第6回構造改革特区に関する意見交換会 議事概要

1. 日時

平成15年2月7日(金)15:00〜17:20

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室

3. 出席者
(委員等)

八代主査、福井専門委員

(事務局)

河野審議官、千代参事官、宮川室長 他

(内閣官房構造改革特区推進室)

檜木参事官 他

(関係省庁)

略 (下記議事次第参照)


議事次第


議事概要

文部科学省との意見交換

(山中総務課長)配布資料に基づき説明。

(加茂川私学部長)株式会社の参入についは、私学関係団体からは大きな反対があったが、教育の活性化のために受益者の立場にたって、厳しい状況の中で前向きに対応した。厳しい立場の中での判断だったことを理解頂きたい。学校法人は、他の非営利法人と違い、評議員制度というガバナンス機能や基本財産の自己保有原則など、学校を経営する上での公共性、安定性、継続性が担保できる特性がある。学校法人自体に公共性の向上、ガバナンス機能の強化が求められている中で、他の非営利法人にまで学校の設置・運営を拡大するのは難しいと考えている。これまでのNPOの取組み、特にフリースクールへの取組みなどの様々な実績については評価している。今回NPOについては、学校法人化の要件緩和をすることを考えている。このことは多くのNPO団体から評価されるのではないかと考えている。

(八代主査)ここまでの文部科学省の御説明に関して多くの問題がある。何より消費者のニーズを第一に考え、私学関係団体の意見は参考意見程度と考えるべき。現在の学校法人はガバナンスがあまり機能していない。現に留学生に依存している学校や文部科学省が定める定員基準を守ららい大学があっても、それに対する処分として私学助成金の停止しかない。本来設置認可を取消すべきであるが、なされていない。これに対して、株式会社やNPOの参入を容認し、競争を通じて今の学校法人中心の仕組みを変え、教育をよくすること。それを特区でやろうということである。文部科学省の説明では、競争を通じて教育をよくするという視点がゼロである。あくまでも今の学校法人制度がベストであって、これを少しずつ変えることしか考えていない。フリースクールなどのNPOの取組みを評価するのであれば、評議員制度、基本財産の保有などの外形標準ではなく、教育の中身そのもので考えるべき。資産をもっていなければ本当にやっていけないか、それを特区で試すべき。NPOを学校法人にすることではなく、学校法人制度そのもののあり方を検討するべき。そのための手段として特区を考えている。「特別のニーズがあれば株式会社を認める」というのではなく、文部科学省が定める教育水準についての基準を満たせば対等な立場で参入することを認めるべきで、不登校児を入れる場合などの特別な場合のみとするべきではない。

(加茂川私学部長)学校の活性化のために、株式会社参入に期待している。新しい管理運営主体が入ってくることによって既存の学校が刺激され活性化する。そういう意味では競い合いを期待できると考えている。

(八代主査)競争を認められるなら対等な競争をするべき。株式会社には助成金を認めないなど、対等な競争になっていないという状況はどういうことか。

(加茂川私学部長)何をもって対等というか、見方によって違うと思う。

(八代主査)学生の立場から見て対等ということ。

(加茂川私学部長)株式会社は学校法人ではできない配当を行うことができる点で対等ではない。大きなアドバンテージをもっている。

(八代主査)なぜ株式会社が配当ができるということがアドバンテージとお考えか。仮に自由な資金調達が学校経営にとってプラスと考えられるのであれば学校法人にもできるようにするべきではないか。

(加茂川私学部長)色々な制度が考えられるが、今は、現在の学校法人制度を前提に話をしている。それぞれの特質を生かしながら、トータルでよい競争ができればよいのではないか。NPOの学校法人化について、土地・建物の自己保有要件を撤廃するなど、大幅な要件緩和をしようとしている。

(八代主査)どんな教育活動をしているNPOでも認められるのか。

(加茂川私学部長)教育内容については第1次特区で特例が認められているのでダブルの適用もあり得るが、ここでは設置主体について言えば、基本財産の自己所有原則を撤廃するという大幅な緩和をしようとしているところ。

(八代主査)第1次では不登校児を対象とする時だけだが、今回は対象を広げるのか。

(加茂川私学部長)これから検討するが、かなり弾力的な対応が可能と思っている。

(八代主査)太田市のように英語で授業をすることも特別なニーズとして認められるか。不登校児や専門職、大学院だけに認めるということではないか。

(加茂川私学部長)現に太田市のケースなど、特別なニーズの範囲内と考えている。かなり弾力的な対応が可能だと考えている。

(八代主査)株式会社、NPOが参入する場合の手続が不透明なことが問題だ。学校法人のように県の私学審議会の答申を経て知事が認可ということでは、そこで特区で認められた株式会社学校がブロックされる可能性がある。私学審議会のメンバーは4分の3以上が私学関係者ということになっており、競争相手が新規参入者の認可の是非を決めることは、事実上のカルテル行為となっている。

(加茂川私学部長)現行の私学審議会の在り方については、新規参入の障壁になっていると考えられるので、全国ベースで見直しを検討している。ただし、株式会社が学校を経営するにも、経営の公共性、継続性、安定性の確保のことを考え、都道府県知事の設置認可の手続が必要となると考えている。都道府県知事は、私学審議会の意見を聞くことになるが、私学審議会はあくまで諮問機関であり、それは規制事項としての性格をもつものではない。認可はあくまで都道府県知事の権限。

(八代主査)全国対応で私学審議会の見直しが済むまで、特区が機能しない可能性があるのではないか。特区については総理が認定するものなので、従来の学校法人の場合と違って、自治体が直接設置できるスキームが必要ではないか。

(加茂川私学部長)今年度中、3月目途に私学審議会の在り方の見直しについて、制度設計を行う。都道府県知事の特区長への権限委譲については、今でも条例で定めればできる。実際に東京都は私立幼稚園の設置認可を区長に下ろしている。現在できる都道府県の裁量権を国が一括して特区長へ下ろせとなると、国と地方の関係の問題であり、それは特区で扱うべきことかどうか、判断に苦しむ。

(八代主査)都道府県知事が条例を作れば特区長へ権限を降ろせるという実例をお示し頂きたい。

(加茂川私学部長)法律上の根拠と実例を示したい。

(檜木参事官)先ほど私学部長から、NPOも評価するはずであるという話があったが、多くのNPO法人から、株式会社に開いた道はNPOにも開いて欲しいという意見があるので、そういう事実関係だけ申し上げる。

(加茂川私学部長)NPOからは何らかの援助をして欲しいという要望が多いが、学校法人になれば私学助成が受けられる。

(八代主査)学校法人にならなければ私学助成が受けられないという点が問題。そういう条件をつければ学校法人にならざるをえない。また、株式会社が参入する場合、情報公開、第三者評価、学生等就業機会確保のためのセーフティネットの構築という条件を付けた訳であるが、本来これは学校法人についても課されるべきものである。これら事後規制については、株式会社が入ってくるということで慌てて付けた訳であるが、学校法人に対しても速やかに等しくかけて頂きたい。現に学校法人は情報公開が十分なされていない。財務諸表なども任意であり、出さないところも沢山ある。私立学校が倒産した時に必要となる雇用保険についても教員は入っていない学校が多く、これは雇用保険法違反である。このように今の私立学校は絶対つぶれないという前提に立っており、これは問題である。

(福井専門委員)NPO法人と学校法人で本質的な違いは何か。NPO法人の規律のままでは学校経営に不向きで、学校法人ならばよいのか。ポイントを教えて欲しい。

(加茂川私学部長)学校法人は、内部組織としてガバナンスが働く評議員制度がある。

(八代主査)それはNPO法人でも作ればよいわけか。

(加茂川私学部長)制度設計としてはあり得ると思うが、現在の法人制度を前提としている。

(福井専門委員)他のポイントは。

(加茂川私学部長)学校法人の場合は、継続性、安定性が求められ、今回緩和されたが、本来は基本財産の自己所有が原則。NPO法人の場合は基本財産の要件はない。それは大きな違い。

(福井専門委員)それは今回緩和される。そうではなく、NPO法人の形式ではまずくて、緩和後の学校法人の要件を満たし、学校法人であれば、学校の経営に適するという趣旨は何か。

(加茂川私学部長)まず、評議員制度が問題である。

(福井専門委員)NPO法人でも評議員制度を備えていればよいか。

(加茂川私学部長)学校を設置する上での相応しい要件を備えているのが学校法人である。NPOに一定の要件を求めていくことは、上から下からの違いはあるが、学校法人に近づけていくことになる。そこで学校法人になり易くする方が望ましいと考えている。

(福井専門委員)そういう考え方もあるが、印のある学校法人とするよりも、内実に即して学校に適した機能を持てばよいという考え方がある。機能で考えるべき。学校法人には機能的にこういう適した面があるという切り口で議論しないと噛み合わない。株式会社では学校に向かない点、または、学校法人にはあって株式会社にはない点は何か。

(加茂川私学部長)学校法人に剰余金があった場合は、基本的には教育研究条件の改善に還元するということになっているが、株式会社の場合は株主の配当になるという点が大きく異なる。

(福井専門委員)金利と配当は経済的機能は同じ。

(久保私学行政課長)学校法人は財団法人として、もともと財産ありきでスタートしたもの。借入れは本質的な議論ではない。

(福井専門委員)資金調達のコストが教育外に出ていくことについては利子についても同じ。同じ教育外流出でも利子はよくて配当はだめという根拠が分らない。

(加茂川私学部長)一般の保護者の立場に立つと、学校経営に必要な借り入れをする場合の金利と、学校経営であがった利潤を配当するのとは本質的に違うもの。

(八代主査)それは間違った認識である。株式会社は株主のために最大の利益を出すが、そのためには消費者のために良いサービスを提供しなければ利益は上がらない。そこが競争のない学校法人と異なるところではないか。

(加茂川私学部長)本当に国民の立場に立つと、借り入れの金利と、配当とが同じであると説明責任を果たせる自信はない。

(福井専門委員)配当も利子も外部流出ではあるが、配当は利子とはちがう性質ということか。

(加茂川私学部長)そのとおり。

(福井専門委員)同じ外部流出であるが利子ならば構わないと考えるポイントは何か。

(加茂川私学部長)借入れは必要に応じてするもので、利子は進んで払うものではない。同じ外部流出ではあるが、配当は最大にしようというインセンティブが働くものである。それは利子と全く違った要素があるのではないか。

(福井専門委員)ちょっとお尋ねしたいが、株式を会社が発行するときというのは、どういうときに発行されるというふうに理解されておられるか?

(加茂川私学部長)資本調達が必要な場合。

(福井専門委員)学校法人が、例えば、校舎をたてるとか教員を新たに雇いいれるのと同じような意味で人的資本や物的資本に投資するときに、会社というのは金融機関から借りようか株式発行で調達しようかというオプションがある。だから、そういう意味では、前提は全く同じだと思うが。

(加茂川私学部長)株式はそのとおりだが、株主への配当を少しでも多くしようとするインセンティブが経営者には働くのではないか。学校経営者には、借り入れた借入金の利息を多く払おうとするインセンティブは働かない。

(八代主査)そういう一面だけを見ていることは金融市場に対する認識不足であり、なにか学校経営がものすごく儲かるという暗黙の前提がある。仮に学校経営が赤字の場合を考えていただきたい。学校が赤字の場合、銀行は利息をまけてくれることがあるか。銀行というのは学校経営が赤字なったときに、担保としての不動産を盾に赤字であっても借金の返済を迫るという約束事である。株式というのは、逆に赤字の時には配当を払わなくてよい。儲かっているときのことばかり議論されるのではなく、両面をきちんと理解していただきたい。

(福井専門委員)参考までに申しあげるが、私がつい最近聞いたある非常に大手の総合的な学校法人の役員の方が、学校法人に株式が発行できないのは、資金調達上たいへんに不便である。なぜならば、今主査がおっしゃったように金融機関は担保を実行してでも強力に取り立てるが、もし株式で調達すれば、そういうブラーフからは守られている。しかも、株主は銀行と違って、経営内容に介入することもないし、はるかに自由度も高い。非常に不自由だとかなり切実におっしゃっている方もいらっしゃる。こういう意見については、どうか。

(加茂川私学部長)学校法人制度については、内部ガバナンス機能の強化も含めて、いろいろな今見直しを実際検討しているし、必要な法改正も視野に入れながら検討を進めている。学校法人制度がすべてパーフェクトな制度だと言うつもりはないが、時代の要請に応じて見直さなければならないという問題意識は持っている、実際作業を進めているという点をぜひご理解願いたい。その前提で、学校法人関係者にも、今の制度に対して改正の意見もあるかと思うし、不満もあるかと思う。その一部が届いたのだと思う。基本は守りながら、マイナーチェンジで対応したいという意見、いろんな意見がある。

(八代主査)マイナーチェンジですむかどうかも含めて聞いている。

(加茂川私学部長)それは状況変化を考えながら、国民のニーズに一番必要なチェンジが大規模なのかマイナーなチェンジかどうかはこれから検討していかなければならない。姿勢としては、私どもも今のものが全て良いと思っているわけではなく、必要な見直しはしているということをご理解願いたい。

(福井専門委員)いわば、会社法の前提とする枠組みないしは日本のような国で会社が果たす役割というのは、会社が株主利益最大のために消費者の利害を犠牲にするような経営をしているところは必ず倒産する。したがって、会社組織には一定の意味がある。消費者から常に審判を受けているわけである。だからこそ、株式を発行したって顧客満足度を高めることによって配当をするというのが、普通の会社経営者の意識。配当が常に悪くて、借入れの利子支払いは常に良いと言うのはいわば一面的なドグマのようにも聞こえるので、そのそれぞれのメリットを考えるべき。もちろん借り入れにもメリットはあると思うが、資金調達の手段としてさらに株式発行のような形を学校経営に認めるというのは、これは学校経営の基盤を磐石にするとともに、顧客満足度を高める手段でもある。そういう観点でメリットも考えていただく。学校法人の拡大でないと改革は出来ないと言うのは、これもドグマだと思うので、そうでないやり方も是非考えていただきたい。

(八代主査)学校経営に一番大事なのは非営利性であると言われたが、もう一回確認するが、それでいいのか。

(加茂川私学部長)大事な点は公共性、継続性、安定性だと思っているが、もともと今の学校法人制度は非営利を前提にしている。

(八代主査)今の制度のことは理解しているが、今の御説明で、一番大事なものが抜けている。それは教育サービスの質。まさに、今なぜ、株式会社とかNPOの参入が必要とされているかの根拠を全く認識されていない。学校が継続して、安定して、非営利でさえすれば、それでいいというご認識が真の問題である。教育サービスの質、消費者が求める教育の多様性というものがなぜ真っ先に出てこないか。そこの認識をまさにわれわれは問うている。

(加茂川私学部長)学校法人制度は、学校の主体性を尊重して、かなり自由にいろいろなことができる弾力的な仕組みになっている。国民、消費者のニーズを十分にキャッチしながら、いろいろなニーズに応えていくべきことは期待されており、できる仕組みになっていると思う。ただ、実際には、長い歴史に安住して必ずしも要請に応えきれていなかった部分があり、反省すべき材料もある。そのことは内部改造だけでなく、外部から刺激を与えれられることによって、自分も活性化する。今までにないコンペティターも現れ、相乗効果を私どもも期待して、今回株式会社について前向きの検討をしている。それは、今までの学校経営、私学も含めた学校経営で、十分対応できていなかった現状を反省し、認識しているからである。

(八代主査)それはわかっている。学校教育の一番大事なのは教育サービスの質だということについてイエスかノーかで答えていただきたい。継続性、安定性、非営利性よりも教育サービスの質がもっとも大事か。

(加茂川私学部長)教育のサービスの質を一定水準に維持、向上し、機会の均等を図ろうとするのは、特に義務教育の場合、極めて大事だと思っているが、なぜ、求める必要があるかと言えば、消費者のためだと思う。それを確保するために継続性、安定性が大切だと申し上げている。

(八代主査)だからこそ、一番大事な要素を何度も聞いたのに、それが出てこない。継続性とか、安定性とかはそのための手段に過ぎない。仮に劣悪な教育しかしない学校法人が継続していれば学生にとって迷惑であり、場合によってはつぶれることの方が、むしろ教育サービスの質の維持には大事な面もある。繰り返し言うが、非営利性、継続性、安定性というのは教育サービスの質を高める一つの手段に過ぎないということを是非認識していただきたい。

(福井専門委員)株式発行と借り入れの話であるが、参考までにいえば、株式発行というのは利益があがらなければ、ないしは経営状態があまり良くないとか、あるいは株主に配当するよりは内部留保の方が良いとか、再投資の方が良いという場合には配当しなくてもよい。仮りに潰れてしまった場合には、返さなくてもよい。借入金というのは、土地や建物が担保に入っており、いわば血も涙もなく確実に回収される。返さなくて良いとか利子支払わなく良いということはあり得ない。その点では、株式発行のほうがむしろ、学校経営にとって融通が利くということになる。これについては、どう考えるか。

(加茂川私学部長)必ずしも当方は、経済の専門家ではないので、外部流出について借入金の利息と株式配当の性格については、考え方をもう少し整理させていただきたい。

(福井専門委員)結局、非営利性が重要な要素だと説明があったが、今度は、特区に限ってではあっても、株式会社、営利企業の参入を認められたと理解してよいか。

(加茂川私学部長)検討している。

(福井専門委員)その点でも、非営利性の看板を下ろしても学校経営に適するという類型を認知されたと理解してよいか。そうするとこれも先ほどのNPOと学校法人の比較で出てきた基本財産の自己保有撤廃というのと同じ事で、いわば一定の類型については、基本財産の自己保有同様、営利性があっても構わない、逆にいえば、非営利性の要件を撤廃されているわけで、それでも学校経営に適している場合があるということで理解してよいか。結局のところ評議員制度というチェック機関以外に、本質的な要素があるようには聞き取れないが、そういう理解でよいか。

(加茂川私学部長)あくまでもこれは特区の議論であると認識しており、特別な実験的であるというような表現であれば語弊があるかもしれないが、必要なトライをしてみようということである。教育の質は、何よりも大事だと思っている。そのための継続性、安定性、公共性だと思っている。今の教育のサービスの質の向上を図るためには非営利性だけを守っているのではダメ、営利の要素も加味しながら多様な教育サービスを提供する必要があるのではないかという観点から、今、特別措置を検討しようとしている。原則論として、全部、営利性の要素をかなぐり捨てるんだなという指摘であれば・・・。

(福井専門委員)そういうことを言っているのではない。あくまでもこの議論は、もともと特区の話であるから、新たな特区制度の中では営利性が絶対にダメだというわけではないことは、既に検討されている制度でも前提になっている、ということの確認をしたいという意味。

(加茂川私学部長)あくまでもこれは株式会社が一人手を挙げて、特区の適用を受けるわけではなく、特区長、地方自治体とセット、ペアになる話である。これも表現が適切ではないかもしれないが、自治体が保証人のような形で、この参加者は学校経営の主体の参加者として、自分が責任を持つという形で特区制度とするのであれば、営利主体でも非営利の原則の例外ということで、いろいろなトライアルの意味があると思う。

(福井専門委員)学校の経営主体については、結局、今回特区制度のスキームをとる限りにおいて、営利性とか、継続安定性のための基本財産自己保有などをある意味では放棄されたわけであるから、むしろ評議員制度のようなものが充実されていれば、かなり経営主体についての自由度は高いという理解でよいか。
 もうひとつは、特区で、仮にうまくいった場合、自治体が後見人としてではなく、あまり干渉しなくてもテイクオフできるようないい制度として育つかもしれない。そのときには全国制度に展開する余地はあると考えてよいか。

(加茂川私学部長)特区制度の本来の運用、趣旨にのっとって定期的に評価を踏まえたうえで、全国化の議論は改めてあると思っている。

(福井専門委員)今回特区で踏み出したということは、そもそも論としての懸念が払拭される可能性を、せっかく一歩踏み出して認めたわけである。そこで実験を拡大することについては、出来るだけ拡大しない方向ではなくて、できるだけ実験を広く捕らえる方向で各提案を見ていただきたい。

(加茂川私学部長)先ほど、多様なカリキュラムについても、限定的ではなくて弾力的に考えているとお答えした。基本的にはそういう姿勢を持っている。

(福井専門委員)一時期、新聞で、文部科学省の見解として、高等教育について、大学院とか専門大学院については株式会社はなじむが、初等中等レベルでは必ずしもなじまない報道をみた。今、そう考えておられるかどうかわからないが、その点についてはどうか。

(加茂川私学部長)今の検討の状況では、特に学校種別を区切ることなく、いろいろな可能性を検討したい、これから制度設計をしていきたい。

(八代主査)それでは次に都道府県の認可権限の特区長への委任について説明頂きたい。

(加茂川私学部長)現在でも、条例に基づいて、都道府県知事の権限は市町村長におろすことができるので、現在の制度の中で要望等には対応できる。

(福井専門委員)条例を作るかどうかは、都道府県議会の裁量である。今の特区制度の趣旨は、都道府県とは無関係に市町村が独立に申請できること。都道府県が、市町村の意をくんで、条例を作ってくれるという保障はない。その点はどうか。

(加茂川私学部長)それは、今まさに都道府県知事に与えられている権限であるから、都道府県と市町村の間、地方自治体同士の権限委譲の話であり、国と地方の、規制緩和、権限委譲とは違った要素があるのではないかと思っている。現在、都道府県知事の権限でできることなので、更にできることを必ずしなさいと規制強化することは地方分権の観点からもなかなか難しい。逆のベクトルではないかとの懸念を持っている。

(福井専門委員)消費者なり地元のニーズから見ると、国と市町村という組み合わせかあるいは国と都道府県という組み合わせなのかというのは、どうでもいい話である。公的主体の中での権限配分として今のような制度がたまたま採られているだけである。都道府県と市町村の、それぞれ固有の権限があるのだから、市町村が出すものについては都道府県のいうことを絶対に前提にしなければならないというのであれば、市町村がいくら努力しても、特区は止まってしまう。

(加茂川私学部長)非営利法人制度について言うと、基本的には都道府県知事に権限がある。学校教育分野だけでなく、公益法人全体の所轄庁の権限の問題であり、学校運営、教育分野だけでは整合性ある議論がなかなかできないと思っている。また、私学助成については、都道府県が学校法人に対して助成している。そのまま都道府県の助成を前提としながら、学校の設置認可を特区長、市町村におろすということは、私学助成の実施主体と学校の設置認可の権限が分かれるので、その辺の行政の整合性を図るのもなかなか難しいと思う。

(福井専門委員)助成の話はまた次にあるので、さしあたり、認可の件で言うと、公益法人が一般的に都道府県にあるということ、これは別に法人の認可が都道府県知事でなければならないという確立したテーゼを前提にしたものではない。公益法人でも、国の認可のものもあれば、都道府県の認可のものもあるわけで、これらは、事業に関するエリアの広範性を一応の基準としたものに過ぎない。都道府県の認可で公益法人というのは、別に市町村がだめだから、都道府県でやっているというものではない。狭めのものは都道府県、都道府県をまたがる広めのものは国という非常に単純な整理でできているというのが、実際の制度の見方だと思う。そういうことを前提にすると、公益法人、ないしは学校法人一般が常に都道府県になくてはならないということは別に法原理として認められるものではない。特区のような、まさに、地域独自のニーズに即して何らかの組織形態を認めたいというときに、都道府県の権限を市町村に委譲するということは、今の地方分権の流れの中で通常行われていること。そういった意味での分権を特区に限って行うことは、別に制度上なじまない話ではない。

(加茂川私学部長)そういう選択は、ひとつあると思うが、仮に都道府県と市町村が相談して、それでいいですよということであがってくれば、そこについてだけ特別に対処すればいいが、今後、これを一般化して制度化した場合には、県と市の利害が対立するかもしれない。都道府県全体の教育方針があって、それと市町村が対立することがあるかも知れない。その場合に、県を飛び越して、特別に市が言えば、全部、都道府県抜きでいいのか。この問題だけでなく、もっと特区法全体で制度として考えるべき問題である。そもそも申請する時は都道府県の了解を取ってからあげるとするか、都道府県は市が手をあげれば承認したものとするとか。たまたま特定地域からの承認申請があったからといって、一般的におろすというのは、それはなかなか制度としてできにくい問題であると思う。

(福井専門委員)しかし、今の特区制度は、都道府県と協議の整ったものだけを市町村が申請できるという制度にはなっていない。閣議を経て国会で決まった法律なのだから、文部科学省もそうした理解のもとにこの法案を了解しているはずである。もし、都道府県と市町村の齟齬を調整したうえでないと、まずいということであれば、それはやはり内閣で決める段階で問題があるというべきであった。都道府県をすっ飛ばして、地元ニーズに応えようということで、市町村から直接の申請を認める、しかもこれを広く奨励するという建前で現在の制度ができている以上、都道府県と市町村とが別々の考え方を持ち得るということは制度に折込み済みである。もちろん、都道府県をすっ飛ばしても良い、無視しても良いといっているわけではないが、場合によると市町村が都道府県の利害に反してでも申請してくることがあるという前提のもとで、それを最大限取り入れて後押しするというのが特区制度の趣旨なのである。「都道府県が横になっているから、知らない」というように国が言ってしまったら、これは特区制度を瓦解してしまうということになる。

(加茂川私学部長)「知らない」というつもりではないが、自治体間の相談で、下ろせるものは下ろせる。しかも他の自治体は言っていないのに、ある特定の地域だけ言ったから、それを手を上げたところはどこでもできるように制度化していいのかというのが、ひとつの問題。

(福井専門委員)じかに都道府県の意思を無視して強圧的に国と市町村だけでやれというのではないにしても、市町村からせっかく切迫したニーズで出てきているときに、国は国で、都道府県が何らかの事情で反対しているとしたら、説得するとか、説明するとか、市町村との間に立って事情をよく聞いてあげるとか前向きの姿勢で臨むことが重要ではないか。

(加茂川私学部長)仮に特区制度の第2弾が法律になったときは、その趣旨について施行通達、通知レベルで趣旨徹底をするし、必要であれば担当者の会議を開いて市町村の意を体したような都道府県知事の権限行使に配慮してほしいことを指導するので、その趣旨には対応できるだろうと思う。

(福井専門委員)ぜひ、そうしていただきたい。もうひとつ、県の私学審議会の構成というのは、具体的に利害当事者はどういう扱いになる予定か。

(加茂川私学部長)利害当事者と言うのは。

(福井専門委員)「既存の学校法人経営者が4分の3以上」というとんでもない要件は、どの程度緩和されるのか。

(加茂川私学部長)これから検討するが、今の時点では数値的な改正内容も含めてお示しできない。

(福井専門委員)数値の基準を下げるだけか。やっぱり4分の1以上とか5分の1以上というのは残るという前提か。

(加茂川私学部長)どこまでの見直し方をするかまさに検討中なので具体的に言えない。今の4分の3の身内ばかりが入っていては、公正な審査ができない、新規参入について無用な障壁になっているのではないかという懸念には回答が出せるような見直しをしたい。

(福井専門委員)一人でも入っていたら、公正な審議はできないと思う。自分の競争相手を認めるかどうかを、その人に票決権を与えるというのは、裁判で言うと、裁判官の中に被告の身内が混じっているのと同じではないか。

(加茂川私学部長)司法制度との比較は判断しかねるが、要は、認可権をもっているのは都道府県知事であって、知事の諮問機関として正しい適切な判断をするためにいろいろな意見を聞く場があり、意見を集約したものを得ることに意義があると思っている。

(福井専門委員)それが制度化されていることが問題なわけである。

(加茂川私学部長)いろいろな意見を聞く際に、県において私学の多い地域少ない地域がある。もしくは多い少ないに拘わらず、参入しやすいところしにくいところがあるから、関係者の意見を制度として、私立学校審議会の中で聞くというのもあながち意味のないことといいきれない部分があるかと思う。

(福井専門委員)実際上、その種の審議会というのは知事の判断を極めて強力に拘束するということは承知のとおりのわけである。あれはあれとして、知事は別の判断をするなどというような勇気のある、あるいは審議会の意見を無視するという知事がそう続出するとは思えないから、実際上はかなりの拘束力がある。
 いわば競争相手が混じっているという人的構成を法令で定めているということ自体に重大な問題がある。建設業の許認可とか宅建業の免許の付与にあたって、仮に諮問機関にせよ、参与機関にせよ、同業者が意見を言うような公然とした場が設けられているというようなまともな制度を私は知らないし、もし、私学がそうなっているのであれば、それは恥ずべきことである。今まで残ってきたのは仕方がないにしても、この際、利害当事者の意見は一切シャットアウトするということをまず、出発点に考えていただくのが筋ではないか。もし、私学の経営状態とか私学のあり方について意見を聞きたいのであれば、都道府県以外のところで学校経営している私学関係者をメンバーに入れる。要するに、落ちるか通るかについて、一切利害関係のない人だけを入れる。それなら、私学関係者でもいいと思う。しかし、明らかに自分の商売敵になる人に権限を及ぼすことができる人を任命することは、これは制度の成り立ちとしてそもそも狂っていると考えるべき。

(加茂川私学部長)今まさに検討してところなので、厳しいご叱責も十分参考に、検討結果を形にしていきたい。

(八代主査)次に不登校児を対象とした「公設民営化校の容認」について、簡単にご説明頂きたい。

(辰野初等中等教育企画課長)公立学校については、地方自治体が設置者なので、設置者が責任をもってその運営をやっていただく。それを責任放棄はできないだろう。ただ、不登校児の関係については、第一回の特区の提案においていろいろあり、そこでいくつかの道を開いた。現実に、公立の方でそういう特区を申請して、八王子あたりで、ジュニアマイスタースクールを作ろうということもあるので、まず公立におけるさまざまな取り組みを見ていきたいと思っている。公設民営でいくつかの提案があるが、中身がはっきりしないところがある。現在でも公設民営方式でできるいろいろなやり方があり、このあたりを十分にご説明したり、ないしは今回のこの特区の整理の中でできることとできないことを明確にしていくべきと思う。現実に、校地校舎を提供して学校法人としてやっているところ、第三セクターを官と民で協力して作ってやっているところもあるので、それらの趣旨の徹底を図って行くべきであると思っている。まずは、現在、第一次提案において道が開かれたので、これにおける公設民営の取組を見ていきたい。

(八代主査)第一次提案に応えていただいたのはありがたいが、かなりの第二次提案もあり、今後第三次、第四次提案があるわけなので、一回目の提案で全て片づいた、後はそれの結果を見るだけというわけにはいかない。次々と新しい提案が出れば、次々と対応をとっていただくというのがこの特区の考え方である。それから、責任放棄というのはずいぶん強い言葉だが、なぜそうなのか。自治体が、自ら公立学校を運営する、あるいは第三セクターでやる、あるいは外部に委託する。これが、なぜ、これは良くて、これは悪いということを文科省が一方的に、しかも責任放棄というような非常な価値判断を伴ったような言葉を使って言われるのか。もともと現行制度においても、自治体が建設した学校を学校法人に提供して維持管理することは認められている。これも、学校法人はよいけれども、株式会社、NPOは悪いと言う最初の議論の裏返しである。この特区においては、ようやく株式会社であっても学校を設立してもいいということを認めたのであれば、当然、整合性をとる意味でも、この公設民営、外部委託についても学校法人と同じように株式会社、NPOもいいというのが当然の論理ではないか。なぜ、株式会社に委託したら責任放棄で、ひどい学校法人に委託したら責任放棄でないのか?それは自治体と利用者が決めればよいのであって、なぜ、文科省が問答無用でダメだと言う権利があるのか。それから、まさに特区は実験的にあるということは文部科学省も言っているわけなのだから、自治体が責任を取るということで、たとえば、株式会社、NPO等に外部委託をして、その結果が良ければもっと広げればよいし、悪ければやめればよい。なぜその実験すら認めないのか。そんな確信がどこにあるのか、それについて詳しくご説明いただきたい。

(辰野初等中等教育企画課長)公教育であるから、品質保証というか、その内容、水準をしっかり保証しなければならない。

(八代主査)それは当然のことであって、なぜ、学校法人しか保障できないか。

(辰野初等中等教育企画課長)学校法人というか、今、ここは自治体の話ではないのか。

(八代主査)公設民営の受託先としての学校法人のことを言っている。なぜ、それが、学校法人に委託しなければ、教育の質の保証ができないという風にドグマ的に言うのか。

(辰野初等中等教育企画課長)学校法人に委託ということはないと思う。つまり、例えば、自治体が学校法人を誘致したい。誘致をしてそしてここに学校を作って欲しい。その際に土地、建物を提供しましょうということはあると思う。それはあくまでも、学校法人が設置するときに自治体が関与するということだと思う。

(八代主査)私の言い方が悪かったかも知れないが、同じことを株式会社にする場合、すなわち株式会社に学校を誘致するために、自治体が土地建物を提供して、それに作っていただくといういうことは良いのか。委託は悪いけれども、作っていただくことに対して、土地建物を提供することは良いのか。

(辰野初等中等教育企画課長)前段の部分、株式会社についてはどうするかは検討段階だろうと思うので、今の段階では話はちょっと進めにくい。

(八代主査)設立において、株式会社を認めるということが決まってから、第二段階としてこの委託の問題を考えるという趣旨か。

(辰野初等中等教育企画課長)まず、委託ありきというのが最初にくるところが非常にひっかかる。

(八代主査)委託という言葉が悪ければ、公設民営ということだが。

(辰野初等中等教育企画課長)要するに、公立学校を責任を持って自治体が設置をして、品質保証していくということが原理原則である。

(八代主査)そうした原則が守られていないではないか。現に公立学校で荒廃している例も多いから、こういう問題が起きている。だから、それに対応するために代替措置を考えられているわけだから、その原理原則がもう崩壊していることを認めていただかないと改革の議論はまったくない。

(辰野初等中等教育企画課長)それを認めろというのであれば、それはちょっと認めにくいところはある。確かに、今いろいろな問題が生じていることはそのとおり。またいろいろな民間のノウハウ活力というものを活用したい、それは私どもも同じ気持ちである。そのために今、公立学校についても裁量の拡大や、権限の移譲も行われ、まさに多様化を含めて公立学校の充実をやっていこうとしている。それはもう委託じゃないか、むずかしくなったら、もう丸投げでいいよという話にはならない。

(福井専門委員)ちょっと議論がずれている。一貫して主査が聞いているのは、運営委託先として株式会社はだめで、学校法人ならいいということの理由である。

(辰野初等中等教育企画課長)それは、学校法人がなぜ、学校経営と、品質をご承知ならば、安定的に学校教育というものを供給できるかという先ほどらいからの議論をそれをわれわれはベースにしている。

(福井専門委員)特区では、株式会社が直接学校を経営することまでもすでに踏み出している。にもかかわらず、もっとかかわりの薄い、運営委託先で、株式会社は絶対ダメだという根拠はなにか。

(辰野初等中等教育企画課長)直接経営も検討段階であるが、設置者として、設置運営することと、ある設置者がそれをどこかに委託をするというのでは違ってくるのではないか。

(福井専門委員)違うとしたら、直接の場合と比べて運営委託の場合の方が学校経営としてうまくいかないという論拠は何か。

(瀧本教育制度改革室長)先般も、特区室から山形県鶴岡市等々で、大学の運営について、こう、公立大学のまま、ある私学法人に運営を委ねているというご指摘があって調べてみたが、これはあくまで学校法人が誘致されている、単純に言えば、校地校舎は公が面倒を見て、呼んできてそこに○○学校法人の○○大学が、私立大学として実施している、場合によっては、自治体が実際に学校法人の設立にあたっての資金をかなり百数十億も出して、学校法人を作り、学校法人としてやっている、そういう形態である。高等教育分野では数も多く、公設民営型といって日本全国でもあちこちに事例はある。これは、初等中等教育レベルでも似たような、実際誘致かどうかは別として私立の教育を行っているようなところが、自治体から公の校地校舎を安く提供してもらいやっているそういう公設民営というのはあって、その形については、今回さらに学校法人としての要件緩和をする。

(八代主査)委託という言葉にこだわっているが、それをわれわれは委託と見ただけで、そちらはそれを委託と見ないならそれは構わないが、同じ事を言っている。

(福井専門委員)議論をはぐらかさず、端的に答えて欲しい。学校法人と自治体との関係でできていることを、株式会社でやるのはどうしてだめなのか、その議論にだけ、端的に答えて頂きたい。

(瀧本教育制度改革室長)その点は、同じ事では絶対無い。

(福井専門委員)理由を言ってもらわないと、連呼されても意味がない。

(瀧本教育制度改革室長)委託といっているのは、特区推進室からも話しがあったのは・・・・

(福井専門委員)委託というのは忘れて頂きたい。そちらのいう前提で結構だから、同じ形態の学校法人を株式会社でおきかえただけのものが絶対にダメで、学校法人のままなら絶対にいいという、違いだけを教えて欲しい。

(瀧本教育制度改革室長)今回のご提案の不登校を対象とした公設民営学校の容認という中では、この点を今日の重要事項としてご提言いただいていると思う。意見交換をしたいということで示されていると思うが、この中では私の理解する限りNPOとして公立学校のままNPOにその内容をやらせてくれ・・・

(福井専門委員)学校法人に対して現にやっている例があるとさっき陳述された。同じ事を株式会社がやるのはなぜまずいのかと聞いている。関係ないことを答えないでいただきたい。

(瀧本教育制度改革室長)今回の公設民営学校の容認に関していうと、ご提案の話とは別の事項かと思うが。

(福井専門委員)別でも構わない。

(八代主査)今おっしゃったことについて確認をさせて頂くと、学校法人を誘致して建設することはよいのか。

(辰野初等中等教育企画課長)株式会社による学校についてのお尋ねだと思うが、まさにこれから制度設計をしていく段階で、現段階ではこうということは答えられない。

(八代主査)どういう方向で制度設計をされていくか聞きたいわけで、その時になぜいけないのかという考えがわからなければ、ただ、制度設計するからそれまで待てといわれても、意見交換にならない。

(福井専門委員)いけないということの論拠を、今示せないと理解して良いか。

(辰野初等中等教育企画課長)学校法人を誘致するのと同じように、そういうことでどうかということですね。結局は、地方自治体が株式会社を誘致して、ここに不登校児のための学校を作ってくれとなる。そうすると、株式会社が設置主体になる。設置主体となるときにどこまで認めるかというのは、まさに検討中である。

(八代主査)ということは、逆に、そちらでいわれた設置主体として認められたら、こちらのほうも自動的に自治体が誘致しても構わないことと同じだという理解でよいか。

(辰野初等中等教育企画課長)そういうこと。設置主体として、ある要件のもと認められるということ。

(八代主査)設置主体について、自治体が公設民営方式で土地建物を提供するというところが違う。それは関係ないということか。

(加茂川私学部長)一点、全く別事を言うと、自治体が仮に第三セクターというか、公設民営方式で、株式会社と共同の学校運営を企画したとして、自治体も公の団体なので、公共団体が株式会社に無償の土地建物の提供や資金提供をする場合には憲法上の公の支配に属しない団体に公金を支出できるかと言った観点も検討する必要があると思う。答えにくいのは、今ケースがないこともあるが、株式会社の参入ということについて制度設計をした上で、いろいろな憲法上や他の法律の整合性がとれるかということについて慎重に検討したいというのが今のスタンスである。

(福井専門委員)憲法上の問題がクリアされれば、別に株式会社の直接学校経営を認められたのと同じレベルでの誘致とか運営委託は可能になるというそういう解釈か。

(辰野初等中等教育企画課長)株式会社が経営するというのは、株式会社そのものが事務職員を雇って自分の経費でやる。公設民営というのは、その際の給与は自治体の事業として行う。仮に教職員が持つとか自治体が持つというセットになる。

(八代主査)いや、土地建物の提供です。給与ではない。

(辰野初等中等教育企画課長)土地建物を貸して、給与は運営主体が持ち、自治体は持たないということですか。

(八代主査)公設民営とはそういうものではないか。

(辰野初等中等教育企画課長)いろいろなパターンがあるので、いろいろな可能性について憲法や法律の疑義も検討してみたい。

(藤原事務室長補佐)保育や介護の分野であると、市が公設民営という形で企業に完全に運営を委託している場合がある。教育分野で仮に特区で民間参入が可能となった場合に、同じようなやり方は可能なのか。

(辰野初等中等教育企画課長)考え方としてはとりにくい。教育というのは事実行為ではないので、例えば公務員が何かやると公権力の行使と言われる。学校の中でも単位や卒業の認定であるとか、懲戒であるとかの権力的な色彩がある。単なる事実行為と同列では論ぜられない。地方公共団体が責任を持ってやっていただくことが基本である。

(藤原事務室長補佐)教育分野では、学校法人に対してですら、公設民営方式が馴染まないということか。

(辰野初等中等教育企画課長)意味がわからないが、学校法人に土地建物を提供して、学校法人が設置するのが公設民営というのなら、それを公設民営と言っても結構である。

(檜木参事官)議論が錯綜している。管理を委託できないかということ。設置者が管理するということであるから、学校法人であっても管理は委託できないのか。

(辰野初等中等教育企画課長)学校法人が管理を委託するという意味がわからない。

(福井専門委員)学校法人と株式会社が区分されている訳ではないということか。相手が学校法人であろうが株式会社であろうが、今のどの概念をとるかは別として、公設民営ということはあり得ないという主張か。

(辰野初等中等教育企画課長)公設民営という言葉の中にいろいろな概念がある。そこで公設民営と言われる方のイメージというのが、第三セクターをイメージしているのか。

(藤原事務室長補佐)他の分野も含め、市町村等の公的主体が建物を建て、その建物に関しての運営管理を全て民間が行うということを「公設民営」と定義している。

(辰野初等中等教育企画課長)私立学校として学校法人が運営管理するというのは全く問題がない。

(八代主査)聞きたいのは、どんな公設民営の定義をとろうとも、株式会社と学校法人を自治体が等しく扱っていいのかということ。それは憲法上の問題があるから、等しくないと言われた。だから憲法上の問題さえクリアされ、仮に株式会社の学校設立が認められたら、今の自治体の関係でも同じ扱いになるのか。憲法上の問題であれば、既に厚生労働省はクリアしている訳で、公立の認可保育所について東京都と横浜市が設備補助金を出すことを認めている。同じ国でもそれはいろいろな憲法の解釈がある。学校開設主体の拡大に伴う設置、・運営助成のイコールフッティングの問題であるが、株式会社の参入は認めてもいいけれど、補助金は絶対にダメということであったが、その根拠を教えてもらいたい。それは憲法89条のことになると思うが、仮に学校として株式会社を認めるということであれば、大学であれば単位を認めるということか。高校であれば卒業認定を認めるということか。

(辰野初等中等教育企画課長)学校の設置運営というのは、単位や卒業に認定を含めてである。

(八代主査)文科省がきちっと定められた教員の配置基準等を全部クリアして、しかも単位も出す。でも経営者が株式会社であるということだけで、私学助成金は出さないというと、学生から何でそんな不公平が許されるのかということになる。自分は同じ文科省が認可した学校に行っているのに、なぜ補助金がない分授業料が高くなるのか。それは法の下の平等に反するのではないかという訴訟を起こされたらどうするのか。

(加茂川私学部長)株式会社の学校の管理運営の細部まで制度設計が出来ていない段階で、全部答えられないが、株式会社の参入は消費者の立場に立って、選択機会の拡大、教育サービスの質の向上が最大の狙いである。新しいサービスは、リスクを伴うものかもしれないが、契約当事者である消費者の自己責任で契約に参加する。現在の学校は国立、公立もあれば私立もある。授業料の高低も教育条件の差もある。それは教育の機会の均等から言うと、小学校から大学まで教育が受けられるが、どこを選ぶかは契約当事者である学生や保護者の判断である。株式会社が参入した時に、様々な特性を活かしながら、サービスの内容が違ったり、サービスの内容を受ける条件が違ったりする中で、その契約の自由の中で自己責任で選ぶのがあるべき姿である。株式会社に私学助成するということは、私学助成法はあくまでも非営利団体である学校法人が経費助成を受けることは、学費を抑えるとかの研究条件を改善していくことを前提に成り立っている。営利主体が入ってきた時に、私学助成の本来の目的が達成できるという保証が今の制度のままではない。それが疑念になる。利益を追求、私益の配分を前提としている株式会社に税金である公費を投入して、私学振興と同じように助成することに多くの賛成が得られるかは、議論がある。慎重な検討が必要である。

(八代主査)今でも国公立と私学では授業料に格差がある。だから同じ私学でも学校法人と株式会社の中に格差があって当然だという論理がわからない。同じ私立学校であるのに経営者が違うというだけで私学助成金を出さないというのが、配当に廻ってしまうから無条件でダメというのではなく、それによって学校のサービスの質が悪くなっているかどうか評価すべきである。配当こそしないまでも暴利を得る学校法人もあり得る。学校のパフォーマンスで評価するべきである。株式会社経営の学校が良いサービスを提供し、その良いサービスを提供するために私学助成金を使っているのなら、その問題はない。経営主体の参入規制ではなく、例え参入を認めても補助金で格差を付けるのはイコールフッティングではない。そういう意味で考え方が違うと言わざるを得ない。

(福井専門委員)営利法人に補助金を出すことが国民感情に合うかどうかということと、憲法論の2点だけが論拠か。

(加茂川私学部長)それだけではない。学校経営は非営利性を前提に制度設計が望ましい姿と思っている。特区で検討していくことと原則の制度の考え方の整理をする必要がある。

(八代主査)誤解しているようだが、全国的な話ではなく特区で認められた株式会社に私学助成金を平等にするべきということだ。

(福井専門委員)助成対象の拡大であるから特区とは関係ないとの言われたが、それは間違い。平等の条件で参入できることが特区にとって非常に重要。特区制度の趣旨はそこにある。補助金がついていないけれど「どうぞご勝手に」というのは、一種の参入規制である。参入の規制を取り払うための補助金の再編は、特区で議論できる。制度設計の前提となり得る。憲法89条の公金支出の制約であるが、株式会社はダメで個人は良いとの論拠は何か。

(加茂川私学部長)現在の私立学校の制度から言うと、憲法は公の支配に属しているかどうかがポイントであるから、私立学校法の適用、学校教育法の適用、学校の設置者としての適格性、学校運営の適格性を確保するための法律、公の支配が及んでいるという大前提であると理解している。

(福井専門委員)私立学校法で規制するようなかカリキュラムとか教員の基準について同等の規律をする株式会社学校というものを特区でも前提としているわけだが。

(加茂川私学部長)ある企業が学校法人を設置すれば、何ら問題はない。学校法人なのか株式会社なのか中間法人であるのかが分からない。

(福井専門委員)株式会社である。

(加茂川私学部長)株式会社にも私立学校法を適用しろという意味か。

(福井専門委員)違う。学校法人への助成であれば、憲法89条をクリアしている論拠として言われている。その論拠は学校教育法にあるような様々な規律が及んでいることだと言われた。

(加茂川私学部長)私立学校法の適用も必要。学校法教育法は教育内容や教育組織を規律している。両方の規制がどこまで及んでいる時に公の支配が及んでいるのかということは議論がある。今の私立学校でも憲法違反ではないかと議論があるくらいに公の支配については十分なものを求める意見が強い。学校教育法だけでなく私立学校法にかかる規制をクリアすることによって、憲法問題をクリアできる。

(福井専門委員)様々な文科省の所管法令で学校法人には一定の規律を及ぼしているから、それが公の支配の憲法89条クリアのポイントであると言われている。その中でもポイントになる条文があると想定していると思うが、それらと同等の規制を学校教育法ではないにしても株式会社にかけることによって憲法89条のクリアになるという論法になるのではないか。

(加茂川私学部長)制度設計として、法律論としてはなる。それは株式会社が学校法人に極めて近づくことになる。

(福井専門委員)株式会社の形態のままでも、行為規制が及べば89条の問題にはならいないということではないか。

(加茂川私学部長)行為規制なのか事前の制度設計なのかは少しつめたいと思うが、憲法の公の支配が十分であるとの要請をクリアするためには、現在の制度の学校教育法と私立学校法の諸規制が必要不可欠である。

(福井専門委員)諸規制というのは、どの部分かというのを特定して教えて欲しい。

(加茂川私学部長)資料を提出する。

(福井専門委員)私立学校振興助成法では、助成の対象を、原則として学校法人に限っている。しかしながら、附則の2条で経過措置ではあるが、学校法人以外の私立学校でも助成してよいとされている。学校法人以外ということで、想定される主体はどのようなものか。

(加茂川私学部長)特殊教育諸学校、盲、聾、養護学校、幼稚園については、学校教育法102条に例外があって、当分の間学校法人であることを要しないとなっている。

(福井専門委員)株式会社も含まれるのか。

(加茂川私学部長)含まれていない。法律制定時にあったのは個人立、宗教法人立、一部公益法人の幼稚園である。

(福井専門委員)個人は良くて株式会社はダメなのか。

(加茂川私学部長)他の条項もきちんと読んでほしい。学校法人になることを前提に期限を限って、特別な手続を講じているものである。望ましい学校法人の姿と無関係ではない。

(福井専門委員)全部学校法人になったのか。

(加茂川私学部長)ほとんどのところは学校法人になったが、まだ数限られているが残っている。また学校法人を前提に助成したし、学校法人のための行政指導も成果をあげてきている。

(福井専門委員)学校法人になっていなくても助成しているものはあるのか。

(加茂川私学部長)学校法人になれなかったものには補助金は出していない。

(福井専門委員)最後の学校法人になるのに何年かかったのか。

(加茂川私学部長)最長で5年。5年間で学校法人になることを前提に補助申請をし、補助金を出し、5年経って学校法人になれなかったら、そこで補助金は切っている。望ましい学校法人の姿になることが大前提である。

(福井専門委員)憲法解釈と矛盾があるのではないか。学校教育法なりの諸規制を全てクリアしていないと憲法89条違反であると言っていた。なろうと思っていたという主観的な意思で憲法解釈が左右されることにはならない。

(加茂川私学部長)当時も憲法上の疑義があったので、法的な整理の資料を提出する。

(福井専門委員)この経過措置の間の助成は憲法違反であったということか。

(加茂川私学部長)そう断じることはない。いろいろな議論があった。

(福井専門委員)現時点の議論として、経過措置中は合憲であったのか、違憲であったのかというのは重要である。

(加茂川私学部長)いろいろ議論があったが、適法に関係条項を運用してきた。

(福井専門委員)89条に合致するためには、諸規制をクリアしている場合に加えて、学校法人を目指しているような場合の経過途上のものも、合憲であるとの解釈か。

(加茂川私学部長)資料を整理して示していきたいが、これは議員立法であり内閣が提出した法律とは違う手順もあるので、あらためて整理したい。

(福井専門委員)経過措置の間に、どこにいくら助成したのか、学校法人になるのにどこは何年かかっているのかも合わせて教えて欲しい。

(加茂川私学部長)了解した。

(八代主査)学校法人の設立要件の緩和についても要望があったと思うが、今見直されてきたが、依然として大学の場合には校地面積が校舎面積の3倍であるとか広い面積をもっていなければならないとか、あるいは校地について2分の1以上が自己所有であるような要件は堅持するとのことであるが、特区においての緩和だけでなく、一般的に緩和することはないのか。

(加茂川私学部長)様々な規制は、事前規制から事後チェックという大きな流れの中で規制緩和する見直しをしているので、指摘された点も検討している。

(八代主査)検討の仕方が、現行の3倍基準を学生1人当たり10平米とか、いずれにしても面積基準は要るとの考えは変わらないのか。

(梶山私学行政課課長補佐)校地面積については、第一次特区の時に特例措置を講ずることになっているので、地域にニーズに合わせて軽減できる。不登校児童生徒や専門職大学院以外にも、地方公共団体の申請に応じて、校地校舎の自己所有を要しないという方向で検討している。

(八代主査)昔から問題になっているが、渋谷にアメリカの有名大学の日本校があり、とても評判の良い学校であるが貸しビルで行っているから、何年待っても文科省に審査してもらえないという要請があったが、特区を申請してもらえれば、検討していただくということですね。このような面積要件も全国的に緩和していただきたいのは、消費者ニーズという時に山奥の広いキャンパスの学校と都心の貸しビルの学校のどちらが良いかは文科省が決めることではなく、情報公開をした上で教育サービスの利用者・学生が決めることである。長期的な課題としてそういう考え方はどうか。文科省が決めないと不安であるのか。

(加茂川私学部長)基本的には学校について言うと、設置者はともかくとして、消費者の立場に立って、安定性・継続性をどう担保していくのかということを行政として考えていく必要がある。設置基準の細かいところを見直しながら、どういう最小限の関与でいいのか、どういう役割を担っていくのかは常に見直していきたい。

(八代主査)今のことを解釈すると、かつては土地を自分で持っていることが大学や学校の継続性の不可欠の要因であったと考えられていたが、今はいろいろな情勢の変化があるから、見直していく。継続性の別な担保、例えば一定の銀行預金を積んでおくとか代替措置を考えているというように理解して良いか。

(加茂川私学部長)特区でのいろいろなトライアルを一つの経験や契機にしながら、見直しについては検討していきたい。

(福井専門委員)89条の補足であるが、今度特区において一定の株式会社が参入する訳であるから、特区に参入する株式会社については、89条の様々な諸規制の行為規制は及んでいるのか、いないのか。

(加茂川私学部長)株式会社の参入は設置主体の特例であるから、株式会社が最大限その特区性を活かすわけであるから、公的支出という前提がなければ、様々な行為規制の及ばない自由なことができて、様々なサービスに活かせると思う。

(福井専門委員)今度特区に進出する株式会社は、89条の公の支配は受けていないということか。

(加茂川私学部長)助成を受けようにも受けられないというのは、憲法上求められる公の支配に必要な規制を受けていないという大前提である。その大前提としてこそ株式会社が最低限の教育内容や条件はあるにしても、大きな目で見ると自主性を発揮できることで株式会社の参入の意味がある。

(福井専門委員)89条の教育事業にお金を出してはいけない、但し公の支配がある場合には良いとされる、のは、この「公の支配」というのはどういう理解か。

(加茂川私学部長)「公の支配」の要素については、何をもって十分かということは議論がある。

(福井専門委員)「公の支配」の目的はあるはず。

(加茂川私学部長)学校の設置主体の適格性、公共性、継続性、安定性など。また設置主体が運営する学校の教育の中身、教員、組織、教育計画の適格性など二重の点からチェックすることがポイントである。

(福井専門委員)現在出てきている特区の株式会社学校というのは、憲法89条の「公の支配」には属していない。教育事業としては「公の支配」には属していないけれども、補助金さえもらわなければ、勝手にやってもいいという存在か。

(加茂川私学部長)オールオアナッシングではなくて、学校教育法の教育内容、組織などの基準がある。どこまで株式会社に求めるかは、これから制度設計していくが、最小限の関与にしたいと思っている。それは株式会社に認められることもある。私立学校に求められる、学校法人に必要な行為規制の私立学校の条文は株式会社には及ばない。

(福井専門委員)今度の特区の株式会社学校は、一定の規律は必要であるが、その規律は憲法89条の「公の支配」の程度までは満たさないという前提なのか、満たしうるという前提か。

(加茂川私学部長)特区での株式会社参入は、憲法89条の「公の支配」の十分な要件は満たさない参入の仕方で検討している。

(八代主査)授業料の徴集の問題であるが、私学はとっているが公立学校は義務教育ではいかなる場合もとってはいけないとなっている。これは憲法で義務教育はこれを無償とすると書いているからであるが、公設民営を含めて義務教育は授業料をとってはいけないという解釈か。

(辰野初等中等教育企画課長)そのとおりである。公設民営と言われたが、公立としてはとれない。

(八代主査)公立としてはダメという時に、選択肢があってもダメなのか。医療では混合診療という問題があるが、消費者のオプションとして従来通りの無償の義務教育を受ける権利はあるが、補習として文科省が定めた以上の教育サービスを提供する、利用者として任意として。それを認められないという解釈か。

(辰野初等中等教育企画課長)文科省が定めたものがあって、それについては無償だけれども、それ以上についてはとってもいいのではないかということか。

(八代主査)例えば、一年間にこれだけ教えなければならない基準があって、任意で上回るものをやるとか、小学校で追加的に英語を教えるとかの任意での消費者との契約で学校が行うことは許されるのか。

(辰野初等中等教育企画課長)許されない。

(八代主査)それがよく理由がわからない。現在の公立学校の義務教育の授業内容に不満足な人は、学校が終わってから塾に行っている。それは個人の自由であるから、良いわけであるけれども、塾の費用は高く、低所得者は利用できないかもしれない。もし、学校の施設を利用して補習教育をやってくれたら、半分の費用負担で済むかもしれない。もっと多くの所得の少ない人が子供により良い教育を受けさせることができるかもしれない。そういう消費者のオプションが広がることが文科省がダメだと、学校の施設を使う限り一切ダメという根拠を聞きたい。

(辰野初等中等教育企画課長)学校が補習をやったり、夏休みに補習をやることはある。それは義務教育の過程の一環である。それについては無償である。

(八代主査)無償で行うけれども、例えばネィティブスピーカーを雇ってやることは予算上できない。けれどもニーズは高い。だからやってみようと特区での提案もある。それを自分の所管では絶対に許さないということか。

(辰野初等中等教育企画課長)学校とは別に学校の施設を利用して、有志の人が集まってお金をとってやることがあっても良いのですかということで、今でもできる。

(八代主査)それも学校の校長がオプションとして認めて提供することはできるか。

(辰野初等中等教育企画課長)個人ベースの契約としてあり得るのかという問題であるが、学校としてニーズの応じていろいろな取り組みをしてください、しかも無償でということが前提である。

(八代主査)有償でも構わないということか。任意のボランティアであれば構わない、それに校長が入っていても構わないということか。

(辰野初等中等教育企画課長)通常の学校教育と切り離した話である。学校の施設を利用して契約でやるということはあり得る話である。

(八代主査)この特区の要望は、あくまでカリキュラムの延長としてやりたいということである。

(辰野初等中等教育企画課長)そうであれば、憲法違反である。

(八代主査)なぜ憲法違反なのか。

(辰野初等中等教育企画課長)義務教育は無償とする。 

(八代主査)無償の義務教育の上にオプションとして任意でやるのでもだめか。

(辰野初等中等教育企画課長)義務教育というのはどこまであって、何時間分までの対価というのは決まっていない。

(八代主査)包括契約ということか。カリキュラムは全て無償であるということか。

(辰野初等中等教育企画課長)包括契約というか、学校を設置して義務教育を提供する責務がある。

(福井専門委員)先ほどの憲法論と関連するが、憲法26条2項の解釈として、ベースの無償のものがあって、オプションからもお金をとってはいけないということを正当化する判例や学説があったら、後ほど提供してもらいたい。

(辰野初等中等教育企画課長)そういうことは考えたことがない。

(福井専門委員)それは考えてもらわないとまずい。そういう議論をする訳であるから。学説や判例がなければ、ないという事実を教えてもらいたい。文科省の憲法解釈を文書にしてもらいたい。

(辰野初等中等教育企画課長)わかりました。

(福井専門委員)総合規制改革会議本年度中間とりまとめの27ページあたりに、当会議の憲法解釈を述べている。それについてもどう考えるのかというのも教えて欲しい。二つのポイントがある。ひとつは「公の支配」とはどういう意味か。もうひとつは89条の目的、何のための規定かという観点で、その解釈を教えて欲しい。但し、文科省の解釈が政府見解ではない。先ほどの総合規制改革会議の解釈も、会議としての独自の見解。本件は、最後は内閣法制局が決めること。あくまで文科省の見解を聞くものである。

(辰野初等中等教育企画課長)わかりました。

(八代主査)本日はお忙しい中ありがとうございました。

法務省との意見交換

(八代主査)外国人IT技術者の在留要件の特例、研修とか技能の在留資格要件の特例の2点についてお聞きしたい。

(高宅参事官)IT技術者に関しては二つあって、在留期間の問題とIT技術者の派遣会社の問題がある。IT技術者については1〜2年前に要件について、情報処理技術者試験或いはそれと相互認証された外国の試験を受かった外国人に関する特例措置を講じ、一定の緩和を図ったところである。在留期間の問題に関しては、昨年の特区において研究者について3年から5年の延長をしたところである。今回ITについては事業を起こす訳ではないので、実際に地域としてどういう地域特性で選ぶのか、なぜ特区で行うのかという説明及び日本人の配偶者も現在3年であるので、在留期間のバランスの面で若干困難なところがある。当省としてもIT産業の重要性は十分認識しているので、検討したいと思う。それから、派遣会社の問題であるが、特に派遣会社であるからダメということはない。外国人が本邦の公私の機関との契約に基づいて仕事をすれば良いことになっており、公私の機関には派遣会社も含まれているので、派遣会社であるからダメということはない。なぜこのような問題が出てくるのかというと、技術の在留資格は自然科学の分野に属する何らかの知識なり技術なりを必要とする業務となっているので、その立証を、単純化して言えば、単純労働者ではないということの立証を求めることになる。その場合派遣会社であると何の仕事であるか立証し難いということで出てくる。確実に仕事の派遣先が決まっているところまで求めている訳ではないので、実際の判断として出来るようなものであれば大丈夫なので、それほど心配することはない。

(八代主査)派遣というのは派遣会社の雇用が決まって、それから派遣先が決まるという順序であるが、法務省の解釈であると派遣先が決まらないと受け入れられないというものを、特区の要望では派遣会社が雇うところで決めてもらうと後はスムーズにいくというもの。

(高宅参事官)正確には、派遣先で働く仕事の内容を確認している。個別案件により変わっていくが、その人の能力、過去の経歴とかから見て、自然科学の分野に属する技術や知識を必要とする仕事しかしないと考えられるとか、派遣会社がその仕事をずっと請け負っていて、その仕事にいくのは間違いないというような場合は問題ない。わかっているところはそんなに問題がないが、全く新しくとなると、実際にどういう仕事をするのかというときに、派遣先がわからないと審査がし難いということがある。

(八代主査)派遣というのは特定の職種を決めるわけであるから、この職種でしか雇わないという確約をとった上で、実績のある派遣会社の雇用が決まっていれば、その時点で良いということにすれば良いではないか。

(高宅参事官)現時点でもはっきりしているものは認めている。

(八代主査)きちんとした通知か何かで示されているのか。

(高宅参事官)通知で職種を絞ることはしていない。

(八代主査)派遣会社でいけないということはない。派遣会社であるから、派遣会社の雇用と仕事の中身の時間がずれるので、その時の解釈でもいいので通知をしてもらわないと、いちいち派遣会社の人が確認することになる。

(高宅参事官)個別の立証であるから、細かい点までは定めていない。たぶん一般の場合には派遣先が決まって、従事する予定の業務が決まっていれば分かり易いので、許可がスムーズに下りる。そうでないといちいち調べるので時間がかかるだけだと認識している。

(福島参事官補佐)その曖昧さが地方公共団体から要望があるひとつの原因となっている。そこは別なかたちで明確化する、基準を示す努力が必要ではないか。

(高宅参事官)許可要件が問題ではないので。

(八代主査)許可でなくても良いのであって、行政手続法でもそうだが、極力裁量行政というのは廃止することが必要。

(高宅参事官)裁量の話ではない。要するに立証の程度の問題である。裁量許可というのは何らかの要件があって、そこに不確定の要素もあって、派遣会社を許可するとかしないとかというのが裁量となるのであるが、この場合は派遣会社というのは要件とは全く関係がない。その人がする仕事が自然科学の分野に属する知識等を要するかどうかの判断だけである。

(八代主査)判断というのは、全く新しい仕事であれば分からないけれども、過去に実績がある場合には事実的に対応していると言われたので、対応している事例で結構であるので、どういう場合であれば派遣会社が雇用を受け入れた時にスムーズに行くかの何らかの基準を示すべきであり、不便なため要望が出ている。ケースバイケースという訳ではなく、何らかの指針を示す必要がある。

(高宅参事官)人によって違うというのが実情であって。

(八代主査)そういうのが困るというもの。法律というのは万人に対して明確でなければならない。いろいろな状況があるので、必ずこうであるということは必要ないので、こういう場合にはこうしましたとの過去の事例で構わない。それだけで助かる訳であるから、法務省と言えどもサービス官庁として国民にサービスを提供する観点から、受け入れ業者に応じて、IT関連産業の国際競争力にも間接的にはつながることから協力願いたい。

(高宅参事官)立証の問題をどうするのかが分からないので、実務的なものを調べてみないと。

(八代主査)過去の実例で構わない。こういう場合は許可していない等の事例集で構わない。何らかの努力を願いたい。

(高宅参事官)研修については、全く職種制限はない。ホームヘルパーであるからダメということはない。

(八代主査)受け入れた事例はあるのか。

(高宅参事官)職種でとらえていないので分からないが、ホームヘルパーであるから不許可となるという根拠はない。

(八代主査)専門性が高い分野、低い分野というのは当然あるのではないか。

(高宅参事官)専門性ではなくて、全く向上がないものは研修にはならない。ホームヘルパーであってもいろいろある訳で、研修という限りでは何らかの向上がなければならず、向上がないもの、同一作業の反復というものは許可されない。

(八代主査)同一の作業の反復でも向上する可能性もある訳で、あまり基準が明確ではないのでは。

(高宅参事官)基本的には、向上する可能性と日本で修得した方がより効率が高いという、日本で修得する必要性が要件にある。ただこれで不許可になったことは、あまり聞いたことがない。何でダメであったのかが分からない。

(八代主査)何が反復作業であって向上の余地がないのか、何があるのかというのが外部から見ると極めて基準が分からない。何か事例というものがないのか。

(高宅参事官)職種によって違う。

(八代主査)職種によって違うから、この職種の場合にはこの場合は不許可になった、この場合には許可になったとかの事例である。

(高宅参事官)入管の基準というのは、職種で決めていない。

(八代主査)何で決めておられるのか。

(高宅参事官)先ほどの例であれば、自然科学の分野に属する知識を必要であるかどうか。あとは学歴とか。研修であれば受け入れ機関・企業の要件。実務研修の有無、これがある場合は細かい要件がある。受け入れる機関に研修施設があるとか指導員がいるとか。実務研修と言っているが、商品生産等に直接かかわるものであれば、これこれと決められている。

(八代主査)その要件は明示化されているのか。

(高宅参事官)とても細かいが省令で決められている。その省令の要件の中でホームヘルパーの場合に問題となり得るかなというのを資料に書いているが、ただこれで本当にダメになっているのかは分からない。正確な名称ではないかもしれないが介護技能士というものの研修であれば、同一作業の反復ではねられる可能性は少ない。

(福島参事官補佐)法務省の資料に、上陸許可基準に係る法務省令改正は制度上関係省庁と協議するとなっているが、ホームヘルパーを受け入れる時に、この上陸許可基準を改正する必要はあるのか。

(高宅参事官)全くない。その基準そのものに職種制限はない。

(福島参事官補佐)但し云々と資料に記載しているのは。

(高宅参事官)基準省令改正が必要な場合には、念のためこうですよと言っているだけである。職種で制限している事実は全くないので、正確な名称ではないが介護技能士というものであれば、この要件が問題になることはない。

(八代主査)その基準というものを予め客観的に示してもらわないと、規制する法律はないということは必ずしも自由ではない。

(高宅参事官)上陸許可というのは、要件が合えば覊束的に許可することになっている。そういうことは、どこかに当たらないものがない限りは許可になる。

(福井専門委員)当たらなかったケースというのは、公表されているのか。

(高宅参事官)個人の問題があるので、特に公表していない。

(福井専門委員)個人の名前は要らないが、かくかくしかじかの時にアウトになったとかはプライバシーではないので、公表してまずいということはない。公表できるのか。

(高宅参事官)何とも言えない。

(福井専門委員)ダメになった事由が、法務省のホームページで公表されていれば、予測可能性があって、楽になる。

(高宅参事官)基準がとても細かいので。例えば研修指導員がいないので不許可になるのは明らかなので、公表しなくても分かるはずである。外国の法人との取引関係があるとか、この場合には取引金額も記載されているので、取引がないという場合は、公表しなくてもすぐ分かる。上陸許可の基準というのは、審査官は多数いるので不確定なものは定めようがない。確定概念であるから、当てはまれば全て許可になり、はてはまらなければ不許可になる。

(福井専門委員)要件の解釈として裁量は全くないのか。

(高宅参事官)少なくとも上陸許可に関してはない。人道上の理由等で上陸特別許可することはあるが、基本的なところにはない。

(福井専門委員)ホームヘルパーに関するところでは、全て規則されているのか。

(高宅参事官)ホームヘルパーという訳ではなく、一般的に研修を受ける場合の基準として規則化されている。基準というのは何ページにもわたる複雑なものであるが、確定概念であるからそれを見ればわかる。強いてあげれば、同一作業の反復というものが不明確と言えば不明確であるが、それでは実際には不許可になることはほとんどない。少なくとも要望にある介護技能士が同一の作業の反復と考えることはまずあり得ない。

(八代主査)そのあり得ないことをどこかに書いて欲しい。

(福井専門委員)介護技能士がこういう理由ではねられることはないという通知や通達は出せるのか。

(高宅参事官)それは出せると思う。

(福井専門委員)そういう安心出来る材料になる措置を講じてほしい。

(高宅参事官)了解しました。

(八代主査)個別に伺うこともあると思いますので、よろしくお願いしたい。

以上


内閣府 総合規制改革会議