高橋 匡さん 89 歳
これまで封印していた被爆体験を後世に語り継ぐことを決意して。

原爆による悲惨な体験を子供たちに語り継ぐ

広島平和公園での平和学習授業

 平成15年、地域の公民館の企画で原爆展を開催する際に、高橋匡さんに語り部としての活動の誘いがありました。
 高橋さんは、その必要性を感じ、原爆症の申請もせずにこれまで封印していた被爆体験を語り継ぐことを決意しました。「原爆の悲惨さを後世に語り継がなければならない」と、77歳にして初めて平和学習授業の場で語り始めました。  「子供から自分の出生後の経緯を尋ねられ、説明する中で、自分の体験を語り継いでいこうと思った」ことも、今の活動の一つのきっかけとなりました。

地域の小中学校の生徒たちに 広島を訪れる修学旅行生に

原爆展で大学生に講演

 高橋さんは、平成15年に設立した「『原爆と峠三吉の詩』原爆展を成功させる会」に所属し、そこで語り部としての活動を行い、今では被爆体験を語り伝えることにも自信を得ています。
 高橋さんの活動担当は、広島市とその近郊の小学校8校・中学校2校の計10校です。6月から7月に訪れ、平和学習授業で被爆体験を語り聞かせる活動をしています。また、5月から6月、9月から11月には、各地から訪れる小学校約10校の修学旅行生を対象に、平和学習授業とし被爆体験を語り聞かせています。
 現在高橋さんは、大腸がんの後遺症の闘病中にもかかわらず、近郊の小学校・中学校の平和学習授業に赴いています。
 また、各地から広島平和公園を訪れる修学旅行生にも、被爆体験を語り、平和の大切さを説いています。

米寿過ぎに出会えた生きがい いつまでもこの活動を続けたい

 「『原爆と峠三吉の詩』原爆展を成功させる会」には22名の会員が在籍し、会員たちはグループで活動をしています。
 「きれいごとに聞えるでしょうが、亡くなった人たちに申し訳なくて。なぜ、助かったのか、今もようわからんのです」と語りながら「健康状態の許すかぎり、被爆体験を証言する活動を続けていきたい」。
 米寿を迎えた高橋さんは、今、この活動を生きがいに感じているようです。