文部科学省

(1)文部科学省から資料に基づき説明

(2)意見交換

(八代)まず、幼保一元化について、幼稚園と保育所というのは事実上同じ様なサービスを提供しているが、文部科学省と厚生労働省というように省庁が違うため、さまざまな制度が違っており、利用者から見ると非常にやりにくい。3つ問題がある。
一つは設置主体の問題。保育所の方は認可基準を満たせば、株式会社もできることになっているが、幼稚園のほうは教育機関であるという建て前ため、それが禁止されている。同じ様なサービスを提供している保育所に認められているものが、なぜ、幼稚園に認めるとそんなに弊害があるのかということがポイントとなる。
もうひとつは、保育士と幼稚園教諭の資格の問題で、これは資格の併用を進めていただくということなので、それが実現すれば結構なことだと思う。これは完全な併用と理解してよいかどうか。3つめは施設の問題。事実上、地方自治体では保育所と幼稚園を同じ所で、児童が同じグランドを使用したり、保母さんと幼稚園の先生が一緒に子供の面倒を見ているということが行われているそうだが、実態は、例えば、グランドは幼稚園、調理室は保育所であるとか、一緒にあるが一体的に運用できないということを聞く。
学部の校地面積基準の緩和、2分の1の自己所有、校舎面積の3倍以上というのが、どの程度弾力化されるのか。さらに、特区においては、当然ながら全国一律と同じであっては意味がないので、どの程度の所有要件の緩和ができるのか、量的な基準に非常に関心がある。大学や教育施設を作るためには、教育サービスの質とは別に、学校が土地を持っていなくてはいけない、2分の1を自己所有しなければいけない、あるいは校舎面積の3倍以上の土地をもっていなければいけないという規制があり、これが都市部において著しく新規参入を妨げており、意図はないにしても、既存の学校を保護するという機能があるという意味で、この施設基準は極めて重要である。大学設置の抑制方針の廃止は、非常に結構だと思うが、問題は実質的な中身である。規制改革会議でも繰り返し指摘している点であるが、新たに大学を設置するときは審議会にかけなければならないが、その審議会のメンバーに既存の学校の経営者の方が半数以上入っている。そういう規定があり、これは事実上、新しいスーパーを作るときに既存の近所のスーパーの経営者が新しいスーパーを作ってよいかどうか決めるようなもの。抑制方針が廃止されたにもかかわらず、こういったカルテルまがいの制度があれば、事実上、新たに学校を設置するということは非常に難しいわけで、抑制方針の廃止だけで無く、実質的な実現性も同時にお願いしたい。そういう別の規制があれば、結果的に抑制方針の廃止をしてもあまり効果はないのではないか。さらに株式会社がなぜ学校を作れないかということだが、これは医療や・福祉でも同じように問題となっていることであり、株式会社は金儲けをするから大学にはふさわしくないということか。これについては既存の学校法人でも、企業以上にあくどい儲けをしているところはいくつもあって、そういう経営主体の問題なのか学校の質の問題なのかということが問われていると思う。きちんと学校の質を担保するような事後規制を強化することによって、誰が学校を作るかというような事前規制は緩和するほうが、はるかに教育サービスの質向上に資するのではないか。金儲け主義の学校に入りたくないかどうかということは、学生が決めることであって、なぜ政府としてそこまで決めなければならないのか。そもそも、消費者の利害から考えたときに、消費者の選択肢ができるだけ広い方がいいというのが、公益的社会サービスの考え方であるが、教育だけがなぜ、消費者の主権というものをそれほど縛る必要があるのか。小学生や中学生であれば、パターナリズムの観点から、政府が関与するということはある程度理解できるが、例えば、今後、社会的ニーズによって増えてくるビジネススクール、ロースクール、こういう大学を出た人あるいは、社会人を対象とした教育サービスまで、株式会社であれば教育の質が悪くなるといって政府が禁止する必要がどこにあるのか。自分で判断できるのではないか。逆に言うと、安い授業料で質の高い教育サービスを提供する、学問の自由を保証する、そういうことがきちんと担保されたら、経営主体は何であってもよいのではないか。教育機関といっても幼稚園からビジネススクールまで非常に多様であり、一律にそういうものを規制するという根拠はどこにもない。
教育切符制の導入というのは、特区としての要望はないわけだが、せっかく触れていただいたので補足する。今、中学生一人当たり90万円の公費が年に払われているわけであるが、たとえば不登校生等、既存の公立学校の仕組みに乗らない人は全く放置されているというのが現状である。例えば、既存の学校の教育サービスに乗らない人であっても、義務教育であるから、支援する必要があるのではないか。教育切符制というのは、今の制度を一律に廃止してやるという考え方もあるが、限界的に今の教育サービスに適用できない人たちに対しても、ある程度の支援をする必要があるのではないかという考え方もあるということだけ補足させていただきたい。

(檜木)学習指導要領によらない教育のところについて、研究開発学校制度での対応の弾力化というというのは、自治体の要望に応えられない可能性がある。多くの要望を踏まえて対応していただきたい。

(八代)今の点について、学習指導要領に関わらない研究開発学校制度を活用すればよいというお答えだが、これは我々の特区の考え方と真っ向から対立するものである。これは、国が自分の考え方で教育カリキュラム、教育システムの実験をすることは構わない、補助金を出してやりますというものであるが、なぜ同じことを地方がやってはいけないのか。教育というのは、全国の機会均等というのが大事だといったが、文部科学省自体が、今の教育システムは万全であるとは思っていない。そういう意味で、何らかの新しい制度を作りたいと思っておられるわけで、それをなぜ国だけが独占してやらなければならないのか。地方自治体がいろいろな形で創意工夫をこらしてカリキュラムの多様化をするのは認めない、国がする実験校であれば認めるという、国だけが教育システム変える権利があるという考え方をぜひ、この特区制度のもとでは変えていただきたい。研究開発学校制度というのはわずか3年間の仕組みであるから、学生がそれを安心して使うことができない。例えば、英語でいろいろな授業を受けたいという特区の構想があるが、そのときに3年間でうち切られたのでは学生は非常に不安になるわけで、恒久性ということを考えても特区による教育カリキュラムの自由化と文部科学省が考えておられている研究開発学校制度というのは別に併存してもいいが、これがあるから特区はいらないということにはならないと思う。コメントをいただければありがたい。

(田中)幼保の一元化ならび学部の設置基準の緩和等につきましては、現在作業を進めておりますので、それぞれの担当課長から説明させていただきたい。

(小松)幼保の一元化について。幼稚園の設置主体ですが、幼稚園も学校の一つであるということで、他の学校と同じ並びで考えていただきたいということ。もうひとつは、幼稚園というのは、そこを出たからといって何かの資格が得られるというものでもないし、幼児教育について、別に幼稚園に行かなければならないとか保育所に行かなくてはならないものでもない。今、現在でも、幼稚園にも保育所にも行ってない子供が5歳児でも5万人くらいいる。
株式会社で、何らかの幼児収容施設を作られるということについて、特段の規制はないものと解している。

(八代)幼稚園に与えられる補助金が、一切ないというのが大きな違いである。

(小松)補助金は、運営に関してもそれほど大きなものではないと思う。株式会社になった際に補助金をもらってやるのか、それとも株式会社であるから補助金無しでやるのか、それは別の問題だと考えている。

(八代)今の点で、理解できないのは、利用者から見れば、同じサービスの提供で、文部科学省の補助金をもらっている幼稚園に行く場合と、そうでない株式会社が提供する保育サービスや幼児教育の施設に行くのでは、当然補助金がないから授業料が違う。仮に教育サービスの質が違うなら仕方がないが、同じサービスの質であればなぜ、その特定の主体だけ補助金がつくのかという疑問はある。幼稚園が学校だからというのはあくまでもそちら側の理由で、利用者から見れば同じではないのか。

(田中)学校の設置者として株式会社は認めがたいと考えている。株式会社の学校というのは認められない、ただ、教育類似の教育をやることまで、禁止しているわけではないので、それまでダメだといっているわけではない。そこは、見解が相違するところだと思っている。

(小松)同じサービスという点でいうと、保育所と幼稚園、全く同じではないが、国から出ている財源というのはずいぶん違う。資格については、今現在、幼稚園と保育所で機能が違うので、このままで一元化してしまうと片方の資格だけで良いという人に対して、もっとたくさん単位を取らなければならない、つまり負担増を強いることになる。両方取りたいという希望を持っている人が、両方の資格が取りやすくなるように、していきたいと考えている。
一体的運営が難しいという指摘だが、園庭とか調理室が一体的運営ができないと言うのは、誤解かと思う。施設を共用する場合の指針を作っており、園庭も自由に使えるし、遊具も一緒に使える。実際に、幼稚園の方でも調理室を使って給食を出しているところもあるので、施設内でのやりにくさというのはほとんどない。特区で対応しようとしているのは、学級定員の範囲内で幼稚園でも保育所児を受け入れるようにする。今は、同じクラスにしてはいけないとしている。幼稚園と保育所は同じ建物にあっても別々のクラスにして、それぞれが10人ずつしかいなくても別のクラスにして、人も保育者も一人ずつつけなければならないとしている。これを、10人ずつであれば20人にして、一人の保育者でもいいとして、特区の方で対応させていただきたいと思っている。

(板東)大学の設立抑制方針、設置の基準について、準備を進めている状況についてお話を申しあげたい。総合規制改革会議の答申でも提案いただいているように、来年度から実施できるようにということでできる限り早く見直しをしようと言うことで作業を進めつつあるところ。ひとつは、抑制方針の関係。基本的に撤廃するということである。今現在、審議会が独自に決めている審査内規、方針的なもの、抑制方針も審議会の決めた方針であったが、そういったものについて整理をする。基本的には告示以上の法令によって必要なものがあれば定める。大幅に厳選、見直し、定める場合にも法令でということで、整理をし、審議会が勝手に基準等を定めるものではないということで考えている。審議会が判断するのは、大学の設置基準、省令等に書かれている教員、組織、校地校舎、課程、あるいは人員超過が激しくないか、経営に対してもきちんとした体制が取られているか、まさに一定の水準を満たしているかどうかということを判断してもらう。規模の抑制や分野抑制などを検討されるということではない。参入規制的に働くということが全くシステムの上でもないように整備する。
校地基準については、現在校舎基準というのが各分野毎に定められており、その3倍という形になっている。それは合理的でないだろうということで、学生一人当たりの面積を出して、それを人数で掛けていくという定め方にしていこうと考えている。場合によって、定性的にこういった場合については十分に質が確保されるというようなことについては、必要性に応じて穴を空けていきたいと考えている。大学院に関しては、いまでも定量的な基準はなく、都心の中で建物を造ったり、借りたりということは可能になっている。今後、具体的に特区でどういった提案が出てくるかによるが、現実の地域の実情に応じて、必要な例外、特例が必要だという場合があれば、代替措置をどのように考えているかを含めて、具体的に対応していこうと思っている。

(八代)学生一人当たりの面積というのは、校舎ではなく、校地面積のことか。

(板東)校舎についても学生一人当たりの面積を、もとにした基準をいま検討している。

(八代)2分の1の自己所有の方は見直しはないのか。

(玉井)これについても、緩和の方向で見直しを図っており、関係者の間で議論をしてもらっている。全体の総面積を一人当たりということで実状にあったものを考え、それに合わせて、質の水準の担保ということで、今2分の1と言っているものをどこまで緩和できるか、すこしでも緩和できる方向で検討している。

(八代)学校の質の確保というのは、教育サービスの質であって、きちんとした校舎とか教室があれば、それを自分で持っているかレンタルしているかは関係ない。それらが教育サービスの質に関わるかどうかがポイントであって、このような施設に関する規制の緩和というより、撤廃してもらいたい。
都心部で学校を作ろうとするときに自分で土地・建物を買えというのはあまりにも非常識。

(玉井)株式会社ともからむが、質と確保ともに、安定、継続性というのはある程度学校として必要性はある。学校においても世の中の変化にビビッドに対応する必要はある。学校教育は公の性質があり、安定性、継続性というものはゼロにはしにくいもの。

(八代)学校経営の安定性が大事だということは承知している。安定性を確保する手段が株式会社の禁止とどう関係するのか、学校法人ならそんなに安定的なのか。安定性を担保するような規制を、別途作って経営主体の規制を撤廃すべきだといっている。

(玉井)株式会社が頭からおかしいと言っているわけでなく、金儲けがいけないという倫理観的なことを言っているのでもない。1条学校という正規のルートで国民教育を確保していくというルートにおいては、営利、非営利という分け方はある。公共性ということを考えれば、非営利ということが教育の基本にあるのではないか、そういう意味でなじみ難い。

(八代)営利、非営利の基準をなぜ、学生に選ばせないのか。きちんと公開すればよい。
この大学は株式会社です、この大学は学校法人ですということを明確に公開して、学生が選ぶことをなぜいけないと言うのか、特にビジネススクールにおいて。

(玉井)確かに諸外国においても、株式会社の例がアメリカにもあるが、どちらかというと日本流にいう専修学校的なものであって、大学院まで含めたいわゆる1条の学校の性格にはなじまないと申しあげざるを得ない。
ただ、参入しにくいのではないかというのも議論であった。義務教育で、学校法人といっても私立はほとんどない。その原因の一つについて、小中学校について設置基準というものが無かった。財政的な面で、小規模の私立の小中学校を作るのは簡単かというとなかなか難しいところがあった。したがって、ひとつは設置基準を作ること、最低基準として、しかも明確にすること。他の学校を借用することができるように弾力的なものにし、かつ、公設民営という形で今、公立学校の廃校等があるので、その財産処分についても大幅な緩和を図っている。

(八代)それはよくわかった。
株式会社の件については、全国一律でいきなり認めろというわけではなく、学校の運営能力を特区の責任者が審査し、仮に経営が不安定であるというならそれに対する十分な担保、例えば、別個の公立学校で学生を受け入れるなど、いろいろな代替措置を取った上で、特区で株式会社の学校を実験的に認めていただけないかという要望が現にあるわけで、特区ベースでの話でもなじまないと一方的に決められるのは疑問。

(玉井)代替措置の議論はあることは、承知している。検討していくと、最後にどうしてもなじむなじまないの議論が営利、非営利の所に出てくる。特区といえども、教育の営利、非営利は考えざるを得ない。参入がしにくい学校法人、大学レベル、高等学校以下の義務教育レベル、これについては、参入しやすいように基準を明確にしたり、緩和したりの努力は続けている。今後、社会人という意味での大学院について、できるだけ弾力化を図って、社会人が都会の中で学びやすい環境を整えていきたい。だた、どうしても、専修学校、各種学校という民間の教育施設がある中で、幼稚園から大学院までについては、なじみ難いということで理解を得たい。

(辰野)研究開発学校制度について。教育課程の基準については、国の責任であり、公の性質を持つ学校について一定の内容の水準が確保できるようにしている。誤解があるのは、国の学習指導要領が箸の上げ下ろしまで、がんじがらめに縛っているというイメージが前提にあるようだが、そんなことはなく、最低必要なところを決めている。研究開発学校制度については、平成12年度からボトムアップ型にした。こういうことをやりたいということが出てきたら、基本的にそれは認めるということで、いろいろ出ている。例えば小中一貫など。ボトムアップ型の研究開発学校制度を生徒のために生かしていきたいし、さらに特区の中で、特区の性格に応じて、もっと使い勝手の良いものにできないかという議論があればそれは耳を傾けて対応していきたい。

(檜木)研究開発学校制度の範囲で対応するとのことだが、自治体の要望はこれでは対応できない、すなわち、3年間という期限が決められているという、そういう問題だと思うので、自治体の要望に応えるように検討してもらいたい。

(辰野)3年ごとに成果を見極めるということは、不合理とは思わないが、特区のほうで具体的なことがらがあり、不十分なことがあれば、耳を傾け、研究開発学校制度の運用についても柔軟に対応する。
不登校の子の学校を作りたいという特区の提案がある。そういう学校については、今の学習指導要領に合わない子が不登校になっているのであって、そういう子の実態に即したカリキュラムが組めるように、学習指導要領の適用除外を考えていきたい。民間が作りたいという場合には、NPOがやっている例もあるが、そういう場合には学校法人になりやすいよう、校地の所有要件などをはずして、学校法人となってもらい、そういう私学の不登校児童・生徒のための学校を設置してもらうということも、前向きに対応していきたい。

(八代)不登校対策という緊急避難的なことについてまでも学校法人でなければならない、株式会社もNPOでもだめというのは、あまりにも頑な過ぎないか。

(田中)NPO等で不登校を受け入れて、いろいろな教育活動をやっているわけだが、それらの教育活動については、それぞれの学校で、一定の教育活動として評価することによって、学校教育活動の中で取り入れていくよう考えていきたい。


内閣府 総合規制改革会議