平成15年度 第9回総合規制改革会議 議事概要

1. 日時

平成15年12月16日(火)10:00〜11:15

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室

3. 出席者
(委員)

宮内義彦議長、鈴木良男議長代理、奥谷禮子、清家篤、高原慶一朗、八田達夫、安居祥策、八代尚宏、米澤明憲の各委員

(事務局)

小平統括官、河野審議官、福井審議官、浅野間審議官、宮川事務室長、中山事務室次長


議事次第

  1. 答申案文審議

  2. その他


議事概要

(1)答申案文審議 (●質問・意見)

(宮内議長)本日は、前回に引き続き、今月にとりまとめを予定している第3次答申の案文審議を行う。議事に入る前に、私から、本日、本会議を開催した趣旨につきまして、一言申し上げる。
 前回の会議において案文審議を終えるに際し、残された未調整の箇所については、基本的には私と議長代理と主査の方々に御一任をいただいたが、この間の案文の調整状況を踏まえると、とりわけ、アクションプラン分野の調整状況について、改めて本会議において御報告し、意見交換をいただいた上で会議として案文を確定していく、との手続を今一度踏むことが望ましいと判断し、本日、会議の開催をお願いした。
 それでは、本日の議事に入る。
 本日の答申の案文審議については、前回の案文審議と同様、これを非公開とし、会議資料も非公表とする。本日の進行としては、申し上げたように、本日開催の趣旨がアクションプラン分野の案文審議を特に念頭に置いたものであるので、主に、私の方から、アクションプランの調整状況について説明し、これに対する質疑応答・意見交換を行うこととしたい。
 それでは、私からアクションプランについて説明する。
 まず、既存の12事項については、前回の会議で報告した内容、特に高層住宅に関する容積率の抜本的緩和と有料職業紹介事業に関する改革の2つが一歩前進したことを報告申し上げた。
 その後、幼保一元化のうち、一貫した総合施設の設置について合意がなされた。試行事業を平成17年度中に先行実施することで、総理の「17年中には幼保一元化でできるものはやる」との御発言を踏まえた内容であるとして合意した。なお、予算や法改正の準備は平行して進め、18年度には完全実施することも合意した。
 その他の点については、残念ながら歩み寄りが見られないため、「今後の課題」に我々の考えを書き残す形になると思う。なお、医薬品の一般小売店における販売については、本日、厚生労働省が設置した検討会(ワーキンググループ)の品目選定作業の結果が発表される予定である。したがって、厚生労働省の発表を確認した上で、答申としてどのように取りまとめるか、担当主査と相談しながら決めたい。いずれにしても、当会議として納得のいくものでない限り、今後の課題として引き続き規制改革に取り組むことを書くことになると思う。
 新規の5項目について申し上げる。「公共施設・サービスの民間開放」については、現在も国土交通省等との協議を継続中である。
 「労災保険及び雇用保険事業の民間開放の促進」については、現在も厚生労働省との協議を継続中である。労災保険の民間開放の検討については、厚生労働省は「『可能性の検討』でも合意できない」との回答であり、我々としては「今後の課題」に整理する方向しか残されていないかと思う。
 「国際的な高度人材の移入促進」、いわゆる日本版グリーンカードの創設等であるが、法務省等と次の内容で合意した。第一は、永住の許可・不許可事例の公開を平成15年度中に行う。第二は、永住許可要件について基準を明確化し、ガイドライン化する。第三は、ある分野で貢献のある外国人に対する永住許可要件である在留資格年数を5年以上から3年以上にすることについて、特区評価委員会の評価を踏まえて速やかに全国展開することの結論を得る。第四は、現在最長3年とされている在留期間を5年に引き上げる。
 「自動車検査制度の抜本的見直し」については、自家用乗用車の車検有効期間の具体的な延長年数の合意は得られていない。国道交通省との間で合意したのは、自家用乗用車のみでなく自動車全般について、車検有効期間の延長を判断するための調査を平成16年度中に取りまとめ、その結果に基づき速やかに所要の措置を講ずるということで、半歩動いたかなと思う。
 「借家制度の抜本的見直し」については、前回担当主査から報告があったとおり、閣議決定を前提とした部分は、法務省との間で合意済み。「今後の課題」の記載内容については調整中とのことである。
 これらについて、今後は一両日中に新規5項目と既存12項目について各省との協議を終了し、答申を確定したい。未確定の部分もあるが、会議としては十分満足できる形にはならなかった。とは言え、「一定の成果はあった」と評価できる部分も出てきた。したがって、答申のトーンとしては、成果を見なかった部分についても、今後の我々の活動につながる形で「今後の課題」にしっかりと書き込んでいこうと思う。各担当委員から補足する点やご質問があればお願いしたい。

● 借家制度の抜本的見直しの「具体的施策」のところは局長との折衝を行って合意した。「今後の課題」については、私は相手方省庁と合意する必要はまったくなく、事実誤認がないかを確認するのみと了解している。しかしながら、法務省は「それは話になかった」と、「今後の課題」を記載することに大変強硬に異議を申し立てている。私のところで妥協すると原則が崩れて他の分野にも影響が及ぶ。そこで、「今後の課題」の取扱いについて確認したい。

● その点は去年も議論になった。「問題意識」や「今後の課題」はあくまでも総合規制改革会議の考え方であり、相手方省庁との合意を必要とするものではない。ただし、事実誤認があればそれは正してくれということである。私は、閣議決定の対象となる「具体的施策」以外は去年も合意しなかったし、今年も合意のための折衝は行っていない。

● 答申の組み立てとして、第一に、あるテーマについて「当会議はこういう問題意識に基づき規制改革を進めていきたい」ということが書かれ、第二に、動かすことができた具体的施策が書かれ、そして第三に、残りの部分が「今後の課題」となる。合意を取っていただくのは第二の具体的施策のところである。第三の「今後の課題」はまさに合意に至らなかった残りの部分であり、ここは事実誤認があってはならないが、当会議の最後の日まで、あるいは次の組織に問題意識として引き継がれるものと認識している。

● 「労災保険及び雇用保険事業の民間開放の促進」について少数意見が提出されている。労災保険の民営化については、労災保険は最後のセーフティーネットであり、一般国民も同様の印象を持っていると思う。私は提出された少数意見に強く賛成する。労災保険の民営化を意見として取り上げることは、当会議のイメージを考えれば得策ではないと思う。本件については様々な意見があり、私は専門家ではないのでそのすべてを承知しているわけではないが、一般的なイメージとして何でも民営化すればいいというものではない。労災はシビアな問題である。提出された少数意見が然るべく取り扱われることを、私から2つ目の少数意見として申し上げたい。

● サポートをいただき感謝する。労災保険の問題について、私の意見をもう一度申し上げる。労災保険の民間開放について検討することは、当会議の見識を示すことにならないと思うので、この項目については削除していただきたい。民間開放以外について、労災保険の検討が必要なことはここで示されている通りと思う。例えば、適用をもっと徹底して行わなければならないこと、リスクの高いところと低いところの間の保険料率が必ずしも適切に設定されておらず内部移転が行われていること、等は見直しが必要だと思う。ただし、民間の開放によって加入の担保、給付の担保、あるいは年金等の補償機能が低下するのは避けられないと思う。
 これが当会議の多数意見かどうかは分からないが、私は、規制緩和は特に雇用に限って言えば、事前の規制緩和と事後チェック、あるいはセーフティーネットの強化は、一体的に行われなければ整合性を欠くと思っている。そういう意味で、ここは一つの答申の中で整合性を持たせる必要がある。事後チェックあるいはセーフティーネットの強化が予算の関係等で必ずしも事前の規制緩和に追いつかない点は、ある程度はやむを得ないが、今あるセーフティーネットを弱体化させかねない部分が答申の中にあるというのは、私としては看過できない。
 特に、労災保険と自賠責保険のアナロジーが冒頭から出てきているが、労災事故というのは公道上で起きる交通事故と異なり、一般には事業所の中で起きる。事業所に立ち入り調査をしながら認定をするもので、誰もが立ち入ることのできる公道で警察が証拠検分を行うのとは異なる。また、労災保険は保険に加入している雇い主と労働者との間の話である。この点でも両者が保険に加入している自動車事故とは違う。さらに、自動車事故は通常は両者の責任を按分して保険金が支払われるが、労災は認定されれば100%労災保険で補償が行われ、そうでなければ全く補償されない。したがって、労災保険を自賠責保険とのアナロジーで冒頭から語っているのは、労働の問題を勉強してきた者としては違和感がある。
 そもそも労災保険は、19世紀にドイツで社会保険として始まり、その後、フランスやイギリスでは雇い主に補償責任を課しながら民間の保険に加入するといったやりかたで、19世紀終わりから20世紀始めにかけて次々と発足した。その後、それでは労働者に対する補償が十全に行われないことが分かり、その結果、いずれの国においても20世紀半ばくらいまでに社会保険制度に転換した。こうした試行錯誤を経て、多くの先進国が労災保険を社会保険制度でやっている。アメリカでは確かに民間の労災保険があるが、20世紀始めからエンプロイヤーズ・ライアビリティ・インシュアランスといった制度が始まって、当初は民間の保険だけに依拠していたが、それではリスクの高い産業に従事する人達に対する補償が十全に行われないということで、ここでもやはり、ステート・ファンドという各州単位の公的な労災保険システムができ、それによって補完されている州が多くなっている。現在はステート・ファンドだけによるエクスクルーシブというシステムと、両者が併用されているコンペティティブというシステムと、テキサス州等の少数の州で民間保険だけになっているところがある。
 このように先進国が労災保険を最終的には社会保険化してきたことを考えれば、私は、この問題を改めて検討することが当会議の見識を示すことになるとは思えない。この項目はできれば削除していただきたい。まずはそれについてご検討いただき、もし皆様方の多数意見が私と違うということであれば、ルールに従い答申の本文はそれで結構だが、その際は今日お配りしたような少数意見を付していただきたい。以上、よろしくご検討いただきたい。

● 頂いたメモには「労災保険の民営化」とあるが、口頭では「労災保険の民間開放の検討」と答申のタイトルに沿った形で言っていただいた。口頭で言っていただいたことが委員のご意見と解釈していいか。

● 「労災保険の民間開放の検討」ということでご検討いただきたい。

● 清家委員がおっしゃったことは、この案文を取りまとめた責任者としても全く同意見である。そうしたセーフティーネットを後退させるような形の民間開放は排さなくてはならない。そうしたことは案文にも書いた。労災保険ができたのは昭和22年で、それ以来、労災保険の問題についてはほとんど議論すらされていない。様々な問題があることを述べた上で、「今後の課題」において民間開放の検討を打ち出し、その際には米国の一部の州でやっているような民間への完全な丸投げではなく、厚生労働省と民間が適正な役割分担を果たす形での民間開放についての検討を提唱した。例えば、認定基準や労災の概念は厚生労働省が決め、民間はそれに従って純粋な損害保険業務をやっていく、というようなイメージである。そのメリットは、貴重な公務員を保険業務ではなく、本来の労災防止に専念させるということで、むしろ多くの労災事故が防げるのではないかということで、あくまでも労働者保護の立場からこうしたことができるのではないかと申し上げている。これらが本当にできるかどうかは、今後検討してもらわなければわからない。最初に民営化ありきではなく、民間開放の可能性についての問題提起をした。
 こうした問題提起は労災のみならず、あらゆる官製市場について、官製市場ワーキンググループでやってきた。同WGでは今おっしゃったように、「検討するまでもなく、歴史的にみても海外事例をみても当然である」という認識を持っていない。そこだけが意見の中で唯一違う点である。以上、当方の趣旨を申し上げたが、その上で会議の中で他の委員にご判断いただきたい。

● この問題については、委員間で元々それほど意見の隔たりはないことは私も感じる。私は労災保険について検討の必要がないと申し上げている訳ではない。様々な検討を行う必要があると考えている。ただし、この制度を国が責任を持ってやるということは、事前規制を緩和する一方で国が事後的なセーフティーネットを担保するという観点から大切で、この制度を民間に開放するという話を聞いた時に、多くの人々が強い不信感あるいは不安感を持つことは間違いない。そうした不信や不安は、歴史を見ても実態を見ても、不当なものであるとは思わない。もちろん、あらゆるものは常に検討の余地はあるが、規制改革会議の見識として見直しを提言するものは、その見直しに相当の意味があること、あるいは緊急性があることだと思う。「検討の余地がないことはない」と言うのはその通りだが、労災保険の検討の中に民間開放という項目を入れることは、一般には保険そのものを民営化することと受け取られる。私は、それは適切ではないと思うし、当会議の見識を示すことにはならないと思う。

● 関連して、社会保険庁にしても労働基準監督署にしても、雇用保険、社会保険、労災保険の未加入事業者の摘発は、人数が足りないのでなかなかできないという詭弁を使う。そういうことを踏まえて、民と官が協調して労働者保護を進めれば、セーフティーネットが組めるのではないかと思う。要するに、故意に加入手続きを怠っている事業者にしても「故意ではなかった」と言えば無罪放免になる。10年や20年加入していなくても、「故意ではなかった」と言えばペナルティも何もない。こうした不公平なことが起きている。社会保険庁も労働基準監督署も、これを積極的に撲滅するのではなく、仕方がないで済ませている。例えば、派遣会社が求人募集の際に「社会保険完備」と広告に入れる際には必ず登録番号を載せる等の仕組みを作らないと、払わない事業者が得をする。行政側が取り締まりの姿勢を強く打ち出さないと、まともに払っている事業者は損をするという不公平な状態がこれからも続く。その意味で、民と間が協調してセーフティーネットを作っていくことを検討するというのは、一つの方策であると思う。

● 民間開放という項目を入れることは適切ではないというお話も理解できるが、昨年、官製市場WGを立ち上げる際に2つの原則を掲げた。第一は、「民間でできることに官は立ち入らない」ということ。それまでは「民間でできることは民間に」というのが第三次行革審の方針であった。第二は、「国家権力に由来するものはすべて公務員が行わなければいけないのか」という原則である。この2つの原則を掲げて、60数業種についてヒアリングを行い、このうち19業種について提言を行った。当会議の基本認識は、今申し上げたスタンスに立って官民協調し、民間委託さらには民営化を進めるというものである。
 「民間に任すと様々なことが起こる」と言っておられるが、これは言葉が悪いが、一種の民間性悪説でこれまでの支配的な議論である。しかし、我々は「そうでしょうか」ということを去年以来言ってきているのであるから、答申案文の中身の熟度の問題はあるものの、もし、「事後チェックの強化は民にやらせるのは駄目で、官であるならば安全だ」とお考えであれば、そこは当会議の基本的認識とは違う。この点を理解して欲しい。

● もちろん、「民にやらせると何でも危険だ」とは思っていない。民間がやった方がいいものもあれば、そうでないものもあるというのはおっしゃる通りである。繰り返しになるが、労災保険についてはすでに様々な歴史的な試行錯誤があり、現在の適用状況も考えれば、先ほど言ったような理由で、民間開放することはセーフティーネット性が弱まると考える。
 他のことは分からないが、労災保険については、先進諸国でのこれまでの経緯を踏まえると、民間に委ねることは適切ではないと私は考える。他のことについては何も申し上げないが、知っていることについてこういう話が出てきた時に何も言わないというのは専門家として無責任だと思った次第である。

● 「他のこと」であっても、私どもは昨年、例えばハローワークの民間委託等をやった。いずれも「民間危うし」という話が出たが、そのような民と官の関係であっては今後は困る。そこから直していきたいということである。労災保険も「他のこと」と並べてみれば、官製市場の民間開放という一つのトレンドの中にある問題であり、これは日本が今後取るべき道である。こうしたものの一つとして理解いただく訳にはいかないか。

● 何度も申し上げるが、私は別に「民間危うし」と言っているわけではない。「民にできることは民に」とは、「すべてのことを民に」と言っているのではなく、「民にできないことは官がやる」ということもある。全部を民がやるというのでは、政策にならない。その中で、たまたま私が専門家として勉強した範囲の中には、「民がやるよりは官がやる方がいい分野もある」というだけの話である。その辺は誤解のないようにお願いしたい。

● この分野では清家委員も八代委員も専門家であり、お二人のどちらかが反対されることを答申に入れるべきでないと思う。しかし、話を聞いていると二人の考えは極めて近い。結局、八代委員は、全面民営化は考えていない。全部民営化することは検討の一つの候補としてはあり得るかもしれないがそれを検討してくれといっているわけでない。清家委員は、それならわからなくはないが、実際問題として「民間開放」といえば、世間は全面民営化と受け止めると言っている。この文章には、「民間開放」の定義がない。少なくとも、それが即、全面民営化を必ずしも意味しないとも書いていない。「労災保険の民間開放」という代わりに「労災保険の一部民間委託の検討」とすれば、最初から全面民営化を意味していないということが明確になると思う。それで全部書き直せば、少なくとも「民間開放」という言葉が引き起こすかもしれない誤解は避けることができると思う。

● 「民間開放」を「民間への一部民間委託」ということか。

● 第一歩として「一部民間委託」とする。誤解しているかもしれないが、清家委員は全部民営化には反対だとおっしゃっている。

● 二点ある。
 確かに「民間開放」「民間への業務委託の可能性」の定義が曖昧ということはある。ただ、「労災保険の民間開放の検討」の最初のところに自動車損害賠償責任保険と多くの共通点を有していると書かれているので、労災保険を自賠責保険と同じように、雇い主に加入を義務づけて、民間保険に加入すればいいのではないかと考えられると思う。もちろん、世界中のことを調べているわけではないが、私が勉強した限りでは、これを民間に委託しているのはアメリカの一部の州などに限られる。先進国の歴史を見ると、労災保険は民間保険加入型から社会保険型に変わってきている。民間保険との併用、民間保険だけというのは、アメリカの一部の州に限られている。八田先生からありがたいお言葉をいただいたが、専門家でも意見が分かれることはいくらでもあり、八代先生にご自身の主張を曲げて修文していただくのは本意ではない。規制改革会議は皆が同じ意見をもっているわけではなく、それぞれ違う意見を持っている有識者が議論している。これまで少数意見がついてこなかったのが不思議なくらいだ。私は八代先生の意見に賛成はできないが、皆様の多数が賛成するのであればそれを尊重するので、私の少数意見をそこに付記してくれればそれでかまわない。

● 答申は個人論文ではなく、調整するのは不本意ではない。できれば共通項で答申を書く必要がある。八田委員の言うように民間開放を一部民間開放にする、清家委員の言うように自賠責が冒頭にあるのがいかがなものかというのであれば、それも修正できる。日本でも労災の民間保険が既にあり、公的な労災保険の上乗せ給付として行われている。アメリカと違うかもしれないし、定義次第だが、日本でもアメリカと同様にコンペティティブになっている。それほど清家委員と意見が異なるわけではない。十分妥協できる範囲だと思う。できれば清家委員の修文の提案をいただいて、変える余地があれば変えたいと考えている。

● 清家委員にご理解いただきたいが、この審議会は、複数の意見を書いて終わる普通の審議会と異なる。歴史的にこれで9年目となるが、当会議は、戦う相手が省庁、業界であり、それに対してメンバーが一致団結してこれに当たっていくという伝統がある。いろいろな意見があってもそれをすり合わせて、一つの意見として相手に向かっていくというのがこれまでであった。ご異論はあるかもしれないが、私は少数意見をつけるかどうかという問題ではなく、我々が他の省庁にどのように当たっていくのかについて心を統一するという問題であると考える。先程来の議論でも一つにするのが不可能とは思われない。当会議の戦う相手は各省庁であって、内部ではない。この点についてご理解いただけないか。

● その点は全く理解できない。私は3年前に就任したので当然9年間の歴史を踏まえていないが、この会議は運動体でもなければ、敵と戦う組織でもないと思っている。私は専門家としてその知見を述べるために参加している。この会議は官庁と戦うためではなく、国のために必要と考えられる規制緩和があれば、それについて専門家として意見を述べるところであると認識している。
 なお、申し上げたいのは、特に規制緩和については官庁との関係もあるかもしれないが、むしろ民間の業界同士の利害対立の問題もある。このような民間の利害対立の問題は、本来この会議で決めるべきではなく、政治家が選挙で国民に選択を求めるべき問題である。つまり、政治家が、本来、政治決定すべきものを、選挙で選ばれたわけではない我々が、こっちとこっちというように、仕分けするのはやりすぎと思う。我々は専門家として知見を申し述べ、必要があれば答申にまとめる、と理解して、私はこの会議に参加している。そうではない、一致団結しなければ困るというのであれば、わたしの考えているこの会議の特性と違うと思う。

● 私は学者ではないので、言葉使いは荒いが、用語法なら修正する。各省庁が反対するのに対して、主査自らが各省庁を説得してこの方向で行こうという形で改革を進めてきた。この点は清家主査も同じはずである。各省庁の意見を聞いて学問的意見を言っていただけではないはずである。

● 何をする会議かよく知らないでこの会議に参加したというのは事実だが、責任を任された以上は各省庁との折衝もしっかりやっている。しかしこれは役所との戦いではない。

● 戦いという言葉は取り消した。各省庁との真摯な討議である。

● もちろんしている。客観的な議論を戦わしているのであって、運動ではない。役所に対して一致団結して対峙されているとおっしゃったが、我々はひとりひとり違う意見を持っている。少数意見があっても全くかまわないはずである。会議が一丸となってどこかに当たっていかなければいけないというのは、少なくとも私が考えているこの会議の姿と違う。

● 考え方の違いとしか言いようがない。そういうものではない、珍しい存在であったというのは歴史的な事実だし、清家委員以外の主査は皆そのつもりで当たってきたということは否定できない。

● 私が担当しているWGの名誉のためにいうと、雇用WGでは3年前から比べればかなり規制緩和を進めたと思っている。これは合理的な理由に基づく規制緩和である。一方的な緩和を押しつけた結果ではない。私は、この会議において、専門家として、雇用について労働市場の環境変化に応じて、現在の規制が必ずしも労働者のためになっていない部分があるとすれば、それを変えたほうがいいのではないかと厚生労働省に提案を行い、当初は難しいと言われていた部分についても、納得してもらった部分については規制改革が相当進んだと思う。

● 話を聞いていると我々と同じことをやっていただいていると思う。要するに、理論的に国として進めたほうがいいと思う事柄についてよく話し合って、納得を得た上で進めていくというのが我々の作業である。また、それを纏めて一本の答申にもっていくのは、各主査の責任である。それに対して大きく意見が違うならまだしも、末節の違いで対立するのはいかがなものか。

● そういう中で、皆が同じ意見である必要はない。皆が同じ意見にならなければならないとすれば、とんでもない話であると思う。

● 総合規制改革会議は規制を外すために集まっている。各省庁と規制をどう外していくか交渉していく。あんな意見もある、こんな意見もある、といったら主査として何もできなくなるのではないか。

● 私はこの委員への就任依頼をうけたときに、何でも規制緩和というは反対ですと申し上げた。そのときは、そうではなくて、規制緩和会議ではなく規制改革会議であって、規制のあるべき姿について検討する会議なので是非参加してほしいと言われたので参加した。そして、私もそのつもりで今まで議論してきた。ですから、何でも規制を取り外すための運動をするための会議であれば最初から参加していない。

● 確認だが、清家委員の言うことはもっともだが、少数意見は根本的な意見の対立があるときに記載するものである。この問題については、全面自由化の是非ではなく、事業の民間開放について検討する価値があるかないかということに過ぎずそれほど意見に違いはないように思える。例えば、八田委員の言うように、全面開放ではないという形の修文や、自賠責とのアナロジーは望ましくないからそれを外すという修文は十分受け入れられる余地はある。この点についてもう少し議論する価値はないのか。最後の質問です。

● 要するに、メリットとデメリットの勘案。何事も検討する余地はあるが、労災保険について、民間への開放や委託を検討するということを長期的な検討課題として答申に載せることのメリット、デメリットの問題である。私はデメリットの方が大きいと考えている。私はこれまで3年間、何度もこの会議で規制の事前緩和はできる限り進めるべきだが、事後的なチェックやセーフティーネットの整備はもっと強く行っていくべきと訴えてきた。しかし、残念ながらこの場ではこの点について十分な議論は行われなかった。そういう中で、多くの人々が、雇用の問題について一方的に事前規制が緩和されるだけで、事後的なセーフティーネット性が弱まるのではないかという不信ないし不満を抱いている。そういう中で、わざわざ不信感を増幅させるような文言を入れることが会議の見識になるとは残念ながら私は思えない。この点については考え方の違いが大きいと思う。もし、そこまで同じ考え方であると、一部の民間委託でもいい、といわれるのであれば、どうして項目全体を削除されないのか。

● 民間委託によって事後チェック機能が強化されると考えているからこそ答申に入れている。仮に清家委員がこういう少数意見を書くと、むしろ我々の答申が誤解されて伝わることをおそれている。私も清家委員と同様に事前規制緩和と事後チェック機能強化は一体であると考えているが、事後チェック機能を強化する手段について、すべて官がやることが強化につながらないのではないかと考えている。公務員の数は限られているので、公務員と民間の適切な役割分担ができれば、むしろ事後チェック機能を強化できるということを検討する価値はあると思う。事後チェック機能の強化という点についても私は清家委員と同じ意見で、その手段の評価が違う。もしどうしても少数意見を書くのであれば、こういう書き方ではなく、民営化について検討することがむしろ効果的でないという形にならないか。決してこれは事後チェック機能の弱体化を狙った答申ではないということはご理解いただきたい。

● わかりました。少数意見の文案については後ほど提出させていただく。

● 答申に書かなくても、清家委員がこのペーパーを会議に出されたということは議事録にきっちり載る。そこで、清家委員が十二分にご自分の考えを表明したということは世間に周知されるわけだが、それではいけないのか。

● 報告書全体として整合性を欠くと考えている。もし、このままの報告書を私が認めて、最後に規制改革会議の委員として名に連ねると、自分がコンシステントでないと考えているものに名を連ねることになるので、できれば少数意見を載せていただきたい。

● 各省庁と交渉している中で、それを促進するのはこの会議の使命である。そういうことから言うと、少数意見を一つ一つ載せていれば、民間のビジネスの世界でいえば勝負にならない。今後への影響が心配である。今言ったようなお考えは議事録にきっちり載せるということで、ご理解いただいた方が、向後に憂いを残さないと私は考えている。

● 規制改革会議の答申がでれば、最終的に議事録までみる人はそんなにいないので、規制改革会議のメンバーが心を一つにして同じように賛成したものととられる。そういう答申案がいいのか、それとも会議の中の異なった意見が、最終的に調整のつかなかった部分が正直に載せられた答申案がいいのか、私は後者の方がフェアなものだと思う。ここは鈴木議長代理と価値観が違う部分かもしれない。

● 見ないというなら、答申も見ない。

● 議事録と答申は性格が違う。答申は責任のある文章として、委員が全員名を連ねて出す。議事録と答申とではウェイトが違うし、見る人の数が違う。そうでなければ困ると思う。議事録を見ない人は答申を見ないというのは、違うと思う。

● いずれもオープンになっているという意味である。もうこれ以上は言わない。

(宮内議長)ただいまの点については、議論が出尽くしたと思う。未調整ということで引き続き、先般ご一任いただいたが、議長代理と主査と私に調整を任せていただくということで、最終案を来週までにつくらせていただくということで、引き取らせていただく。ただいまの件も含めて、医薬品の問題も今日以降に書き込まなければならない。労災保険については合意がとれていないという段階での意見の調整ということなので、何らかの妥協的な文章ができれば大変ありがたいと思う。医薬品の問題についてはどこまでとれるか、答申の内容の問題である。これらを含めて、来週までに調整させていただき、調整の終了したものから速やかに事務局を通じて各委員に連絡させていただく。なお、今後のスケジュールについては来週22日月曜日の3時から本会議を開催し、会議としての答申を決定したい。その後、総理の時間をいただいて答申をお渡しする。

以上

(文責 総合規制改革会議事務室


内閣府 総合規制改革会議