活動事例紹介「高齢社会フォーラム・イン津」

「東海・北陸ブロック活動事例の紹介」

□東海・北陸ブロック 取組事例 (静岡県島田市 諸田 サヨ)

サヨばあちゃんの写真

 皆さん、こんにちは。これから「サヨばあちゃんの休憩所」のお話をしたいと思います。

 私は、昭和26年に中学を卒業し、自分で生きるために三重県四日市市に就職しました。昼間は工場で働き、夜は定時制の高校に通う生活です。お盆とお正月にしか静岡の実家には帰れません。やっと帰れる日には両親を喜ばせたい、高鳴る胸を抑えながら大井川の鉄道SLに乗ってひたすら懐かしいふるさとへと向かいました。ですから、三重県は私にとって大変懐かしい、縁の深い場所です。本日はこのような機会をいただいてとてもうれしく思っています。

 私は、平成9年に定年退職をしました。今から19年前、60歳のときです。60歳か、まだまだ若いなと感じました。子供たちはもうひとり立ちし、何の心配も要らない。第2の人生はこれからだ。自分のためにこの命を使おう。自分のやってみたいことを始めてみようと思いました。

 実は定年前から少し気になっていたことがありました。地元に若者がいなくなり、老人ばっかりになってきたことです。この調子では、若者のいない家庭では3度の食事も作れなくて困る。そんな高齢者が増えるに違いない。そこには自分の姿も重なりました。そこで、同じように退職し、子育ても終えた仲間に声をかけ、高齢者のためにお惣菜づくりの活動を始めました。

 その活動が軌道に乗りかかったころ、夫に先立たれ、私自身も2か月間点滴のみの入院生活を余儀なくされました。毎日毎日これからどうやって生きていこうかと考えました。

サヨばあちゃんの写真 SLの写真

 これから自分は一人、自分の人生のために生きようと改めて決意しました。病気も徐々に回復し、退院して1年あまり過ぎたころ、もう私は大丈夫ですとお医者様に言うと、女は強いな、男は大抵ここでだめになるよとおっしゃいました。

 このころから私は食べることの大切さを痛感し、お惣菜づくりを一生懸命やろうと思いました。どうせ自分のために作るなら周りの人の分も作って喜んで食べてもらいたいと考えたのです。地元でとれたものをいっぱい使って高齢者に優しく、健康に暮らせるようなお惣菜づくりを心がけました。あれから19年、元気もりもり働いて、79歳の私は今、サヨばあちゃんとして生きています。

学生時代のサヨばあちゃん SLに乗って帰郷 定年退職したサヨばあちゃん 美味しそうなお惣菜 お弁当作りをするサヨばあちゃん 宅配されるお弁当

 お茶の産地、川根を走る大井川鉄道の抜里駅をお借りしてお惣菜づくりを始めて10年ほどたったころです。地元のお惣菜屋さんとして、島田市、川根町の不便な場所にお住まいのお年寄りに声かけしながら、お弁当を宅配する活動もお手伝いするようになりました。そうした活動を地元静岡のSBSテレビさんが「サヨばあちゃんの無人駅」という番組にして放送してくれました。この番組は幸い賞をいただき、NHKの国際放送をはじめ何度も放送されました。

地元のお惣菜屋さん お惣菜を待っている人たち おしゃべりする人

 私にとって一番うれしかったことは、この番組をきっかけにたくさんの人が私に会いに来てくれるようになったことです。今では抜里駅の中に「サヨばあちゃんの休憩所」を作ってもらい、そこを拠点に頑張って生きています。美しい川根の自然の中、この休憩所でほっと一休みしながら出会いのすばらしさをたくさんの人たちと分かち合いたい。土曜日や日曜日など、休日を中心に休憩所を開けていますが、全国各地からたくさんの人が足を運んでくれます。地元の人たちも何かと声をかけ手伝ってくれます。幸せなことに新しい出会いに満ちた居場所づくりが育っているように感じています。

大井川鉄道抜里駅構内のサヨばあちゃんの休憩所 休憩所に居る人たち

 今年、平成27年は2つの大きなイベントを実現することができました。1つ目は、5月に行ったお茶摘み体験ツアーです。SLの見える茶畑でお茶摘みをと呼びかけて、抜里駅周辺の茶畑までお客様に来てもらい、茶摘み体験ツアーと茶工場の見学をしてもらいました。お茶もたくさん飲んでもらい、新茶も買っていただきました。

 当日はボランティアでお願いした地元のおばあちゃんたちが大活躍です。昭和の時代の娘さんたちですが、今では70歳から90歳、そんなおばあちゃんたちが10名ほどお茶摘み用の赤いたすきに前かけかけて、かすりの着物でチャッきり節を踊って盛り上げてくれました。その姿は若々しく輝いて見えました。

 2つ目は、その翌週に行ったブライダル列車の応援です。SL列車に乗って結婚式を挙げるカップルが抜里駅を通過するときに、お祝いの横断幕を駅舎に掲げ、くす玉を割り、国旗を振って新婚カップルをお祝いするイベントです。このときもお茶摘み体験ツアーの感動が忘れられないと地元の人たちが大勢ボランティアで出動してくれました。

お茶摘み体験ツアー 走行中のSL お茶摘み体験

 遠くから抜里駅に来るお客さんたちのために、朝からみんなでお食事の支度を一生懸命やりました。昼御飯のときには、でき上がったお惣菜をみんなで一緒にいただきました。外来のお客さんも、地元の人も、老人も、若者もみんな一緒です。大皿から小皿へ分け合って食べることで、家族のようなきずなが生まれました。今日はよかったよかったと和気あいあいで楽しみました。帰りには大井川鉄道さんの粋な計らいで、ブライダル列車のSLがふだんは止まらない抜里駅で臨時停車し、新婚さんたちもホームまで降りてきてくれてさらに盛り上がりました。

 私が今年うれしかったのはこの2つのイベントです。何よりうれしいのは、地元の人たちや遠くから来てくれる人たちの温かい応援です。あれもこれもとアイデアを出し合って手伝ってくださる皆さんです。仲間を集めてくれる人、私が留守の間も休憩所を開けてお客さんのお相手をしてくれる人、外来のお客さんたちも、僕らは写真だけではないんだよ、地元を応援したいと思って来るんだよと言ってくださいます。うれしいではありませんか。ありがたいことです。新茶を買っていただき、低迷しているお茶農家もにっこりです。本当に元気をいただきました。

 行政の方も応援してくださいます。助成金をいただき給茶機が買えましたので、何もなかった無人駅も、今では喉が乾けばいつでもお茶が飲めるようになりました。また、7月には、島田市市長さんもお忍びで来てくださいました。高齢者の宅配弁当をつくっている様子など、ありのままを見てもらいました。また、抜里駅の初代の駅長さんがまだお元気でおられることを知り、御招待することにしました。市長さんも駅長さんもとても喜んでくださいました。今振り返ってみて、私は60歳からの暮らしこそが私自身の本当の生き方だという気がしています。人生はよくも悪くもその人の考え方、生き方次第で随分と変わるものではないでしょうか。

ブライダル列車の応援 地元住民のボランティア活動 老若男女が一緒にボランティア 臨時停車するブライダル列車 SLに乗って結婚式を挙げるカップル 島田市長と一緒に作業

 あまり欲をかかず、肩肘張らずに、人はどうしたら幸せか、自分だったらどうしたいかと考えていく中でアイデアが浮かび、次の一歩を踏み出してみる。そういう生き方も楽しいなと感じています。

 高齢者になってもよく働き、よく食べる。1日20品目ぐらいはとり、たくさん声かけして、どなたも孤独にならないように心がける。若い人たちも安心してもらえるような生き方をする。高齢者になっても前向きで責任ある生き方をする。そういう気持ちはとても大切だと思っています。みんなが健康で幸せに生きられるように、これからもお惣菜づくりは気配りを持って続けていきたい、そう考えております。

 これで私のお話はおしまいです。皆さん、御清聴ありがとうございました。

機関車トーマスを模したSL 手を振る人々 お茶を摘む人の集合写真

□東海・北陸ブロック 取組事例 桑名歴史案内人の会 代表 中根靜也 (平成27年エイジレス章)

桑名歴史案内人の会 代表 中根靜也

 皆さん、こんにちは。御紹介いただきました桑名歴史案内人の中根と申します。

 私たちの会は、平成25年度に社会参加章を受章いたしました桑名歴史案内人の会と申します。私たちの会は、観光ボランティアガイドとして、桑名の史跡や文化を通して地域の活性化に寄与するということを目的に設立いたしまして、今年で18年目になります。桑名には多くの史跡や文化が残され、格好の観光スポットとなっております。

 それでは、私たちの活動と高齢化対策についての事例を説明させていただきます。

 私たちの会は平成10年4月1日に発足いたしました。本年度は新会員を含めて62名で活動いたしておりますが、昨年度の案内実績につきましては当時会員45名でございまして、年間約1万3,000人のお客様を御案内いたしております。ちょうど一昨年になりますので、当時は伊勢神宮の式年遷宮という年になりまして、そのときには1万7,000人ほどのお客様を御案内いたしましたが、昨年度はその反動からか4,000人ほど減少いたしまして1万3,000人ということになりました。

 平均年齢が70歳ということで、65歳の高齢者が占める割合は84%になってきております。体力的に長距離の案内は無理とか、あるいは段差が多いところは無理とか言われるように、会員に対してもいろいろ高齢化に対する体力的な問題が出てきております。そのような人に対して、いかに我々の活動をしていただくか。まだ頭がはっきりしておるのに体力的にちょっと無理やなと、こういうような方もたくさんみえますので、そういうような方をいかにして活動していただくかというのも私たちの取組の1つでございます。

 具体的な対策としまして、案内を主とする者と、それから会員のレベルアップにつながる者に区分されますが、ここでは昨年度の案内実績をもとに説明させていただきます。

 初めに、申込案内でございますが、これは観光案内所に申込まれたお客様を対象にして案内するもので、年間約6,000人のお客様を御案内いたしております。中には高齢の方が多くみえまして、歩くのはゆっくりととか、車で回りたいとか、そういうような要望もございます。

 次の六華苑常駐案内でございますが、明治に山林王と呼ばれました初代諸戸清六を継いだ2代目の諸戸清六の邸宅でございまして、鹿鳴館などを手がけましたジョサイア・コンドルが設計し、国の重要文化財であります現在の六華苑に常駐して、来苑されたお客様を御案内いたしております。県外からのお客様も多く、年間およそ5,000人を超えるお客様を御案内しております。そのうち、年間4、5回は100名を超える団体もございます。

 次の企画案内につきましては、会の組織であります企画事業部で立案し、市の広報やタウン誌などで一般募集を行い、応募された方を御案内する「案内人と歩こうシリーズ」として年2回実施しております。市内外から多くの参加申込みがありますので、昨年はおよそ200名を案内いたしました。

 また、私たちが受章した平成25年は伊勢神宮の式年遷宮の年でもありましたが、その2年後の今年になりますが、5月31日には慣例によりまして内宮宇治橋の鳥居が下賜されて、今まで過去に例のない盛大なお木曳き行事の後、一の鳥居が建てかえられました。それにあわせて企画案内を行い、全国から応募のあった多くのお客様を御案内いたしました。

 余談ではございますが、七里の渡しの鳥居は当初は外宮の正殿の棟持柱で、その20年後の遷宮を経て内宮宇治橋の西の鳥居、一番最初の鳥居でございますが、それになり、次にさらに20年後の遷宮を経まして七里の渡しの鳥居となるというように定められております。

 次に、船上案内でございます。これは国とか県、あるいは市の行政から依頼されて行う案内の1つで、ここでは水郷船めぐりを取り上げました。桑名は水郷のまちでもあります。行政からの要請によりまして、春、秋の行楽シーズンに船乗り場まで出向いて乗船し、案内しております。桜や国の近代化遺産を眺めながらの案内は、子供たちには体験を通して学習の場ともなり、お客様ばかりでなく私たちも楽しく案内しております。その他、行政や学校、各種団体、テレビ、雑誌の取材など、要請案内は年々増え、昨年度は7回、およそ2,000人の方を御案内いたしました。

 次に、出前講座でございます。これは地区のセンター行事の一環として定期的に行うものと、臨時に要請されて行う講座がございます。定期的なものは年間5、6回、臨時のものは年間2、3回あり、多くは高齢者を対象としたものに依頼されます。テーマは、講師となる人の自由の場合とテーマが決められた場合に分かれます。定期的なものはその都度担当者を交代し、一人でも多くの案内人が講師となり、地区の活性化に寄与できればと考えております。今後このような講座を増やし、体力的に無理のない高齢者の活躍の場として増やしていきたいと考えております。

 続きまして、新人研修でありますが、これは毎年行うのではなく、会員に不足を生じたときに随時行っており、昨年度は18名の方が研修を終えられ、引き続き新人を対象とした研修を続けております。研修は知識の向上ばかりでなく、案内のマナーやおもてなしの心を持って案内するよう指導しております。やはりここでも新人と言っても高齢の方が多く、会員が生きがいを持って活躍できる高齢者対策は早急の課題となってきております。

 最後に、案内マップの作製でありますが、行政等が作製するマップとは異なり、案内の面から見たややマニアックな案内マップを、桑名市の社会福祉協議会助成金などを活用して作製し、今まで3種類、増刷を含めて4回発行しており、案内時の活用やお客様の要望によりお渡しして好評を得ております。以上が案内関係を主に説明してまいりましたが、ほかにも会員のレベルアップとして、市や会が主催する講座や、あるいは研修旅行をはじめとして会の季刊紙を年2回発行し、体験や学習の発表の場としております。さらに、タイムリーなテーマで自由参加の講座などを行い、知識の向上と親睦を図っております。

 私たちの会は、桑名市内全ての地区へお客様のニーズに応じて案内するため、平素からの学習や現地研修は欠かせません。しかし、会員も高齢の方が増え、体力的に長距離の案内とか、あるいは段差等の多い案内は無理と言われる会員に対して、先ほど説明いたしました出前講座や六華苑の常駐、あるいは六華苑に対するお申込みのお客様を案内するようなところに高齢者の方を配置いたしましたり、あるいは地域のイベントに参加して培ってきた知識やあるいはスキルを発揮できる場を増やしていき、観光ボランティアを楽しみながらエイジレスの生活に生きがいを感じる会として精進していきたいと、このように考えております。

 幸い今後常駐できる場所が増えることも予想されております。現在私たちは行政や市民の皆さんの御支援をいただき、社会に貢献できることを喜びとして充実した会運営を行っております。元気なお年寄りが年を感じず、大きな声で町なかを御案内いたします。皆様方もぜひ桑名にお訪ねください。お待ちいたしております。

 以上をもちまして、私たちの活動と会員の高齢化に対する取組について報告を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。