第4章 事後チェックルールの整備

1.事後チェックを整備する意義等

規制改革の基本理念は、「事前規制」から「事後監視・監督」(以下「事後チェック」という。)への移行を図ることにある。当会議では、昨年来事前規制の緩和・撤廃に多くの議論を重ねてきたが、事後チェックについては時間的制約もあり、これまで必ずしも十分な検討を加えてきたわけではない。こうした経緯にかんがみ、今般事後チェックの在り方を検討し、その基本的方向性と具体的施策とを提言することとした。

事後チェックルールの整備を図ることの意義としては以下の2点が挙げられる。

第一に、事前規制の緩和を促進する効果を有するということである。多くの社会的規制は、消費者や労働者が被るであろう何らかのリスクを事前に抑止することを基本的な目的の一つとしている。事前規制の緩和に伴ってリスクが発生することについての懸念を払拭し、規制緩和を推進するためには、事前規制の存在根拠となっているリスクを何らか別の手段で軽減するか、あるいはそれに対して事後的に対処し得る方策の明確化等を図ることが不可欠であり、その役割を事後チェックルールの整備が担い得るということである。

第二に、事前規制の緩和に伴う消費者利益の増進をより確実なものにとするということである。規制緩和により財・サービスの選択肢が拡大するが、消費者が適切に選択を行えるためには、生産者と消費者との間に存在する情報の非対称性を是正することが必要である。このため、事後チェックの中でも情報公開は特に重要な柱となる。

事前規制及び事後チェックの在り方については、それぞれの強弱の組み合わせにより4つの類型に大別することができる(別表 [PDF形式] 参照)。我が国においては、多くの分野が事前規制が強く事後チェックはそれほど厳格でない類型に属していると言われている(別表タイプB)が、これらについては事後チェックルールを整備することを通じて事前規制を緩和する方向(別表タイプD)にもっていくことを基本とすべきである。また、事前規制、事後チェックの双方を緩和しても差し支えないと考えられるものについては、その推進を図るべき(別表タイプC)である。

なお、直接的に人の生命・安全にかかわる問題(食品安全、医薬品安全、労働安全衛生等)等については、事前規制を維持するとともに事後規制を適切に行うべきケースも存在する(別表タイプA)。

また、事後チェックを担う主体については、行政、民間(NPO等)、司法等が挙げられるが、できる限り民間の自主的取組を尊重しつつ、それぞれの特性をいかした適切な役割分担の下、事後チェックルールの整備が図られることが必要である。

当会議では、以上を念頭に置きつつ、事後チェックのうち情報公開、第三者評価、苦情・紛争処理を重点検討課題として取り上げ、以下に提言するものである。


2.情報公開

(1)事後チェックにおける情報公開の意義

適切な情報供給があって初めて消費者・利用者は適切な選択肢を判断可能になるものであり、情報公開は、消費者・利用者の的確な選択及びその選択の自由の裏付けとなる自己責任原則の確立に不可欠な要素である。また、事後的な監視が効果的に行われることで、市場規律が維持強化され、消費者・利用者が受けるサービスの質の向上がもたらされるが、情報公開はこの点においても重要な役割を担っている。

これらの情報公開の機能が十全に発揮されるためには、(イ)情報ができる限り広く提供されること(量的側面)、(ロ)提供される情報が有用であり、その真実性が確保されていること(質的側面)、(ハ)消費者・利用者が欲しい情報を容易に入手できること(簡便性)が必要となる。これらは基本的には以下のような取組により確保されるべきであり、情報公開の重要性にかんがみれば、各分野を通じて例外なく積極的に推進されるべきである。

なお、広く一般を対象とする場合における上記のような役割の他に、例えば契約の締結前のように個人がサービスを受けるに当たって、当人の求めに応じて必要な情報が提供されることも、消費者・利用者保護、トラブル防止等の観点から重要である。

(2)情報公開の内容

サービス内容・手続に関する情報、サービスの提供主体に関する情報(組織・財務・運営情報)、評価に関する情報(自己評価情報及び第三者による評価情報、事故情報・クレーム情報を含む。)のそれぞれが公開されることが原則となるべきである。提供される財・サービスの内容・性格により公開されるべき具体的情報は異なるが、例えば、施設サービスを受ける場合には、施設設備の経営主体の基礎的な財務・運営情報(収入・支出等経営状況を示すデータ、施設設備の性能を示すデータ、利用者数、職員1人当たりのサービス対象者数等)が明らかにされるべきである。また、サービスを受けた本人に対しては、サービスの結果について本人の求めに応じて必要な情報(医療における診療情報、試験の点数等)が開示される具体的仕組みについて、検討が進められるべきである。

さらに、行政機関や苦情及び紛争の再発並びに未然防止の役割を期待される苦情・紛争処理機関が有する事故情報やクレーム情報については、事業者に不利益を及ぼす可能性を勘案しつつ、同種の事故等の再発・未然防止の観点から、必要な場合には積極的に公表するよう検討すべきである。特に罰則が課されるような重大な違反事例は、公益に資する観点から、個人情報保護等の合理的な理由がない限り、基本的に公開することを検討すべきである。

なお、提供情報の真実性については、第三者評価の項でも指摘しているように、第三者評価の整備・普及を通じて事業者の提供情報と評価情報を照合することが可能となり、市場による評価・淘汰等と相まって、その確保が図られていくと考えられる。

(3)情報公開の方法

情報の公開は、サービスの提供主体である事業者自らが行うことが基本であり、能動的で積極的な取組が求められる。他方、行政機関、第三者評価機関等による体系的な情報の提供は、消費者・利用者が複数の選択肢を比較し判断を可能とすることから、これらの機関からの情報提供も積極的に推進されるべきである。

主要な情報提供手段としては、最近の情報化の急速な進展も踏まえ、時間、場所を問わず多人数のアクセスが可能な特徴から、ホームページにより提供情報の普及を図ることが最も有効である。なお、インターネットを身近で閲覧できない者のために、地方の消費者センター等の情報提供機関の開放・運用充実を図ることが必要である。

さらに、ホームページに掲載されていない情報の入手方法として、個別の公開要請にも対応することが必要であり、事業者や関係機関はそれぞれにおいて応対窓口、応対手続等を整備するとともに、合理的な理由のない限り、求めに応じて広く情報を提供することが求められる。

また、消費者・利用者にとっては、知りたい情報の所在を簡易迅速に検索できることが重要であり、行政機関においては、所管するサービスごとに事業者情報を集めた情報源情報を整備すべきである。

(4)各分野における情報公開の推進等

当会議で検討した社会的規制分野での情報公開の考え方及び会計基準の透明性確保については以下のとおりであり、関係省はこれに沿って指摘内容の具体的推進を図るべきである。

また、規制改革推進3か年計画(改定)(平成14年3月29日閣議決定)において指摘している情報公開関連項目については、事後チェック型行政を推進する観点から、措置又は結論を出すこととされているものは前倒しに努め、逐次実施とされているものは年次別の具体的な目標を明示して、その速やかな実施を図るべきである。

なお、これ以外の分野においても、所管する省庁は、上記(1)〜(3)を踏まえ、それぞれの分野における消費者・利用者への提供情報の範囲、提供方法など情報公開の在り方につき、事業者・関係団体等とも連携を取りながら検討を進め、情報公開のルール形成を図るべきである。【逐次実施】

1)会計基準【平成14年度中に検討】

公益法人会計基準の見直しについては、企業会計基準の大幅な改訂等を踏まえ、総務省の研究会が平成13年度に中間報告をとりまとめ、今後新たな基準が策定される予定である。公益を目的とする学校法人、医療法人においても、事業活動の透明化、効率的経営に資するよう、新しい企業会計基準を取り込むことについて早急に検討すべきである。

なお、企業会計基準については、様々な改正が進行しているが、経済取引・企業活動の高度化や国際化の進展に伴い、企業の透明性確保の観点から今日一層その重要性が高まっており、国際的動向も踏まえつつ、継続的にその整備を図っていくことが必要である。

2)教育分野

a)学校の情報開示【平成14年度中に措置】

小・中学校について、自己点検評価、情報提供に関して設置基準に盛り込まれたところであるが、各学校において評価項目や情報提供の内容等を適切に定め、自己点検評価と情報提供を積極的に行う必要がある。

このため、自己点検評価や情報提供に関し、学校の積極的な取組を推進し、評価項目や評価手法、情報提供の内容・方法等が適切なものとなるよう、教育委員会等に対し促すべきである。

b)大学の情報公開の促進【平成14年度中に措置】

少子化等により、大学を取りまく経営環境が厳しくなることが予想される中で、学生や保護者、企業関係者等の判断に資するよう、一層の情報開示を進めることが必要である。

このため、私立大学について、平成13年度から検討されている財務状況の公開に関する具体的な内容や方法等について早期に結論を得て、公開を促進する。

また、大学は、財務状況に限らず、教育環境(教育方針、教育内容、1教員当たりの学生数等)、研究活動、卒業生の進路状況(就職先や就職率等)など当該大学に関する情報全般を、インターネット上のホームページなどによって積極的に提供すべきである。

3)医療分野【平成14年度中に措置】

医療は、生命健康に直接かかわるだけに、利用者(患者)にとって選択の善し悪しは重大な事柄であり、医療提供者に関する情報公開、広告規制の緩和等の取組が現在進められているが、その一層の推進を図るべきである。また、医療分野は、その専門性の高さから情報の非対称性が著しい分野であり、利用者の選択に資するため、インフォームドコンセントを普及促進する措置を講ずるとともに、カルテの開示についてはルールの確立やガイドラインの整備を行うべきである。また、セカンドオピニオン等の第三者機能等を含めた総合的な情報公開の推進に強力に取り組むべきである。

4)福祉分野【平成14年度中に措置】

福祉分野は、サービスを受ける者が高齢者や乳幼児などサービス提供者に対して立場の弱い者が多いことなどの他、事業形態が多岐にわたり、小規模事業者の参入も相次ぎ、事業者数も大幅に増加しているなど、利用者保護のための行政等による監視を適切に行っていくことが必要である。

行政等の介護サービス事業者に対する検査については、事業者等との合意に基づき、先駆的に当該検査情報の公開を進めている地方公共団体もあり、監視体制の整備とともに、利用者の選択、事業者における規律確保に資するこのような情報公開を引き続き推進すべきである。また社会福祉法人については株式会社並みの公認会計士等による会計監査等の一層の普及を図るなど、情報公開のための基準の強化を図るべきである。さらに、社会福祉法人の公益性にかんがみ、収支決算書、事業報告書、監事の意見書等は、インターネット上での公開を促進すべきである。


3.第三者評価

(1)基本的考え方

事業者による情報公開のみでは消費者・利用者自らが財・サービスの的確な評価を行い難い分野においては、専門家による継続的な第三者評価の結果を公表することにより、消費者・生活者の適切な判断材料を提供することが重要である。

財・サービスの提供者と消費者・利用者の間で情報の非対称性が大きい分野はこれに該当すると考えられ、たとえば内容が高度に専門的で、消費者・利用者が適切な判断を行うことが困難な分野(医療、高等教育等)や、制度が複雑である等のため、第三者が評価を行うことが消費者の選択の助けになると期待される分野(介護、中古住宅等)がある。

また、現に事業者により情報公開が行われている場合においても、当該情報の真実性を確保する観点から第三者による評価を行うことは重要である。

さらに、第三者評価の結果は、事業者が自己の経営等について改善を行う手段となる。

第三者評価制度は我が国においては、分野も限定されており、実績も乏しいというのが実態である。したがって、以下の点を踏まえそのために必要な仕組み作りや情報提供等の環境整備・支援策を講ずべきである。

1)評価の客体、対象事項

評価・分析の対象は、財・サービスの内容・実績に加え、その効果にまで及ぶべきものである。また、施設サービスを始め当該財・サービスの質が事業者の施設・設備に依存するような場合には、事業者の組織・財務、施設設備の実態も的確に評価すべきである。

2)評価の主体

第三者評価は、多様な評価主体により競争が行われることが評価の妥当性・中立性を確保する観点から重要であり、行政庁は特定の機関のみを評価機関として認めることのないようにすべきである。その際、第三者評価機関自身も市場に対するアカウンタビリティを持つことが必要であり、そのため、評価の基準・評価の実施者や、評価に関する不服・苦情を処理するためのルール等を評価機関自身が明らかにすることが必要である。

3)評価情報の取扱い

評価結果が消費者・利用者の選択に資するためには、企業秘密に類する情報等を除き、原則として一般に公表されることが望ましい。事業者自身による評価結果の公表はもとより、消費者・利用者による比較選択の観点からは評価機関における公表を促進することが重要である。評価機関により公表する場合には、多くの場合事業者の同意が条件となるが、同意が得られない場合には、それが消費者・利用者に明らかになることが公開への一つの後押しになろう。

公表情報としては、評価の結論(合格・不合格等)のみではなく、消費者・利用者の判断の基準となり得るよう、評価の具体的な内容(評価基準に基づく項目別の評価内容等)についてできるだけ詳細に公表することが重要であり、評価機関において推奨事例を明らかにすることも有用と考えられる。

第三者評価については、前述のように受審していないこと自体が不利になる状況にあれば、任意での受審が促進されるようになることが期待できるが、制度発足当初の第三者評価の重要性が広く認識されていない状況下においては、必ずしも受審が進まないことも想定される。このため、受審のより一層の促進を図る観点から、行政庁、業界団体等において、評価の重要性に係る意識の醸成、啓発等、所要の環境整備を行うことが重要である。

4)評価の形態

医療等専門性の高い分野においては、その専門性ゆえに同業者が評価を行うことになるが(ピア・レビュー)、その場合には、評価実施のメンバー構成に留意し、評価の基となるデータの透明性を高めるなど、適正な運営の確保に努める必要がある。

さらに、サービスの質の評価・内容に関しては、利用者・消費者による評価(学生による大学・教員の評価、親による保育所の評価等)を参考にすることも考えられる。

(2)規制改革推進3か年計画(改定)事項の推進等

規制改革推進3か年計画(改定)に掲げられている、第三者評価に関する改革事項については第三者評価の重要性にかんがみ、期限の定められたものはできるだけ前倒しで実施し、逐次実施とされているものは年次別の具体的達成目標を明示して可能な限り早期に実施すべきである。また、評価対象範囲・事項の一層の拡大を図るなど評価充実に向けた検討を進めるべきである。

また、第三者評価に馴染む分野は、下記の分野のほかにも存在することから、そのような分野においても、上記(1)を踏まえ、他分野の評価手法、実績等も参考としつつ、第三者評価の導入を図るべきである。【逐次実施】

1)医療分野【平成14年度中に措置】

医療機関に対する評価を充実させるため、国公立病院、特定機能病院、臨床研修病院等については積極的な評価受審を促進するとともに、これらの医療機関に対しては、評価結果、評価内容を公開するように措置すべきである。また、医療に関する各種情報のデータベース化に際して、それら評価結果についても提供情報に含め国民がインターネットなどを活用して自由に知ることができるようデータベースを整備すべきである。

2)福祉分野

保育所については第三者評価に関するガイドラインが作成されたところであり、その普及啓発に努めるとともに、第三者評価の取組を促進する仕組みを整備すべきである。【平成14年度中に措置】

介護事業者については、そのサービスの質の自主的な改善、利用者が事業者を選択する際の有効な情報提供を図るため、利用者や第三者などによる評価について、評価項目を検討しチェックリストを作成するなど、第三者評価の仕組みの構築に向けた環境整備を図るべきである。【平成14年度から措置】

3)教育分野【平成14年度中に措置】

大学に対する第三者による継続的な評価認証(アクレディテーション)制度の導入促進を図るべきである。なお、社会のニーズを反映した客観性の高い評価認証制度を構築するため、民間研究者、外国人研究者、企業関係者などを幅広く評価者に含めるものとすべきである。


4.苦情・紛争処理システムの整備

(1)基本的考え方

裁判外の苦情・紛争処理システムによる苦情・紛争の解決は、裁判と比較すると、簡易・迅速・廉価であり、当事者の性格や自主性、事案の実情をいかした、合意に基づく柔軟な解決等が可能である。また、苦情・紛争の種類、及び苦情・紛争処理機関によっては、単に苦情・紛争の解決のみならず、同様の苦情紛争の再発及び未然防止、ひいては事業者等の消費者保護意識や法令遵守意識の強化等の機能を併せ持つものである。

こうした苦情・紛争処理機関は、近年、徐々に拡充されつつあるが、周知度が低いこと、関係機関の連携が十分に図られていないこと、執行力や時効中断効等の法的効果が付与されていないこと等により、一部の機関を除き、十分活用され、有効に機能しているとは言い難い状況にある。これらの問題点を踏まえ、苦情・紛争処理システムの整備に当たっては、官民の適切な役割分担の下に、以下の具体的施策を通じて、苦情・紛争処理機関の機能強化や活性化等を図るべきである。

なお、商品(製造物)に関する苦情・紛争処理に比べて、生活者向けのサービス分野においては整備が遅れているが、今後の規制改革の進展に伴いこのような分野での民間の事業活動の参入が促進されることから、このような分野における苦情・紛争処理機関の整備・拡充も早期に図るべきである。

1)機能の強化

a)法的制度基盤の整備

苦情・紛争処理機関による解決には、執行力や時効中断効等の法的効果が付与されていないこと等から、苦情・紛争処理機関による解決が有効な事案においても、裁判に解決が求められる場合がある。したがって、和解事項の確実な履行確保のための執行力の付与、紛争解決中の時効期間満了を避けるための時効中断(停止)効の付与、苦情紛争処理システムと裁判手続との連携強化等について、ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争処理)に関する基本法として法案を提出することも含めて必要な方策を検討し、所要の措置を講ずべきである。【遅くとも平成15年度末までに措置】

また、仲裁に関する法的基盤整備のために、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)における検討等の国際的動向を見つつ、仲裁合意の方式、標準的な仲裁手続きの在り方、仲裁判断の承認及び執行の裁判等について、所要の法案を提出すべきである。【平成14年度中に措置】

b)情報公開の推進等

苦情及び紛争の再発及び未然防止の役割を期待される苦情・紛争処理機関については、消費者・利用者保護の観点も踏まえ、個人情報の保護及び事業者に不当な不利益を及ぼす可能性を勘案しつつ、苦情・紛争の再発及び未然防止に資する処理事案の内容等を早期に公開することを検討すべきである。特に、国民の生命安全に直接かかわる事案については、その公共性を勘案し、適時に事案(トラブルの原因究明結果等を含めた処理事案の内容)を公表することを検討すべきである。また、特に罰則が課せられるような重大な違反事例については、公益に資する観点から、個人情報等の合理的な理由がない限り、事業者名の公表措置の活用を検討すべきである。【平成14年度から検討】

また、特に公益性の高い事案(国民の健康・安全にかかわる事案、環境破壊等)については、速やかに国民に周知し、被害等の未然・拡大防止を図ることが重要であることから、内部通報者等がそれを理由とした不利益を被ることのないような仕組みの構築に向け、国民生活審議会における検討を踏まえ、内閣府は所要の措置を講ずべきである。【平成15年度までに措置】

c)処理能力向上のための情報交換の推進【平成14年度から検討・措置】

苦情・紛争処理に当たっては、利害関係が対立する当事者双方の事情を充分に聴取し、当事者の性格等を判断しつつ、両者の合意点を見付けて現実的な解決を図る必要があることから、その処理は担当者の能力に負うところが大きい。したがって、苦情・紛争処理機関の担当者の処理能力向上の施策として、司法制度改革推進本部及び関係府省は、苦情・紛争処理機関が事案等の情報を共有化し、多面的な解決手法を得るための方策を検討するとともに、関係機関等の連携を促進するため、苦情・紛争処理機関等からなる定期的な連絡会議の早期開催に向け、所要の措置を講ずべきである。

2)既存機関の活性化【平成15年度までに措置】

地方公共団体の苦情処理委員会については、地方消費者センターの処理事案のうち、当事者が合意に至らず、かつ地方公共団体の首長が選定した事案のみの斡旋、調停を行うこととされているが、取扱い実績は極めてわずかであり、地方消費者センターでの未合意事案は直接裁判に至るケースが多い。したがって、各地方公共団体において、苦情処理委員会と地方消費者センターとの一層の連携を強化するとともに、苦情処理委員会が取扱う対象事案の拡大を図ることが重要であり、内閣府は各地方公共団体がこれらに取り組むことにつき情報提供を始め、所要の措置を講ずべきである。

3)的確な選択のための総合案内窓口の設置【平成14年度から検討・措置】

現在、苦情・紛争処理機関の存在自体や業務の内容等が一般的に広く知られていないために、苦情等を持つ者(利用者)が苦情・紛争処理機関を適切に選択し難い状況にある。したがって、司法制度改革推進本部及び関係府省は、利用者が必要な情報に的確にアクセスできるようにするための方策を検討し、各苦情・紛争処理機関に関する情報(組織、業務内容、過去の実績等)と苦情・紛争処理に関する諸手続等の情報を一元的にとりまとめ、データベース化した苦情・紛争処理に関する総合案内窓口(ポータルサイト等)の整備を図り、これを各都道府県単位に設置するなどにより全国的な利用を可能とするよう、所要の支援策等を講ずべきである。

4)適正処理のための規範の制定

苦情・紛争処理の担当者はその処理を公正に行うことは言うまでもないが、その行為規範等が明文で定められていない場合も多いことから、未制定の苦情・紛争処理機関は組織運営規範、紛争処理手続規範、担当者の行為規範を制定し、これを公表することを原則とすべきである。また、司法制度改革推進本部は関係府省等による連絡会議において、苦情・紛争処理機関がそれぞれの実態に応じて、各規範を適切に制定し得るためのガイドラインの策定・周知等を含む諸方策を検討し、所要の措置を図るべきである。【平成14年度から検討・措置】

公正、効果的、かつ効率的な苦情、及び紛争処理を行うための指針については、国際標準化機構(ISO)により規格制定に向けた検討が行われているが、関係府省は各苦情・紛争処理機関に対して、本規格制定後速やかにその周知を図るべきである。【規格制定が想定される平成15年度以降逐次実施】


5.その他

(1)既存制度の的確な運用・積極的な活用【逐次実施】

自己責任原則の下で事前規制から事後チェックに移行することで活力ある経済社会を作るためには、パブリックコメント(「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」(平成11年3月23日閣議決定))等を活用して、規制そのものの在り方への国民の関与を広げていく必要がある。

また、現に必要な規制であっても、不適切な運用により自由な経済活動への障害とならないようにするためには、各行政庁においては引き続き行政手続法(標準処理期間・審査基準のない許認可等における早急な設定等を含む。)及び、ノーアクションレター(「行政機関による法令適用事前確認手続の導入について」(平成13年3月27日閣議決定))の的確な運用に努めるべきである。

(2)基準認証、資格制度の見直し

基準認証については、引き続き事業者の自己確認・自主保安を基本とした制度への移行を進めるべきであり、その際には、消費者への情報提供を、行政庁はもとより、事業者においても進めることが望ましい。【逐次実施】

資格制度(業務独占資格、必置資格)については、当会議としては、全省庁を対象とする調査結果により実態を把握した上で、今後、当該資格が本来有すべき政策目的の効果的・効率的達成、民間の自由な経済活動の確保等の観点から、現行規制改革推進計画における見直しのための基本方針の妥当性を検証し、個々に必要な見直しを進める。

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内閣府 総合規制改革会議