平山 智昭さん
~郷土史を足で歩いて後世に伝える郷土史研究家~

名前(年齢) ひらやま ともあき
平山 智昭さん(82歳)
地域 山口県宇部市
活動概要 定年退職後、教員生活で考えたことやことばなどをまとめた教育指針本を自費出版し、教育関係者等に贈呈した。また、郷土の歴史や文化、史跡に関する研究を進め、多数の史跡案内や冊子を執筆し講演活動も行っている。
表章の類型 過去に培った知識や経験をいかして、それを高齢期の生活で社会に還元し活躍している事例
キーワード フィールドワーク/郷土史研究/名所旧跡めぐり/古文書

(注)年齢は、平成25年4月1日時点

活動のきっかけ

平山さんの素顔

郷土の歴史、風俗、民族を整理しておこう

 平成3年(61歳)に定年退職した後、郷土に埋もれている歴史、文化、史跡を後世に語り継ぎ、自分がこのふるさとに生き、生かされた証を残しておきたいと思ったことが発端です。そして、宇部市小野に伝わる役(えん)の行者伝説「巨人(おおびと)の足跡」を古老から聞いたのが、フィールドワークの出発点になりました。平成16年(74歳)に小野郷土史懇話会に入会しました。周防大島町が作成した史跡マップを参考に、小野地区の石碑、石仏、古跡、祭りなどの聞き取り調査から始めました。

活動内容や現在の活動状況

毛利秀就生誕が認められて建てられた石碑


公演中の平山さん

古文書から史実を解明

 平成3年の退職後、40余年間の教員生活の中で考えたことや体験の中で目覚めたことばなどをまとめた「朝霞もほのぼの晴れて」という教育指針本を自費出版し、教え子や保護者、教育関係者などに贈呈しました。これが執筆活動のスタートでした。
 平成18年から19年まで1年間かけて25単位自治会の協力を得て、地区内の史跡や伝承の風俗などを収録して「ふるさとの神様・仏様」を発刊し、全自治会や希望者に贈呈しました。この研究と並行して、神社、仏閣、祠、お堂、墓碑など300か所の内260か所を踏査した結果を、小野郷土史懇話会会員の協力も得て地図面に描きました。過疎化で社やお堂は崩れても史跡の位置を書き留めておくことによって、後世に語り継がれるよう「ふるさと小野・史跡案内」マップを作成して小野地区の全家庭に配布しました。
 古文書には光の部分と影の部分があり、光の部分は歴史書に載っているが、影の部分は文書としてほとんど残っていないことに気が付きました。そこで平山さんは、影の部分を研究テーマとしてきました。
 例えば、長州藩の初代藩主・毛利秀就(ひでなり)は広島城で誕生しと通説では言われていますが、実際は小野村で誕生したことを、フィールドワークをきっかけに発見しました。根拠は、小野に秀就のえな(胎盤)やへその緒を祀る神社、産湯の池があり、「西御殿(小野)で大照院様(秀就)ご誕生」などと書いた古文書が現存することです。この古文書の解明に2年間かけ結論を導き出しました。その結果、平成21年に「長州藩初代藩主毛利秀就公出生の謎を解く」を発行するに至りました。

ポイント、工夫している点

フィールドワークを重視して研究を続ける

 郷土史研究と執筆活動をつづけながら講演活動も並行して行っています。
 史実を明らかにするためにフィールドワークを重視し、研究を続けております。苔むした石碑に刻まれた古文書を写し取り、忠実に解釈を加えています。平山さんは、古文書の読解力に優れており、その成果が著述の数に表れています。また、研究の成果を研究仲間にのみ発表するのではなく、市県外からも依頼を受けて講演を行っています。その回数はこれまでで40回以上に及びます。

その他の活動

里山集落の歴史発掘から里山整備へ

 平成16年頃から「山上の神様」の歴史についての調査のために、小郡・桂谷を訪れたことをきっかけに、小郡の里山集落の歴史発掘及び講演活動や里山整備、ボランティア活動を行っています。
 日本の美しい風俗や伝統の継承を願って、郷土やそこに住む家族の絆に対する思いを年賀状に託して、毎年700名の友人に出しています。これまでの年賀状を「私の年賀状歳時記」に収録して友人に贈呈しています。自分史の一環として歴史観をまとめられたものです。

古文書より当時の領主が財前就久と判明し、石碑が建てられた

 〔本人インタビュー〕
 史跡めぐりのバスツアーや講演会活動は続けていきます。引き続き研究課題は、毛利秀就公の出生の謎の真実を探求していきます。その次の課題は、古代から営んできた人々の伝統的な文化、民間の風習、民族の伝承文化を後世のために書き残しておこうと考えています。