施策紹介「高齢社会フォーラム・イン広島」

「いきいきとしたセカンドライフのために~広島市での取組み~」

糸山 隆
広島市健康福祉局長

糸山 隆 広島市健康福祉局長の写真

今日は、フォーラムのテーマに沿って、特に地域で支え合う活動について何をするか、何ができるかについて、少し幅広に、社会参加のヒントになるような事柄、事例あるいは広島市の取組みをご紹介して、この後のディスカッションのほうに議論をお任せできればと考えております。

○高齢者を取り巻く現状と地域活動への参加状況

 内閣府の「高齢社会白書」によれば、2010(平成22)年の全国の高齢化率は23.0%で、人口の4人に1人は高齢者と言われる状態です。

そういう中で、20~64歳という主要な納税者に当たる層の割合が縮小し、それに伴って税収は増えていかない状況にあります。実は、広島市でもここ20年間税収入は基本的に同じです。税収がほとんど増えない一方で、高齢者が増えていく状態にあります。

図:国の高齢化の推移と将来推計

広島市における2010(平成22)年の高齢化率は19.6%と若干全国よりも低いのですが、遅かれ早かれ同じような状況になってきます。
なお、広島市の高齢者の中で要支援・要介護認定者は少しずつ増えており、その割合は現在約2割です。

図:広島市の高齢者人口の推移

広島市における高齢者の世帯の状況を見ますと、一人暮らしの高齢者は数も割合も増えており、2011(平成23)年では約3万7,000人、約18%です。
これに夫婦二人暮らしでともに高齢者の方も合わせますと、その割合は約55%です。
これからは、高齢者が増えると同時に、一人暮らしの高齢者や、夫婦二人暮らしでともに高齢者の世帯が増えていきます。
先ほど申し上げたような要介護・要支援認定を受けた高齢者が増え、このような高齢者のみの世帯が増える中にあって、主要な納税者に当たる層がどんどん減っていきます。
国の予算90兆円のうち、半分が税金で、半分が国債、つまり借金です。
ですからこれからの借金については今後その割合が減っていく20~64歳の方が負担していかなければならない状態です。
行政も厳しい状況ですが、ただ、それでこの先真っ暗かと言えば、そうならないようにどうするかというのが今日のテーマにもつながっているのではないかと考えています。

図:市内の在宅のひとり暮らし高齢者・高齢者のみの世帯に属する人数

広島市における高齢者の地域活動への参加状況ですが、要介護・要支援認定者ではない方々のうち、約56%とかなりの方が参加していますが、一方で参加していない方は約44%です。
65歳以上を機械的に高齢者で、支援が必要だという先入観で見ますと、大変だということになるのですが、今後は団塊の世代の方も高齢者の仲間入りをされていきます。
元気で活動的な高齢者の方がどんどん増えています。
さらに、地域活動に参加される方がいらっしゃる。
また、地域活動に参加されない方もいらっしゃる。
この辺に社会の元気を維持する鍵があると考えています。

図:高齢者の地域活動の参加状況(広島市)

今年の国の「高齢社会白書」に掲載されている、高齢者のグループ活動の参加状況の10年前との比較です。

参加したという人がかなり増えており、先ほどの広島市と同様、参加した人が6割弱、ほぼ同じ程度の割合になっています。
参加した人の割合がどんどん増えていますし、まだまだ増える余地もあるという状況です。

図:高齢者のグループ活動の参加状況(平成24年度高齢社会白書より)

以上まとめますと、高齢化の進展により4人に1人が高齢者となる一方、元気で活動的な高齢者が増えていて、まさにこれからの高齢社会の活力維持、社会の元気の鍵を高齢者の社会参加が握っていると言えます。

図:高齢者を取り巻く現状(まとめ)

○広島市での市民活動の取組み

 そういう面でいろいろな社会参加の形態がありますので、少し広島市での取組みをご紹介したいと思います。

 最初に、広島らしい取組みということで、平和関係のボランティアでは、「ヒロシマ・ピース・ボランティア」があります。
こちらには、200名の方が登録されていますが、その3分の2が65歳以上の方です。

 環境関係もいくつかあります。
「もりメイト倶楽部hiroshima」は、間伐作業など活動が厳しいので高齢者の数は低いのですが、「広島市環境サポーター」や「下水道サポーター」は、かなりのウエイトで高齢者の方が占めておられます。

図:広島市における社会参加活動事例(1)

それから、観光の関係で言うと、「広島市観光ボランティアガイド協会」、「観光アシスタントひろしま」が広島の観光スポットの案内をされています。
こちらの8~9割を高齢者の方々に担っていただいている状態です。
地域における観光ガイドである「二葉の里歴史の散歩道ボランティアガイドの会」も同様です。
今広島市の「おもてなし」の主力は高齢者の方に担っていただいている状況です。

図:広島市における社会参加活動事例(2)

子育て・子どもの見守り関係のうち、「学校安全ガードボランティア」という見守り活動は、かなりの高齢者の方に参加していただいてやっております。

 私たちの健康福祉局として力を入れたいと思っているのは、「アクティブシニア健康増進リーダー」ということで、50歳以上の方を対象に講習を受けていただき、地域での高齢者の健康づくりのリーダーとしてサポートしていただく取組みも行っております。

図:広島市における社会参加活動事例(3)

その他、交通安全の関係、それから福祉分野のボランティアがあります。

図:広島市における社会参加活動事例(4)

○社会参加の促進のための広島市での取組み

 行政としてボランティア関係で何をするかということですが、一つは情報の提供と発信です。
「らしっく」という情報誌がありますが、これは、昔は「財団法人ひとまちネットワーク」、今は「財団法人広島市文化財団」等と合併して「財団法人広島市未来都市創造財団」という名前に変わりましたけれど、その財団が出している情報誌です。
この情報誌には、いろいろな活動事例や取組み、イベントの紹介等が出ています。
それから、これも「財団法人広島市未来都市創造財団」の関係ですが、「ひろしま情報a-ネット」があり、広島市のホームページからもご覧いただけまして、いろいろなボランティア情報が出ています。
あと、「広島市社会福祉協議会」に「ボランティア情報センター」があり、そこがボランティア情報の発信を行っています。
それから、「まちづくり市民交流プラザ」があり、そこが市民活動やボランティア活動の情報提供を行っています。

図:社会参加の促進のための本市での取組み(1)

それから、情報提供と相談窓口として、市と区の「社会福祉協議会」があり、ここにはボランティアコーディネーターが配置されています。
「まちづくり市民交流プラザ」でも相談を受けています。
また、区の「地域起こし推進課」には「まちづくり支援センター」があります。
「地域起こし推進課」は、地域の元気をまさに住民の皆様と市が一緒になってつくっていこうということで、区の機能を強化しようと今年新たにつくった課で、そこでも、必要に応じいろいろな相談対応を行っています。
それから、広島市の市民局には市民活動推進課があり、市民活動の相談やNPO活動資金の相談などを受けています。

図:社会参加の促進のための本市での取り組み(2)

人材登録・人材育成という点では、市・区・地区の社会福祉協議会のボランティア情報センターと、まちづくり市民交流プラザの「まちづくりボランティア人材バンク」の二つが、主なボランティアの登録先になります。

図:社会参加の促進のための本市での取り組み(3)

活動の場の提供ですが、こちらは日々、利活用されておられることと思います。
いろいろな公共施設や集会所等、あるいは機器の貸し出し等を行っています。

図:社会参加の促進のための本市での取り組み(4)-1

一つ宣伝させていただきますと、今、中区千田町に広島市社会福祉センターがありますが、それを、平成28年に広島駅正面にある百貨店の隣に、再開発事業で地上52階建てのビルが建つことになっていますので、その5階と6階の部分に移転し、機能を拡充させる予定です。
そこで考えているのがシニア活動の支援で、具体的には「老人大学」の募集人数や講座内容を拡充したり、ボランティアに関する実践型の講座を充実したりすることを考えています。
この広島市総合福祉センター(仮称)は広島市社会福祉協議会の事務局が中心になりますが、就労支援としてこの協議会が職業紹介所の許可を取って、実際の就労の相談、就労先の開拓、あるいはシルバー人材センターのサテライトブースの機能を担うことにより、高齢者の方で就労を希望する方の支援を行っていくこととしています。
また、福祉ボランティアの支援ということで、社会福祉協議会の福祉系のボランティア情報センターがここに入りますから、この三つの項目について、活動的な高齢者の活動拠点をここにつくりたいと考えております。

 さらに、各種団体の交流の場の提供として、今の広島市社会福祉協議会のほかに、老人クラブ連合会、身体障害者の広島市の連合会にも一緒に入っていただいて、フェースツーフェースで日常的に情報交換や話ができる、そういう場にしたいと考えています。

図:社会参加の促進のための本市での取り組み(4)-2

○地域福祉を支える団体等の取組み

 次に、地域福祉を支える3本柱を説明させていただきます。

 まず、民生委員・児童委員ですが、広島市には約1,900人いらっしゃいます。
全国的には、欠員があるといった状況であり、気にはなっているのですが、広島市の場合には、2%程度の欠員となっています。
民生委員の方々から聞く声として、地域において活動がしづらくなったということがあります。
それは、当然高齢者が増えてきたという数の問題もあるし、いろいろな個人情報の問題があって情報が取れないということもあるし、コミュニティ意識が希薄になり、基本的に知らない人が家に行っても、「いや、結構です」と言われるようなこともあるなど、非常に活動しづらくなっているようです。
次第になり手がいなくなって、困っているのだということをよく聞きます。
民生委員・児童委員は地域福祉のキーパーソンですので、市も問題だと認識していまして、どうやって活動しやすい環境をつくっていくかについて、直接お話を聞きながら、検討しているところです。

図:地域福祉を支える団体等の取組み(1)

次に老人クラブですが、特に、友愛活動ということで、一人暮らし高齢者などへの友愛訪問を行っています。
これは、老人クラブの方が地域で見守りが必要な方の話し相手になったり、困りごとの相談に応じたり、時には電球を取り換えるような身近な家事援助をしたりするところもあります。
これは、老人クラブによっていろいろな活動・支援形態があるそうです。
場合によっては、普段回っている中で、ちょっと新聞が溜まっているところがあれば、すぐに民生委員に連絡し、そこから地域包括支援センターに連絡が行ったり、警察の方に話して家の中に入ったりして、熱中症で倒れた方を見つけたことがあるということもお聞きしています。
このように、老人クラブさんも地域福祉を支える大きな柱の一つになっております。

図:地域福祉を支える団体等の取組み(2)

三つ目は、社会福祉協議会で特に地区社協が行っている事業についてご紹介します。
一つは、近隣ミニネットワークづくりです。
見守り対象の高齢者の方を、民生委員、町内会長、あるいは近所の方が、ゆるやかな形で見守る、あるいは時々訪問してお話を聞くとかいうような形でいつも気にかけていただいています。
こういうパターン以外に、大家、あるいは介護事業所がここに入っているものもあります。
そういう形の近隣ミニネットワークが、現在広島市の場合、約6,000できています。
もう一つは「ふれあい・いきいきサロン」です。
これは、現在市内に848ございます。
これも、常設でやっているところ、あるいは公民館とか、集会所とかが空いた時間でやっておられるところ、サロンにお越しいただく対象も、高齢者をお呼びして交流を深めているところ、世代間交流で子育て中の方も一緒にお呼びしているところなど、地区ごとに特色があり、いろいろな取組みをされています。
中身も料理教室、介護予防教室、お喋り・会話など様々です。
地域ごとに工夫して取り組んでおられます。

図:地域福祉を支える団体等の取組み(3)-1

図:地域福祉を支える団体等の取組み(3)-2

冒頭申し上げましたように、これからの行政は、本当に支援の必要な方にきちんと手当をして、公共としてしっかりやっていかなければなりません。
しかし、そこだけをやることは負担者とそれ以外の方とのバランスから考えたときには、そういうところにシフトしていきながらも、自助、共助、公助の中で、共助の部分を充実させていかなければならないと考えています。
これからは、市民やNPO、企業などが公共的サービス提供の担い手となることが期待されており、元気で活動的な高齢者が増えてまいりますので、行政としては高齢者の社会参加の促進や雇用機会の増加のために、機会や情報を提供することに力を入れる必要があると考えております。
社会参加の機会は身近なところでいろいろございます。
是非いろいろな形での社会参加が進むことを願っております。

図:最後に(1)

図:最後に(2)

高齢者一人一人が、健康で、その能力を発揮し、生きがいを感じ、住み慣れた地域で安心して暮らせる高齢社会の形成の実現に向けて、皆様の力を借りながら、こうしたまちづくりを進めていきたいと考えております。
是非ご協力をお願いいたします。