱、住民理解の促進については、用地取得の隘路として事業計画反対等用地取得の前提となる事業の説明等が不十分である、そのため住民の方に事業を理解していただく、あるいは地権者の方に用地買収について理解していただく、といった取組を行っていきたい。
 1点目は、用地買収に入る前に住民の方々に十分ご理解をいただくための説明の実施である。従前から指摘されていることではあるが、事業説明会の充実を図るとともに、さらに構想段階からの住民参画手続の充実ということで、いくつかの道路事業でパブリックインボルブメント等を実施していますが、そうしたものをさらに広げていきたい。
 次に、広報活動の充実であるが、地権者の方々に土地を手放すということがどういうことか、ということについて幅広くご理解いただくための周知を徹底していきたい。
 それから大きな2点目として、用地取得体制の強化を挙げている。これは用地取得に当たり、多くの地権者がいるところについては集中的な用地交渉をしていただき地権者のご理解をいただくといった必要があるが、マンパワーの不足ということもあり、それをどう補っていくかということである。1つめは用地取得業務における民間活力の活用である。用地取得業務は、いろいろな事柄について住民の方のご理解をいただき、住民の方の不安を除きつつ用地を取得していく必要があるが、必ずしも事業者の体制が十分に整っていない場合もある。こうした際には民間の補償コンサルタント業者等を活用しながら用地取得をきめ細かくやっていきたい。
 具体的には次の資料にどのような業務を民間に委託していくかという点をまとめている。資料に全般的な用地取得の流れを書いているが、この中で補償コンサルタント等民間に委託していくものとして黄色の部分、測量調査、補償金額の具体的算定、登記書類の作成等がある。さらに、用地交渉においても、具体的に補償金額、内容の説明等について補償コンサルタントにお願いしながら、できるだけきめ細かな用地交渉をして、全体の用地取得の推進を図っていきたい。資料の青色の部分は、起業者として、弁護士法との関係の中で最低これだけはやらなくとはならない、と考えているものである。
 4番目の用地担当職員の資質の向上ですが、当然のことではあるが、引き続き研修の充実等を確実に図っていきたい。
 5番目の生活再建措置の充実については、用地取得の隘路として代替地の確保、生活再建が問題になっている事業も多いので、代替地の斡旋、ダム等の大規模事業については生活相談所の設置等により、きめ細かな生活再建措置を講じていきたい。さらに資料としてお示ししているのが、代替地情報提供システムの活用である。代替地については、それぞれの起業者が地元の業者と協力して斡旋に努めているが、今年の夏から、代替地を要望される方、起業者、国や地方公共団体等の公的団体、あるいは民間も入れて、情報システムを構築し代替地斡旋の手助けにしたいということで、各地方整備局ごとにこのようなシステムを発足させた。
 関東エリアで起業者が約1000、民間業者が約700程度参加している。立ち上げたばかりだが、こうしたシステムを充実させながら代替地提供の助けにしたい。
 それから土地収用法の積極的活用について、従来いわゆる3年・8割というルールが十分徹底していなかったので、起業者に対する周知は当然として、今後は住民の方に対してもホームページ等を活用しながら、収用はこういうタイミングで使用していく、ということを周知していきたい。また、「ルールの運用に関して適期の収用手続への移行に資する説明責任の充実の観点から見直しを行う」ということを昨年来ご指摘いただいているが、事業をスピードアップするためにはどういうタイミングで収用手続に移行するか、という時間管理をしっかりしていかなくてはいけないと考えている。そのため、具体の事業の工期、用地取得の進捗状況、収用手続に移行する時期、見通し、仮に移行しない場合にはその理由等について、公表していきたい。具体の公表内容については現在つめているところであるが、公表することにより自ら時間管理をしっかりしていくことを目に見える形で進めていきたい。
 さらに、都市計画事業についても3年・8割ルールを適用するよう見直しを行うという点について、従来都市計画事業はエンドレスというような指摘がある。都市計画事業は他の事業とは若干法システムが違うので具体のルールの定め方は検討中だが、基本的には他の事業と同様3年・8割ルールを適用するという方向で取り組んでまいりたい。
 引き続き、都市計画事業関係について都市・地域整備局の方より御説明させていただきます。

(国土交通省)街路事業調整官の西植でございます。宜しくお願い致します。
 街路事業における取組という資料を用意させていただいたが、資料に即して4点ほど御説明する。
 まず街路事業を進めていく上で一番重要となるのが予算の確保であるが、最初に街路事業における予算の確保と重点化への取組ということでまとめてある。平成14年度一般公共事業予算が対前年度0.9という中で、街路事業については0.97と、予算の確保に努めたところである。平成15年度要求についても対前年度1.07と相当の伸びを要求しているところである。また、重点化ということで15年度の箇所数の減少を見ると、概ね3000箇所を2000箇所程度と約40%程度箇所数を減らした。
 次に施行期間内に都市計画事業を完了させる取組について、事業認可時に適切な施行期間を設定するよう周知徹底している。
 3番目は事業効果の早期発現ということで、時間管理概念に基づいて、いつまでにやるということを宣言させて、それを目標に宣言した路線、箇所に予算を重点化する、さらにこうした自治体の取組に対して国として支援していく、ということに取り組んでいる。現在までに東京、横浜、大阪で宣言されたが、来年度についてはこうした取組を全国に広げていこうということで、全国18都市で完了宣言を行うよう準備をしている。
 4番目は、これは都市内道路整備についてより弾力的にできないか、ということで、例えば、優良な民間都市開発に併せて行われる場合にはその前面道路部分だけの整備ができるよう弾力的な事業の執行を始めている。また、民間の事業者が公的主体に代わって街路等一定の公共施設を先行的に整備する、いわば立て替える場合に、無利子の融資するといった取組を14年度から始めている。これにより、地方公共団体にとっては予算の制約が厳しい中でピーク時の負担を軽減する、いわばピークカットというような効果があると考えている。以上である。

(八田主査)どうもありがとうございました。委員の方々からの御質問の前に事実関係を確認したい。昨年、東京都からヒアリングを行った際、期限どおりに事業を進めることのできない難しさの1つとして、予算がつく担保がなければなかなか収用手続に移れないということを聞いている。今日の説明によると、完了期間宣言すれば予算面の配慮をするとのことだが、地方公共団体が完了期間宣言した場合にはどのように予算に反映されるのか。もう1つは、適期に収用手続への移行ができなかった場合に説明責任を課すということはたいへんよいことであると思うが、説明責任をどういう形で課すのか。例えば国土交通省に対して課すのか、あるいはホームページで公開するのか、その説明責任のあり方について伺いたい。

(国土交通省)完了期間が宣言される路線は、現在着手している路線の一部であり、全体事業費の枠内で重点化される、ということである。補助事業の場合であっても、補助をつける側の国としても、そうした路線に補助金の重点化を行うこととしている。したがって、結局は枠の中で重点化を図るということになる。また、予算は単年度主義であるため翌年度以降の約束はできないが、完了宣言路線については地方公共団体との信頼関係に基づき互いに頑張って予算をつけることとしている。

(八田主査)予算は増えないが枠内で重点配分するために活用するということか。

(国土交通省)そのとおり。

(八田主査)その際、民間の道路整備事業に対する無利子融資制度は、完了宣言路線にも活用できるのか。

(国土交通省)最後の一筆を民間が買うというのはレアケースだと思うが、制度的には可能である。

(八田主査)間接的に国から地方自治体に融資しているのと同様の効果があるのか。

(国土交通省)ピークカットであり、単年度の負担を後年度に廻して財政状況を助けることになる。
 2点目の御質問に関しては、3年・8割のルールの遵守に関する説明責任は国民に対するものであると考えている。国民の目に触れることが一番のチェックになる。まずは国土交通省自らがやるということで、直轄事業について従来は内部で適期申請の状況についてヒアリングを行っていただけだが、住民に情報開示する方向で検討を進めている。地方公共団体に対してはどういう形で説明責任を求めていくかという点については、国もこういう形でやっているから是非同じようにやって欲しいということで、適期申請の状況の把握、住民の方に広く公表していくことを、地方公共団体に対して用地対策連絡協議会等いろいろな場を通じて要請していきたい。

(浅見専門委員)いくつかあるのが、まず代替地情報提供システムは誰が利用できるのか、ということ。それから3年・8割ルールが妥当なルールであるとすれば、強制力を持たせるため、通達という形でなく政令等で定めることはできないか。さらに、弁護士法との関係から官がやるべき業務があるということですが、弁護士法だけが障害であるならば、弁護士法を改め民間でやれるようにすべきではないか。

(国土交通省)代替地情報提供システムについては、利用できるのは各事業者である。

(浅見専門委員)民間の事業者は利用できないのか。

(国土交通省)鉄道事業者等一部の民間事業者も利用できるが、公的主体の利用を基本としている。ただし、代替地の情報提供に関しては、宅建業者等にも協力していただいている。3年・8割ルールについては、政令化等により厳格に実施した場合には、予算面で対応しきれない事業が多数発生することが予想され、大きな混乱を起こす可能性が高いと思っている。また、義務付けされると用地担当者にとっては大きなプレッシャーとなることから、確実に3年・8割ルールを遵守できる事業にしか用地買収に着手されないこととなることが予想される。その結果、かなり事業の実施が抑制される懸念がある。したがって、まずは第一歩ということで、3年・8割ルールの情報開示や遵守状況のフォローアップを行うこととしっかりさせていきたいと考えている。強制という点については今申し上げたようなデメリットがあると考えてている。弁護士法との関係については、実務上、用地取得業務については最低限起業者が行うべき業務というものがあると認識しており、単に弁護士法だけの問題ではなく、双方の観点から民間活力を活用していきたい。

(福井専門委員)現在の事業認定の申請単位は、手続保留すれば1年ないし4年であるし、事業認定の場所的範囲は1年なり4年に対応して予算がつき、適切な範囲を区切って認定することができるというのが行政運用として確立しているはずである。3年・8割というルールを仮に強制したとしても、それで予算が確実について、事業が実施できるものについてだけ事業認定をすればいいのではないか。それで何の支障があるのか。他に予算面での対応ができないというのであれば、対応できる範囲に絞って事業認定申請すればよい。
 また、用地担当者がシュリンクするから3年・8割ルールを政令化できないという点については、私も用地担当の職場にいたので、強制するのはとにかく、面倒くさいから、責任が重いからいやだ、ひたすらお金を積んでいくことでなんとか解決したい、というのが大部分である。とにかく国民の税金を預かっている以上、それを迅速に効率的に使わないと申し訳ない、などという担当者はほとんどいない。
 そもそも、用地取得問題というのは、用地取得担当者がやりやすいかどうかということではなく、用地担当者自身がいわば納税者の負託を裏切っている、あるいは事業の遅延によって本来の公共性の発露を邪魔しているのではないか、という認識に立って議論が出発している。したがって、用地取得担当者がどう思うか否かに関わりなく、彼らに買ってもらわなくてはならない。必要なら買ってもらわなくてはならない。必要かどうかについては、最近は事業評価、アセス等によりきっちり決めておられるはずですから、そうであればとにかく一刻も早く、安く買う、というのをいやがっている用地職員に強いる制度的枠組みをつくる以外にはこの問題の基本的展望はない。そのために、説明責任を設けるぐらいで大丈夫であるのか、という点についてかなり疑問に思う。

(国土交通省)最初の1点目であるが、事業認定申請単位に関し運用改善されているのは事実であるが、公益性を認定し得る単位でなければならないというのも事実である。また、事業が白紙の段階から措置するのであれば可能かもしれないが、現在既に着手している事業に関しては難しい。
 また、2点目については、用地担当者がシュリンクしてしまうと申し上げたが、用地取得を必要とする事業実施サイドがシュリンクする、という方がふさわしいかもしれない。
 用地担当職員が収用を使いたくない、という点については、私も直前ダムの担当をしていたが、やはり最後は収用がないと厳しい、収用があるから交渉ができる、それがないとあいまいな解決になってしまう、という中で担当者の意識も相当変わってきている。

(福井専門委員)最終の担保として収用があるというのはおっしゃるとおりであるが、できれば使いたくない、使わないで買えればそれにこしたことはない、という意識は非常に強いと思う。それと、事業単位があやふやである、というのは本来事業認定にもなじまないし、事業としての費用便益分析にも適わないから、本気で買うのであれば事業認定の分割にもなじむような計画をきっちりと立てるのが前提であるから、そういう限りにおいては先程申し上げたことは当てはまるし、きちんと立てられた計画であれば分割して進められてもそれほど支障がない。

(森委員)3年・8割ルールとは、3年・8割に到達したら収用法の事業認定申請をできるということか。逆に言うと、それまでは申請してはならないということか。

(国土交通省)そうでない。起業者は3年・8割に限らず、いつでも申請できるのが大前提だが、起業者がなかなか申請しないため、少なくとも用地幅杭打設してから3年、あるいは用地取得率8割に到達した時点までに、収用手続に移行することを申し合わせている。

(森委員)このルールによると、通常、収用手続が終わるまでどれくらいかかるのか。

(国土交通省)手続保留の3年を入れて、最大のもので5・6年程度、通常のものは2年程度で権利取得できる。

(森委員)最大限6年で終わるということか。

(国土交通省)大規模なものを分割して順次やっていくとそのくらいである。

(森委員)先程、できるだけ使わないですませたいと思っているという話があったが、起業者ができるだけ収用制度を使わないというのはなぜか。

(国土交通省)認識は年々変わってきていると思うが、用地担当者、あるいは事業者からすると、収用は土地を取り上げる、召し上げるという感覚があるため、できるだけ地権者の合意のもとに円滑に買収したい、できるだけ地権者ともめないで買収したいという考え方があるかと思う。

(森委員)情報開示対象として、収用手続への移行が遅れた理由を挙げていたが、遅れることを前提として情報開示することとしているように感じる。公共事業は、その施行を期待している者が数多く存在し、その遅延により、それらの者に対し多大なる迷惑をかける。公共事業が遅れるということはあくまで例外でなければならない。予算の問題ならば仕方ないが、単に住民が反対したとかでは理由にはならない。どういう理由であれば説明責任を果たしたことになると考えているのか。

(国土交通省)例えば、ダム事業のように、地権者が多数で、代替地斡旋等の生活再建対策に長時間を要する場合などが考えられる。

(八田主査)法律上事業者は補償を義務付けられており、それ以上のことは義務付けられていない。代替地の斡旋は追加的に行っていることで、元来は義務ではない。

(村山副主査)過去1〜3年の収用手続の執行件数を教えて欲しい。また、そのうち3年・8割ルールを遵守して行われた件数もわかれば教えて欲しい。

(国土交通省)昨年度の事業認定件数は630件、裁決申請件数は240件である。そのうちどのくらいが適期申請できているのかという点については、整合性がとれる形での整理はできていない。現在施行状況についてはしっかりフォローするよう検討している。

(村山副主査)3年・8割ルールが過去に実行されたことはあるか。

(国土交通省)平成元年から通知を発して周知しているが、直轄については毎年実施状況をフォローできているが、地方公共団体については十分捕捉できていない部分があるので現在調査しているところである。概数としては、中間的な集計ですが、3年・8割ルールが遵守されている割合はおよそ2割程度であった。ただし、この数値に関しては、すべての地方自治体を捕捉しきれていないので、精密な数値ではない。

(福井専門委員)現場でも未だに3年・8割ルール通達を逆の意味にとる者が多く、3年・8割に到達しないと収用法の申請ができないから収用法を遠ざけないといけない、と思っている現場の職員がまだ多数いる。そんな誤解が何年も前からあるのに、そんな簡単なことをなぜ周知徹底できないのか。周知方法としても、用対連ルート、収用委員会ルート、土木の事業現場あるいは技術的ルート等活用できる手段はいろいろある。伝家の宝刀で最後の最後に残った人を血祭りにあげるための法律ではないという、当たり前の法律趣旨を啓蒙普及できる余地はある。
 また、収用班に持ち込まれるのは、こじれにこじれてしまった案件ばかりである。ここに構造的な問題がある。こじれた案件にばかり適用すると、ますます通常の案件に対して収用を使いずらい状況ができてしまっている。収用法というのは最後に残った人を狙い打ちにするものではなく、公共用地を早く買うための制度であるという、収用法に対する正しい認識を定着させた方がいいのではないか。それにより収用が特殊なものではないというイメージが流布し使いやすくなると思う。その試みは収用班だけでは無理があるので、全省的な、あるいは公共事業に関わる全省庁をあげて、使い方に関する理解と啓蒙普及に取り組むべきである。

(森委員)今までは収用による買収が例外であったが、収用による買収が通常であるという認識になぜできないのか。収用であれば、補償金も補償基準によって適正に査定される、逆に収用外でやるのはおかしいのではないか。収用外でやると損をするという感覚があるのはおかしいと思う。それともう1つ、収用裁決があった後、任意交渉がある、そこでまとまる方がよいというような感覚があるとも聞いている。そのようなことはあるのか。

(国土交通省)制度的にあり得ない。

(福井専門委員)事業認定後、任意交渉するということであろう。

(森委員)申し上げたかったのは、もっと早くから収用手続に入る、事業認定から手続に入る、任意買収は例外とする、そういう国が多いのではないかと思う。

(国土交通省)おそらく国によって違うと思う。今年ドイツに調査に行った際、担当者の意見としては、日本と同様に収用手続は最後の手段であると聞いた。

(福井専門委員)収用もいろいろなレベルがあり、事業認定と収用裁決では、過激さのレベルが全然違う。もともと国土交通省自身が出している新収用法の解説書では、まず事業認定を速やかに取得してから用地交渉に入るということが立法趣旨であると明記されている。今はそれがまったくニグレクトされている。認定を取ってから用地交渉をすれば、自ずと適切な価格、条件で妥結する確率が高まるのが極めて当たり前であるから、結果的にはそれでも構わない。それでもだめなやつが少数、裁決になるというので何ら問題はない。事業認定を取ってから交渉するのでなければ、地権者は言いたい放題になるし、起業者はルールがないままひたすら買いに走ることとなってしまう。その矛盾がこの議論全体の論点である。

(八田主査)まとめると、基本は3年・8割ルールをきちんと適用すること、また、これに何らかの強制力を持たせるべきである。もちろん例外的な理由、説明できる理由というのは、特に予算の措置等であり得るが、基本としては事業の収用手続への移行について締めをきちんとすること。収用の件数を増やすということでは必ずしもなく、予算面や納得できる理由がある場合は、例外として理由を説明することとすべきである。 また、それに至るまでの段階として、ルールの趣旨の徹底が図られていない、それを改善するよう具体的に取り組むとともに、説明責任を果たすときにどういう理由ならば説明責任が果たされていると言えるのか明確にして欲しい。
 どうもありがとうございました。

(2)法務省ヒアリング「競売の実効性の確保」について

(谷口参事官)説明資料に基づき、3か年計画の記載順に説明する。
 短期賃貸者規制度については、短期賃貸借の保護の民法第395条を廃止し、したがって買受人は抵当権に後れる賃借権を一切承継せず、その敷金返還義務を負うことはないという制度にした上で、建物について3ヶ月の明渡猶予期間制度を創設すること、及び新しい制度として賃借権設定に先立つ全ての抵当権者が同意を与えた賃借権については、抵当権者に対する対抗力を与えるという制度を事務局案として示し、これに基づき法制審議会で検討中である。事務局案に対して、短期賃貸借保護の制度を廃止することは賃借人の保護として不十分であるといった異論も多くある状況であるが、事務局としては短期賃貸借保護の制度にそもそも合理的な保護になっていないという問題がある、執行妨害に濫用されているとの説明をし、更に理解を求めている。

(筒井局付)物件内覧機会の拡充についてであるが、競売不動産について内部の情報をできるだけ買受希望者に提供するべきであるとの意見であったが、まず現行法については、執行官の現況調査において、内部の写真等が買受希望者に公開されているかたちで情報提供が行われている。それでは不十分であるとの問題であるが、現在法制審議会においては、執行官の保管物件、占有者がいない場合であるが、内覧制度を創設する提案をして検討している。この執行官保管の保全処分については、更に発令要件について、執行妨害強化の観点から、大きく緩和することを併せて提案している。これにより執行官保管物件の数の増加も予想され、買受希望者への情報提供をより充実させていく方向で検討している。先般のヒアリングの際に、全ての競売物件について占有者の意思に反してでも内覧すべきではないかとの指摘を受けたが、法制度で内覧を設けると、競争入札の公平性を確保しなければならない。入札を考えている全ての人に公平に実施するという観点が欠かせなくなる。内覧する前に入札するか否かの意思を確認しようとしても、実際には内覧した上で決めることになるので、事前にどのような人が内覧するかをチェックすることは困難である。そうなると我が国の競売の実情をみると、暴力団関係者、債権を取り立てようとする金融業者とか、もっぱら興味本位で来る近隣の人々などの内覧を許さざるを得ない状況になる。競売の場合には、競売が始まったからといって、占有者が直ぐに出て行かなくてはならないという制度をとっていない。売れるまでは、そこで生活していて良いということである。誰でも中に入れるという権利を保障する、占有者の意思に反してでも受忍しなければならないということは、善良な賃借人のプライバシーを侵害するということが極めて大きい。そういう点から、国民一般から理解を得るのは難しいと考えている。また、このような制度を設ける場合には、依然として執行妨害がなくなっていない我が国の現状の下では、内覧の機会を利用して、買受希望者相互の間で談合が行われたり、他の入札を考えている人に対して、入札を躊躇させるような行動をとったりといった入札妨害が起こる恐れを軽視することはできない。
 占有者が占有の正当性を挙証できない場合の問題であるが、新たな措置を講じないという方向で検討が進んでいる。これは技術的な問題であるが、問題意識としては占有者が占有権原を明らかにしない場合には、その占有権原を否定するというのが、占有者と抵当権者や買受人希望者のバランス上好ましいのではないか、自分で占有権原を立証することは容易であるのに、それをないということを他者が立証するのは困難であるとの問題意識であったと理解している。不動産の明渡訴訟や引渡命令という制度の中では、占有者の側で挙証できない限り、明渡しの判決が出るというのは、これは手続法上の考え方としては当然である。ここで問題となっているのは、売却前に例えば執行官の現況調査で、執行官の質問に答えない、占有権原を明らかにしない場合に、将来に占有権原の主張をされるかもしれないということによって、買受希望を躊躇させる要因になるのではないかという問題であるが、このような制度を導入することは、基本的に全く不可能な問題であるとは考えていない。実体法上認められている権利を手続に協力しないというだけで、否定するということは容易なことではないが、全くあり得ないことではない。しかし、実体法上の権原があるのにそれを否定することになるという重い効果を持つわけであるから、慎重な手続が必要。少なくとも意見陳述の機会を与える必要がある。執行官に答えなかった限りで、そのような効果を与えるということは不可能であり、執行裁判所に呼び出し、意見陳述の機会を与えることが必要になる。仮にそれによって権原が否定された場合に、その後に通常の訴訟において争うという機会を設けることが不可欠となってくる。こういった制度を設けることになると、競売手続の著しい遅延要因となる恐れが極めて大きいと考えざるを得ない。もっとも短期賃貸借制度がある限りでは、時間がかかっても、こういう制度を設けるべきではないかという考えは理解できる。しかしながら、今般の改正では、短期賃貸借制度の廃止を事務局案として提示して審議が進んでいるので、短期賃貸借制度が廃止されるという前提になると、占有者が占有権原を明らかにしないからといって、その人が何らかの買受人に対抗できる権原を持っている可能性は極めて少なくなる。ごく例外的にあり得るということでは、賃借人が最先順位より前に占有を始めたと主張するという場合があり得ないわけではないが、この主張に対しては、ライフライン調査という権限が執行法上与えられているので、これを使えば、占有開始時期というのは容易に判ること。電気、ガス、水道等の利用状況を調べる権限が与えられているからである。このような調査を国家機関側で行うことに要するコストという面で問題ではないかとの指摘もあったが、この調査の費用は通常の郵便費用だけである。また買受希望者への情報提供というサービスは、既に競売制度に盛込まれている。その一環としてこの程度の調査を行うことは決して無駄なことではない。
 民事執行法上の保全処分など占有排除に関する処分については、当事者は確知できなくともその物件の占有者に対して効力が及ぶようにするという提案であるが、この点については、占有者が転々とする場合や自ら氏名を明かさないといった執行妨害が非常に多いので、その対策を講ずるべきであるとの意見は法制審の中でも強い。また意見照会の結果でも、このような制度を求める声が強く表れてきた。我が国の法制の中で、理論的にこのような制度が採れるのかどうか難しい問題であったが、幅広いニーズや執行妨害対策を強化するといった法務省が進めている検討の一環として、このような制度を導入するよう検討を進めている。
 最低売却価額制度の在り方の点であるが、法制審での議論、各界からの意見聴衆の結果として、最低売却価額を廃止しないという方向で検討が進んでいるところ。その理由として、第一に執行妨害がなくなっていない我が国の現状の下で最低売却価額を廃止してしまうと、安く買い受けようとする執行妨害を助長することになるので、所有者や抵当権者の利益を害することになる、現在進めている執行妨害排除という対策と逆行する結果になってしまうという危惧が強く指摘されている。理論的な面では、最低売却価額を廃止しても抵当権者の利益というのは、自己競落すれば自ら回避できるのではないか、それで足りるのではないかとの指摘があり、この点についても法制審で議論したが、債権者としては債権の回収、金銭を受領するということが最終目標であるから、自己競落ということなると第二市場でその不動産を売却することになるので、現在自己競落が少ない現状からしても、そのノウハウを十分に持っていない金融機関にとって重い負担となる恐れがある。自己競落すれば良いから債権者の保護の措置は必要ないので、だから最低売却価額は必要ないというのは、理屈としては成り立つが、なお現在の経済界、金融界の受け入れるところではないと判断されるところ。一方最低売却価額の実務運用は、大きく改善されているところであり、最低売却価額が高すぎて売れないという実情にはないということを多くの方が言っている。数値としても昨年の統計では、一回目の値段で売却できた率は東京地裁で80%を超えるなど極めて高水準である。そのような点から、最低売却価額制度が競売物件の売れない要因であるという実情にはないと考えている。最低売却価額制度は、競売を申し立てた債権者だけの保護ではなく、後順位抵当権者などの全ての債権者、所有者の利益保護のための制度になっている。競売を申立てた債権者が最低売却価額を定めるかどうかを選択するという制度は、採れないのではないかと思っている。
 競売物件の瑕疵担保の在り方であるが、法制審の議論や意見照会の結果を踏まえて、法改正しないという方向で検討している。その理由としては、瑕疵担保責任の規定を適用するとなると、配当まで行って手続が終わった後に、買受人の解除権の行使或いは代金の減額請求によって、配当金の返還や手続をもう一度やり直す事態が生じてくる。これが競売手続の安定性を害するという点が強く指摘されている。

(八田主査)内覧の機会を拡充することに関して、前回の議論では、大勢の人が来ると困るということに対して、こちらの方から様々な提案をした。それらに対しての検討が入っていない。

(筒井局付)大勢の人が来た場合にはどうするのかということについては、法制審で検討している執行官保管中の不動産についても、内覧を実施したら起きる問題である。それに対して何らかの手当てをしていかなければということは考えている。前回指摘されたことを踏まえて検討したい。その場合には占有者がいない訳であるから、占有者を保護するという観点を抜きにして、かなり時間を使って順番に見てもらうことも可能である。それでも賄えない程人数が多くなった場合には、内部の状況を代わりに伝える方法を検討している。占有者がいる場合には、占有者の意に反して行うという性質上、長い時間をかけて順番に見てもらうという訳にはいかない。仮に行うにしても相当時間を絞らざるを得ない。短時間に見てもらうことになると、その場に大勢の人が集まることになりかねない。そうすると、そこで談合が起きたり、他人に対して暴力団風の人が威嚇をするという事態になりかねない。これは、我が国の現状としては軽視できない問題点である。

(八田主査)前回はアポイントメントをとるとか、内覧に対して料金をとるとかの提案をしたが。

(谷口参事官)談合や入札妨害に関しては、事前に時間を指定するとか、料金をとるとか提案を受けたが、我々としてはプライバシーの侵害に対してお金で解決できるのかということで、それは難しいのではないか。

(八田主査)料金をとるということは、人数を少なくするということ。限られた時間であるので、入札するなどして、一番高く入った人にする。あまり料金が安くて人数が多くなれば、もう少し料金を高くする。そういうことで解決できることなのに、内覧という、常識的に新しいものを買おう時にはすることを否定することは、あまりに大きな代償ではないかということを指摘した。前回の提案に対する回答がないということ。

(谷口参事官)人数を絞り込む手段として料金をとるという意見については、一人目を入れて二人目を入れないということは、入札をしようとする者の中で不公平になるという考えから、内覧制度を設けるのであれば全ての入札希望者に見せなければならない。

(福井専門委員)それは料金とは矛盾しない。一定の占有者の負担を強いる場合には、その分のコストは徴収するということであるから、その意味では公平である。

(谷口参事官)前回の提案では、プライバシー侵害の対価として代金を払ったらいいのではないかという点と、人数を絞る方策として見たい人が払ったらという点の別の提案があった。

(福井専門委員)機能的には同じである。プライバシーのことを強調されるが、担保法制というのは、元々債権者・担保権者の債権を回収する法的枠組みである。基本的に抵当権が付いているところを借りるということであれば、全ての場合に共通のように、競売にさらされるかもしれない、出て行かなくてはならないかもしれないということは折込済みである。もし心配であれば、今度の法改正後の借家人から、そういう制度を前提として、すなわち内覧受忍義務みたいなことを法定されていることを承知の上で借りた人についてだけにすれば、何ら問題はない。そもそもおかしいのは、プライバシーと言いながら、中も見る事ができないで、債権回収があまり十分にできない。また、買受人としては払っただけの効用のある物件が取得できない。重大な債権処理とか担保不動産の流動化という点で大きな犠牲が発生している。それを一切無視して、担保物件ということが分かっていて住んでいる借家人のプライバシーだということは、極めて歪な比較考量である。
 短賃保護廃止に関して、敷金返還請求権についてはどうなるのか?

(谷口参事官)原則に戻して、抵当権に後れる賃借権に関しては、買受人は引き受けない。その結果として抵当権に後れる賃借権の敷金は、買受人は引き継がないというのが事務局案である。

(福井専門委員)例外はないのか。

(谷口参事官)同意による対抗力を持つものは別である。

(福井専門委員)その点は結構な制度であると思うので、ぜひ進めてもらいたい。

(福井専門委員)内覧制度であるが、執行官保管のことを強調するが、執行妨害が起きるのは占有者がいる場合である。占有者が誰かと協力しているから執行妨害が起こる訳で、占有者がいない物件とか占有者が協力的なら、そのような必然性が全くない。そこが出発点として認識が違う。普通の不動産屋さんを通じて買う私人間の取引と同じようにきちんと中を確認した上で契約をして、引き渡す時には現況を確認して、契約以降中が悪くなっていないか確認した上で残金を払い、登記する。という当たり前の手続きを、できるだけ占有者がいる場合でも近づけないと、競売についてはまともな不動産市場にならない。公平性という問題は、一定の条件の下で機会を与えればなし得る訳で、順番札でもいいし、時間差でもいい。受忍強いる代わりに料金をとることもあり得る。近隣住人というのは論外であるが、暴力団とか金融業者が来ると談合が起こるというロジックは、こういう人は現に出ていない。短賃を廃止するとか一連の手続的な改正をきちんと行うことで、米国的な競売市場に近づく。そういうことが起こるということは、制度の不備がもたらしているという認識が不足している。大多数の占有者が反社会的な勢力と結託することがない限り、占有妨害の実態が起こり様がないという前提に立てば、占有者のプライバシーは、どういう意味があるのかということになる。
 挙証責任ついて、郵便代だけで安いとか競売手続きが遅延するとか言われるが、これは債権者や買受人の保護の問題である。担保法制がそういう目的で出来ている以上、権原の不存在を挙証するコストと実体権の確定の手続きをとる労力と時間のコストと、どちらかが自分にとって有利だろうかということは、法務省が考えることではなくて、債権者や買受人が考えることである。その唯一の選択肢として、そんなものは安いのだから、実体権の確定をするという選択肢を一切許さないという法律をつくるということはおこがましい。それは債権者や買受人が自分にとって、どちらを選択するのが好都合かということに委ねれば良い。ライフライン調査というのは、挙証したい側つまり追い出したい側の責任であるし、この前後を問わずというのは、ほとんどないと言ってもゼロではないから、できるだけ法律化した制度をつくるべきであるということに何ら不合理もない。占有者を呼び出して、訴訟手続きは著しい競売手続きの遅延だと言われるが、このことは疑問である。相手が占有権原を証明できない場合には直ちに失権する訳であるから、それが何で著しい遅延になるのか、荒唐無稽な想定である。
 最低売却価額については、現在執行妨害がなくなっていないから、所有者や抵当権者の利益を害する恐れがあるのかというのは、その後の実態調査やヒヤリングはしたのか。

(谷口参事官)これは、部会や経済界からの意見である。実際になくしたらという調査はやりようがないが、現にある問題として、執行妨害的な行為をしておいて、非常に低い価額での買い取りを持ちかけて来ることがよくあるので、それを阻止して競売でしか抵当権者は売却に応じないということで、一定の適正な価額が確保されている。その歯止めを失うことになるので、非常にこういう問題が起こる可能性が高いとの、現在の実務からの推察される指摘を受けている。

(福井専門委員)それは観念論である。例えば暴力団事務所の看板を掲げて、とても高い価格では入札できないと思わせて、入札不調に持ち込んで、その後安く売るしかないと脅すのが手口である。その限りにおいて、最低売却価額があるとこれがいかに適切に高めに市場価額に設定されておいても、この価額を割り込むような威嚇行為さえすれば、入札不調に持ち込める。だから80%の売却率である。米国では98%以上である。20%も不成立となっているのが、そういうことも背景にあるとの実態の認識が足りない。自己競落であるが、米国の競売市場はほとんど自己競落で、二次市場で売却となっている。米国は事情が違うというのは、競りにかけて不動産を買うというのは、米国人と日本人に生理的に違うということはない。違う点を具体的に示して欲しい。さらに言えば、日本では債権者が自己競落した場合に、自分で売却の広告を打ったりはしない。日本には仲介業者が数十万いてネットワークを持っているので、任意の売却市場では裁判所が関与する競売と違って、極めて円滑に不動産の売買は行われている。ノウハウがあるか否かは関係ない。価額が高過ぎて買受希望が現れないということは、高低にかかわらず基準があれば、入札不調をもたらし得る制度的な担保がある。そういう意味では、反社会的な集団にとっては願ってもない制度である。実際に安いか高いかに関係なく、問題が起きている。債権者だけではなく後順位抵当権者等の他の債権者の利益を守るというのは、確かにそうであると思う。そうであるなら、後順位抵当権者を含めて債権者の合意があれば、最低売却価額を外すことでも構わない。これで債権者保護に何が欠けるのか。担保法制というのは、債権者に債権を回収させる手段である。そこで違った考量を持ち込んで、政策を筋を混線させるのはやめてもらいたい。所有者利益の保護のための制度であると言われるが、債権者と所有者の利害が相反するのは、制度の大前提である。物件を売り払われて債権回収に当てられる物件所有者と債権者ないし抵当権者とが相反する利益を持つことは明白である。だから、債権者の利益を守り、所有者の利益を守るという制度は支離滅裂で担保法制の基本的理解を欠いている。担保法制が債権回収の手段である以上、所有者は基本的に自分で自分を守ってもらいたい。債権者は債権者の当然の権利を行使できるようにするべきである。最低売却価額は邪魔になると後順位抵当権者まで含めて債権者が同意すれば、最低売却価額を残すべきということを法務省が強いる理由は全くない。

(八田主査)時間がないので、最低売却価額と内覧制度に議論を絞りたい。最低売却価額についての後順位抵当権者まで含めて債権者が同意すれば、不要とする案についてはどうか。

(谷口参事官)意見としては理解しているが、実際に使う人にとって使える制度にしなければならない。また、私権の実現に公権力が入って、強制的に権利、義務の関係を実現していくことから言えば、ひとつの権利を実現するにあたり犠牲にする権利、そのバランスがとれたものか、それにふさわしい別途の手当てがとられているかということも念頭に置かなければならない。そういう意味で、最低売却価額の制度を廃止することによって、債権回収の意味でも有益であるとのご意見は、意見照会でも部会の議論でも聞こえてこない。最低売却価額の制度を廃止した時に、国民全体的に受け入れられる制度なのか疑問を持つ。先順位抵当権者や申立て抵当権者だけではなく全ての債権者が良いと言うのであれば、最低売却価額がないコースの競売を創設してもいいのではないかとの指摘は、頭の中では考えてみたことがあるが、その制度を導入されると、全ての債権者が出揃うのは配当加入の申し出ができなくなるまでいった時点であるので、全ての債権者が現れてきて、その意見を確認するまでは最低売却価額の設定が必要になるかもしれないという前提で、手続きを動かさないことになると、手続きが後ろ倒しになる問題がある。全ての債権者の選択に委ねるという提案は今まで明示的になかったので、部会で議論された訳ではないが、広く意見として受け入れられることにはならないと思う。

(福井専門委員)遅れるかどうかというのは債権者の利益であるから、それを思い図って、法務省がそんなものは役に立たないはずだと言う必要はない。

(谷口参事官)債権者がそれを望むかどうかということ。債権者の代表の方から、望む声は全く聞こえてこない。

(福井専門委員)聞き方が間違っている。全銀協が言ってきたからと言って、それが債権者を代表しているという想定が間違い。きちんと世論や利害当事者の意見を吸い上げるという手続きをやっていない。

(八田主査)借地借家法の改正の時に、大阪大学の社会経済研究所が意見を求められた。しかし、大学の部局に意見を求めることには、意味がない。教官個人個人全部が意見が違うのであるから、団体全体に意見を求めたのでは、本当の個人の意見を吸収でき得ない。これは大学に限らず、すべての団体に言える。当事者にインタビューして回るということがどうしても必要。法務省の意見の求め方は、間違っていると思う。

(福井専門委員)なんとか大学が賛成とか、なんとか大学が反対とかはあり得ない。

(八田主査)そういう意見徴集によるものであるなら、やり直すべきである。

(谷口参事官)意見照会と並行してパブリックコメントで、関心の高い人の目に触れそうな雑誌等やインターネットで国民から意見を徴集している。

(八田主査)最低売却価額について時間がかかるのであれば、いろいろな仕方で工夫できる。例えば最初から最低売却価額を計算しておいて、当事者の意見がまとまったらそれを使わないとすれば、何ら時間もコストもかからない。それによって得られる便益というのはかなり大きい。

(福井専門委員)先順位、後順位というのは、先順位抵当権者は後順位抵当権者の意見を一切無視して申立てができる。元々先順位抵当権者がいろいろな人の利害を代弁しているとの回路があるので、本来は先順位だけで良いというのが補足意見である。

(筒井局付)所有者の利益について補足するが、担保権者が担保権を実行したら所有者が所有権を失うことは仕方がないことは、指摘のとおり。その所有権を失う時にその適正な価値で換価されて、それによって債権が満足に充てられるという所有者の利益は否定できない。それを下回ることがないようにとの措置が最低売却価額である。それは唯一のものであるかどうかは議論の余地はあるが、何らかの所有者保護の措置が必要であると考える。

(福井専門委員)それは全く実態を間違って認識している。なぜならば、所有者が占有者や暴力団、不法占有したい人或いは占有屋に対してお金をもらって協力しない限り、最低売却価額を割り込むことは起こるはずがない。他に想定できる例があれば、教えて欲しい。占有者に所有者が協力しない限り、占有妨害は起こらない。

(筒井局付)内覧が必要な場合というのは、執行妨害的な占有者がいて、中がどうなっているのかが心配な場合があるとの指摘であったが、それは認識としては共通している。それを解決する方法論として、そもそも執行妨害的なものが入っている場合には、きちんと追い出さなければならないという柱を立てている。今回民事執行法上の保全処分というのを大きく進めて、価額減少行為がある場合には、広く執行官保管に踏み切れるように制度を改善しようと思っている。占有者を追い出した上で、執行官が保管する状態の下で内覧するということをセットで考えて、指摘された問題意識に応える制度にしようと努力している。法務省としては、手続を円滑に遂行するという要請とその手続に巻き込まれることになってくる様々な国民の権利関係が不当に害されることがないようにするという両方の問題を念頭に置きながら作業を進めていかなければならない。ここについては、現に賃借人が占有している場合においてまで、そのプライバシー侵害の受忍を強いてまでも実現すべきであるという声が広く国民から聞こえているかと言うと、債権回収を預かる人たちから聞いても見あたらず、一様にそこまではやらなくても良いのではないかというご意見である。

(福井専門委員)法務省が聞いている意見は極めて偏っている。それが国民の声だというのは思い上がり。

(谷口参事官)それが不十分であるとの指摘もあるが、我々としては意見照会、パブリックコメント、審議会を通じて最大限意見を聞いてきた。

(福井専門委員)審議会についても、元々こういう改正に消極的な人だけを選んで、何が公平な意見照会ですか。審議会の設置の在り方自体に問題がある。

(八田主査)指摘されている問題を起こさずに内覧ができるかどうか。内覧ができるということは大変な利益があることですから、それを失わせるには余程の大きな理由が必要である。お金を後でどう払うのか、誰に払うのかについては確かにいろいろな考え方がある。基本的には混雑がある時にお金をとることは不公平でもない。近所の人が見に来るからまずいというのは当然に排除できる。内覧することに利益を感じている人が金を払って見に来る。そういう仕組みをいつもつくる必要はなく、例えば2日間程度設けて公募をして、希望者がその範囲におさまれば何でもないし、出た場合には料金をとるという仕組みをつくるということは、それによって得られる利益は失われる利益よりはるかに大きい。

(福井専門委員)経済的インセンティブによってコントロールすることで、かなりの部分が解決できる。基本的に話であるが、この問題はプライバシーとか占有者の利益と言われるが、一面だけ見てはいけない。債権回収自体をスムーズに行って、経済再生をどうするのか、不良債権をどうするのかということに関わっているのだから、極力障害にならないよう制度にする。その意味で内覧や最低売却価額はペアで重要である。全体的なシュミレーションができない人に政策立案はできない。

(八田主査)要はこの意義はここだけに限定されるのではなくて、全体で見るべきである。内覧を許すということは意義が大きい。内覧をしたら困ると言われることに対処方法がいろいろ考えられる。それをどうして採用されないのか、疑問である。

(筒井局付)強制的に内覧を行うという前提に立って、ある程度絞り込む方法で議論しておられるが、強制的に内覧することで知らない人が入ってくるということを受忍せよということに大きな抵抗感があるという意見を聞いている。

(福井専門委員)それでは説明が違う。そうであるなら、こういうのはどうですか。そのそういうことを許す借家人か許さない借家人か印をつけた上で入ってもらう。そうであれば内覧を許さない借家人がついているところは、おそらく買受人もつかないだろうし、不利益となる。 そういうやつで良ければどうぞということになる。そういう選択もある。

(八田主査)今後の制度としては、いろいろなものが考えられる。

(谷口参事官)いろいろと考えることがあるというのは、指摘のとおりであると思うが、具体的に内覧をやることに抵抗感があり、それに対して中を何も見せていないかというと、現況調査でも写真を見せることになっている。非常に抵抗する妨害する人を事前に排除する方策を強化して、それによって中を空けた上で見せるようにしようというもの。

(福井専門委員)あなたが中古物件をマイホームとして買うときに、中の写真だけしか見せませんという物件を買いますか。もう少し常識的なシュミレーションをしてください。あり得ないですよ任意売買では。

(筒井局付)任意売買ではあり得ないかも知れないが,これは競売の話である。

(福井専門委員)繰り返しになるが、所有者、占有者のプライバシーと言われるなら、それは予め了解している人であれば、そういうことは言えなくなる。強制的に売却させられて追い出されるかもしれないというのは制度に盛り込み済みのことである。内覧の受忍も制度に盛り込み済みとして制度に設計してしまえば、それはそれだけのことになる。プライバシーの問題ではない。

(八田主査)今後の制度として大いに考えられることではないか。言われるように何百人も何千人も来ることが困るのであれば、ある種の制約をつけると前もって言っておけば良い。

(福井専門委員)個人的には過去に遡らなくて良いと思う。新法制定以降わかった人だけに受忍させれば良い。

(八田主査)先ほどのもそうであるが、当事者に選択権として与えれば、多くの指摘は解決できると思う。

(谷口参事官)繰り返しになるが、強制的に内覧を受忍させることを前提として制度を工夫せよといわれるが,そもそも占有者が生活しているところで内覧を受忍させること自体に対する抵抗感が、意見を聞いている限り非常に強い。そこが入り口で一番問題である。

(福井専門委員)そういう利益で失われるもうひとつの大きな経済問題や不動産流動化問題をきちんとシュミレーションして欲しい。そこは分からないがこれだけが大事だというのは全く説得力に欠ける。

(谷口参事官)そういう観点から、法律の改正を全般的に行っている。不動産流動化の実現のために何をやるかという選択肢の中で、ここまでやることは他の関係者の権利を侵害するという意見が強くある中で、そういう選択肢はとれない。

(福井専門委員)そういうことは何度も聞いた。もっと大きな問題を理解していない。

(八田主査)今後の制度として内覧を受け入れるのか、受け入れないのかということを当初にはっきりさせる。それなら何の権利も侵さない。

(谷口参事官)誰がどういうタイミングで、どういう手段で受け入れ意思の確認をするのかを考えてみないと、直ぐには回答できない。

(八田主査)言われるような問題点を解決して、かつ大きな利益を得る手段である。

(福井専門委員)我々も瞬時にいろいろ思いついて、いろいろ言うが、この中で誰も民法も民事訴訟法の専門家はいない。一生懸命勉強して提言している。みなさんはプロでしょ。実務もやっているし政策立案もやっているし、いちいちある意味理由があるかもしれない瞬間的思いつきにまだ考えていませんでしたと言う前に、あらゆる可能性について平素から真摯に考えていただきたい。

(森委員)実際にやっている担当者として、債権者にとっても所有者にとっても、中を見せて失うものはなく、中を見せなくて失うものはあまりにも多い。そこにたまたま占有をしている人が嫌だと言っても、一定の時間を限って見せることは当然なことである。それがなぜプライバシーの侵害なのか。そういう状況において国民として協力せざるを得ない。

(筒井局付)現行法でも、執行官がいわば債権者や買受人の代表として中に入り、写真を撮り、公開している。

(森委員)自分で見なければ、見たいものは見えない。どういう状況なのかは写真では映らない。

(福井専門委員)裁判所の競売物件の新聞広告に、大きく書いてあるように現況調査の内容を保証するものではありません。自己責任で買ってくださいとある。こんな物件を誰が買いますか。

(八田主査)言われた問題はいちいちもっともであるが、これを回避する方法がある。我々もいろいろ提案したけれども、中には受け入れ易い提案もある。さらに欠陥があるというなら指摘して欲しい。残念なのは、内覧に関しては前回かなり具体的な提案をした。提案の方法がかなり建設的に行われた。にも係わらず明確な回答がなかった。今回も具体的な提案をしているので、ぜひ検討願いたい。

(谷口参事官)前回の提案の中心を占めていたのは、プライバシーの問題については経済的な対価で補っていくことは可能ではないかということであった。

(八田主査)最後に補足した。それだけでなく人数を制限することである。

(筒井局付)強制的にまず受忍させることを良しとした場合に、円滑に進めていく方法論であった。

(八田主査)本日提案したのは、それを新たな制度の中にチョイスとしてやったらどうだということ。

(谷口参事官)入り口のところであったプライバシーの問題は、経済的なインセンティブを与えることで解決できるのではないかという意見については、これについてはプライバシーに対する対価として金銭を払うことで解決するとの考え方は、多くの人がとらない。

(福井専門委員)そうではなく、たくさん妨害される成立を損なわれることを防ぐことができるというのが主査の提案である。

(八田主査)いろいろ及ばずながら提案しているが、それは何故かというと、これを改正することによっての利益が大きいからである。しかも新しい制度だけに限定しても良いのではとまで言っている。ぜひ検討願いたい。長い目で見て都市の再構築のために必要であるので、検討願いたい。

以上


内閣府 総合規制改革会議