はじめに

我が国は、1990年代以降、長期経済停滞に陥っており、雇用状況は傾向的に悪化しているが、他方で、財政・金融政策の余地は極めて小さいという深刻な状況にある。この背後には、1980年代までの高い経済成長の時代に確立した様々な社会制度・慣行が、その後大きく変化した経済社会環境に、もはや対応でき難いものとなっていることが大きな要因となっている。

こうした状況を打開するための構造改革の大きな柱のひとつとして、民間経済の活性化を図る手段である「規制改革」に関する期待が今まで以上に高まってきている。「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)にあるように、経済活性化のポイントは、民間の事業拡大の機会を阻んでいる様々な規制の改革を通じて雇用機会の拡大を図るとともに、情報公開や事業の第三者評価制度の確立により、市場競争を促進することで、消費者・利用者の多様な選択肢が保障された豊かな経済社会を構築することである。当面の短期的な経済環境は徐々に改善の兆しを見せてはいるものの、これを中長期的に持続可能な経済成長につなげていくためには、政府として、本格的な規制改革を推進することが何よりも重要である。

当会議では、昨年度は、立ち遅れていた医療、福祉、人材などの「生活者向けサービス分野」(いわゆる「社会的規制分野」)の規制改革に重点的に取り組んだが、今年度は、こうした現下の厳しい経済情勢にかんがみ、「経済の活性化」を統一テーマとして審議を行うこととした。

具体的には、以下の5つの「分野横断的テーマ」について、それぞれのテーマにかかわる制度・施策を分野横断的に比較検討することにより、一層の規制改革を推進するための議論を進めた。本報告は、こうした議論の成果を、「経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革」として、中間的にとりまとめたものである。

まず、第1章では、新しい事業の創出をテーマとし、起業のハードルを下げ、ヒト・モノ・カネ等の資源が成長する企業や分野に最適配分されるよう、資金供給に関するインフラ整備、起業や事業再編を促進・支援するためのシステム整備、意欲ある人材を育成・供給する仕組みの整備等に係る具体的施策を取り上げている。

第2章では、民間の参入拡大による官製市場(公的関与の強い市場及び公共サービス分野)の見直しをテーマとし、株式会社の参入・拡大、官民の役割分担の再構築などを検討し、市場参入の制約された分野において多様な主体の参入を実現し、また、公共サービスの提供について民営化、民間委託、PFI等により多様な主体・手法を活用することを求めている。

第3章では、経済活性化に資するためのビジネス・生活インフラの整備をテーマとし、公益事業分野における市場参入の促進・競争ルールの整備や競争監視体制の構築、司法サービスに関するインフラ整備、都心高度化に係る施策を取り上げている。

第4章では、事後チェックルールの整備をテーマとしている。事前規制型行政から事後チェック型行政への転換が唱えられる中で、これまでの検討は事前規制の緩和・撤廃に重点が置かれてきたが、今般、事後チェックルールの整備の在り方について検討を行うこととし、特に情報公開、第三者評価、苦情・紛争処理等について取り上げている。

第5章では、規制改革特区という新たな制度の実現をテーマとし、その基本理念と、制度設計の具体的方向、推進方法、構想例等を提示している。これまでの全国一律の実施ではなく、まず特定地域に限定した規制改革を実施し、その具体的な効果を明らかにすることにより、それを全国的な規制改革につなげ、我が国全体の経済活性化を図ろうとするものである。

本中間とりまとめに当たっては、上記のテーマごとに設けた5つのWGを計52回開催し、関係団体・有識者からのヒアリングや省庁との折衝などを集中的に行ったが、基本的な合意に至らなかった事項もある。そのようなものについては、当会議の問題意識や考え方を明示し具体的改革施策をとりまとめた本文とは別に、所管府省等の意見を添付し、相違点を明らかにすることとした。

当会議では、今後、本中間とりまとめについて更に議論を深めるとともに、新たな検討課題も取り上げ、年内の「第2次答申」とりまとめに向けて積極的な調査審議を進める考えである。当会議の活動に対する国民及び関係各界の御支援と御協力を改めてお願いしたい。


内閣府 総合規制改革会議