第3回構造改革特区提案および規制改革全国要望に関する意見交換会 議事概要

1. 日時

平成16年2月2日(月) 10:00〜12:30

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室

3. テーマ
(1)規制改革全国要望に関する意見交換
<総務省>

○公有地の信託事業の場合の公共施設の建設等の制限の緩和

(2)構造改革特区第四次提案に関する意見交換
<厚生労働省>

○カット専門店における理美容師の混在の容認

<文部科学省>

○特別免許状授与権限の市町村教育委員会への委譲

○NPO法人による不登校児等対象以外の学校設置の容認

○株式会社、NPO法人の設置する学校への私学助成の適用

4. 出席者
(総務省)
自治行政局

行政課 杉本企画官

(厚生労働省)
衛生局

生活衛生課 芝田課長

(文部科学省)
大臣官房

行政改革推進室 岩本室長

初等中等教育局

教職員課 竹下課長、宮内企画官

高等教育局 私学部

私学行政課 久保課長

私学助成課 栗山課長

(委員、専門委員)

八代主査、奥谷主査、福井専門委員

(内閣官房構造改革特区推進室)

青木参事官、片桐参事官

(事務局)

内閣府 河野審議官、宮川室長、中山次長 他


議事概要

(1)規制改革全国要望に関する意見交換

【公有地の信託事業の場合の公共施設の建設等の制限の緩和】

○八代主査 今年最初の構造改革特区官製市場改革ワーキンググループの会合を開きたいと思います。
 本日は昨年の11月に応募しました特区第四次提案に関して、全国要望も併せて各省と御議論したいと思いますので、よろしくお願いします。最初は30分ということで総務省と公有地の信託事業の公共施設の建設等の制限の緩和について要望が来ておりますので、これについて議論したいと思います。
 最初に総務省側の御意見を簡単に、できれば5分ぐらいで御説明いただければと思いますが、よろしくお願いいたします。

○杉本行政課企画官 おはようございます。総務省行政課の企画官をしております杉本でございます。本日、公有地信託に関します今後の取組の方針についてということでお話をさせていただきたいと思います。こちらに御要望いただいておりましたのは、公有地信託事業の場合の公共用施設の建設等の制限の緩和ということでございまして、これにつきましては、公有地信託制度そのものについて、これは国と歩調を一にしておりますけれども、昭和61年の通常国会で地方自治法の一部改正を行いまして、国と同様に普通財産について公有地信託ができるという規定を盛り込んだものでございます。ただ、公有地信託の対象となります財産につきましては、公用若しくは公共の用に供しない普通財産である土地とは言いましても、地方公共団体の財産でございまして、その原資については住民の税負担であるということから、その管理については公共性が当然に求められるということで、これを信託する場合に、営利を目的とする民間によって公共性を顧みない建物の建設等が行われるのではないかといった議論がその当時ございまして、(国会における)反対討論の中でも、そういった趣旨のことが述べられておったところでございます。
 こうした議論もございまして、今日、資料として出させていただいておりますが、資料の2枚目でございますけれども、参議院の地方行政委員会におきまして、地方自治法の一部改正に際しまして附帯決議がされております。内容は、「地方公共団体の公用、公共用施設の建設等は、地方公共団体の本来の責任と負担において行われるべきものであることにかんがみ、これを主たる目的として信託が行われることのないよう十分に留意すること」ということでございまして、これを踏まえて1枚お戻りいただきますと、私どもの事務次官通知で、地方自治法の一部を改正する法律の施行通知を出させていただいておるところでございます。その内容は、「記」のところに書いておりますが、今の附帯決議の趣旨を踏まえた内容になっておろうかと思います。
 公有地信託について、普通財産に公共又は公用の施設建設を主たる目的とするものを認めるかどうかということにつきましては、当時の考え方としては、やはり地方公共団体が公有地信託を行う場合に、こういった行政用の財産というものを建てるとすると、民間の方でされます借り入れ等が、言ってみれば、地方公共団体の起債逃れ、起債制限を逃れるために民間に肩代わりをさせて、それで隠れ借金を生むのではないかというようなことがございまして、こういった議論がなされたものというように考えております。
 そういった状況から言いますと、確かに前提となっております公共の財産について、若しくは公用の財産について、民間の資金を活用して建設するということについては、平成11年にPFI法ができまして、考え方としては変更を受けておるわけですが、起債制限の問題につきましては、平成18年度に起債の許可制が協議制に変わるというような場面ではございますけれども、いずれにしても、そういった隠れ借金といったものについては、今後とも注意していかなければいけないという状況ではございます。
 ただ、国有財産の方の状況を伺いますと、行政財産の管理につきましては、国と地方は一体といいますか、国の方の考え方を引用しながら、地方の方でも制度設計している。国も含めた公有財産全体のあり方というのは、やはり基本的には考え方はできるだけ合わせていくということもあると思いますので、そういった取り扱いなんかも十分尊重しながら今後検討していきたいと思っております。
 それからもう一つ、我々として難しいのが、附帯決議というのが法律と違いまして、ずっと生き続けているという状況がございまして、そこが単に通知を変更すれば足りるものではなく、国会とのやりとりも要るものですから、庁内の議論だけで決められないということもございまして、検討について少しお時間をいただけないかなというふうに思っております。ただ、余りいつまでもというつもりはございませんが、よく相談をさせていただきたいというふうに考えておるところでございまして、決して否定するものではありませんので、我々としても検討してまいりますが、今すぐ、今年度中にというような状況ではないということで御理解いただきたいということでございます。
 以上でございます。

○八代主査 どうもありがとうございました。今、言われた論点をちょっとまとめさせていただきますと、これは1986年に地方自治法の一部を改正する法律案に関して附帯決議がなされた。それによって制約されているということなのですが、これは18年前のことですね。その間、世の中は大きく変わっておりまして、その当時のように財政が豊かであったわけではないし、財政再建も進める中で、民間の資金活用という動きが出てきて、御指摘のようにPFI等新しい法律がその間出てきている。それから、当時のような地方自治に対する不信感というのが徐々に変わってきて、地方が競争する時代で、もっと地方に自主権を与える必要があるということで、今、三位一体の改革も行われている。それを受けて国の方でも国有地の普通財産の信託に関しては、こういう地方自治法のような制限は課されていないという形で、国の方が既に変わっている。そういうことから、時代の流れに沿って、こういう規制というのが地方自治体及び民間の両方の活動を妨げているから、見直す必要があるということは総務省の方もよくわかっておられるわけです。
 問題は国会との関係ということなのですが、おっしゃったように、これは放置しておいたら国会の方は何も変えてくれないわけで、いつまでも附帯決議は生き続けるわけですから、どこかで行政の方が判断を下さなければいけない。それに検討に時間が要るということなのですが、今年度中はできないというのであれば、何を具体的なターゲットとして検討することができるのかという、1つは時間の問題と、やはりもう少し前向きに、こういう規制というのは問題があって速やかに変える必要がある。そういう2点について再度御確認したいと思うのですが、その点について、まずいかがでしょうか。

○杉本企画官 正直言って、もともと通知で規制をかけているような状況になっておりますので、我々が最も望むところでないといいますか、総務省としてですね。ただ、附帯決議までされたものですから、こういった通知も出させていただいておるというところは先ほども申し上げたとおりです。
 我々が考えています理由といいますか、根拠ですけれども、最初にも申し上げましたが、隠れ借金の問題を当初において問題視していた、そのことについては各地方公共団体でも十分に、その点をご検討いただく必要があるということとともに、ただ、今後、起債制限なんかについてもいろんな現状に合った形に見直すのかもしれませんけれども、ただ、起債制限に出てこない形で借金的なことがされることについては、同様の問題は今後とも残るのかなということが1つと……。

○八代主査 途中ですが、その点に関しては、地方自治体の隠れ借金を防ぐという目的からして、この通知というのはどれぐらい役に立つのか、つまり、これ以外の手段によって地方自治体がやろうと思えば、隠れ借金は幾らでも、幾らでもとは言いませんが、現状では別の手段によって増やすことは可能なわけですね。

○杉本企画官 それはほかの手段でもできるかもしれませんが、この手段を使っても、それを認めるかどうかということについては検討の余地があるということでございまして、決して、ほかの手段を使えばできるから、これもしてもいいということになるかどうかは、ちょっと疑問はありますけれども。

○八代主査 こちらの疑問は、この規制をかけたらどの程度有効的におっしゃった隠れ借金の防止ができるのかというものですが。

○杉本企画官 規模によりますけれども、公有地の信託まで行って、例えば、公有財産なり、公共の財産をつくるということになると、規模的には相当大きなものになると思うのです。小さな一室を借りとかという趣旨のものではありませんので、そういう意味では、例えば、数十億とか100 億、200 億という単位の、通常であれば起債が必要な事業を行うということになり得ますので、それは各団体にとっては相当大きな支出であることは間違いないとは思います。ですから、ほかのものの隠れ借金等と比較して、そんなに小さいとは言えないのではないかとは、とりあえず一般的には思います。
 もう一つ思うのは、正直言って、具体的にこういうニーズがどこにあるのかということも、できればお教えいただければなというところもありまして、というのは、それがもしあれば、こちらの方も、国会に向けていろいろな根回しといいますか、事前に協議とかをしやすい状況もあるものですから、それなんかも少しお教えいただければなというつもりもありまして、今日も伺ったのですが、それは今日以外の機会もつかまえて、我々もやっていきたいとは思っておりますけれども。

○八代主査 ニーズがあるかどうかわからないということですが、現に経団連からこういう具体的な要望が出ているわけですから、ニーズとおっしゃるのは具体的な名前を挙げてということですか、ここの。

○杉本企画官 私が申し上げているのは、そういうことでございます。というのは、経団連からこういう要望が出ていることはよく理解していますが、地方公共団体から、この規制があってできないということは、正直言って要望を伺っていないものですから、具体的にこんなことができるという提案があれば、検討しやすいという趣旨で、何も否定しているものでもございませんので、それはいずも我々もよく伺っていきたいとは思っておりますし、もう一つは、信託とPFIで若干違うのは、やはり、公有財産について所有権を形式的であれ移転するというところもございまして、ある意味では公有財産の最終的な帰属というのを危うくする部分もございまして、それもあって平成11年の時点から、まだ検討が進んでいなかったというところもございます。
 ただ、ちょっと御理解いただきたいのは、決して否定しているわけではなくて、我々が一番大きいのは、附帯決議でありますので、これを解除していかなくてはいけないという作業がありまして、その具体的なニーズを踏まえて、我々としてはPFI法が施行されているという状況も十分認識しておりますので、できるだけ早く検討はしていきたい。決して、それは否定するものではなくて、今から結論を先に決めてやるということではないですけれども、ただ、我々としては、本当に今必要なのかどうか十分考えて早めに結論を出したいというふうに思っております。

○福井専門委員 附帯決議の解除の手続なのですが、具体的にはどういうことが必要になるのですか。

○杉本企画官 これは非常に難しくて、法律ですと、法律を改正すればいいのですが、まさに考え方がどう変わっているかという説明をよく国会の先生方にも申し上げないといけないので、ただ、一方でPFI法ができていますので、その考え方は国会内においても十分に周知されているところでもありますので、そういう意味では軽易な方法で、例えば参議院の総務委員会の今の先生方ということになりますけれども、よく相談をさせていただいて、通知を改正するというか、この部分を例えば削除するとか、若しくは別の形にするとかということについて御理解がいただければ、それでできるかもしれませんし、一方でまた、内容についてこだわれる方がいらっしゃいますと、ちょっとそこは手間取ることもございます。直接法律改正に及ばない部分ではありますので、法改正ほどの作業にはならないとは思っておりますが、そこも御相談しないと今の段階ではまだわからないということでございます。

○福井専門委員 附帯決議のやり直しをしないといけないというわけではないのですね。

○杉本企画官 ぎりぎりを言えば、そういうこともあり得ると思います。ただ、そこまでするのかどうかの議論をしていかないといけないので。

○福井専門委員 今までの先例とかはあるのですか。附帯決議が拘束されたことを破るないしは変更する場合に、どういうふうにやったかという先例的な他省も含めてのものはありますか。

○杉本企画官 その点はまだ我々調べていないところでございますが、ただ、このレベルですと状況も大分変わっていますので、先例が相当厳しくしても、それにのっとってやる必要があるのかどうかについては、いずれにしても、今の総務委員会の先生方ともよく相談しなくちゃいけないと思っております。

○福井専門委員 もう一つの考え方は、PFI法ができたということは、実施的には、こういう附帯決議の趣旨と違うことを法律自身が、あるいは国会自身が認めたということですから、その段階で実質的には空文化されているのだという解釈はできないのですか。

○杉本企画官 それは我々がそういう立場で御相談をしていくときには、同じことを申し上げると思います。それを否定するものでも全然ありませんので、何もこれを大げさに取り上げて、我々としては改正できないものだというような形で先生方に難しい問題だと上げていくつもりもございませんので、それは適切に対応したいと思っています。

○八代主査 関連なのですが、私が1つ聞いた例では、昔、米は一粒たりとも入れてはいけないという国会決議が何回も国会を通っていて、それにもかかわらず、現にウルグアイラウンドでミニマムアクセスが認められているわけです。国会の附帯決議というのはあくまで要望であり、法律を本当に拘束するものかどうかというのは、これは御専門の御意見を伺いたいのですが、過去にほかの省では、そういう例もあるのではないか。

○杉本企画官 まさにおっしゃるように附帯決議ですので、これは国会の決議としての意思の表明ですので、法律との関係で言えば、公に規制をする、この場合では規制ということになりますけど、行っているのは法律の規定そのものであって、国会の決議が尊重されることは必要かもしれませんが、それをもって直接的に地方公共団体のこういう行動を規制するものではないということではあるかと思います。
 これは決して否定するものではありませんので、よく検討させていただきたいと思っております。

○福井専門委員 隠れ借金の点なのですが、こういう形の、この通達のような形でない形で、実質的に隠れ借金になりそうなときに、具体的な指導をしたり規制をしたりという権限ないしは根拠はあるのですか。

○杉本企画官 一般的な助言指導ということは地方自治法上も認められておりますので、そういうことは行っていくと思います。ただ、最近は、そういったことはできるだけしないようにということもありますし、地方公共団体の方でも、特に意識して相当能力も上がってきておりますので、だんだんとそういうことをする場面というのは減ってはきておりますが。

○福井専門委員 結局、信託について認めると隠れ借金が増えるかもしれないという1つの、今はどうかわかりませんが、少なくとも制定当時の論拠が存在しているわけですね。そうしますと信託で、しかも先ほどおっしゃったように非常に金額が大きいものだから、事実上、隠れ借金的な方に流れやすいということがもし心配の材料であるならば、根っこからそもそもできないというふうに規制するよりは、この点についてはオープンにしておくけれども、もしそれが隠れ借金的な疑いがありそうであれば、おっしゃったような意味での指導助言でもって個別にコントールするというふうにした方が、制度の隠れ借金を防止するという制度の建前からすれば、一律に禁止するよりももっと柔軟ということにはなりませんか。

○杉本企画官 おっしゃる趣旨はそのとおりですので、今後検討するに当たっては、十分にその点も踏まえさせていただきたいと思います。

○八代主査 ですから、検討していただくという点では全く意見が一致するのですが、問題は他省の例では、「検討する」という場合に例えば3年以内に検討するというのでは困るので、何らかの形で期限を明示していただきたいと思います。できれば今年度中なのですが、あと2か月しかありませんから、それが無理だとすれば来年度速やかにとか、もう少し期限を明示していただくということは、あるいは、ほかの省の例であれば検討会を設けるとかそういう1つの場でやって、はっきり言って総務委員会の先生に了承をとるのであれば1週間でもできるという話であって、例えば、どういう理由でどれだけ時間がかかるかというようなことをもうちょっと具体的にお話しいただけないでしょうか。

○杉本企画官 正直申し上げて、今まさに今国会に提出するテーマについて、年度内はいろいろ作業をしていることもあるのですが、実態としては18年前の議論の中の検討委員会の結果報告もありますので、あとは、そもそも検討会議における結果の中に今回の附帯決議若しくは通知の内容に沿ったものがございまして、そういったことも踏まえて、この今回の我々の方の通知が出ているというところもありますので、そのところの当時の議論というのを少し当たらないといけないと思っていますが、ただ、新しく検討会を設けるというよりは、状況の変化の中で考えまして、その後、国会の先生方と御相談させていただくということですので、おっしゃるように16年度の早い段階かどうかはともかく、速やかに我々としては検討していきたい。それについて結果を出していきたいというふうに思っております。

○八代主査 具体的なニーズがないということですが、そういう検討をしていただければ具体的なニーズは出てくる可能性もある。規制緩和というのは、要請があって初めて個別に相対方で審査するというのは全く本来の趣旨ではないので、あくまでもオープンにしていくことで、潜在的にいろんな自治体、あるいは自治体と連携した企業から要望があるという可能性を期待するわけです。こういう経団連等からの一般的な要望であれば検討に値しないということではないということをちょっと御確認させていただきたいのですが。

○杉本企画官 そこは全く否定しているつもりはなくて、先ほど申し上げたとおり、多分、要望されている側で具体的な案件が念頭にあるのではないかというふうに思われたので、今後の議論を促進する上でも何かお知恵があればという趣旨でございまして、そこは私どもの方でもすぐに確認というか、いろいろ調べていきたいというふうに思っております。

○八代主査 それでは事務局の方から、具体的な手続として来年度速やかにというようなことがあれば大丈夫ですか。

○中山次長 私どもの手順としては、16年度速やかに、かつ結論を得て措置もやるというようなことを出していただけるのがベストというか、特区との関係できちんとのせていくためには必要なのですけれども、いろいろ書きぶりはあろうかと思いますので、それはまた今後いろいろ御相談させていただければと思いますけれども。

○八代主査 そういうような形でよろしいですか。

○杉本企画官 はい。ちょっと先ほども申し上げましたが、PFIとの違いが公有財産そのものの所有権の帰属の問題がありますので、必ずしも完全に一致しているとは考えられないところがあります。そこは少し法制的にも確認していく必要があるというふうに思っていますので、結論を今言えと言われてもあれですが、決して否定しながらいこうというつもりはありませんので、よく書きぶりのところでまた御相談させていただきます。

○八代主査 あとは事務局の方と。それではどうもありがとうございました。

○杉本企画官 こちらこそありがとうございました。

(2)構造改革特区第四次提案に関する意見交換

【カット専門店における理美容師の混在の容認】

○八代主査 それでは、2番目の議題で「カット専門店における理美容師の混在の容認」という要望が来ておりますので、よろしくお願いします。これはある企業から出ている要望であって、現在の制度では、例えば、理髪店というのは理容師しかできなくて、美容院は美容師しかできないということですが、両者を1つの店で同時にやるというような形態が今一切認められていないわけです。これについて規制の根拠及びこういう要望に応えられないという点について、恐縮ですが、10分ぐらいで御説明いただいて、あと意見交換したいと思います。よろしくお願いいたします。

○芝田健康局生活衛生課長 私、厚生労働省健康局生活衛生課長の芝田と申します。
 お手元の答えのところ、理容師法・美容師法それぞれにおきまして、理容は理容所でないとできない、美容は美容所でないとできないというような規制になっているところでございます。これは再検討要請に対する回答に書いたわけでございますが、理容師・美容師のカット技術に関しては、理容師は刈り込み鋏等を使用した短髪刈り込み技術を中心としておりまして、美容師はシザーズ(美容鋏)を使用した長髪カット技術を中心に、それぞれの専門施設において専門教育を受けているところにありまして、また、個別の実技試験にも合格したものでございます。
 そういう意味で、この鋏も実は違っているということで、必要でしたらお手元におとりいただきながら、説明しても結構なのですけれども、理髪というのは真っ直ぐな鋏で、美容というのは少し曲がったような鋏でございます。これについてお手元に写真が載っている資料もあろうかと思いますけれども、それぞれ鋏の持ち方なり、カットの仕方も違うということでございます。そういう意味で、それぞれ異なるカット技術を身につけた理容師・美容師が混在する店舗を認めることは、現在、理容所・美容所に赴くことをもって提供される役務を自ら選択している消費者の利便を阻害することにつながるのではないかということでございます。
 最近、美容所におきまして、男性が美容師さんからいろんなサービスを受けてカットをするということも結構あるわけでございますけれども、そういう意味で美容所ないし理容所を選択して行かれるということは、別に我々がとやかく言うことではないと考えておりますけれども、それが混在をすることによりまして、かえって消費者の選択にはつながらないのではないかということが1つでございます。
 それから、カットは頭皮に触れるという行為であるため、顧客への安全性の観点から器具の持ち方、立ち位置等の技術につきましても、それぞれの養成施設において専門教育を受けておりまして、提案主体の御意見では、OJTといいますか、職場での教育で十分じゃないかというような話もあるようでございますけれども、これは養成教育のあり方全般にもかかわる問題でもありますし、十分な検討を要する問題だと考えております。また、このような状況につきましては、消費者のより高度な技術に対する社会的要請に応えるために、昔は実地修練といいまして、1年ぐらい実習を現場で徒弟的にやった人が、1年ぐらいまた学校でやって免許を受けるというような仕組みがあったわけですが、そういう徒弟的なものはいろいろ批判も受けまして、学校での教育を2年にしたというようなこともございます。そういう意味で養成施設での実習も800 時間に延長するなど、平成10年4月の施行によりまして、教育を充実したところでございます。
 資料にはございませんが、例えば、カットに関しますと、理容は200 時間ぐらい教育しているようでございますが、美容は100 時間ぐらいやっている。もちろん長髪部分についてはかなり共通するところはあるのですけれども、理容のように短髪刈り込みというものは、国家試験のテーマでもございますけれども、これは美容ではほとんど教えないですし、試験のテーマにもなっていない。こういうようなことがございます。そういう意味で、消費者の利便や安全性、養成教育のあり方ということに大きな影響を及ぼしかねないので、ご要望は困難であるというのが私どもの主張でございます。

○八代主査 どうもありがとうございました。今、御回答いただいたのですが、そういう高度な理容技術、あるいは美容技術を求める店があっても当然いいわけですけれども、他方で消費者の便宜から基本的なヘアカットといいますか、理容師・美容師、ほぼ技術が共通すると思われるヘアカットについてコストの低いような形で消費者のニーズに応えるような店をつくりたいということであろうかと思います。ですから、理容技術が高度だからというのは、必ずしも反論にはならないのではないかということと、消費者の選択からすれば、そういうことをきちっと明示するように、表示の仕方をきちっと規制すれば、それで消費者の選択肢は広がるのではないかというふうに考えられるわけであります。
 それから、御説明にはなかったのですが、いただいた資料では、消費者の安全ということと同時に、やはり業界全体の過剰な競争を招くという懸念、例えば、こういうヘアカット専門の、どっちかといえばコストの安い店が出ると、ほかの店の営業に差し支えるという観点もあるのではないか。もちろん、それを目的とした法律ではないけれども、同時にそういうこともやはり考慮しなければいけないという御回答だと思いますが、それはまさに消費者の選択肢ということとある意味で矛盾するのではないだろうかということでございます。
 それから今の説明だと、どっちかというと理容師の方が美容師より高度な技術を身につけているということなのかどうか、それは事実確認であります。それから、あとは鋏の形が違うということなのですが、それが本当にそれほど、例えば美容師には絶対理容師のような鋏は持てないというふうに考えるのか、それとも、ある意味で現場での訓練といいますか、経験ということを通じて克服できる程度の問題なのかどうか。
 それから要望者は、決してOJTさえあれば資格が要らないと言っているわけではなくて、あくまでも理容師とか美容師の資格をとった上で、OJTを通じてさらに技術を磨くというのが本来の業界の特徴であるわけですから、当初の差というのが、例えばヘアカットだけで限定すれば、そんなに大きな差とは考えられないということだと思いますが、こういう点も含めて再度お答えいただければと思います。

○芝田課長 それでは、漏れがあるかもしれませんが、そのときには、またおっしゃっていただければ結構でございますけれども、先ほど申し上げましたのは、高度な技術において差があるということを言ったわけではなくて、カットにつきまして、特に理容における刈り上げというカットでございますが、これはごく基本的なカットでございます。ただ、この基本的なカットは美容の方では教えないというか、ほとんどそういう需要がないということもありまして、これは教育センターといういろんな学校が集まっているところにお聞きしたのですけれども、そういうものに時間を余り割いていないし、国家試験の課題に過去なったこともないということでございます。

○八代主査 その点なのですが、今、資格をとるときに、あるいは学校で教えていないというのはそのとおりだと思いますが、今、現に男性でも美容院に行ってカットしてもらうという人も少なくはないと思うので、それがどの程度店を営業することの障害になっているかという点をぜひ教えていただきたいと思います。

○芝田課長 そういう意味で基本的な技術を身につけていないというか、あるいは、それがどちらでもいいという基本的な部分について、カットについて理容でも美容でもどちらでもいいというような立場には我々は立ち難いといいますか、教育の内容とかについては、むしろ専門家の御意見も十分に聞いてみないと、これはなかなか難しいのではないかなというふうに考えているところでございます。

○八代主査 ですから、ここがまさにポイントであって、それを専門家で決めることなのか、お客が決めることなのかということを聞いているわけなのです。例えば、同じ厚生労働省の医療について見ますと、医療行為というのは医師しかできない、これは強制規定なわけです。ですから、患者がどんな医者以外の人に診てもらいたいと思っても、それは法律で禁止する必要がある。しかし、医師と同じような強行規定が理容師・美容師に当てはまるのかどうか。お客が理容師としての教育を受けていない美容師に整髪してもらいたいと思ったら、それを禁止するような厳しい根拠があるのかどうかということをお聞きしているわけです。

○芝田課長 禁止といいますか、2番目か3番目にお話があったことかもしれませんけれども、理容のカットに関してもいろいろ全国で事故もあるようでございまして、そういう意味で短髪の刈り込みということについて、十分教育を受けていない場合についての危険性ということも考えなければいけないのではないかということは1つございます。
 それから、最初の答えが業界の過剰とか書いたりしたので、やや誤解を受けているのかなという感じを持っておりますけれども、理容所・美容所ともに過剰な競争防止というような目的は有しておりません。ただ、そういう意味で今回の主たる反論理由ではないわけですけれども、衛生という面で底上げ、もちろん大きなところはそれなりに資本もあってやられるのでしょうけれども、小さな業者の底上げをするという意味ではいろいろ必要だということです。ただし、私ども別に競争を拒んでいるつもりはございませんし、例えばQBさんは、理容所なり美容所で既におやりになっているところもあるようですけれども、余り美容所でやっていてホームページとかいろんなところに美容所とも何とも書いてはいらっしゃらないようでありますけれども、それが消費者の選択という意味でいいのかどうかというのはありますが、理容所なり美容所として1,000 円でやろうと800 円でやろうと我々は規制するということは一切ございませんので、それは自由競争で淘汰されるものは淘汰されるのは致し方ないのだと考えているところでございます。そういうところを言っているというよりも、混在化して、それからQBに委員の先生方が行かれたことがおありなのかどうかちょっとわからないのですけれども、私、現職に就く前も二、三度利用したこともございますし、今回この職についてからもいろんな床屋さんに仕事柄行ってはいるのですけれども、むしろ、ここは本当に効率に徹しておって、お金の払いの時間まで惜しいということで省いていて、カットを専門にやるのだから、消費者に選択させるとか、理容師と美容師のどっちを選びますかとか、そういう営業形態になっていないのではないかというふうに思うわけです。

○八代主査 それは私の消費者選択という意味が正しくなかったので、このQBという店に入ったら選択の余地はないというのはおっしゃるとおりなのです。しかし、この店を選択するか、普通の美容院・理容院を選択するかという意味の選択の自由が必要ではないかということを言っているわけですね。ですから、この店の中で何も多様なサービスをする必要は全然ないわけですし、御質問のように、理容師・美容師が混在していて消費者がわからないというのだったら名札でも付けさせる。例えば、私は理容師の資格を持っています、私は美容師の資格を持っておりますと、そういうことでは対応できないのか。

○芝田課長 ただ、私自身、つい最近まであそこはてっきり床屋だと思って行っていたきらいもありますけれども、美容所も結構おありになるということで、それはなぜそういうことをされているのかというと、ある県で理容所から美容所に移られたりしている例もあるわけですけれども、美容師がどんどん出てくる。新卒で1万何千人といらっしゃって、他方、理容師というのは数千人しかいらっしゃらないわけです。そういう意味で美容師が確保しやすいということでやっておられるのではないかと。そういう理由で転換されているようですので、消費者の選択というよりは、効率という面を追求されているのだと思います。だから、効率ということが、別に消費者の利益とか、あるいは教育そのもののあり方にかかわるのでなければ、私どもも先ほどから申し上げているように、1,000 円でやろうと700 円でやろうと一切構わないわけでございますし、また美容所と言われているところに、男の方がそれを選択して行かれるのは結構なのですけれども、入ったところでどっちだかわからんというようなことについてはいかがなのだろうかという意味で、そこは直ちに、そうやって、どっちかというとどっちも効率という話、あるいは業者ということであれば、消費者の問題とか教育全般にもかかわるということであれば、より慎重であってしかるべきではないかということを考えているところであります。

○八代主査 ちょっともう一回確認させていただきたいのですが、価格競争自体は別に何も否定するものではなく、美容院・理容院がそれぞれ独自に効率化を追求して競争するのは構わない。ただ、効率化して値段を下げるための1つの手段として、おっしゃるように、今初めて聞いたのですが、美容師の方がいわば確保しやすいということで、地域に応じて、美容師とか理容師を必要に応じて混在する方がある意味で効率性を追求しやすいという形でこういう形態を求めている。ただ、御質問は、やはり消費者から見て、この人が理容師の資格を持っているか、美容師の資格の持っているかわからないと誤解が生じて、いわば、一種の不公正競争になるおそれがあるという御指摘ですよね。ということであれば、それがわかるような手段を代替的にすればいいのではないか。私は理容師の資格しか持っておりません、美容師の資格しか持っていませんというのを、例えば、そういうことを義務付ければ混在店でも構わないというふうに考えられるかどうかですね。

○芝田課長 その辺はもともとそういう要望なのかどうかということもわかりませんけれども、先ほども申し上げましたように、効率第一でやっておられるということで、そういう要望であるかどうかわかりませんし、私も行きましたら、忙しかったりすることによって、常に従業員が動かれているということもあるようですし、そういう意味で、単に表示だけでうまくいくのかどうかということもいろいろ検討しなきゃいかんのではないかとは思います。それから、美容師が確保しやすくて効率がいいというのであれば、美容所に転換されればいいような話かとも思うのですけれども、このことだけであれば……。

○八代主査 ですから、そういう営業形態の選択肢にまで行政が介入するのは行き過ぎであって……。

○芝田課長 ですから、そこは他方において、そういう消費者の選択でございますとか、あるいは我々がカット専門店なら理容でも美容でもいいというようなことを言うということは、相当教育されている方々からも反発のあるところでございまして、カットというのは一から随分違うんだと、これはある意味技術といいますか、技術の積み重ねによる1つの文化というか、文化と言うと大げさかもしれませんが、職人の文化的なものなわけでして、それをある意味そういう効率性を追求するために、軽々にそういうふうに変えていいのだろうかということを私どもは思っている次第であります。

○八代主査 それはまさに業界の御説明を聞かれるからそういうことになるわけで、消費者の意見をぜひ聞いていただきたいということなのです。そこが一番大きな見方の違いだと思います。もし消費者が今おっしゃっているのと同じような意見なら、この店はつぶれるだけの話で、それでいいのではないかということです。

○芝田課長 つぶれるとか、今、別に美容所の届け出をされて、本来美容所であるというふうに言われた方がより親切だと思いますけれども、そういうことでどんどんお店を出されれば、別につぶれる必要も何もないわけでして、結構な話かもしれません。私も家の近くのカット専門店、QBではありませんけど、よくよく見たら美容所だなと思いましたので、自分は短髪なので行かないけれども、娘を行かせるとか、そういうところは女性客もそれなりに多いようでございますから、そういうふうに消費者の選択というものは十分尊重されればいいのだと思うのです。

○福井専門委員 消費者の選択ということですと、さっきから八代主査が言っていますように、表示というのもあるかもしれませんけれども、例えば名乗らしたっていいわけでしょう。店に入ってきて、あなたは美容師を希望ですか、理容師を希望ですかと。希望の人がいないのならいないと言わないといけないし、いるのだったら、それに応じて対応する。そこで情報の非対称が発生しないようにしておけば、消費者の利益が守られ、混乱が生じるということにはならないのではないですか。

○芝田課長 先ほどから申し上げているのですけど、QBの対応が早い者順でどんどん上げて効率を追求させているということなので、もともと、そういう御要望なのかどうかということはよくわからないところではあるというのが1つと。

○福井専門委員 要望というのは、誰の要望ですか。

○芝田課長 この業者の御要望が、消費者に選択をさせるというような、ある意味、彼らが目指している効率からすると……。

○福井専門委員 要望内容は割合単純で、おっしゃるように美容師が余っているのであれば、美容所に理容師・美容師が混在しても、あるいは理容所に美容師・理容師が混在してもいいように、フレシキブルな営業形態を認めてほしいということなわけですね。その場合、情報を開示しないで、消費者にごまかすようなことを許す必要性は全然ないわけで、もちろん要望者がどう言うかはわかりませんけれども、当然、美容師・理容師の違いに意味を持たせるという選択をしたいという消費者がいることは事実でしょうから、彼らが欺かれないようにするための一種の情報開示義務みたいなものは、どちらにしてもあったっていいわけです。逆に言えば、そういう一種の情報の非対称対策をしておけば、あとは消費者がわかって、理容所で美容師を選択肢とする人がいたり、美容所で理容師を選択する人がいたりしても、それはちゃんと十分理解して、自己責任で選択しているという前提さえ整えていれば、それ以上、行政が介入する必要はないのではないでしょうかね。

○芝田課長 そういう意味で、そこがうまくできるのかどうかということもございますし……。

○福井専門委員 どうしてうまくできないのですか、どういう場合にうまくできないのですか。

○芝田課長 割と職員の流動性もあるし、もともと営業形態からいって、あそこがそういう営業形態ではないのではないかということ……。

○福井専門委員 でも、それは今やっているのが効率至上主義でだましそうなところだから、だましそうなことを前提に認めないというふうに聞こえるのですけど、それはちょっとおかしいのではないでしょうか。要するに、やらせるべきことはちゃんと正直に、公正に表示させるということは、これはどんなサービスであっても大前提ではないですか。そこが紛らわしいというのであれば、紛らわしくない措置をとるなら、置くこと自体が公衆衛生を阻害するとか、過当競争で衛生水準が低下するとかという大げさな話にはならないのではないかということなのです。

○芝田課長 過当競争というところは、何度も申し上げておりますように、そこは私ども主張するところではございません。

○福井専門委員 だとすると、消費者利益の保護なり、消費者に誤解を与えないというところが関心事である、こういう理解でよろしいのですか。

○芝田課長 それと教育のあり方とか、そういうことにも影響があるのではないかということです。

○福井専門委員 教育のあり方について言えば、もちろん学んだ技術は違うかもしれませんけれども、まさに理容師はどういうことを学んでいて、美容師はどういうことを学んでいるかということの前提が現に存在しているのであれば、それをまさに消費者に知らせればよい。その人の資格なりの技術を評価する消費者に、それとわかって選択させるのであれば何の問題もないということになるはずじゃないでしょうか。

○芝田課長 向こうの要望が異なっていることということもございますし、消費者の……。

○福井専門委員 要望って、この中には表示をごまかさせて営業してくださいという意味が含まれているということにはならないと思いますよ。

○芝田課長 そういうことではなくて、表示をするとかしないとか、そういうことは書いていないわけです。

○八代主査 それはまさに、今そちらの御説明を聞いて、こちらがこういうことならいいのかということを聞いたわけでして、一々それをまた、この提案者に戻して、その人がそういう表示を示すことでいいのかということを改めて聞いて来なければ検討しないというような、そういう一方的なお上の発想では困ります。ここで何のために議論しているかというと、具体的な要望の有無にかかわらず、そういう論点を詰めることなのです。ここでお聞きしたいのは、例えば、そういう消費者が誤解を受けないような、いわば予防措置ですね。代替措置という言い方もしていますが、どのような予防措置を設ければ認めても良いという御見解なのかということをお聞きしているわけのです。そういう要望なら、そういう仕組みなら、もうしないという可能性があるかもしれないし、別の人がそれならやってもいいという、あらゆる可能性があるわけですから、一々提案者に戻して、また申請しろという杓子定規の考え方だったら意味がないわけです。要望者の要望の内容がわからないという言い訳はしないでいただきたい。我々の提案に対してどう答えるかということをぜひお聞きしたいわけです。

○芝田課長 消費者への選択ということが、表示という問題ですべて解決できるのかどうかということは、またよく検討してみないといけないと思っております。

○福井専門委員 さっき反発があると言われました。プロの方だから職人の文化を持っているから反発があるかもしれないので、軽々に変えていくことは難しいのではないか、こういうことがありましたけれども、これもちょっと意味がよくわかりませんでした。恐らく皆さんは誇りを持っておられるわけですね。それは事実だと思います。理容師さんなり美容師さんが技術なり文化に誇りを持っているとしても、例えばまさに理容所で理容師・美容師が混在していたとしても、混在のそれぞれの技術をもつ方が自分はどういう技術を提供するのだということが明らかになっていて、消費者がそれを自由に選択しているときに、何か文化がすたれるというような心配というのはあるのですか。

○芝田課長 文化というか、それぞれ理容と美容、この2年間にわたって教育をしているということがあるわけでして、それの違いがカットだったらそもそもが同じなのではないかとか、違いがないのではないかということに関しては誤解があるし、それは違うということを申し上げていたわけでございます。

○福井専門委員 カットだから同じなのではないかというよりは、美容師・理容師の身につけた知識なり、あるいは研修なり技能なりが違うのだとすれば、カットで大量生産の形のサービスのところだって、前提を気にする人がいるかもしれないというのがこの議論の出発点でしょう。だとしたら、そこはさっきから繰り返し申し上げているように、資格については明示させればいいだけのことです。その資格がまさに文化とか、あるいは職人芸なりの域に達するようなものであることを重視する方はそういう名札の方を、あるいはそういう資格の方を選べばいいだけじゃないですか。誤解さえ与えなければ、文化が滅びたり職人芸が廃れるということはならないと思うのですけれども。

○芝田課長 そういう表示ということでうまくいくのかどうかということは、これは検討を慎重にしなきゃいかんと……。

○福井専門委員 うまくいかない蓋然性というのは想像ができないので、今どういう場合にうまくいかないのか、具体例を教えていただけませんか。

○芝田課長 それがきちんと守られるかどうかというようなこととか、特にここに関して言えば、チェーン店でいろんな方が派遣されたり、出入りも激しいというようなこともございますし……。

○八代主査 それは今の理容師・美容師だって全く同じように通用するものですね。混在とは無関係に。

○福井専門委員 こういう要望の多いところだけは違反する蓋然性が強いと疑って決めつけておられるということですか。

○芝田課長 そういうことを言っているわけじゃなくて。

○福井専門委員 美容師・理容師がごまかすかもしれない、資格を偽るかもしれないというようなことは、およそ全国に何万もある理容店・美容店どこだって同じことじゃないですか。それを厳正に普段から監督官庁として管理されている建前ではないのですか。同じことをやればいいだけのことではないのでしょうか。

○芝田課長 それは、そういうことで監督はしておりますが。

○福井専門委員 だとしたら、この場合だけ監督が行き届かないという合理的な論拠はありますか。

○芝田課長 そこはどういう規制の実態にあるかとか、そういう表示のあり方とか、そこはまだ少し検討してみないといかんというふうに考えております。

○八代主査 それは、この特区提案の中の検討でやっていただくということですか。つまり、この特区提案というのは無条件で認める必要はないので、必ず代替措置というのがつく場合があるわけです。要するに特区を認めるに当たって。ですから、今、言った表示を明確化するというのは、まさに代替措置です。今、おっしゃったのは、表示の仕方について、もう少しどれぐらいの大きさにするとか、そういうことについて検討させてくれというのであれば、それは全く問題ないので、そういう条件付きでこの特区提案を前向きに、まさに期限内に特区室とやっていただくという意味の御検討ということで解釈していいわけですか。

○芝田課長 そこはちょっとまだ、教育のあり方とか表示のあり方とかいろいろ慎重に検討しなければいけないと思っております。

○福井専門委員 連呼されてもわからないのですが、教育のあり方にどう影響するのですか。資格を持っている方が特定の教育を受けているということは法令上前提とされているわけでしょう。

○芝田課長 はい。

○福井専門委員 だとしたら、それがわかるように消費者になっていて、それをわかった上で選択し、わかった上で提供しているという関係があるときに、教育のあり方をどういうふうに変えなければいけないのですか。

○芝田課長 繰り返しになるかもしれませんけれども、もともと特区の要望というのが、そういう効率性を重視して、技術面の違いがないというような御主張でありましたので、そこは教育のあり方にも関係するところではないかと思っています。

○福井専門委員 違いがないサービスかどうかはともかくとしても、一定のサービスに対して、もともとの前提の資格がわかっていて選ぶときに、何で教育を変えないといけないのかというのがさっぱりわからないのですけれども、どういうふうに変えるのですか。大量生産技術が効率的なところが専門に出てきたら、それ専門の資格をつくるべきだとおっしゃりたいのですか。

○芝田課長 そういうことを言っているのではなくて。

○福井専門委員 では、どう変えるのですか、具体的に。

○芝田課長 変えるというか、向こうがカットであれば同じであるというような言い方は、教育のあり方を無視されているのではないかということを申し上げているわけです。

○福井専門委員 さっきも出てきましたけど、刈り上げ技術は理容のみとかおっしゃいましたね。じゃ、刈り上げはしませんという前提で、美容師の資格の方はそういう前提で、そういう技術について表示するのであれば、うそじゃないですよね。文化も守られますね。何の問題があるのですか。

○八代主査 要するに、理由はともあれ、こういうヘアカット専門の理容と美容の混合店を認めてほしいという要望であって、そういう美容師と理容師のヘアカットが同じであるというような不埒な言い方は撤回しますというふうに要望者が言えば、それでいいということですか。

○芝田課長 そういうことではなくて、やはり、これは教育のあり方なり顧客の安全性について、本当に表示のあり方だけで解決できるのかどうかということは、より慎重に検討しなきゃいかんと思っています。

○福井専門委員 どういう場合に危険が起きるのですか、安全性とおっしゃいましたけど。そもそも危険なような、理容師にせよ美容師にせよ、ヘアカットすると顧客に危険を与えるような、そういう資格なのですか。

○芝田課長 それは現にカットで事故が起きているということはございます。

○福井専門委員 それは事故を起こした方のまさに資格なり研修なり教育なり監督の問題ではないのですか。ここの論点は、理容師一般、美容師一般にも事故があるというような、途方もない一般論をしているのではなくて、理容所で美容師がいたり、美容所で理容師がいたりするということ自体に何か具体的な弊害があるのでしょうかということを議論しているのです。

○芝田課長 そういう意味で混在があることによって、先ほどの繰り返しになりますけれども、理容の技術、特に刈り込みの技術等に習熟していない方がやることによって、事故も起こりやすいのではないか。

○福井専門委員 今、美容師さんだけがいる美容所で、美容師さんは刈り込みをやることは法令で禁止されているのですか。

○芝田課長 禁止ということではありません。

○福井専門委員 だったら同じことじゃないですか。何で混合のところにいる美容師だけを目の敵にする必要があるのですか。だったら美容所の美容師さん全体に刈り込みをやるときには、それはおまえが学んでいない技術だから、よほどのことをしないと顧客を傷つけるという前提で指導監督されていないとつじつまが合わないじゃないですか。

○芝田課長 そういうことを言っているのではなくて、混在を認めることによって、そういう危険性がより増すのではないかということを申し上げているわけです。

○福井専門委員 どうして増すのですか。美容師が鋏を使って刈り込みをやるということ自体が危険だったら、混在のところでやろうが、混在してないところでやろうが同じリスクじゃないですか。

○芝田課長 そもそも美容所に行かれる場合に、それはわかりませんけれども、美容所に行かれる男の方というのは、そんなに刈り込みで行かれるということが多いのかどうかということはありますけれども、ここにおいてQBというのは、ある意味でむしろ床屋だと誤解されて行かれるところが多いわけですけれども、そういうところにおいて、美容師の混在ということを認めることはややいかがかということを申し上げているわけです。

○福井専門委員 それは、また根っこに戻るのですが、誤解を与えないようにするという資格の表示があれば、何の問題があるかということに結局戻るはずですよ。

○八代主査 どうも今までのお話だと、やはり新しい形態のこういう店が出てくること自体が望ましくない。伝統的なやり方でなければだめだと。業界の秩序を乱すというあくまでも業界よりの発想としか思えませんので、ぜひ消費者がいろんな形の理髪室、美容室、あるいは混在室というものが選べるように形の特区提案というのを前向きに受け止めていただけないかということで、それによって生じるおそれがあるリスクをきちんと列挙していただいて、それをクリアする手段を考えるというのが前向きなやり方で、ただ、検討するという形で、これを葬り去るということは特区の精神に反しますので、明確なリスクの根拠というのを速やかに期間中に示していただいて、それに基づいて、また再度議論させていただきたいと思いますが、それではよろしいですか。

○芝田課長 何度も申し上げていますけれども、過剰なものとか、こういうQBというものを別に否定しているものでもありませんし、その理容所・美容所という形でどんどん増えておられるわけです。それだからこそ、短期間のうちに200 店舗にまでなられているわけですけれども、別に業界寄りということではないのです。

○八代主査 ただ、あいまいな根拠で認めないということは、意図はともあれ、結果的にそうなってしまうので、そこはぜひ禁止する根拠というのを明示化していただいて、そうであれば、それに対応する新たな手段もわかるわけですからね。あいまいな形でただ認めないというのでは何の発展もないので、そういう意味で次の期限というのはどこかあるのですか。今、この場で直ちに危険なリスクがあるということについて明確なお答えができないのであれば、特区室ときちんと協議していただいて、規定の時間以内に明確な禁止の根拠を示していただき、それに基づいて、その禁止をカバーするといいますか、その弊害を克服するような手段についてまた議論すると、そういう形でよろしいですか。

○青木特区推進室企画官 今、来られている課長レベルのところまでは交渉させていただきましたけれども、基本的には、今までお話のあったようなところで、私どもも議論が繰り返しになっているという状況ですので、今のところを含めて、あと3週間切りましたけれども、特区室の本部決定に向けた時間の中で、ぜひ混在したときの問題点、本当に問題があるなら、そこのところをぜひ何らかの形で明確にしていただければありがたいと思っています。

○八代主査 今のような不明確な根拠で特区提案が葬り去れられるのは非常に心外ですので、場合によっては、次はもっと局長レベルのハイレベルで交渉したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【特別免許状授与権限の市町村教育委員会への委譲】

○八代主査 それでは続きまして文部科学省の方から、「特別免許状授与権限の市町村教育委員会への委譲」というテーマについて議論させていただきたいと思います。これは特区提案で来ているわけで、これについて、担当省庁の方からなぜこれが認められないかということについて、できれば簡単に5分ないし10分でお話しいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○竹下初等中等教育局教職員課長 文部科学省の初等中等教育の教職員課長の竹下でございます。
 お手元に資料を6枚ほどお配りさせていただいておりますけれども、このような色刷りの絵の付いたものでございますけれども、それをもとに若干御説明をさせていただきたいと思いますが、教員免許制度でございますけれども、学校教育の正否は直接の担い手である教員の質に負うところが非常に大きいと、しかも、子どもたちの人格形成に大きな影響を及ぼす重要な職であるということで、教員の養成、採用、研修の各段階を通じて、生涯にわたって不断に資質向上を図る必要があると考えております。
 教員の養成段階でございますけれども、採用当初から学級あるいは教科を担任するということで、生徒指導あるいは教科指導などについて支障なく実践できる能力を確実に修得する必要があるということで、戦前は師範学校等々で教員養成をやっておりましたけれども、それの反省に立ちまして、戦後は高等教育機関である大学において教員養成を行うということを原則にしております。
 具体的には、教育職員免許法に定める要件に従いまして、1枚目の資料の方に、基礎資格として専修免許状は修士課程修了程度と書いてございますけれども、2枚目を御覧いただきますと、どういう単位をとらないといけないとか、教科に関する科目ですとか、教職に関する科目、何単位というのが書いてあるわけでございます。それらの修得により相当の教員免許状が授与されるということでありますけれども、教員免許状は教員としての資格を公証するということから、教員として採用されるための必要最低限の要件であると。実際の採用選考の際には、さらにそれに加えまして人物的にどうかとか、教員にふさわしいかどうか、熱意はどうかとか、そういったことを判断されるということでございます。
 一方、学校現場に社会人を活用するということで、特別免許状制度、あるいは特別非常勤講師の制度と二通りあるわけでございます。特別免許状制度でありますけれども、この免許状は、担当する教科について、その本人が専門的な知識経験・技能があるかどうか、また社会的信望や熱意、識見があるかどうかと。そういったものを有する方について、学校教育の効果的な実施に特に必要があるということで、教員を任命あるいは雇用しようとする者から推薦があるわけでございますけれども、その推薦に基づいて、4ページにその授与手続の流れが書いてございます。都道府県教育委員会の行う教育職員検定、これは人物、学力、実務、身体のそれぞれについて基本的に書類審査で行うというものでございます。また、学識経験者への意見聴取を経て合格の決定をするという流れになるわけでございますけれども、授与された特別免許状は、普通免許状は全国有効でございますけれども、特別免許状の場合は、授与権者の所在する都道府県内において終身有効ということでございます。また、特別免許状の授与を受けた者は、一定の単位をとることによりまして、さらに普通免許状に切り替えができるということになっております。
 次のページ、5ページに、昭和63年に特別免許状制度ができているわけでございますが、12年から、先ほど申しました普通免許状への切り替えが可能になってございますけれども、平成14年度にも学士要件、例えば、病院の看護婦長さんも優れた人は教員にいいと。ただ、短大しか出ていないとか専門学校しか出ていない、そういう人たちもふさわしいだろうということで学士要件を撤廃するというふうなこと、あるいは他の職からの転職を促すということで、有効期間、従前は5年から10年というふうに定まっておりましたけれども、それも撤廃して終身有効という制度改正をこれまでしてきております。
 それから、件数が6ページの方にございますけれども、63年に制度ができまして15年まで、これまでに68件の授与、授与事例としては、その下に書いているようなものでございます。この特別免許状についてでございますが、特区におきましては、授与手続面で特区措置として、手続の迅速化あるいは簡素化という措置を既に講じているところでございます。これまでに市町村負担教員の必要な免許状はいずれも円滑に授与されることになっておりまして、横須賀市の方で外国語関係で特別免許状が欲しいということで、当初、特区措置を使おうかという話があったのですけれども、神奈川県の方から円滑に授与がされるということで、そういうことを使わないで免許状を出そうと、神奈川県の方から出してもらうということで実際に進んでいるというふうに聞いているところでございます。
 市町村教育委員会に授与してはどうかという提案についてでありますけれども、いろんな提案をなさっている主体がございますが、そういったところで個別にこれまで状況等を伺いましたところ、具体的にどういう人を任用するのか、あるいは、どういうふうな教育効果を上げようとしているのか、未だそこまでは具体的に検討なされていないということでございまして、したがいまして、どういう具体的課題があるのか、支障があるのかということがわからない状況でございまして、提案がどのような効果があるのか整理するのが私どもとしては難しいというふうな状況でございます。
 また、仮に提案の内容を制度化する場合でございますけれども、免許制度、その授与権者を市町村教育委員会にもということでございますことから、特区のみならず全国的な措置をとる必要があると考えますけれども、全国的に当該措置を実施することを想定した場合は、特区提案をしている特別区を除き、千代田区でございますけれども、全国的な市町村の当該事務実施のニーズがないこと、また、当該事務を行うための体制を整えるという必要性もあるわけでございますし、そういった問題、あるいは免許状授与の申請先というのが県になったり市町村になったりとか、そういうふうに複数化する、あるいは市町村教育委員会で免許状を出すということになりますと、その有効範囲というのが当該市町村に狭まってしまう等々、不効率あるいは申請者にとってもいろんな支障が出るということで技術的に極めて困難ではないかというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
 先ほど特別免許状、これまでの授与件数について御紹介をさせていただきましたけれども、これまで特に私立学校でよく使われているわけでございまして、個別にすべて聞いたところ、それらの推薦によって都道府県教育委員会から円滑に授与が行われております。これまで授与が行われなかった例というのはございません。そういったことで具体的な支障とか要望があるということは一切聞いていないところでございます。実際にある県の私立学校で、これはスポーツの分野ですけれども、それに長けた人を登用したいということがございましたが、それも県の教育委員会に相談し円滑に授与されております。非常に活躍されているということも聞いたりしているところでございます。
 特区において、市町村が独自に教員を任用する場合には、都道府県の教育委員会と市町村教育委員会が連携し、手続の簡素化や迅速化を図る特例を既に設けています。先ほど申し上げましたけれども、まずはこの特例を利用すべきではないかというふうに考えておりますし、また、先ほど申し上げましたような、累次改正をしておりますけれども、これまで特別免許状に関する改善を重ねておりますので、活用上の課題の解消というのは図る方向で進めてきております。平成15年におきましても、これは8月現在でございますが、既に15件ということで制度改正の成果が出ているかなというふうに考えておりまして、今後も増加が見込まれるのではないかというふうに思っております。提案の趣旨を効果的に実現するという観点から、私どもも鋭意検討いたしております。以前、特別免許状について授与資格は高校を卒業していなければ授与することができないというのがありましたけれども、それについても、特区推進室とも相談をしながら、何とか提案者の趣旨を踏まえて、実現できないかということから設置基準の関係で弾力化を図るということも既にやらせていただいておりまして、そういったことで私どもとしても、提案の趣旨というのを十分踏まえて何とか実現の方向でというふうに考えているわけでございます。
 ただ、この件につきましては、具体的なニーズが明らかでないし、また、支障というものがないのではないかと私ども考えておりまして、そういったことから、都道府県教育委員会においても、この特別免許状については既に柔軟に運用されておりますけれども、私どもとしては柔軟に運用するよう指導しておりますし、このような具体的な提案があれば、事前に相談をいただくということで、円滑に授与されるようにということで働きかけをしていきたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

○八代主査 どうもありがとうございました。今言われた特区提案を否定する根拠をちょっと私なりにもう一回整理させていただきますと、現行制度で既にうまくいっていると、十分弾力的に対応しており、現に増えていると、これまで一桁であったのが15年には15件であるということ。それから具体的にどういうニーズがあるかわからないということでありますが、現にこれだけ多くの要望が出ている中に、それは当然ニーズがあるというふうにこちらとしては判断できるわけです。どういう根拠かわかりませんが、体制が整っていないとか、ニーズがあるかどうかというのを監督官庁がまず判断しなければ新しい制度に移れないというのは、やや、こちらとしては疑問であって、これだけ多くの要求があるというのは、現行制度がやはり不十分であると、使いにくいということがあるからそういうことが起こっているわけで、既に円滑に行われているから、そのニーズはないはずだというのは、ちょっとやはりそこは要望とは食い違っているのではないか。それから、市町村が出すと有効が範囲が狭いから意味がないというのは、はっきり言えば余計なお世話であって、それでも出してほしいという要請があるわけですから、そこは県を通じてやると、かなり新しいような提案というのが否定される可能性があるのではないか、だからこそ、こういうものが出ているのではないかということであります。ですから、現行制度もうまくいっているというのは、あくまでもそちら側の判断であって、そうでないという判断もあるわけですから、なぜ県はよくて、市町村はだめなのかということですね。そっちの方が不便じゃないですかというのは、逆に言えば余計なお世話であって、それでも欲しいという市町村があるわけですから、その市町村になぜ与えてはいけないかという理由が今は残念ながらよくわかりませんので、それについて、市町村に与えたら、こういう弊害があるということをぜひ具体的に教えていただきたいと思います。

○竹下課長 まず、具体的なニーズを私どもは把握していないのではないかということでございますけれども、最後の方で申し上げましたように、私どもとしては、どういうところにお困りですかと、それを踏まえて何かできないかという観点から検討をいたしております。そういうことでお伺いをしたいのですけれども……。

○八代主査 それは現行制度を前提とした上の運用でやっているわけで、十分やっておられるということはよくわかっていますから、弊害の方を先に教えていただけませんか?

○竹下課長 申し訳ないのですけれども、もう少し申し上げたいのですけれども、どうして提案を出されたのですかと聞きますと、68件ということでありますが、増えているわけでありますけれども、件数が少ないということで、きっとなかなか出ないのではないかという漠然とした不安をお持ちであるというふうに聞いております。千代田区の方が少し具体的に、こちらの方は外国人に出したいということなのですけれども、それについては昭和21年ごろに考えているという話なのですが、東京都はこれまで特別免許状を授与した実績はない。ないといいますのは、これまで申請がそもそもなかったわけでございます。ところが都の方でも、こういう全体の動きを考えまして、私どもからも働きかけをしておりますけれども、特別免許状の授与手続が円滑に進むようにということで今既に検討が始まっているところでございまして、千代田区の方としても、都に出しても出るのではないかと思っていました。
 市町村限定の免許状になる、あるいは普通免許状にはわたりができないというふうなことについては、それはそれでいいのではないかというお話がございましたけれども、やはり教育、それを担うということで、その能力を公証する制度でございます。したがいまして、そういうことは申しますと、免許制度というのはやはり全国的にも、例えば、もし市町村でもそういうことができるということであれば、特区だけではなくて全国的にもそういう制度をつくる必要があるのではないかというふうに私ども思うわけでございますけれども、私どもとしては、そういうニーズは具体的にないのではないかというふうに考えているところでございます。

○八代主査 繰り返しになりますが、ニーズがあるからこういう特区提案というのが出ているわけで、それを頭からニーズがないと、今だってできるはずだというのだと特区なんか要らないわけです。それからこうしたものは全国でやるべきだというのは、もし全国でやっていただければ、それはそれで構わないわけです。ですから、特区というのは、あくまでも今市町村では認められていないようなことを認めたとしたら、どういう弊害があるかというのをチェックするのが特区であって、もしそれで弊害がなければ、それを全国に認めていただくというのが基本的な考え方で、決して、例えば特区だけの特権としてずっと将来とも置いていくということじゃないわけです。ですから、将来的には、今、都道府県ベースでやっているこういう権限というのを、できる限り弊害がなければ市町村に下ろしていく。ある市町村で得た権限を全国に展開していくと。当然その方がいいというふうにおっしゃっているわけですから、こちらもそれを否定することはないのですね。
 基本的には、要するにニーズを証明しなければ権限を下ろせないというのではなくて、市町村ではだめだから県でやらなければいけないということを証明しなければ、ある意味で原則として最も行政ニーズの近い、住民と近いところにある市町村に下ろしていいのではないかというのがこちらの考え方です。繰り返し言いますが、なぜ市町村ベースで特別免許状授与権限を持ったとしたら、どんな弊害が起こり得るかということを教えていただけないかということです。何か関連して奥谷委員どうぞ。

○奥谷委員 私も八代先生と同じ意見で、要するに地域密着といいますか、いろんな問題というのは、むしろ市町村レベルの方に落とし込んだ方が、吸い上げるというか、そういった力が強いと思うんですね。何で県がやらなければならないのかという、その理由もわかりませんし、市町村がやってマイナスになるということの理由もわかりませんし、そこが今までの流れで県がやっている、県に権限を与えていると、その流れでずっとおやりになったことが、たまたま今こういった事例でうまくいっているから問題ないと言うのはやっぱりおかしいわけで、むしろ、やはり地域密着型、いろいろな問題が起きているわけで、そこで新しい先生が欲しいといった場合に、市町村にそういう権限を与えるということは何の問題もないのではないでしょうか。

○竹下課長 ひとつ具体的に今の制度が支障になっている、あるいは規制になっているのだということであれば何か改善をしないといけないということであると思うのですけれども、私どもとしては、具体的な支障あるいは規制というものはない。合理的なものというのは感じ取れないわけでございます。
 それから、地域に密着、市町村の方がわかるのではないかというお話がございましたけれども、この免許状は、地域の特性を生かす免許状ではございませんで、あるいは市町村の特色がわかっていないと出せないということでなくて、当該学校が、学校教育を効果的に進める、そういう必要があるというふうなことでもって免許状を出すという仕組みでございまして、地域特性ではございません。そういったことで、私立学校から申請がありまして、これまでも円滑にすべて授与されているということでございます。それは市町村の特性を判断するということでなくて、その学校の特色をこれは教育上効果があるということで判断して出す免許状でありますので、市町村の方が地域のことがわかっているからということではないというふうに私ども理解しております。
 それから、やはり授与権者と公立学校の場合でございますけれども、人事管理者というのが、任命権者というのが一致をしているわけでございます。ある市町村で任用しましても、いろんな県に異動できるということで、免許状授与権者と任命権者というのは一致させているというふうな事情がございまして、市町村になりますと、そこは違ってまいりますので、確かに市町村単費であればということがあるかもわかりませんけれども、その方も、いずれ広域人事にのってくるということもあるわけでございまして、その場合には、御本人のことを考えましても、市町村でないと免許状が出ないというなら別でございますけれども、県の方で十分で出るわけでございますので、そちらで出た免許状の方が御本人にとってもいろいろ動けるのではないかと。
 また、普通免許状の場合ですと、先ほど冒頭に御紹介しましたが、一定の単位数をとって、それに基づいて免許状を授与するということで、定量的にも免許基準で定まっております。特別免許状の場合は、御本人がどういう人かということで、授与する授与権者に免許状を出すか出さないかという判断を委ねられているということでございます。したがいまして、そういうことを申しますと、県と市町村の方でも免許状が授与できるということになりますと、双方で授与できることになるわけですが、その判断基準が、主体が違ってくると判断基準が変ってくるというおそれがあるわけでございます。それは同じ免許状、先ほど申しましたけれども、免許状を持っているということは、教育をできる、そういう能力を公証する仕組みでございますので、そういうことから申しますと、同じ人で判断基準が変ってくるという可能性が出てくる仕組みをとるというのは、一定の教育を行える能力を公証するという免許制度を運用することから申しますと必ずしも得策ではない、得策といいますか、適切ではないのではないかというふうに考えます。

○八代主査 後の話は、今だって47都道府県で全部、ある意味では別に違う判断が起こり得るわけですね。だから、県なら正しく判断できて、市町村はできないということだと理解してよろしいんですか。

○竹下課長 いいえ、先ほど申し上げましたように、普通免許状を出す授与権者が特別免許状を出す授与権者を一致させていることによりまして、教員としてふさわしいということを判断できるということでございます。おっしゃいましたように、確かに神奈川県と東京都であれば、実際にある特定の人に対して、この人は神奈川県では免許状が出たが、東京都は出ないということはあり得ない。理論上あり得ることではあるわけでございますけれども。

○八代主査 だからこそ市町村の免許状はその市の中でしか通用しないわけで、逆に言えば、ほかに迷惑を及ぼさないわけですね。

○竹下課長 先ほど申しましたように、その免許状を持った方が、特別免許状というのは、普通免許状に移行できるわけでありますけれども、それが市町村ということになりますと……。

○八代主査 本人がそれでいいと言っていればいいわけであって、どうしても全国に、普通免許に行きたいときは、都道府県の従来どおり特別免許状を申請する。別にダブルでとったっていいわけですよね。市町村レベルと都道府県レベルと。

○宮内企画官 その場合ですと、都道府県の方から特別免許状というのが出ないこともあり得ます。制度設計上としては、特別免許状というからには、どの人にも普通免許状を授与できる仕組みを整えるという仕組みをとっているということがありますので、その方だけが要らないと言ったからといってという仕組みでよろしいのか。制度設計では……。

○福井専門委員 それは制度の仕組み方の問題で、もしある自治体、例えば千代田区で特別免許状を特区で認めたとしたら、千代田区以外で同じ人に免許が必要なことが生じたら、それは例えば都でやってもいいし、あるいは別の市町村の特区でやってもよいというふうに併存させておけば、それで済むのではないですか。

○宮内企画官 ですから、免許状というのは、繰り返しになりますけれども、その学校で教科で必要だからということで特別免許状を授与するわけでございますので、東京都の方では、その人は必要とないということであれば特別免許状も出ないということになりますので……。

○福井専門委員 いや、違いますよ。一回とった後で別の学校に、よその自治体の、千代田区じゃなくて、港区の私立学校に転任するかもしれない人だっているでしょう。

○宮内企画官 はい。

○福井専門委員 その人に、一回あなたは千代田でとったのだから、未来永劫特別免許状を出しませんよなどという不合理な制度に仕組まなければよいだけじゃないですか、ということです。

○竹下課長 それはおっしゃるとおりだと思います。

○八代主査 あくまで規制緩和というのは選択肢を広げることに過ぎず、既に持っていた選択肢を否定することではない。そこは御理解いただけますでしょうか。市町村の特別免許状をとったからといって、この人の権限が何か侵されることじゃないわけですよね。県あるいは学校。あくまでも今では県しか出せなかったものを市町村も出せるというだけに過ぎないわけで、県の権限が侵されるということではないのではないかということなのですけれども、今のお話だと、どうも本人にとって不利益になるからやめた方がいいという御意見だと思いますが、なぜ不利益なのか全く理解できないのです。

○宮内企画官 ですから、それは繰り返しになりますけれども、特別な免許状ということになりますと、その市町村しか出ないということで、まず異動する場合には免許状が、例えば、品川区に行っても出ません。ですから、私立学校でその人が必要とならない限りは出ません。それで、その特別免許状を市町村だけということになりますと、普通免許状の条件というのは、当該市町村がございませんと、ずっと特別免許状だけでということになりますと、もしその市町村で学校の設置……。

○八代主査 そのときは、改めて県の従来どおりの制度を利用すればよいのでは。

○宮内企画官 ですから、その場合になると県の方は特別免許状をその人が、あくまで特別免許状というのは、その学校で必要だからという、その学校の申請に基づいて出るものですので、ですから、東京都の管轄の学校で、その人が必要でないということになると、特別免許状というのは授与要件を満たさなくなりますので。

○福井専門委員 必要でなかったら免許をとる必要もないのだから、そんなときのことを議論しても仕方ないじゃないですか。

○宮内企画官 ですから、免許法というのは、そこまで考えて議論しているわけでございますので。

○福井専門委員 そうじゃなくて、特別免許がある学校を前提だというのであれば、さっき課長がおっしゃってけりがついていたと思ったけれども、また蒸し返すので申し上げますが、千代田区で特別免許状をとって千代田区内の私立学校で必要だったと、だけど、よその学校で転任するということになって、そっちで免許が必要だとしたら、港区に行ったときには、東京都の特別免許状で普通免許に移行できる前提をとってもいいし、そっちが特区でそこだけでいいというなら、そこでまた特別免許状をとってもよいし、そんなことは本人が必要だ、あるいは学校が必要だという前提に合わせてあげれば、それで済む話じゃないですか。

○奥谷委員 個人が自分で自主的にとるかとらないかを決めることであって、学校にそのニーズがあれば、そこに行くでしょうし、そういったことに対して余計な心配はする必要ないのではないですか。

○宮内企画官 ですから、申し上げているのは、免許法全体として、そういうふうなわたりができるような形に整えて、普通免許状が授与できる場合というのをやっているということですから、その人だけ普通免許状にわたりができないという仕組みをとるのがいいのかどうかという議論はあると思うのですけれども。

○奥谷委員 今言っているのは特別免許のことであって、特別免許を千代田区でそういったニーズがあってとったと。そして港区へ行ってとれなかったら、そこでまたとればいいわけであって、それは本人が主体性をもってやることであって、別にそれは損するとか得するとか文科省が考える必要はないということですよ。

○宮内企画官 ですから、免許法というのは、とった本人のことを考えやっているわけですから、そうなると、品川区へ行った場合、二度手間になるので、その人は免許状が出なくなるということになると、その人にとっては確実に不利になるわけですね。

○福井専門委員 ちょっと課長に聞きたいのですけど、さっき課長は、そういう不合理はなしにするということで、彼の議論を明確に否定されたと思うのですけど、まだ議論を続けさせますか、こういうことを。

○竹下課長 ですから、本人が支障があるかもわからないけれど、こっちにも出したいと言えば、それは出すことはむしろ可能ですし、結果として出ることもあるでしょうし、出ないこともあるとは思いますけれども。

○福井専門委員 それはよくわかります。

○竹下課長 ただ、申し上げましたのは、免許制度全体を考えますときに、特別免許状というのは、授与権者が違うことによって出る出ないというのがある。やはり私が申しましたように、教える能力があるのかどうかということは、免許制度では担保しないといけないと、国民に対してそういう説明責任があるわけでございます。結果として、それが市町村によってばらばらだとかということはいかがなものかという強い懸念を持っております。

○福井専門委員 その議論はわからないではないのですけれども、要するに、市町村一般の審査能力と都道府県一般の審査能力が著しく格差があるというのだったら、そういう配慮は要るのでしょうけれども、ある意味では、そのような事実があるかどうかに依存するのではないでしょうか。

○八代主査 繰り返し言いますが、特区というのは何も無条件に規制緩和をするのではなくて、代替措置というのを認めているわけなのですね。ですから、おっしゃったように、例えば千代田区が特別に特別免許授与権限をすると、そのときに、課長がおっしゃっているように、東京都著しく基準が違っていては問題が起こるかもしれない。それは考える1つの弊害なわけなのですね。そうすると、その弊害を防ぐためにどうしたらいいかという代替措置で、例えば基準を千代田区が認めるときに、無条件で認めるのではなくて、東京都ときちんと調整するとか、何らかの代替措置をした上で市町村に委譲するということが認められないかどうかということですね。
 それから、もし全く同じであれば、先ほど補佐の方がおっしゃったように意味がないのですが、明らかにこういう申請をするというのは、県ベースと市町村ベースでは若干基準が違うということで、だからこそ、こういう要望が出ているわけですから、そういう基準の違いということを考えたときに、それが著しく妥当か妥当でないかということについて、やはりある程度調整する可能性を残すとか、何らかの代替措置を逆に提案していただいて、こういう条件なら認められると、それが特区をつくるときの非常に建設的な議論になるのですよね。おまえたちの言っていることは意味がないとか、おまえたちが損になるとかそういうことを言うのではなくて、やはり、できる限り市町村の要望に応える方向で、かつ弊害がないような道を考えていただきたいと、そういう趣旨なわけです。だから、代替措置も含めた具体的な弊害について、ちょっと特区室の方とまた後でご議論いただければいいと思うのですが、そういうことではいかがでしょうか。

○竹下課長 私どもとしては、それはおまえらが勝手にそう思っているだけだろうというお話がございましたけれども、具体的な規制が本当にあるのかどうかというところが必ずしも明らかじゃないわけですね。必ずしも明らかでないというのは、提案主体の方で具体的にどういう方を、どういう教育を担当させようと、その学校教育にどうしても必要だということで、こういう人を採用したいというお話があって提案がなされているということでなくて、したがいまして、どういう支障があるのか、規制があるのか私どもも把握していないというふうな状況でございます。
 それと、先ほども申しましたけれども、私どもとしては、だめよだめよということで考えているわけではございませんで、特別免許状の授与要件、欠格条項の話がございましたけれども、それを別の形で実現できるようなことを考えて、つまり、その提案の提案している内容を実現するためにどうすればいいかという観点から私どもとしては考えているわけでございまして、本件につきましても、そういうスタンスで考えているわけでありますけれども、具体にそういう話が聞けないというような状況なものですから、なかなか考えづらいというところはぜひ御理解をいただきたいと思います。

○福井専門委員 市町村と県で、都道府県レベルで具体的に支障が起きていないというお話があったのですけれども、具体的な支障かどうかはともかく、少なくとも市町村が申請するときのメリットでは次のようなものが想定できると思います。まさに特区の申請主体で学校教育関係というのは圧倒的に市町村からの申請が現実に多いわけです。ここに出ているのもほとんど市区町村レベルだと思いますけれども、市区町村のレベルで、まさに特区をぜひやってほしいという自治体が申請をして、その市区町村自身がある意味で自分の判断で免許状の付与にかかわることができるというのは、まさに内実をもともとよく理解している担当者や自治体なわけですから、それはそれで合理性があると思うのです。それから、理由の中にもあるように、例えば地域の専門家とかボランティアの方を採用したいというような話ですと、まさに地域ボランティアというのは地域住民と密着したことをやっていらっしゃる方なわけでしょうから、それは都道府県より圧倒的に市区町村の方がボランティア活動や地域のコミュニティ活動については理解も認識も深いわけです。とすると、まさにそういう形でよく知っている事情の、しかも当事者としてやる気がある方がこういった一種の特別免状についても、特区に関する限り特定の権限を行使するというのは、全く合理性のある場面だと思うのです。そういう場合について、まさに代替措置なり代償措置をきっちり講じ、審査基準なり公平の問題を考えた上で、それが担保できるような形であれば、むしろ、これは喜ばしいことだということになると思うのですけれども。

○竹下課長 先ほど申しましたけれども、この特別免許状というのは、その学校教育に特別必要があると。つまり、地域特性じゃないのですね。学校で特色ある教育をするために出すというふうな仕組みでございますので、まさに私立学校はそういうことで申請をして実際出ているわけでございます。

○福井専門委員 ですから、ある私立学校がまさに学校の所在する地域に非常に注目に値するボランティア活動とかNPO活動があったとして、そこの責任者の方とかを教員に採用したいということだってあり得るわけですよ。もちろん私立学校の特定のニーズかもしれませんが、そのニーズの根源がまさに地域社会に密接に関わるところで、ある領域の専門家だというような場合には、都道府県と市町村のどちらが判断するのが合理的でしょうかということになるわけです。それは一概に言えないです。学校の問題だから、広域レベルで判断すれば足りるのだということには、一律にはならないと思います。

○竹下課長 私が申し上げましたのは、その地域が狭い、あるいは広いということで判断が変わるというものではないですよと、学校教育をしていく上で、そういう人が非常に適切だというかどうかということなのですけれども、実際に具体の申請では、この人が学校ではこういうふうな特色ある教育をしようとしておりますと、この人はこういうふうな実力を兼ね備えている人で、その方が地域でこういうふうにボランティアを重ねてきている人です、こんなことができる人です、そういう推薦書があって、これはいい人だということで免許状が出ているわけでございまして、ですから、そういうことから言いますと、その人に近い市町村でないといけないということは必ずしもないだろうというふうに私どもは……。

○八代主査 市町村でなければいけないなんてことは言っていないわけで、市町村であってもいいのではないかということに過ぎないのですよね。ですから、おっしゃっているように都道府県で非常にうまくいっているなら、それでいいわけですね。そのうまくいっている都道府県に加えて、うまくいっている都道府県でも拾えないようなニーズに市町村でも広げるという、これはAorBじゃなくて、AとBと両方ということなのですね。だから、限界的に、これを足すことによってどんな弊害があるだろうかということです。
 ただ、残念ながら、もうちょっと大事な問題がありまして、これも時間が過ぎていますので、ぜひそういう市町村でなければいけないというようなことは決してこちらも言っておりませんので、市町村を加えることについて、どういう弊害があるかということを改めて特区室と協議していただいて、必要に応じてもう一度、次は局長レベルでまたお話をしたいと思いますので、必要があればですね。ぜひよろしくお願いします。
 それでは次に行きたいと思います。どうもわざわざありがとうございました。

【NPO法人による不登校児等対象以外の学校設置の容認】

○八代主査 どうもお待たせいたしました。引き続き文科省の中で、「NPO法人による不登校児等対象以外の学校設置の容認」及び「株式会社、NPO法人の設置する学校への私学助成の適用」という2つについて議論したいと思います。
 まず最初の点については、前回というか、これまでの特区でNPO法人による学校の設置というのが認められたわけですけれども、このときに、株式会社と違って1つ限定がありまして、それは不登校児を対象とするものに限ってNPO法人は認めるということですが、他方で、株式会社の方はそういう限定もないわけですから、なぜ不登校児だけでなければいけないのか、それ以外の面についてもNPOが学校をつくれるように是非すべきじではないかと、この点について最初に少し議論したいと思います。

○岩本大臣官房行政改革推進室長 それでは、官房の行政改革推進室長でございますけれども、私の方で御説明させていただきます。
 NPO法人を学校の設置主体とすることにつきましては、今お話がございましたように、最初に特区で導入します際に、学校教育の継続性とか安定性に不安があるというような議論もある中で、NPO法人をどのように設置主体として加えて特区で試みをしていくのかということを判断しました際に、いろんな立法上の議論といたしましては、一方で継続性・安定性に不安があるものの、実態上、NPOは現にフリースクールとか、そういった形で不登校児の受け入れをしているものがある。既存の学校教育ではなかなか十分でないような部分をかなりNPOが実績として担っている。あるいは、LD児とか、ADHD児といったものについても、そういう実績を持っているものがある。そういったものがあるということは、設置主体として今後認めていく上で懸念がある一方、そういったものを認めていくことの政策上の必要性があるのではないかと、そういう議論がございまして、現に実際NPOのいろんな提案がそのときもございましたけれども、その中でそれを選択していったという点がございます。
 今回いろんな提案が上がってきておるのでございますけれども、考え方としまして、やはり、継続性とか安全性という面で不安がありつつも、政策上きちんと試みていかなければいけないようなものがあるのであれば、そういうふうなものは当然位置づけていくということは論理的にあり得ると思っておりますけれども、私ども精査している中で、現に最初に立法化しましたときにもいろんな提案がございました。その中で判断していった問題でございまして、余り状況の変化がないというふうに考えている次第でございます。

○八代主査 今の御説明をもう一回確認しますと、もともと継続性・安定性の面で不安があるNPO法人には学校経営はふさわしくないと。しかし、現実にそういうニーズがある。不登校児童・生徒については、現行の学校法人が現にちゃんと対処していない。したがって、学校法人ができないものについてNPOがやることは認めてやろう。しかし、学校法人が現にやっていることについては、NPO法人を認める根拠がないというようなロジックかと思います。しかし、もともと不登校児については、継続性・安定性の不安があるにもかかわらず認めたと、それについて何らの弊害も、特にNPO法人の方が学校法人よりも経営の不安定性があるということは別に立証されていないわけですから、特にそれを関連付ける必要性はないのではないか。なぜNPOがもっといろいろ多様な、例えばスポーツであるとか、理数科教育であるとかいろんな形の提案が出ているわけで、広く認めることで、どういう弊害があるのかということを、そちらの方からむしろ立証していただく必要があるのではないかというふうに考えるわけですけど。
 それからもう一つは、株式会社を認めていただいたわけなのですが、なぜ株式会社の方は不登校児以外でもできて、NPOでやってはいけないのかという、この株式会社の対比についても御説明いただきたいと思います。

○岩本室長 株式会社につきましては、かなりいろいろ御議論もございました。それで提案の中でもいろいろなタイプのものがあり得るのではないかと。そのとき私どもの方も、例えば大学教育も含めてかなりいろいろ議論させていただきました。そこで、やはりそれなりの政策上の必要性、株式会社でないとできないようなものがかなりあるのではないかということもあって、そこのところは現にそういうものも加味しまして、そういうふうな特別なニーズということでとらえているわけでございます。
 ただ、NPOにつきましては、NPO制度というのは発足しましてからまだ日が浅い部分がございまして、現に私どもも政策的にいろいろ評価している中で、フリースクールとか、LD児とか、ADHD児の受け入れをしているNPOというのは現にあるわけでございます。そこは一刻も早く、そういったものの対策をとる必要がある部分もございまして、そういう実態に即して判断したと、そういうふうな次第でございます。

○八代主査 もう一度確認させていただきますが、今おっしゃっていることは、NPOでなければできない、例えば不登校児、あるいは株式会社でなければできない専門的な学校とか、それは認めても仕方がないけれども、学校法人でできることはすべて学校法人にやらせるべきだと、つまり学校法人とNPO法人との競争が望ましいという考え方はないということでよろしいわけですか。つまり学校法人でもできることをNPOとか株式会社にやるというのは望ましくないと、そういうお考えであるというふうに確認してよろしいですか。

○岩本室長 特区で試みる際にその部分をどうするのかと、つまり私ども、もともと議論があって、すべからく、すぱっと全部学校法人以外の株式会社とかNPOとか、そういったものを設置主体として認めるという議論がある中で、まずは特区で試みをしていく必要があるのではないかというような……。

○八代主査 もちろん全国の話じゃなくて、特区でまさにそういうことを、株式会社、NPOで学校法人がやっていることと重なるものについても、やってはなぜいけないのかということなのですね。

○岩本室長 もちろん学校法人が全然全くできないということではないのだと思いますけれども、マクロ的にいって、学校法人であんまりそういう取組が現に具体的にできていないとか。例えば、不登校児を対象とした教育をするといっても、そういうふうに対応していただいている学校法人もあるかもしれません。そういうことができるかもしれません。ただ、現に公立学校もそうですし、学校法人もそうですし、十分でないというものがあって、そういったものに対して応えていくとするならば、当然、1条学校で対応していただきたいという部分があるのですけれども、なかなか現状の学校教育ではあんまりうまくいっていないという部分があるので、特に必要性が高いというように判断したということでございます。

○久保高等教育局私学行政課長 今の話は、第三次提案のとき御説明したことと同じなのですけれども、今、八代さんがおっしゃっているのは一般論で制度設計したわけじゃなくて、特区で出てきたときに、いろいろ実情を見て、我々はその競争関係を排除するとかというつもりではなく、特区で出てきた提案はどうやったら救済できるかという観点で、その団体からも話を聞いて、結局そういう意味では公的資金が欲しいという考えをお持ちのNPO法人が多かったと。ですから、そもそも学校法人になれば財政的税制上も優遇……。

○八代主査 公的資金、私的助成の話は別途議論しています。

○久保課長 だから、そこの仕切りを取り外すのではなくて、学校法人になりやすくもしているわけです。別にNPOで学校経営をできるようにだけ認めたわけではなくて、学校法人もなりやすく、土地、建物も、借用でもNPOのままで学校法人になれるようにしたわけですから、現にその方向でもいける……。

○八代主査 関係ない意見なので、ちょっと議論を混乱させるのでやめていただきたいのですけれども。

○久保課長 そのままで、なぜそうなるかというと、NPO法人は、基本的にNPO団体は学校法人になりたい、だから、そういうふうに動いておられる……。

○八代主査 それは余計な話で、そういう学校法人になりたいNPOもあるかもしれませんけれども、別に考えていないNPOもあるわけですから、なぜそう学校法人至上主義なのですか。学校法人ができないことしかNPOにやらせないのではなくて、学校法人ができることだってNPOにやらせて、対等な競争をやらすという考え方がなぜないかということです。

○久保課長 そのようなことはありません。制度的にノーコントロール、コントロールに服したくないから税制上、財政上の措置も受けなくていい、自力でやっていきますという方がつくれるように、NPOによる学校経営の道も開いたわけなのです。

○福井専門委員 もう一回議論をもとに戻しますが、各省回答というか、文科省の文書の回答の中にNPO法人については、法人としての継続性・安定性に不安があるとあります。ここがさっきから一貫して論じられていることなのですが、だんだんずれるので、もう一回もとに戻しますが、何でNPO法人は継続性・安定性に不安があって、何で株式会社には不安がないのですか。

○岩本室長 特に株式会社に不安がないというふうに思っているわけではございません。それは度合いの問題でございまして、当然、株式会社にも不安があるからこそ、すぐ設置主体として認められていないという部分があって特区で試みをしていこうということでございまして……。

○福井専門委員 そういう話じゃなくて、ここでの論点は、特区の中で株式会社については、不登校児以外も含めて認められていて、NPO法人は不登校児等だけが認められていることの理由でしょう。その2つの違いを説明される根拠が継続性・安定性にNPO法人は不安があるというのだから、その限りにおいて何が違うのか具体的に教えていただけませんか。

○岩本室長 私どもはいろいろ制度設計した際に、株式会社については、先ほど学校法人至上主義という話がございましたけれども、基本的に株式会社の場合は、なかなか学校法人の方に転換するのは難しいのではないかと。

○福井専門委員 そうじゃなくて、NPOと株式会社の違いを教えてくださいというのが質問です。

○岩本室長 1つは、NPOは非営利類型であると、それから株式会社は営利類型である。

○福井専門委員 非営利類型の方が継続性・安定性に不安があるということは、学校法人も同じではないのですか。

○岩本室長 NPO法人が非営利類型であるから、継続性・安定性がないということではなくて……。

○福井専門委員 そこを聞いているのだから、その理由を答えてくださいよ。お書きになっておられるのは、NPO法人は、法人としての継続性・安定性に不安があると書かれているのです。まさに株式会社の特区の場合と比べて、その論拠を端的に答えてください、関係ないことをお答えにならずに。

○岩本室長 必ずしも、特区の回答のときに書いておりますのは、株式会社と比べてどうだということではないのです。一般的にNPO法人については、継続性・安定性……。

○福井専門委員 比べなければ差別化の根拠なんか出てこないじゃないですか。株式会社ができていることをNPOにやらせないことの根拠として、これは回答されているわけですよ。だったら、つじつまが合うように、その根拠を具体的に教えていただかないと。

○岩本室長 必ずしも、そういう差別化の根拠のために、そういうことを裏付けるために書いたわけではないのですね。

○福井専門委員 これを撤回されるのですね。この回答は間違いだったということですか。

○岩本室長 そうではなくて、株式会社の方は、やはり相当ないろんなニーズがあるわけですね。

○福井専門委員 ニーズじゃなくて、これは弊害でしょう。継続性・安定性に不安がある方の程度の高いのがNPOで、株式会社はそうではないということを自ら宣言されているのだから、宣言していることの論拠ぐらい示せなくてどうするのですか。

○岩本室長 それで、答えになっているかあれなのですが、私どもの考え方としては、一方で継続性・安定性に不安があるけれども、それなりのニーズがあれば特区として試みていこうというような……。

○福井専門委員 分けて議論してください。ニーズじゃなくて、弊害のことだけお聞きしているので、そこで違いがあるのかないのか端的にお答えください。

○八代主査 これはなぜ株式会社で認めたことをNPOでは認められないのかという非常にシンプルな疑問なのですね。つまり、不登校という制約がなぜNPO法人だけにあって株式会社にないのか。その論拠を教えていただきたいということなのです。

○奥谷委員 それと、ここにも書いてあるように、要するに実態状況についての評価は必要である、実態状況の評価は経ないまま、対象範囲を広げるわけにいかないと、こう言っていますけれども、これから始まることで実態評価云々なんていうことは出てこないわけでしょう。

○岩本室長 先生方がいろいろな指摘をされても、一度にはお答えしかねます。

○奥谷委員 言っていることはすべて同じことだと思うのですよ。だから、弊害も含めてNPO法人がだめで、株式会社がいいとかというようなことも含めて、その弊害が何であるかということをおわかりにならないで、ただ書いているだけではないのですか。

○岩本室長 どちらの質問に先にお答え申し上げましょうか。

○福井専門委員 同じことを聞いているのですよ。

○八代主査 福井専門委員の方から先に。

○岩本室長 今、一応先ほど継続性・安定性というお話に絞ったことがございましたので、それにつきましては、NPO法人についても、株式会社についても、具体的に法人格を取得するという点においては、どちらも、特に簡便になれるという意味では同じだと思うのですけれども、ただ、株式会社は経営的には、株式を発行したりとか、ガバナンスの点でも、それなりの基盤というのはあるのではないか、そういう議論をしてきたのではないかと思うのですね。ただ、NPOについては、やっぱり実態から見てみますと、極めて簡便に法人格を取得し、かつ規制もほとんどない状態なのですね。

○福井専門委員 株式会社に対する規制とNPOに対する規制と法令の根拠に即して具体的に幾つか挙げていただけませんか、今。わかっておっしゃっているのだったら挙げられるはずです。具体例を挙げてください。

○岩本室長 私は規制の違いを申し上げているわけではありません。したがって手元に条文で整理してきておりません。

○福井専門委員 法文じゃなくても、具体例を一つも挙げられないのに、何でごまかそうというような、そういういい加減な発言されるのですか。前提は法令なのだから、根拠のあることだけ発言してください。

○久保課長 増資ができるとかいろいろあるでしょう。

○福井専門委員 今、NPOは規制がいい加減で、株式会社はガバナンスがしっかりしているとおっしゃったから、だったら、それを証する具体的な例を幾つかでも挙げてくださいということです。

○久保課長 取締役会を置くとか、情報公開とか……。

○福井専門委員 発言された御本人にお聞きしたいですね、何か考えがあっておっしゃったのでしょうから。

○久保課長 文科省で我々は同じなのですよ。

○福井専門委員 発言者がわかって言っておられないということは、こういう公開の場の公式見解を述べる場として極めて不適切じゃないでしょうか。事前に勉強もされていないし、思いつきのことを、法令の根拠もないのに公開ヒアリングの場でおっしゃるということ自体が私は非常に不思議に思います。

○久保課長 そんなことないです。大体、今おっしゃっているようなことは、去年の6月の法案で整理したとき、あれは特区室というか、内閣として出されたわけですが、当然御存じの、なぜそういうふうに分けたかと了解して出されたにもかかわらず、今何でまたそういうことを蒸し返しされるのですか。そのときから全然状況が変っていないわけでしょう。それをそもそも、あのように株式会社は限定なしで出して、NPO法人については、基本的に学校法人になるのだという前提のもとで……。

○八代主査 そんなことは合意した覚えはありませんよ。NPO法人が学校法人なることが原則などと……。

○久保課長 了解しておられるじゃないですか。

○八代主査 そういうことは了解していません。

○久保課長 経緯は知っておられる。

○福井専門委員 当方の答申なり報告書でそんなことを了解していることは一度もありません。公開の場でもそうです。

○久保課長 法律として出されて、内閣として法律として出しているわけですから。そのときと状況が変っていないわけです。そのときも、6月のときも、いろいろな話が出ていました。株式会社、どうやってもそのまま学校法人になれない……。

○福井専門委員 出た法案はずっと維持しないといけないというドグマはないのです。規制改革というのは、今ある法案の問題点を改革する話ですから、合理性がない規制を改めるというだけです。だから、合理性があるなら教えていただきたいというのが本日のテーマです。

○久保課長 そのときから、同じような要望も出て、何ら状況も変わっていなくて……。

○福井専門委員 今ある法案は説明の根拠にはなりません。

○久保課長 いや、そんなことはないでしょう。状況も変ってなくて、あなた方だって……。

○福井専門委員 要望が出ているのだから状況は変っているじゃないですか。

○久保課長 同じような要望が出ていて、ということは、6月に整理したのと変っていないわけです。現にNPOのままつくりたいという例は、申請は出てきていないのではないですか。

○福井専門委員 そういう手続論じゃなくて、中身の話を教えてください。

○久保課長 実態を踏まえて申し上げているわけです。

○福井専門委員 NPO法人の善し悪しについて議論しているのだから、株式会社はよくて、NPOがだめだということの中身を議論するのが建設的だと思います。

○久保課長 それは実態を踏まえてやるべきで、そういう関連論だけで言っても仕方がないのではないですか。

○福井専門委員 この回答自体が観念論じゃないですか。法人としての継続性・安定性に不安があると、何度聞いても具体的な答えができないような、そういう抽象論を1行書いておられるだけだから、それを説明するのが先決でしょう。

○久保課長 1行? この再回答を見てください。十数行、これを見てわかりませんか。

○福井専門委員 弊害について、この1行以外にどこに書いてあるのですか。

○久保課長 弊害? どれを言っているのか。

○八代主査 ともかくも特区の提案というのは、年に2回やるということになっているので、1回決めたらもう後は交渉の余地がないということであれば、そういう担当の課長はお引き取りいただいて、次のもっと上のレベルで議論したいと思います。

○久保課長 全然そんなことを言っていません。そういう気持ちもないです。我々はどの省庁よりも最も特区を実現すべく制度設計したと思っています。

○八代主査 それはありがとうございます。

○久保課長 だから、学校法人になるべく、全国でいろいろやっておられるところもあると……。

○八代主査 学校法人になるべきなんてことは我々は全く理解していないので、NPOであれ株式会社あれ……。

○久保課長 NPOのままでつくりたいという話があれば、それはそれでもいいのです。現に株式会社のまま大学つくれという申請が上がってきますよね。今、申請しています。NPOで学校法人をつくりたいという動きもあります。

○八代主査 それを言っているのです。

○久保課長 NPOのまま学校をつくりたいという申請はない。

○八代主査 どういう意味ですか、NPO法人による不登校児対象以外の学校設置の要望というのが今出てきているわけですよ。

○久保課長 という特区申請はないという意味ですよ。

○八代主査 これは特区申請ではないのですか。

○久保課長 提案です。

○片桐特区推進室企画官 今言われたのは、特区認定申請がまだ出てきていないということを言っているのかと思います。

○八代主査 それは何の根拠もないでしょう。これは特区の申請を今議論しているので、認定とはまた別な話でしょう。また、NPO法人は不登校しかだめだという制限があるということも、まさにいろんな認定が出てこないということとまた関連するわけで、認定と申請というのは別に切り離して議論していただかないと意味がないと思います。認定というのは時間がかかるわけでして、それを根拠にして申請の議論しないというのは全然ルール違反だと思いますけれども、どちらにしても、そういうお答えしか出ないのであれば、ちょっとこれは議論にならないので、別途上の方とまた御相談させていただきます。

○岩本室長 いずれにしましても、この分野の拡大の問題につきましては、具体の提案に即して精査する必要があるというふうに考えておりまして、今、また特区室の方とそこの部分を議論しておりますので。

○八代主査 具体的な提案じゃないのですか。

○岩本室長 具体的なここに今出てきている提案を踏まえて、まさしく特区室でも議論しているところでございます。冒頭に私が申し上げましたように、不登校児童・生徒とか、そういったものだけなのか、具体的提案が上がってきているわけでございますので、それを見て精査する必要があります。

○福井専門委員 そうじゃくなくて、もうちょっと出された回答に責任を持っていただけませんか。何度も言うように、ニーズじゃなくて、我々はさっきから弊害の話をしているのです。弊害があるなら具体的にそこは解消しないといけない。特区であれば、例えば代替措置や代償措置を考えないといけないという当たり前のことを議論しているのですよ。そこをよく御認識いただきたいと思います。

○八代主査 とにかく、そちらからいただいているペーパーに基づいて議論しているので、そこについて、今、福井委員も言われた点について十分なお答えができないのであれば、できれば、これについてより明確なお答えをいただいた上でもう一度したいと思いますので、今の福井委員の質問に対してまず文書で回答いただいて、それに従ってもう一度上の方とまた公開討論をやりたいと思いますので。

【株式会社、NPO法人の設置する学校への私学助成の適用】

○八代主査次に、先ほど課長の方からおっしゃった私学助成の話なのですが、学校設置会社及び学校設置非営利法人が設置する学校への私学助成適用の拡大ということ、これは既に特区において学校教育法第1条の学校としてNPOとか株式会社を認めていただいたのですが、私学法人には与えられる私学助成金というものが新たな特区で認められた非営利法人等については与えられないという不公平があるわけで、これについてなぜそうなのかということについて、こういう学校教育法第1条の学校に対してなぜこういう差別的なことが行われるのかということについて、改めて簡単に御説明いただきたいと思います。

○栗山私学助成課長 先ほどの範囲の拡大のところでも話が出ましたけれども、そもそもこの提案に対しては、株式会社、NPO法人が学校をつくりたいといったときに、今までよりもそれをやりやすくするということで、まず学校法人をつくりやすくするということで、そうすると補助ももらえて、同じ条件で競争してどういう効果が出るかというのをやってみようということで始めたというふうに考えております。
 それでもなお、やはり補助ということじゃなくて、直接学校を設置したいのだというニーズにも応じることができるようにしたということです。その条件が違うといいますけれども、そもそも今でも設置主体、あるいは学校種によって補助金がもらえたり、もらえなかったりするわけですから、そこは全く同じ条件じゃないとおかしいというわけでもないと思いますし……。

○八代主査 根拠は明確に示していただかないといけないですね。今おっしゃったように、国公立と私学では助成の仕方が違うという意味ですね、設置主体によりということは。

○栗山課長 それも違いますし、例えば専修学校については、学校法人でも補助金をもらえません。

○八代主査 専修学校と学校教育法第1条の学校とは教育内容が違うわけですから、同じ学校教育法第1条の学校で、しかも同じ私学の間でなぜ経営主体の違いによって、そういう憲法における法の下の平等に反するようなことが行われているのかということですね、学生の立場から見て。

○栗山課長 同じ私学でという……。

○八代主査 学校教育法第1条の私学においてということです。

○栗山課長 法律でそういうふうに読むとしたわけですけれども、それは特区においての話であって、そもそも学校法人でないところがつくる学校を一般的に私学と呼ぶかどうかというのは別に議論があると思いますけれども。

○八代主査 私学でなかったら何なのですか。国公立なのですか。

○栗山課長 国公立ではないですけれども、それはちょっと議論しても仕方ないですけれども、要するに学校法人でないところがつくった、つくったというか、本当はできないのですけれども、制度ができたときに現に残っていたところです。そういうところに対しては原則としては補助は出ないという仕組みになっております。

○八代主査 今、私学法ができたときに残っていた話をしているのじゃなくて、新たに特区で認められた学校について言っているわけですから、ちょっと今の答えは見当違いだと思います。ですから、学校法人ということにものすごくこだわっておられて、それであれば補助をすると。しかし同じ教育内容であるけれども、たまたま学校法人という経営形態でないNPOとか、株式会社に対しては私学助成をしないという根拠を聞いているわけですね。法政策上の。

○栗山課長 すごくこだわっていると言いますけれども、そもそも特区の趣旨というのはどういうことかと考えたら、規制を払って民間の参入をより促すということだと思うのですけれども、それは、そもそも学校法人制度というのはそういうことで始まったわけで、国とか地方公共団体だけが独占するのではなくて、広く民間のいろんな力を活用して教育の質向上を図っていくということですが、それでも規制が多いということですから、まずはその規制を緩やかにするというのが第一段階でして、それでも、なお不十分だというか、あるいは独自の考え方をもって別途の主体でもってやりたいというところについても道を開いたということですから、それでまた、さらにその補助金をもらうために、学校法人じゃないところを絶対つくらなくちゃいけないとかそういう……。

○八代主査 絶対つくらなきゃいけないなんて言っていないわけですから、そういう曲解しないでいただきたいので、今おっしゃっている言葉自体が学校法人至上主義で、学校法人以外の私学はないという考え方なわけですね。だから、特区でまさにその考え方に挑戦しているわけで、学校法人の私学と、学校法人以外の私学が対等の場で競争することで消費者が選択できる場を開こうというのが規制改革の考え方なわけですね。だから、学校法人以外にも認めてやったからそれでいいじゃないか、私学助成の差があるのは当たり前だという根拠を聞きたいわけです。なぜ私立学校として認めたにもかかわらず、なぜ経営形態がNPOや株式会社であるということだけで、学校法人には出している私学助成がここには出せないのかという根拠を聞いているわけですね。改めて補助金をよこせと言っているのではなくて、もともと同じ学校教育法第1条の学校であれば、当然イコールフィティングでなければおかしいのではないですか、学生の立場から見て。

○栗山課長 繰り返しになるのですけれども、要するに1条校だったら、今でもすべてもらえるという仕組みではありませんから、それは同じ1条校であれば……。

○福井専門委員 理由ですよね。もちろん、すべてというのではないとしたら何か合理的な理由が要るはずで、特区で認められた株式会社等は何でだめで、学校法人なら何で一律にオーケーになるのかという、その違いです。

○栗山課長 要するに、今、1条校でももらえるところと、もらえないというのもおかしいという前提のご発言……。

○福井専門委員 そんなことは言っていません。要するに今問題にしているのは、特区で認められた株式会社等と学校法人とのイコールフィティングです。どちらもある意味では公共性があるということで、政府の方針のもとに認められた質の高い学校だという前提なはずですよ。なのに、なぜ一方は一切私学助成は出しませんという非常に不平等な措置にさらされなければいけないのかという合理性をお聞きしたいのです。

○栗山課長 それは先程話したように、現行の学校設置会社とかは抜きにして、条件が違っているということ自体がおかしいというのであれば、それと同様の疑問を呈されたということはわかりますけれども、現行でもあるわけですから、そういう疑問が生じるわけがないとかそういうことを言っているわけじゃなくて、現行でも設置主体とか、学校種によって違うわけですから、そこは必ずしも……。

○八代主査 根拠を示す義務はあるのではないですか。

○福井専門委員 今の制度が合理的なものであって、合理的な今の制度の中にある1条校の中での違いと同等のものに、今回の株式会社学校と学校法人学校とは匹敵するのだ、相当するのだということが論証できない限り、今あるからいいじゃないかという乱暴な議論は到底なり立ちません。

○栗山課長 今あるのではないかと、要するに……。

○福井専門委員 だから、この件について説明できないのですか、結局。合理性がないからほかのことを持ち出しておられるわけですか。

○栗山課長 同等な条件をしたいという要望に対しては、設置条件を緩和して学校法人になりやすくしていると。

○福井専門委員 全く質問なり要望に答えていないので、そんなことをここで議論するつもりはないのです。なぜ別でなければいけないのかと、学校法人になればいいじゃないか、という議論は別次元です。これはNPO法人自身、あるいは株式会社学校自身が私学助成の対象にしてほしいと言っているのだから、正面切って、できないならできないで、まともな合理的な論拠をお答えいただく義務があると思います。

○栗山課長 要望主体の要望というのは、そもそもそういうことだというふうに思っています。要するに補助がもらいたいということであれば、今までの制度を緩和してやりやすくしたということですから、要するに形を変えた……。

○福井専門委員 株式会社の学校では、学校法人にはなりたくないけれども、平等に補助を与えるべきだと現に主張しているところがいますし、規制改革会議もその主張が正当だと思うからこういう議論をしているのです。

○栗山課長 今、そもそもの対応について言いましたけれども、憲法論で憲法89条の問題さえクリアしていないわけですから、それは今まで議論していて、十分に認識がかみ合っていないようですけれども、そういった問題自体まだ解決していないという認識は当然あると思います。

○福井専門委員 憲法論は、ある場では法制局が判断するから、自分の省では答えられないとおっしゃったり、憲法論が片づいてないからとまだこの場では議論できないとおっしゃったりされる。憲法論はとりあえずさておいていいです、棚上げにするとして、もう既に何度も議論していますから。実質的な論拠なり、また別の意味での憲法論、憲法14条の平等原則なり、法の下の平等ということに照らして問題はないのかということについて実質的にどうお答えになるのですか。

○久保課長 憲法上問題があるというのは、実質的な問題はないということで片づけられる話ではないと思いますけれども。

○福井専門委員 その件については別途議論しています。別の論点ですから。ほかにあるのだったら教えてくださいと申し上げているのです。

○八代主査 制約は憲法論だけというふうに理解してよろしいのですか。

○福井専門委員 要するに内閣法制局が憲法89条に違反しないという見解さえ出せば、じゃ、ぜひ出したい、こういうふうに理解していいですか。

○久保課長 少なくとも、そこはクリアされていないのに……。

○福井専門委員 少なくともじゃなくて、あるのだったら今ちゃんとフェアに全部論拠を提示してください。それについて議論しましょう。ごまかさないでいただきたいと思いますが。

○久保課長 我々の主張は大体今まで申し上げたところですけれども。

○八代主査 公開討論しているのは、昔言ったからいいという話じゃなくて、何回でもそちらが自信を持って言えることであれば、公開の場で言っていただきたいということなのですよね。だから、今、こちらはできるだけ論点をクリアにして、憲法の問題があるという、そちらの主張はよくわかっております。こちらはないと思っておりますが。だから、それだけならば、それだけと言っていただければ次は憲法の問題になってきますから、それ以外にあるかどうか、イエスかノーかで答えていただきたいというだけなのですけれども、その答えはいただけませんか。

○栗山課長 それ以外については、冒頭から申し上げてきたようなことがあります。

○八代主査 冒頭からいただいているのは、学校法人になれば、補助金を出すからいいじゃないかというお答えしかないのですけれども、ですから、こちらは学校法人にならなければ、なぜ私学助成金が出ないのかということなのですよね。補助金を出す法律と学校法人の法律というのは、法律も違うわけでしょう。

○栗山課長 違いますけれども、私立学校法の中に補助規定がございます。

○八代主査 ということは? 私立学校法を変えて、その中に、一方、NPOも株式会社も入れると言えば、その問題は解決できるわけですよね。

○久保課長 いやいや、そうしなくてはならなければそうなのですけれども、それは……。

○八代主査 規制改革の要望というのは法律を変える要望ですから。

○福井専門委員 政策判断として何かまずいと、そういう政策をとるべきでないという何か非常に気になっている具体的で説得的な論拠があるなら、この場でおっしゃっていただくのが筋じゃないですか。さっきからお聞きしていると、1つも見当たらないのです。

○久保課長 基本的には憲法論です。

○八代主査 基本的じゃなくて、憲法論だけですかということを聞いているのですね。

○久保課長 あとは政策論は、今申し上げたように若干あるかもしれませんが、まず入り口のところで、これは6月に特区法を改正して、制度設計した段階で公的財政援助が欲しいという団体の要望をかなえるためには学校法人になりやすくするしかない。それは憲法上の問題があるから、そういう制度設計をしたので、政策判断をどうするかはともかく、その前提としてそれをクリアしなければ何ともできない。

○八代主査 ですから、憲法論議はまた法制局とやりますけれども、それ以外の若干の政策的問題ということを今聞いているわけなのですよね。それについてはお答えはまだいただいていないと思いますけど。ちょっと今日、時間もかなりオーバーしているので、憲法論議を含めて別の機会にぜひやりたいと思いますが、何か整理しないと議論が進まないのですね。憲法論議だけなのか、だけでないかというのが未だにクリアになっていませんので、少なくとも憲法論議ということに盾にして、そういう私学助成というのは、学校法人にならなければだめなのだということであれば、その根拠は未だに不明であるということで、ちょっと今日は時間をかなりオーバーしているので、また改めてお願いしたいと思います。特区室は特にないですか。
 いいですか。どうもありがとうございました。


内閣府 総合規制改革会議