基調講演「高齢社会フォーラム・イン神戸」

「地域の中で自分を生かす」

堀田 力
さわやか福祉財団 会長

堀田 力の写真

 本当に爽やかないいお天気で散歩日和でありますけれども、その時間をみんなでつくっていく社会づくりを考えようというのでこれだけの皆様方においでいただきました。本当にお目にかかれてうれしく思います。

 私のほうから1時間、一緒に社会をつくっていきましょうというメッセージをプレゼンテーションいたしまして、私の後のパネリストがとっても魅力的な方々がそろっておられます。いろんな事例も出てくるかと思います。両方合わせてどういうふうに新しい生き方をつくっていくのか考えていきたいと思います。


○人の役に立つ、新しい高齢者の生き方

 今日、私が申し上げたいメッセージは、高齢者の新しい生き方をつくり出していかなきゃいけない。そういう新しい生き方をつくり出す先兵として、「私たちがそういう社会づくりを一緒になって切り開いていきましょう」というのが私のメッセージであります。

 高齢者の新しい生き方っていうと抽象的なようですけれど、その能力がある限りは、人の役に立っていい社会をつくっていく、そういう生き方をするのが新しい生き方であろうと思っております。うちに引っ込んでぬれ落ち葉とかいろいろ言われておる生活、これはもう寂しい限り、本人も不幸。ただ、旅行をして楽しんでいるだけというのも、これもあんまり幸せとは思えない。旅行ばっかりしている人にも会いますけど、大体10回ぐらい行くと夫婦げんかが始まりまして、20回行くともう行くのも嫌と。自分の楽しみだけではなかなか生きているという実感がつくり出せない。それぞれの能力がいろいろあるわけですから、これを人のために役立てるという、そういう生き方をしていくのが大切だろうと。きっとそういう生き方をもう既にされている方ばかりの集まりだと思いますので、安心してもう少し突っ込んで言いますと、そういうことをする、人様の役に立つ能力を持っているのに役立てずに自分のことだけしているという生き方は恥ずかしいと感じるような文化をつくり出したい。そこまで踏み込みたいと思っております。

 こういうことを言うと嫌われるわけで、「自分の生き方は勝手だろう」と。「今までさんざん働いてやってきて、やっと好きなことをして生きようと思っているのに、余計なおせっかいだ」と、そういう押しつけがましいことは御免だと感じる方のほうが多い。今さらそんなことを言われたくないという反発が結構強いわけでありまして、ですから今まで23年間ボランティア活動を広める活動、助け合いを広める活動をやってきていますけれども、そこは少し控え目に、こういう活動をやったら楽しいですよと、あなたの人生、御家族の人生、いい人生になりますよと、そういう進め方をしてきたわけでありますけど、どうもそういう優しい言い方では間に合わない社会になってきた。ここに内閣府も「全員参加型」と銘打たれました。これはかなり大胆な命名ですよね。全員参加しましょうと言っているのですから。私でもなかなかそういうことを言わずに遠慮しながら「気持ちのある方は」という言い方をしてきた。全員参加型と、しかも内閣府で打ち出したわけですから、これを打ち出した人は偉いなと思いますね。もうこれしかないと、そういう社会になってきたと思います。

○エネルギー源としての高齢者

 高齢者が長生きになっていいことですけれど、どう支えるのか、第一にそこが問題になるしお金もかかる。これからもどんどんかかるようになっていきます。年金にとどまらず医療費、介護保険費、すごい金額になっていく。国も地方自治体もお金がないのでこのままでいったら負担し切れなくなる。お金じゃやれなくなってくる。じゃあ姥捨てにするかと、これはもう絶対だめです。人類は常に進歩して、幸せに向けて歩んできているわけですから、この文明社会姥捨てはできない、後退はできない。じゃあ前に進むにはどうするのか。国がお金を使ってやるのが難しくなってくれば、あとはそれぞれがエネルギー、持っているいろんな能力を提供して、そのいろんな能力を集めていい社会にしていく。助け合いをやり、人を支えていく、困っている方々を支えていく、それしか方法はない。

 じゃあエネルギーはどこに余っているのか。子供たちは学校と塾でひーひー言っています。学生もひーひー言っています。若い人たち、自分の子育て、あるいは家庭を維持するので手いっぱい。そうなってきたら余っているエネルギーは高齢者。仕事を引かれた高齢者、このエネルギーと、子育てを終えられておうちにおられるお母さん方、お父さんもこのごろは出てきています。そのあたりしかもうエネルギーは残っていない。お金もない、残っているエネルギーはそこしかない。だからそうなってきたら、全員参加型しかない。

○変わりゆく介護保険制度

 世の中の福祉の仕組みが期せずしてその方向に、去年から今年にかけてずっと動いております。まず、その点を確認したいと思うのですけれども、一つは、高齢者介護保険制度、これが今年の6月に法律が通って変わります。幾つか変わる点があるのですが、大きいのは要支援者、要介護者に比べて比較的軽い方々の支援、これを介護保険制度で支えていたのを介護保険制度から離してその生活を支える部分、これを市町村にやっていただきましょう。その市町村も従来のお金でやる仕組みではなく、なるべく地域の支え合いで要支援者の生活ぐらいは支えてくださいよと、そういうふうに法律が変わった。

 2013年8月の社会保障制度改革国民会議。審議会よりももう一つ上のレベルの審議機関で、方針が打ち出されてそれが具体化されて、「要支援者助け合いで生活支援をやりましょう」となった。その仕組みづくりに各市町村一生懸命やっているところです。

 今まで助け合いを国全部で支える仕組みの中核に据えようというのは、行政の仕組みとしては恐らく初めて。だから、これはそういう目で見れば非常に大きな基本的な転換です。行政から言えば、やっぱり公平に全国一律に全部やらなきゃいけないことを助け合いに頼むっていうのは心配なことですよね。

 おわかりのとおり助け合いっていうのは志でやるものですから、全国一律にやってくださいと言ったってやりませんよね。私も23年間助け合いを広めるのをやってきましたが、進んではおりますけど、とてもあと2年半、3年の間で29年の4月までに全国一律助け合いの仕組みをそろえましょう、そんなことはできません。これはお金の仕組みをつくれば事業者が手を挙げて全国一律の仕組みができるのですけど、個々にお金を出すわけじゃない、気持ちでやってもらうわけだから、この世界、結構ひねくれもんもいて、今日の会場にはおられないと思いますけど、助け合い、それをやれよと。その気になればすごいですけれど、行政にとやかく言われてやりたくないとおへそが曲がってしまうのですよね。かえって逆効果になり、全員参加は無理な仕組みなのです。

 だから今まで助け合いでやりましょうという、一律にやる仕組みをやってこなかった。けれど、もう背に腹はかえられない、介護保険料をどんどんどんどん上げていかなきゃいけない、とてももう負担してもらえないだろうと。ここはやっぱり可能な限り助け合いに頼むしかないと。行政から見たら怖いことなのだけども、やっぱりそれをなるべく中核に置いて広めていこうと、そういうふうに新しい大きな政策転換が行われた。

○子供、障害者、要介護者、生活困窮者への地域の力

 地域の助け合いの力を頼むというのは、高齢者の要支援者に対する生活支援だけではありません。子育て支援、去年法律が変わっていろいろと新しい仕組みが打ち出されて、幼保一元、幼稚園、保育園を一緒にすることばっかり注目が集まっていますけども、幾つかの政策の一つの柱に地域で子供を支えよう、子育てしましょうと。地域に子育て拠点、例えば図書館を子育て拠点にして、子育てに参加しましょうという方向がある程度打ち出された。それまでの子育てっていうのは、戦後の子育てはだんだん親の責任、そしてそれを支えるのは学校とか保育園、幼稚園という施設、親と学校、幼稚園、保育園等の仕組みと。これだけになってきて、昔地域で支えていた子育ての仕組みがなくなってきた。

 ところがここへ来て地域の力も借りましょうという方向が出てきた。これもいいことです。地域には子供の好きなおじいちゃん、おばあちゃんがいますから、自分の孫を見ようとしたらもうそんな古いやり方は子供がだめになるからなんて自分の娘に叱られて、子育て、孫育てから排除されているおじいちゃん、おばあちゃんが結構増えてきている。いろんな人が子育て、孫育てに参加する。近所のそういった子供たち育てに参加して子供たちは円満に育っていく。親が一番たくさん子供に言う言葉を御存じですか。明白なのですが、「早く、早く」です。そこへゆったりとおじいちゃん、おばあちゃんは、「よくやるね」と言って、子供たちは自信を持って育っていくわけです。だから、地域の力、参加する、子供たちにとってもいいことです。子供も地域の助け合いの力が要る。

 障害者は去年自立支援法が総合支援法になって、法律にはっきり「地域の共助で支えていこう」と大きな目的が冒頭に打ち出されて、その方向へ進んでいます。障害者だからって言って閉じ込めたりするのではなくて、みんな一緒の中で暮らしてく大事なことで、こちらも地域の力が要る。

 認知症者、去年オレンジプランが打ち出され、その中「地域で支えましょう」と地域生活を推進する仕組みもできて、早く地域で発見して地域の中で一緒に同じように暮らせる仕組みを作ろうという大事なことです。認知症者はいろんな力が残っているので、それを閉じ込めてしまうのではなく、地域の中でその人らしく暮らしてもらう。みんなで徘回訓練なんてやっている市町村が出てきています。「徘徊者を見かけたらおうちに帰しましょう」と。安全のために何もしないよりはいいのです。けれど、おうちに帰す徘回って変な言葉ですけれど、歩きたいから歩いていられるのです。歩きたいなら安全なように歩いていただきましょうと。買い物に行きたいなら買い物してもらいましょうと。お金を払うのを忘れて帰ったら後でお家からいただけばいいじゃないですか。そこまで地域で支えましょうと。そうなるとこれは相当な地域の力が要ります。これも大きな力が求められる、認知症者。

 もう一つ、生活困窮者と言われていますが、究極はひきこもりの方々、ニートの方々、これは統計がないのですけど増えています。一度社会に出たけれど、厳しい冷酷非情な使い方にとても耐え切れない。心傷ついておうちに引きこもってしまっているという青年、中年増えています、明らかに増えている。そういった方々って親がなくなればもう生活保護へストレートに直行ですよね。そうじゃなくて、まだまだ能力、引き出せば意欲もいっぱいある。これを地域で引き出して、そしてそれぞれの役割を果たしてもらって、中間就労でも、NPOの世界でもいいです。人と一緒にやる気持ち、意欲を取り戻して社会でその人らしく生きてもらう。これは大事な仕組みです。去年その仕組みができ、現在試行期間で、全国市町村は一生懸命取り組んでいる。

○地域を支える高齢者の力

 今言ったようなそれぞれの仕組み、高齢者の介護保険制度の改正や、子ども・子育てプラン、障害者の総合支援法や、認知症のオレンジプラン、生活困窮者の支援事業など、それらのプランは全部去年できた。役所のことですから別に相談してつくったわけじゃない、ばらばらにできている。例の縦割りです。縦割りでいろんな分野の制度が大きく変わった。全部お金がない中で、もっと良い暮らしをしてもらいたい、前進している仕組みです。

 そのどういうふうに進めるかのところで、全部地域の助け合いの力が要る。地域のどの力か、一番大きな力はおじいちゃん、おばあちゃん、いわゆる高齢者だろう。なぜならば、地方に行き昼間バスに乗ったら、ウィークデー、大体おじいちゃんとおばあちゃんですから。みんな元気に出ていかれ、まだまだ力がある。この大きな力はあったかい力です。人の心を癒し、前に推し進める大きな力です。これを生かして暮らしやすい、いい社会にしていこうと、期せずして福祉の仕組みが地域の力を借りる、生かす方向に変わった。去年から今年にかけての状況で、来年から全国実施とか、2年、3年の試行を経るとかいろいろありますけれども、全体が地域で支える方向に進んでいることは間違いない。

 我々はそれをどう受けるのか。去年、要支援者の生活支援をどう支えるか、そういう活動をしている中央のいろんな団体、我々が集まって議論しました。「勝手に我々に相談なしにあっちもこっちも全部地域、地域へ持ってきて当てにされても困るよね」とか、「仕切られたくないよね」とか、もちろんそういう声もありましたけれども、やっぱり全体状況を見たら我々が頑張るしかないだろうと、素直に考えてそれしかない。

 ではどう頑張るか、今までも一生懸命やりましょうといって、そんな全部動くようなところまではなかなか来ない。志がある人と言っても全体から見たら少数なので、特に当てにしていた団塊の世代、お金を稼ぐほうは頑張っていられるけれど、なかなかこっちに来てくれてないよね、こんな状況で大丈夫なのかなと、そういう議論もありましたけれども、頑張ってやれる限りやるしかないだろう。そういうふうに新地域支援構想会議と言うのですが、全国団体、社協さんや生協さん、農協さんとか、もちろんNPOの代表たちにも入っていただき、去年の暮れから助け合いを格段に進めようという運動を展開してきているところであります。

○行政と地域の協働

 私ども去年の3月から全国都道府県を回り、行政の担当官や、社協の地域福祉の担当の方、NPOの方々、支援組織の方々、そういうリーダーたちに集まってもらってどういうふうにして助け合い活動と協働して、行政や社協等々がうまく助け合いの支援組織のリーダーなどと協働して助け合いを広めていくのか、そこの勉強会をずっと開いています。去年の3月から始めて37か所やりましたが、県内の3分の2ぐらいの行政の責任者が来てくださり、社協も来てくれて協議をしてきています。

 今日このあとのフォーラムでそういう事例がいろいろ出ると思いますけども、今まで37やって全部成功でしたね。私がコーディネーターをやりますので、最初に「今日のこのパネルディスカッションは『新しい状況に応じてみんなで助け合いを広めて、要支援者の生活支援ぐらいはできるところまで頑張って進めましょう』と、そういう訴えをするフォーラムです。帰る時に『何だやっぱり助け合いって言ったってなかなかそう簡単に広がらないし、これはだめだわい』と、『助けてやるというのは無理だよ』と、そう思われたらこのフォーラムは失敗です。そうじゃなくて、『いろいろ確かに問題はあるけどみんなで頑張ればやれるよ』と感じていただいたら成功です」、そういうふうに申し上げまして、いろいろメッセージを出してパネリストにも頑張っていただいて、最後に私が「いろいろ問題はあるけれどもみんなで頑張ればやれるよと思っていただけましたでしょうか」と聞きます。今まで37回各県でやってきたのですけど、ほとんど全員拍手をいただいた。大体皆さん、やれるよ、頑張ってやろうって言われる。全国北海道から沖縄まで、やっぱりみんなでやればやれるのだと、たくさんの方々が感じていただけるということはもう自分でもやるし頑張ろうと思っていただいているのだということだと思います。だからそういう流れは確実にある。これをみんなで確かに進めていきたい、そういうふうに願っております。

○人のためになる、助け合う生き方

 この助け合い、先ほど申しましたように、当てにならないという大きなマイナスがある。この助け合いで生活支援、要支援者を全国一律に支えるようには絶対にいかない。これが助けあいの大きな欠点です。欠点があるのに制度としてどうして助け合いをやるのか、やらなきゃいけないのか、ここが一番のポイントですよね。

 助け合い活動、あるいは社会参加活動の何がいいのか。行政がつくる介護保険のいろんなサービスとか、医療サービスとかそんな仕組みに比べて、助け合い、一律にはいかないという欠点があるのにどうしてそれが必要なのか、大切なのか。一番大きな点を二つ言えば、まず、助け合い活動をやる方が元気になる、生きがいを持つ、ここが助け合い活動のほかのいろんなサービスに比べて決定的にいいところですね。もちろん介護サービスをやっておられるヘルパーさんたちも生きがいを持ってやってくださっているし、お医者さんだって人助けだと思ってやっているお医者さんもいる。お金が一番のお医者さんも結構多いですけど、赤ひげのお医者さんもぱらぱらおられます。もちろんやりがいを持ってやっておられる。

 だけど助け合い活動はお金じゃないから、なぜやるか、自分がやって快いからですよね。その快さっていうのはスポーツとか、映画を見るというのとはまた違う。自分の能力を発揮して、誰かが喜んでくれた、やったということが自分の生きがいに直結する喜びですね。これがあるからお金にもならないのに、疲れるのに頑張って一生懸命助け合い活動をやる。そしてやっている人は元気です。これが助け合い活動、あるいは社会参加活動の一番いいところですよね。我々の仲間を見ても、寒くなって風邪をひいている人でも出ていきますよね。あの人が待っているから行かなきゃと言って。やって終わった頃には鼻をくすくすいっていたのが治ってしまっていますよね。夢中でやっているうちに元気になって、だから少々の病気ぐらい吹っ飛ばしてしまう。もうこれがなくては生きていけないぐらいになっていますから、そういう人たちってがんになっても、体が不自由になってもやっていますよね。

 あんたもう面倒見てもらう方だろう、まだやるの、と思うのだけど車椅子ででも出かけるし、がん病棟に入って、ホスピス病棟に入ってもう外に出ていけないとなっても、やっていますね。ベレー帽をかぶって、背広ネクタイで何をやっているといったら、墨絵。墨絵が得意なのですね。だから自分は墨絵を教えたい。ホスピス病棟でじっと死ぬのを待っているのは嫌だと。96歳で、ボランティア仲間に墨絵を習いたい人を集めて来てよって、集める方も苦労しました。ホスピス病棟に行かなきゃいかんのなんて知りませんから、習う人は集まらなかったのだけど、いやあそこに行って習ったらふれあい切符をあげるからって助け合いの切符をあげることにして何人か墨絵を習っていました。習っていると上手になりますからね、年賀状ぐらい絵が描けるようになって、そんな切符なんかいいよ、習いに行くからって言って。2年医者の見通しよりも長生きして、ホスピス病棟長期滞在記録、一生懸命墨絵を教えて。だから生徒さんも結構上達して、最後は皆さんに見守られて大往生されましたけど、そういう方たくさんいます。どんな状態になったって人の役に立てる。能力を発揮される人がありがとうといってくれる、これが大きな元気のもとであり、生きがいのもとであり、いい人生ですよ。いつ死が来るのかばかりを思っているよりも、人と交わって墨絵が上達しましたなんて言われて、いい毎日を送って本当にいい人生だったと思います。別に墨絵に限らないいろんな生き方ができる。だから、人の役に立つってことはやっぱり嬉しいことです。

 アメリカでは寄附は最高の贅沢と言われていますけど、人の本当の究極の喜びというのはお金では買えない。自分の能力を発揮して、寄附も含めて人様のお役に立つっていうのは最高の贅沢だと言われておりますが、そういう最高の贅沢を味わえて、最高の自分の人生を送れる。これが助け合い活動、社会参加の一番意味のあるところですよね。

 もう一つ大きいのは、例えば要支援者、生活支援をやったとする。これ、相手方、助けてもらう人もまた人を助けたりするのだけど、行って車椅子を押してもらって散歩するとか、買い物に行くとかいろいろ人に助けてもらう。

 それと、介護保険のサービスもそういうサービスあるわけですよね、今まで要支援者にやってきた。これはお金の仕組みでやってもらっていた。これはどう違う。普通介護保険の議論をしていると、そりゃ介護保険のサービスの方がいいだろうと、専門家が専門的な能力でサービスするのだから、そんな素人の集まりでやってもらうよりもいいだろうと、もう大体みんなそう思っていますよね。もちろんそういう専門的な技術があることはそのこと自体はすばらしいことだけども、私がこの分野に入って確かめたことがあります。

 例えばお風呂に入れて差し上げる、入浴サービス。これを介護保険のサービスで、例えば週に2回は介護保険の要支援者に対するサービスの訪問介護でお風呂に入れにきてくださるヘルパーさん。けれど夏場は週に2回じゃもう2回ぐらい入りたいようなんて方がおられる。これは介護保険のサービスではそこまでいかないので助け合いの素人さんですよね。助け合いの方が行って入浴サービスをしている。だから同じ人が一方ではプロの入浴サービスを受け、一方では助け合いのボランティアのサービス。同じ入浴をさせてもらうというサービスを受けているのです。

 いろいろ聞いてみた。答えはみんな一緒だったのですが、介護保険のヘルパーさんにお風呂を入れてもらっているときは安心だと。それはそうですよね、きちんとした技術がありますから。助け合いが安心じゃないといっているわけじゃないですよ。浴槽に落としたりはしません、技術があるから介護保険のサービスのほうが安心。じゃあ、ボランティアさんの入浴サービスはだめなのか、いえあれはどうしてもしてほしい。それは、入れてもらっていると楽しい。だから、助け合いでやっていますからただお風呂にきちんと入れるそれだけじゃないですよね。いろいろお話をするから入れてもらっていて楽しい。楽しくなってもらうためにいろんなサービスをやっているのですから、一層いいお話をする。この楽しさが何とも言えないという気持ちがあるからそういうお話が出てきて、楽しさが伝わる。

○自信から生まれる自立

 助け合いは相手がやれることはやりません。介護保険は、例えば料理は、少々ネギが切れるおばあちゃんでもネギを切るのを待っていたら時間が足りなくなりますからついやってしまいますけどね、助け合いの方は時間の制約はない。相手に自立して少しでも元気になって欲しい気持ちがあるから、「やれるでしょう、待っているからやってみて」と。例えば車椅子に移れますよと、車椅子をしっかり持っているから移ってなどやっています。移るほうは何か体が不自由なのを人に見せるのは嫌だけど、いざというときは支えてくれるからって自分で車椅子に移る。移れないかなと思ったのが移れるとやっぱり嬉しいのです。移れる、自分はこれをやれるのだと本当に嬉しそうな顔をされる。自立というのは、自信ですね。そういうことだと思います。そういうふうにできることはしっかり励ましながらやってもらい、やれないことは遠慮しないで何でもやるから言ってと。遠くてもあそこへ行きたいと、車椅子で行きたいなら散歩に一緒に行くからって、遠慮せずに言ってと。だから、やれないことについてはしっかり支援するけれども、やれることについてやらない。これがやってもらう方の自立、それを助け合いでやっています。

○相互の生きる喜びを生む助け合い

 助け合いというと、何か質が落ちるようなそういう評価があるけれども、確かにテクニックとしては落ちる点はあるのでしょうけども、そのかわりお金では絶対提供できない心の交流、自立の元気だけ。何よりも自分が大きな力をもらう、生きる喜びをもらう、ここが特徴です。これはお金の仕組みでは提供できないので我々が提供するしかありません。

 折しも最初に申し上げたようにいろんな制度がそういう地域の力、皆さん方の力を借りて、誰もが楽しく暮らせる、その人らしく暮らせる社会をつくろうと動いてきているわけですから、やはり応えましょう。ぜひぜひみんなで進めていきたいと思います。

 最初に申し上げたメッセージ、「高齢者の新しい生き方、お金だけで幸せになっていこうというのではなく、みんなで支え合いより元気で生きがいのある社会を作り出していこう」と。その先兵として働きかけましょうということは、今も申し上げたような助け合いというのがすばらしい幸せ、お金では買えない幸せを自分にも相手にももたらすから、そういう性質のものだからですね。

○語って伝えていくボランティア活動

 皆さん方、もう実感しておられるとおりですけども、助け合い活動をどう広めるのか。これはいろんな仕組みがありますけど、何と言っても口コミが一番ですね。皆さん方がやっておられる活動を、やっている活動の楽しさを語っていただく。自分がやっているボランティア活動、助け合いの活動、地域の活動、社会参加活動の楽しさを、そのやっている時間と同じぐらいいろんな人に語っていただく、これが広める一番の方法です。みんな集めて話をし、やっている人がその自分の活動について、「私はこの活動を始めてからこんなに体の調子がよくなったよ」や、「毎日が楽しくなったよ」とか、「妻との、あるいは夫との仲がとても楽しい、いろんなお話をすることになってとても話し合いをするいい仲になったよ」とか、「子供が何となく見ていて自分もやり出した」「何かボランティア活動をやり出したみたいで元気になった」など、すばらしい出来事が起こります。これをどんどん語っていただき、日本には陰徳という考えがあって、なかなかそういうことを語ることをしないのですけど、アメリカのボランティア活動は、もう自分のやっているボランティア活動と同じ時間人にそれを語り、そのすばらしい体験を分ち合うことに使いましょうと、そういうのが普通ですよね。だから一生懸命語る。されている体験をどんどん語っていただき、その生き方のすばらしさを人に分ち合っていただきたい。それが最高の進め方だと思います。

○助け合い活動の創出

これはこの事業が始まってから助け合い活動をどう広めるか、私どもこのガイドブックみたいなのを使って社会参加のあり方を進めていますが、そのテキストを使わせていただきます。これは今度助け合いを広めるためにというのを介護保険制度、要支援者を支える仕組みの中で国がつくることになって、その生活支援コーディネーターはお金が出ます。

 それを支える協議体、団体のリーダー、NPOなど、そういった方々がそれを支えて、助け合いを広めていこうということで、国も助け合いを中核に委ねるわけですから、こういう仕組みをつくりました。神戸市は、見守り推進員でしたか。震災の後、地域包括支援センターにそれぞれお一人ずつつけてやっておられるので、その方がこういう役割を果たされるのだと思うのですが、そういう助け合いを広める仕組みは、お金が出て始まりますので、それを支える協議体の構成員、どんどん手を挙げていただいて、一緒に助け合いを広める活動を合わせてやっていただければうれしいと思いますね。今日、午前中に表章されましたような灘区の田邉さんとか、賞をもらったらおしまいです、これに協力するしかない。協議体構成員をやって、大いに活躍していただければ、うれしいなと思います。

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 どういう風にして構成員を広めていくかという観点から作ったテキストです。「さわやか福祉財団」ホームページを見ていただければアップしておりますので、いろいろ御活用ください。

 その中に、高齢者の社会参加という項目があって、高齢者の社会参加、社会に貢献しない生き方を恥とする高齢者の生活文化の確立と、これ狙っています。ただ言うときは、もう少しやわらかにいきましょう。市民大学とか、塾とか、結構あります。神戸市も、この後のパネルディスカッションに登場される中村順子さん、兵庫県の社会貢献塾、コミュニティ・サポートセンター運営で頑張ってやっておられます。これ狙い目です。ここに、ちょっと引用させていただきました。この順子さんのやり方の特徴は、実践に結びついている。ただ学ぶだけというのではなくて、その人がどんな方向を向いているのか、どんな社会貢献活動が向いているのか、これ人によってやっぱり違います。おしめを替えたりする、それを好きよという人もいれば、高齢者はいいよなんて。高齢者って、結構高齢者嫌いなんですね。子供をやるよなんて子供の方を一生懸命やる人とか、やっぱり向き不向きがありますから、向きを初めから確かめておいて、うまくそちらに誘導するって、上手なやり方をしておられますから、そういう実践に結びついた市民大学とか、塾とか、ここはもう出た方、全部誘い込みましょう。

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 それから、家族、友人に勧める。さっき言ったように口コミ、一番有効です。特に女性の方々は、やってない御主人、多いと思うのですね。御主人をいかに社会貢献活動に引っ張り込むか、それであなたの人生が御主人と一緒に楽しめるものになるか、御主人と切り離された別々の味気ない人生になるのか。御自分はやっておられるから楽しいでしょうけど、家にごろごろ寝たきりのぬれ落ち葉がいるのは気になるじゃないですか。やっぱり思いっきり人生楽しみたかったら、まず御主人を引き込んでほしいですね。頑張ってください。なるべく御主人のお世話をしないこと。これが引き込むコツです。食事から何から全部準備するから自分でやらないので、是非御主人を自立させるために世話をせず、したくてもぐっとこらえて、自分の楽しい人生を送る、それが御主人を引き込むコツだと思います。

 地縁組織、これが大きいですね。やっぱり一番入りやすいですから。もういろんな活動があります。ここにあるような活動をやっていますので、活動をやっている自治会があればそれに参加すればいい。やってなきゃ自分でつくり出せばいいです。自治会の会長なんて、大体持ち回りでしょ。1年交代で、あれじゃあいい活動起こらないですよ。自分がやるぞとやって、朝の体操を始めてよし、子供の通学を見守る活動を始めてよし、みんなが集まる楽しい催しや学習のある集会場にしてよし、もう防犯活動の拠点にしてよし、いろんなイベントをやってよし。そういうふうにまず地縁のつながりを生き生きとしたものにする。これが一番やりやすいパターンですね。火の用心でもいいです。駐車場の整理をみんなと一緒にやってよし、市から清掃を請け負って、事業者の半額ぐらいで仲間と一緒に請け負って、掃除が終わったら、ちょっとした謝礼金をもらって、それで朝から仲間と一緒にビールを飲んでよし、楽しくやりましょう。やっぱり地域のつながり、これがベースですよね。NPOがありますし、経営団体に働きかけるのもいいし、公民館と学校、公民館はあんまり活用されていないようですが、神戸は学校の活用、随分進んでいるようです。

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 学校施設開放事業、神戸市がやっておられて、全国に先駆けて学校が地域の助け合いの拠点になっているそうです。学校ですから地域にあります。そこに顔を出していただいてよし、表彰制度です、今朝もあったようですが、やっぱり会った仲間、褒め合うことは良いことですよね。

 それから男性企業OBの参加。これが一番ポイントです。
中身の解説はいたしませんが、男性OBをどれだけ誘い込むか、これが社会参加の中でもその活動が広がる一つのキーになりますから、そのコツを幾つか書いております。男性は、なかなか入ってこないのですが、うまく入ってくれば、力を持っていますから一生懸命やります。是非ぜひうまく企業男性を引っ張り込んで、彼らを幸せにしてあげてください。

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 さわやか福祉財団は、そういう企業男性の方がたくさん参加してくれている珍しい団体です。NALCも同様に、こちらこに入っている人たちは元気ですよ。うちの財団も何人か80代、90代で亡くなられますけども、がんになって亡くなる少し前までボランティア活動を、病院のベッドでパソコンを使っていろいろやってくれていますね。そして本当にいい人生だったと言って亡くなられる。やっぱり人の力になるっていうことは、その人の人生を輝けるものにする、そういうものだなあということを実感しております。そういう人生、みんなでつくっていきましょう。

 ご清聴どうもありがとうございました。