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高齢化に関するマドリッド国際行動計画2002


目次

1 序論  (PDF形式19KB)

2 行動勧告  (PDF形式91KB)

3 実践とフォローアップ  (PDF形式17KB)



1 序論

  1. ウィーンで開催された第1回「高齢者問題世界会議」で採決された「高齢者問題国際行動計画」(※1)は、過去20年間にわたって高齢化に関する考え方と行動の指針となり、重要な政策とイニシアティブが策定されてきた。高齢者の人権に関する問題は、1991年に、自立、参加、ケア、自己実現及び尊厳の分野に関するガイダンスを定めた「高齢者のための国連原則」(※2)を策定する際に取り上げられた。

  2. 20世紀には寿命が大幅に伸長した。出生時の平均余命は、1950年以降20年伸びて66歳となり、2050年にはさらに10年伸びると予想されている。この人口学的成功と21世紀の前半の急速な人口増加は、60歳を超える人口が2000年の約6億人から2050年には約20億人に増加すること、及び世界中で高齢者として定義される人口の比率が、1998年の10%から2025年には15%に増加することを意味するものである。開発途上国では高齢者の増加率が最大となり、高齢者は今後50年間で4倍に増加すると予想されている。アジアと中南米では、高齢者に分類される人々の比率が1998年の8%から、2025年には15%に増加する。アフリカでは、高齢者の比率は同期間中に5%から6%に増加するに留まるが、その後2050年までに倍増すると予想されている。流行するHIV/エイズ及び経済的・社会的諸困難との闘いが続いているサハラ以南のアフリカでは、高齢者の比率はアジア・中南米の半分の水準に達すると予想されている。欧州と北米では、1998年から2025年にかけて、高齢者に分類される人口の比率が、それぞれ20%から28%、16%から26%に増加すると予想されている。このような世界的な人口転換は、個人、地域社会、国及び国際レベルでの生活のあらゆる側面に重大な影響を与える。人類のあらゆる活動、つまり社会的、経済的、政治的、文化的、心理的及び精神的活動が変化する。

  3. 大きな人口転換が進行しているために、21世紀中頃には、世界の人口に占める高齢層と若年層の比率が同一になるであろう。世界的には、60歳以上の高齢者の比率は2000年の10%から2050年までに21%に倍増すると予想されている。子供の比率は30%から21%へと3分の1減少すると予想されている。一部の開発途上国と市場経済移行国では、高齢者の人口は既に子供の人口を上回っており、しかも出生率は人口置換水準を下回っている。一部の先進国では、2050年までに高齢者の人口は子供の人口の2倍になるであろう。先進国では、平均で、高齢者の比率は女性100に対し男性71であるが、男性の比率は78に増加すると予想されている。開発途上国では、高齢者の女性の数が男性の数を上回る度合いは先進国ほどではない。これは、総じて、出生時の平均余命の男女格差が小さいことによるものである。開発途上国では、現在、60歳以上の高齢者の比率は、平均で女性100に対し男性88となっているが、男性の比率は21世紀半ばには87に微減すると予想されている。

  4. 人口高齢化は、開発途上国で大きな問題になると見られている。開発途上国は、21世紀前半に急速に高齢化すると予想されている。高齢者の比率は、2050年までに8%から19%に増加する一方、子供の比率は33%から22%に減少すると予想されている。この人口転換は、資源に関する重大な問題を意味するものである。先進国では徐々に高齢化が進行してきたけれども、高齢化、失業及び年金制度の持続可能性の関係に起因する問題に直面している。一方、開発途上国は、開発と人口高齢化の問題に同時に直面している。

  5. 先進国と開発途上国では、他にも人口学上の大きな相違がある。今日では、先進国の高齢者の大多数は都市部に分類される地域に居住しているが、開発途上国の高齢者の大半は農村地域に居住している。人口学に基づく予測によると、2025年までに、先進国の人口の82%が都市部に居住するが、開発途上国ではその人口の半分未満が都市部に居住するに過ぎない。開発途上国では、農村地域の高齢者の比率が都市部の同比率を上回っている。高齢化と都市化の関係についてはさらに研究する必要があるが、この傾向によると将来においては、多くの開発途上国の農村地域では高齢者人口が増加することになる。

  6. 先進国と開発途上国の間には、高齢者が生活する世帯の種類の点でも大きな相違が存在している。開発途上国では、多くの高齢者は複数世代同居世帯で生活している。この相違は、先進国と開発途上国では政策措置が異なってくるということを意味するものである。

  7. 高齢人口の中で最も増加率が高いのは、80歳以上の最も高齢の高齢者グループである。2000年には超高齢者の人口は7,000万人であったが、今後50年間でこの5倍以上に増加すると予想されている。

  8. 女性高齢者が男性高齢者を上回る割合は、年齢が高くなるほど大きくなる。国を問わず、女性高齢者に対する政策措置を優先しなければならない。加齢が男性と女性に与える影響が異なることを認識することは、男女の間で完全な平等を確保するため、かつ、問題に取り組むための効果的で効率的な手段を策定するためにも不可欠である。したがって、すべての政策、プログラム及び法律の中にジェンダーの視点を盛り込むことが極めて重要である。

  9. より大きな開発プロセスの中に世界的な高齢化の進展を組み込むことが重要である。高齢化に関する政策は、世界の最近のイニシアティブ及び、国連の主要な会議や首脳会議で決定された指導原則を考慮しつつ、幅広い人生設計を開発するという観点と社会的な観点から詳細に検討する必要がある。

  10. 「高齢化に関する国際行動計画2002」は、21世紀において高齢化の巨大な潜在力を発揮できるようにするために、あらゆる部門のあらゆるレベルにおいて、姿勢、政策及び慣行を変更することを要求する。多くの高齢者は、安心して尊厳をもって歳を重ね、家族や地域社会に参加する。本国際行動計画の目標は、世界中の人々が安心して尊厳をもって歳を重ねることができ、しかも、完全な権利を有する市民として社会に参加し続けることができるようにすることである。健康で豊かな高齢者の基礎は人生の早い段階で築かれることを認識しつつ、本行動計画は、政策立案者が各人の高齢化と人口高齢化に関する重要な優先事項に焦点を当てるのを支援するための実践的な手段となることを意図している。高齢化の共通の特徴と高齢化がもたらす問題点は認識されており、各国の様々な状況に合わせて具体的な勧告がなされている。本行動計画は、様々な開発段階が存在していること、様々な地域で経済体制の移行が行われていること、及びグローバル化が進展する中ですべての国々の相互依存度が高まっていることを認識している。

  11. 1999年の国際高齢者年のテーマとなった「すべての世代のための社会」は、次の4つの要素が含まれていた。すなわち、「生涯にわたる個人の開発」、「世代間の関係」、「人口高齢化と開発の相関関係」及び「高齢者が置かれている状況」である。国際高齢者年は、高齢化問題をすべての部門に組み込むための努力や、生活のあらゆる段階に不可欠な機会拡大のための努力を始めとして、世界における認識、研究及び政策措置を推進することに貢献した。

  12. 国連の主要な会議、首脳会議、国連総会の特別会合及びレビュー・フォローアップ・プロセスによって、すべての人々の経済的・社会的状況を改善するための、あらゆるレベルでの目標、目的、及び取組が設定された。これらの事項は、高齢者の具体的な貢献と関心に配慮すべき状況を明らかにするものである。これらの事項を実施することによって、高齢者は、開発に十分に貢献すると共に、開発から平等に利益を受けることができる。「高齢化に関する国際行動計画2002」の中には、上記の目標、目的及び取組に関連する多くのテーマが定められている。これらのテーマは次のとおりである。
    (a) すべての高齢者の人権と基本的自由を完全に実現すること。
    (b) 安心できる加齢の実現。高齢者の貧困根絶に関する目標の再確認、及び、「高齢者のための国連原則」も含まれる。
    (c) 所得を獲得できる労働やボランティア活動などを通じて、それぞれの社会の中で経済的、政治的及び社会的生活に完全かつ効果的に参加できるようにするための高齢者のエンパワーメント。
    (d) 高齢者は均質な集団ではないことを認識しつつ、例えば生涯学習や地域社会への参加などを通じて、生涯にわたって、かつ晩年において、自己開発、自己実現及び福祉の実現ができるような機会を提供する。この場合、高齢者は様々な状況にあることを認識すること。
    (e) 高齢者が経済的・社会的・文化的権利、市民権及び政治的権利を完全に享受できるようにし、かつ、高齢者に対するあらゆる形態の暴力と差別を廃絶すること。
    (f) 特に性による差別の廃絶を通じて、高齢者の間での男女平等の実現に取り組むこと。
    (g) 社会開発における家族、世代間の相互依存、連帯及び互恵主義が非常に重要であることを認識すること。
    (h) 高齢者に対して、予防的医療やリハビリ医療を始めとして、医療、支援及び社会的保護を提供すること。
    (i) 本国際行動計画を実行に移す際に、あらゆるレベルの政府、市民社会、民間部門及び高齢者自身の間でのパートナーシップを促進すること。
    (j) 特に開発途上国における高齢化が個人、社会及び健康に与える影響を評価するために、科学的研究と専門知識を活用し、かつ、技術の潜在力を理解すること。
    (k) 高齢の先住民の状況、独自の環境、及び、これらの先住民に直接影響を与える意思決定において彼らに有効な発言権を付与するための手段を探究することの必要性を認識すること。

  13. 開発に関する権利を始めとするすべての人権と基本的自由の促進と保護は、高齢者が差別を受けることなく、平等に、完全に参加できるような「すべての世代のための参加型社会」を創造する上で重要である。年齢による差別と闘い、広く高齢者の尊厳を認めることは、高齢者に対する尊敬の念を維持する上でなくてはならないことである。すべての人権と基本的自由の促進と保護は、「すべての世代のための社会」を実現する上で重要である。このためには、包括的で効果的な対話を通じて、世代間での互恵的関係を育成し強化し奨励しなければならない。

  14. 行動勧告は、3つの優先分野―「高齢者と開発」、「高齢に至るまでの健康と福祉の増進」及び「機能付与と支援的環境の整備」―ごとに策定されている。高齢者の生活がどの程度安心できるものとなるかは、これら3つの優先分野の進展に大きく影響される。これらの優先分野は、世界の高齢化に合わせて行う調整を成功させるという具体的な目標の達成に向けて、政策を策定し、実施する際の指針となるものである。この場合、成果は、社会開発、高齢者の生活の質の改善、及び、生涯を通じての福祉の質を支える公式・非公式の様々なシステムの持続可能性の改善に照らして測定される。

  15. 高齢化問題を世界的なアジェンダに組み込むことも重要である。広い範囲で公平に政策統合を進めるためには、協調努力が必要である。課題は、高齢化問題を社会的・経済的開発と人権に関する他の枠組みに関連付けることである。具体的政策は国や地域よって異なる可能性があるが、人口高齢化は、グローバル化と同様、将来を形成する普遍的原動力となるものである。高齢者には、自らの向上と社会全体の向上のために自発的に行動するという形で、社会に貢献できる能力があることを認識することが重要である。将来を考えると、我々は、高齢者の潜在力を将来の開発の基礎として受け入れる必要がある。

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2 行動計画

A.優先すべき方向性1:高齢者と開発

  1. 高齢者は、開発プロセスに完全に参加し、その利益を享受できなければならない。いかなる人も開発から利益を受ける機会を否定されてはならない。人口高齢化が社会経済的開発に与える影響は、あらゆる国々で生じている社会的・経済的変化と相まって、高齢者の継続的な統合とエンパワーメントを実現するための緊急行動の必要性を発生させている。さらに、移住、都市化、大家族から移動性の高い小家族への変化、自立を推進する技術を利用する機会の欠如、及び、その他の社会経済的変化によって、高齢者は開発の流れから取り残され、意義のある経済的・社会的役割を奪われ、高齢者に対する伝統的な支援の源泉が弱体化することが考えられる。

  2. 開発は社会のすべての部門に利益を与えることができるものであるが、このプロセスの妥当性を維持するためには、経済成長による利益の公平な分配を実現できるような政策を策定し実施することが必要である。「社会開発に関する世界サミット」で採択された「社会開発に関するコペンハーゲン宣言」(※3)及び「行動プログラム」(※4)の諸原則の一つは、世代間の公平性を実現することによって、現在と将来の世代のために責任を履行するための枠組みを各国政府が創造することである。さらに、ミレニアム・サミットは、貧困の根絶、及び、1990年代の世界の会議で設定された社会と人道に関する目標の達成が長期的な課題であることを確認した。

  3. 政策立案者の関心は、労働力の高齢化の影響を調整すると同時に、労働生産性と競争力を向上させ、かつ、社会的保護システムの持続可能性を維持することに向けられてきた。年金システムの財政を健全化するためには、必要に応じて、多面的な改革戦略を実施しなければならない。

論点1:社会と開発への積極的参加

  1. 「すべての世代のための社会」は、高齢者に対し社会に継続的に貢献する機会を提供するという目標を達成しなければならない。この目標を達成するためには、高齢者を排除ないし差別するような事柄は何であれすべて除去することが必要である。高齢者による社会的・経済的貢献は、経済活動だけに留まるものではない。高齢者は、家族と地域社会において極めて重要な役割を果たしていることが多い。高齢者は、家族の介護、生活のための生産的労働、家事及び地域社会でのボランティア活動を始め、金額で測定できない多くの貴重な貢献を行っている。また、高齢者のこのような役割は、将来の労働力の準備に貢献している。あらゆる部門ですべての年齢層の人々―特に女性―が行っている無給の労働を始め、これらすべての貢献を認識すべきである。

  2. 社会的・経済的・文化的活動、スポーツ、レクリエーション及びボランティア活動への参加も、人々の福祉の維持・増進に貢献するものである。高齢者団体は、世代間の交流を擁護・推進することを通じて、参加を可能にする重要な手段となるものである。

  3. 目標1:高齢者の社会的、文化的、経済的、政治的貢献の認識
    行動
    (a) 人権に関する条約や協定、特にあらゆる形態の差別と闘うことを目的とするものの実施を促進することによって、すべての人権と基本的自由が完全に享受されるようにする。
    (b) 家族、地域社会及び経済に対する高齢者の貢献を認識し、奨励し、支援する。
    (c) 高齢者が、文化的・経済的・政治的・社会的生活及び生涯学習に参加ないし継続参加することを奨励するための機会、プログラム及び支援を提供する。
    (d) 世代間の地域互助グループに高齢者が参加するのを促進するために情報とアクセスを提供し、かつ、高齢者が潜在力を十分に発揮できるようにするための機会を提供する。
    (e) 公的認定などを通じて、あらゆる年代の人々がボランティア活動に参加できる環境を創造し、かつ、ボランティア活動に参加する機会がほとんどまたは全くない高齢者の参加を促進する。
    (f) 高齢者の文化的、社会的及び経済的役割、並びに高齢者が無給の労働などを通じて社会に継続的に貢献していることに対する理解を高める。
    (g) 高齢者は、障害や地位に関わりなく、公平に尊厳をもって取り扱われるべきであり、また、経済的貢献とは関わりなく尊重されるべきである。
    (h) 高齢者のニーズに配慮し、人生のあらゆる段階で尊厳をもって生活する権利を尊重する。
    (i) 高齢者の生産能力が継続的雇用に値することについての雇用主の認識を促進し、かつ、高齢者の自覚を始め、労働市場での高齢者の価値に対する認識を促進する。
    (j) 社会的孤立と闘い、エンパワーメントを支持する戦略として、市民活動や文化活動への参加を促進する。

  4. 目標2:高齢者のあらゆるレベルの意思決定過程への参加
    行動
    (a) あらゆるレベルの意思決定において、高齢者のニーズと関心を考慮する。
    (b) 特に意思決定において高齢者の意見を反映させるために、存在しない場合には、あらゆるレベルの高齢者の団体を設立することを奨励する。
    (c) あらゆるレベルの意思決定において、高齢者―特に女性高齢者―を十分にかつ平等に参加させるための施策を講じる。

論点2:労働と労働力の高齢化

  1. 高齢者は、希望する限り、また生産的労働が行える限り、所得を伴う労働を継続することができなければならない。しかし、失業、不完全雇用及び労働市場の硬直性がしばしばこれを妨げており、個人の機会が制限され、社会から活力と技術が失われる結果となっている。世界サミットの「行動プログラム」(※4)の中で示された戦略と政策、及び、国連総会の第24回特別総会が提言した雇用拡大のためのイニシアティブ(※5)と同様、完全雇用という目標の追求に関する「社会開発に関するコペンハーゲン宣言」(※3) の公約3の実施が、上記の理由により基本的に重要である。職場において、高齢労働力を維持することの利点について認識を高める必要がある。

  2. 開発途上国と市場経済移行国では、現在高齢でしかも働いている人々の大半はインフォーマル・セクター(非公式の経済部門)で働いている。インフォーマル・セクターでは、公式の経済部門で提供されているような適切な労働条件や社会的保護は労働者に与えられていない。多くの開発途上国と市場経済移行国では、平均余命は、決定されている退職年齢や年金受給年齢を上回っている。さらに、これらの諸国では、出生率の減少により、労働市場に参入する人口が減少している。また、その傾向にしばしば伴うものとして、年齢による差別も行われている。労働市場に参入する若年層の人々の減少、労働力の高齢化及び早期退職の傾向により、労働力不足が発生する可能性もある。したがって、柔軟な退職、新たな雇用措置、柔軟な労働環境及び障害を抱えた高齢者に対する職業訓練などを通じて雇用の可能性を拡大し、また高齢者が有給の労働と他の活動を組み合わせることができるようにする政策が重要である。

  3. 労働市場において女性高齢者に影響を与えている要素にも、特に留意する必要がある。特に、有給の労働に従事している女性に影響を与えている要素として、就労の中断や家事義務のために低賃金となることやキャリア開発ができないこと、退職に備えて年金や他の資金を増やすことができないことなどがある。家庭に配慮した労働政策が存在しない場合には、これらの困難は増幅される可能性がある。女性が収入獲得期間中に貧困又は低賃金であることは、高齢になった際の貧困につながる場合が多い。本国際行動計画全体の目標は、職場において年齢の多様化と男女の適切なバランスを実現することにある。

  4. すべての人々に雇用を提供するという目標の達成に取り組むためには、高齢者の継続的雇用が、若年者の雇用機会の削減につながるものではなく、社会のすべての構成員の利益となる国家の経済力と生産力の改善に継続的に貴重な貢献を行うことができるものであるということを認識しなければならない。経済全体は、若年労働者や新人労働者を訓練するために高齢者の経験と技能を活用するその他の計画によっても利益を受けることができる。

  5. 労働力不足が発生する可能性がある場合、より多くの労働者が自ら退職時期を遅らせて引き続きパートタイム又は正規の従業員として働くのを奨励するために、現行の優遇措置を大幅に変更する必要がある。人的資源管理に関する施策と政策には、高齢者の具体的なニーズを反映させ、取り組んでいかなければならない。高齢者が晩年においても技能、健康及び能力を活かして働けるようにするためには、職場の環境と労働条件を適切に調整する必要性も生じるであろう。雇用主、労働者団体及び人事担当者は、高齢者を職場に維持し生産的労働力として活用することを促進するような国内外の新たな職場慣行に注意を払わなければならない。

  6. 目標1:働く意志のあるすべての高齢者への雇用機会
    行動
    (a) 雇用増加をマクロ経済政策の中心に置く。例えば、労働市場政策では、あらゆる年齢層の人々のために生産と雇用の増加率を高めることを目標にする。
    (b) 高齢者が働くことを希望しまたその能力がある限り、高齢者が継続的に働けるようにする。
    (c) 生産年齢人口の労働市場参加率を高め晩年における疎外や依存のリスクを削減するための施策を講じる。この施策は、次の諸政策を実施することで推進する。女性高齢者の労働参加率の引き上げ。労働能力を維持するため、予防及び職場での健康と安全の促進に重点を置いた、持続可能な労働のための医療サービス。技術、生涯学習、継続的な教育、実地訓練、職業訓練及び柔軟な退職制度などの活用。失業者や障害者を労働市場に組み入れるための努力。
    (d) 女性や、不利な状況に置かれているグループ―長期の失業者や障害者―の労働参加率を引き上げるための特別な努力を行う。これにより、彼らの晩年における疎外や依存のリスクを削減する。
    (e) 特に小規模・零細事業の奨励、及び、差別、とりわけ男女間の差別なしに高齢者が融資を受けられるようにすることなどを通じて、高齢者の自営を推進する。
    (f) インフォーマル・セクターで働いている高齢者が、所得、生産及び労働条件を改善できるよう支援する。
    (g) 高齢者の採用促進、及び高齢者が雇用の際に不利な条件を押し付けられないように予防することを通じて、正規の労働市場における年齢障壁を排除する。
    (h) 特に柔軟な退職に関する政策と慣行を実施する一方で、獲得した年金受給権を維持できるようにすることによって、従業員と雇用主のニーズに配慮する新たな退職制度を必要に応じて推進する。この目標を達成するための施策としては、早期退職の優遇や圧力の削減、及び退職年齢を過ぎて働くことに対する不利な条件を排除することなどが考えられる。
    (i) 多くの労働者が高齢の家族、障害者、HIV/エイズなどの慢性病患者を介護する義務を抱えていることを認識し、またこれに対応し、特に労働と介護義務を両立させることを目指した、家庭・ジェンダー配慮型の政策を策定する。
    (j) 例えば、獲得した年金受給権、障害給付受給権及び健康保険が退職年齢の遅れによって悪影響を受けることを防止することなどによって、退職年齢を過ぎて働くことに対する不利な条件を排除する。
    (k) 労働能力を維持しまた高齢化する労働者のニーズに対処することを目指した、新たな労働形態や革新的な職場慣行を推進する。このために、従業員支援プログラムを策定する。
    (l) より長期間にわたって労働を継続することで金銭や健康などにどのような影響が生じるのかを労働者に知らせた上で労働者が決定を下せるよう、支援する。
    (m) 高齢労働者または高齢求職者に関する否定的な固定観念を是正し、高齢労働者の技能と能力の正しい評価を推進する。
    (n) 政策担当者または意思決定者が企業の合併を承認する場合、高齢者が若い労働者に比較して大きな不利益を被ったり給付金を大幅に削減されたり失業したりすることがないように、高齢労働者の利害に配慮する。

論点3:農村地域の開発、移民、都市化

  1. 多くの開発途上国や市場経済移行国の農村地域では、若年成人層の流出により、高齢者人口が増加している。高齢者は、伝統的な家族支援を受けることなく、また、場合によっては十分な資金もなく、取り残される可能性がある。食糧確保や農業生産に関する政策とプログラムでは、農村地域の高齢化の影響を考慮しなければならない。農村地域の女性高齢者は、特に家族を扶養するために報酬の得られない作業に限定されているか、あるいは、他の人物の支援によって生活しているような場合には、経済的に脆弱な状況に置かれる。先進国や市場経済移行国の農村地域でも、高齢者は基本的サービスを受けられないことが多く、また、経済的・地域的な資源も不十分である場合が多い。

  2. 合法的な国際移住が制限されているにも関わらず、世界的に移住が増加している。開発途上国や市場経済移行国では、海外に居住している子供達からの送金などの経済的支援が高齢者の重要な生活の糧である場合が多い。これらの経済的支援は、高齢者を通じて、地域社会と地域経済に配分されている。数十年前に国際移住した人々が高齢化するにつれて、一部の政府はこれらの高齢移住者に対する支援を要求している。

  3. 都市の環境は、一般的に農村地域とは異なり、伝統的な大家族や相互依存システムを支えるのにはあまり適さない。開発途上国では、農村地域から都市部に移住した高齢者は、社会的ネットワークを喪失し、支援インフラの欠如によって悪影響を受ける場合が多い。その結果、特にこれらの高齢者が病気になるか障害者になった場合には、孤立したり疎外されたりすることがあり得る。従来から農村地域から都市部への人口移動が発生し、低開発状態の都市が拡大してきた国々では、貧しい高齢者の数が増加している。開発途上国や市場経済移行国では、都市部に移住した後に高齢となった人々は、狭い住居、貧困、経済的自立の喪失、また家族が外で収入を稼がなければならないためにこれらの家族から身体介護を受けることがほとんどなく、公的介護もほとんど受けられないような環境下で生活している場合が多い。

  4. 目標1:農村地域における生活条件とインフラの改善
    行動
    (a) 金融とインフラ施設へのアクセス及び農業技法・技術の改善のための訓練を通じて、高齢農業従事者の能力を高める。
    (b) 所得創造プロジェクトや農村の協同組合に対する資金と支援の提供を通じて、また経済の多様性の拡大を通じて、小規模企業の設立と活性化を推進する。
    (c) 金融サービス機関が少ない農村地域において投資を促進するために、少額融資制度や少額融資機関などを設立して地域金融サービスの育成を図る。
    (d) 農村・遠隔地域において、成人を対象とした教育、訓練及び再訓練を継続的に実施する。
    (e) 農村・遠隔地域の人々と、知識集約型経済・社会とを結び付ける。
    (f) 経済資源に対する公平なアクセスと管理を維持しようとする場合、農村・遠隔地域の女性高齢者の権利にも配慮する。
    (g) 農村・遠隔地域の高齢者に対する適切な社会的保護と社会保障に関する施策を推進する。
    (h) 農村・遠隔地域の高齢者が、基本的な社会サービスに公平にアクセスできるようにする。

  5. 目標2:農村地域における高齢者軽視(marginalization)の軽減
    行動
    (a) 障害を抱えた高齢者を始め、農村地域の高齢者の自立を維持するために、プログラムを計画・実施し、サービスを提供する。
    (b) 農村や地域社会における伝統的な支援の仕組みを推進し、強化する。
    (c) 特に長い高齢期を過ごすことになる資産の少ない女性高齢者を始めとして、親類のいない農村地域の高齢者に対する支援を強化する。
    (d) 融資やインフラ・サービスへのアクセスの提供を通じて、農村地域の女性高齢者のエンパワーメントを優先する。
    (e) 高齢者の間での知識と経験の共有の促進を始め、農村地域と地域社会における革新的な支援の仕組みを推進する。

  6. 目標3:高齢移住者の新しいコミュニティへの統合
    行動
    (a) 高齢移住者のための社会的支援ネットワークを推進する。
    (b) 経済的安定と健康を維持できるように高齢移住者を支援するための施策を講じる。
    (c) 都市化による悪影響を防止ないし相殺するために、高齢者センターの設立などの地域密着型施策を講じる。
    (d) 文化的に受け入れられ、しかも、各人が希望する場合には複数世代の同居を推進するような住宅設計を奨励する。
    (e) 家族が同居を望む高齢者と一緒に生活するのを支援する。
    (f) 必要に応じて、また、各国の法律に従って、高齢移住者を移住先国の社会的、文化的、政治的及び経済的生活に組み込むことを推進し、これらの高齢移住者を尊重するような政策やプログラムを策定する。
    (g) 高齢移住者に公的サービスを提供する場合、言葉や文化の障害を除去する。

論点4:知識、教育、訓練へのアクセス

  1. 教育は、積極的で充実した生活を送るための重要な基礎となるものである。ミレニアム・サミットでは、2015年までにすべての子供達が初等教育の全課程を修了できるようにするとの公約が表明された。知識集約型社会では、生涯にわたって教育と訓練を受ける機会を保証する政策を策定することが必要になる。継続的な教育と訓練は、個人と国全体の生産性を維持する上で不可欠のものである。

  2. 現在、開発途上国には、読み書き能力と基本的計算力が最低水準のまま高齢になった人々が増加している。これらの高齢者は生活能力が限定されているため、その健康と福祉にも悪影響が生じる可能性がある。すべての国々で、生涯教育と訓練は高齢者が労働に参加するための前提となるものでもある。

  3. 多様な年齢層の従業員を擁する職場では、各人が技能、知識及び経験を共有する環境が生まれる。この種の相互訓練は、労働協約や政策で正式なものとすることも可能であり、また、非公式の慣行のままにしておくことも可能である。

  4. 教育や訓練を受けないまま技術変化にさらされる高齢者は、疎外される可能性がある。若いうちに多くの教育を受ける機会に恵まれることで、高齢になっても技術変化に対処できるなどの便益を享受することができる。しかし、このような機会があるにもかかわらず、世界の多くの地域では非識字率が依然として高水準にある。技術は、人々を結び付け、それによって孤立、孤独及び年代間の分断を減少させるために活用することができる。したがって、高齢者が技術変化に触れる機会を持ち、これに参加しかつ適合することができるようにするための施策を策定しなければならない。

  5. 訓練、再訓練及び教育は、職場の変化に参加しこれに適合する労働者の能力を決定する重要な要素である。技術変化や組織の変更は、従業員の技能を陳腐化させ、それまでに蓄積された業務経験の価値を大幅に引き下げる可能性がある。働いている高齢者のために、知識に触れる機会、又は教育及び訓練を受ける機会に一段と重点を置く必要がある。これらの高齢者は、特に情報技術の利用が広く一般化してきていることを考慮すると、若年労働者に比べて、技術変化や組織変更に適合する上で大きな困難に直面する場合が多いと思われる。

  6. 目標1:教育・訓練及び・再訓練の継続や職業支援、就労サービスに関する生涯を通じた機会均等
    行動
    (a) 2015年までに、成人―特に女性―の識字率を50%改善し、すべての成人に基礎教育と継続的教育を公平に提供する。
    (b) 障害を抱えた高齢者に対する識字とコンピューターに関する訓練を始め、高齢者と高齢労働者を対象とした識字、基礎的計算力及び技能に関する訓練を推進する。
    (c) 高齢労働者を対象とした訓練と再訓練を促進し、かつ、退職後にそれまでに取得した知識や技能を活用することを奨励するような政策を実施する。
    (d) 特に情報・通信技術などの新規技術の利益がすべての人々に及ぶようにするとともに、女性高齢者のニーズにも配慮する。
    (e) 高齢者が日常必要となる技術を効果的に活用するのを支援できる、利用者に分かりやすい情報を作成し、普及させる。
    (f) 高齢者の身体能力や視力に配慮したコンピューター技術、印刷された説明資料及び音声による説明を促進する。
    (g) 雇用主と従業員の両者に、高齢者に対する継続的な訓練と教育の利益を明確に示すことができるようにするために、訓練と生産性の関連性を一層明確にするための研究を推進する。
    (h) 高齢労働者―特に女性―を対象とした再訓練の価値に対する雇用主と労働者団体の認識を向上させる。

  7. 目標2:長年の経験による利益の認識を通じた、すべての世代の人の潜在能力や専門的知識の最大限の活用
    行動
    (a) 教育を通じて高齢者の潜在能力と専門知識を十分に活用するための施策を検討する。
    (b) 世代間で新規技術の活用などに関する知識と経験を共有する機会を、教育プログラムを通じて提供する。
    (c) 高齢者が、指導者、仲介者及びアドバイザーとして活動できるようにする。
    (d) 家族、近隣及び地域社会におけるジェンダー問題に配慮した、複数世代による、伝統的及び非伝統的な相互支援活動を支持、推進する。
    (e) 特に情報技術を始めとするあらゆる活動分野で、高齢のボランティアが技能を提供するのを奨励する。
    (f) 高齢者の社会的・文化的・教育的知識及び潜在能力の活用を奨励する。

論点5:世代間連帯

  1. あらゆるレベル―家族、地域社会及び国―での世代間の連帯は、「すべての世代のための社会」の実現の基盤となるものである。また、連帯は社会的統合を実現するための大きな前提条件であり、正式な公共福祉と非公式の介護システムを確立するための基礎となるものである。人口学的、社会的及び経済的環境が変化したことで、経済成長と開発を維持し、所得とサービスの提供を適切に効果的に維持するためには、年金、社会保障、医療及び長期的介護に関するシステムを調整する必要性が生じている。

  2. 家族・地域社会レベルでは、世代間の連帯はすべての人々にとって貴重なものとなり得る。現代の生活では移動やその他の圧力が生じて人々が離れ離れになることがあるが、あらゆる文化における大半の人々は、生涯を通じて家族との密接な関係を維持している。このような関係は相互主義的なものである。高齢者は、財政の面、及び、特に重要なこととして孫やその他の親族に対する教育や世話の面の両方で大きな貢献を行っている場合が多い。政府を始め社会のすべての部門は、このような関係を強化することを目標にしなければならない。しかし、高齢者にとっては、若い世代と同居することが常に最善の選択肢であるとは限らないということを認識することも重要である。

  3. 目標1:世代間の公平と互恵を通じた連帯強化
    行動
    (a) 公共教育の場で、高齢化が社会全体に関わる問題であることに対する理解を促進する。
    (b) 現行の政策を再検討し、これらが世代間の連帯を促進し、社会的統合を促進するものとなるようにする。
    (c) 高齢者が社会的資源であるとの認識に立って、世代間の互恵的で生産的な交流を推進するためのイニシアティブを策定する。
    (d) 地域社会における世代間の関係を維持・改善するための機会を拡大する。例えば、すべての年齢グループによる会合を推進し、世代間の差別を回避する。
    (e) 両親、子供及び孫を同時に世話しなければならない世代の人々の状況に取り組む必要性を検討する。
    (f) 社会開発の重要な要素である世代間の連帯と相互支援を推進し、強化する。
    (g) 高齢者のための様々な生活形態―家族との同居や異なる文化・状況での別居など―の利点と欠点に関する調査を開始する。

論点6:貧困の除去

  1. 高齢者の貧困を除去するための取組は、「高齢化に関する国際行動計画」の基本的な目標である。近年においては、貧困除去に関する目標と政策に対する関心が世界的に高まっているが、多くの国々では、高齢者は依然としてこれらの政策やプログラムの対象になっていないことが多い。貧困が蔓延している国では、貧困の中で生活している人々は老後になってさらに厳しい貧困の中で過ごすことになる場合が多い。

  2. 女性に関しては、社会保護システムにおける制度的偏向、特に勤続年数を基準とする偏向は、女性の貧困の大きな原因となっている。経済力の分担の面での男女間の不平等と格差、男女間での無報酬労働の不公平な分担、女性経営者に対する技術的・資金的支援の欠如、特に土地や融資などの資本に対するアクセスと統制の面での不平等、労働市場へのアクセスの面での不平等、及び、伝統的、慣習的なすべての有害な慣行は、女性の経済面におけるエンパワーメントを制約し、女性の貧困比率を高めている。多くの社会では、離婚したか別居しているか未婚の女性または寡婦が世帯主となっている家庭は、特に貧困に陥るリスクが高い。女性の貧困率、特に高齢女性の貧困率の増加の問題への取組として、特別な社会的保護措置が必要である。

  3. 障害を抱えている高齢者は、障害のない高齢者に比べて貧困に陥るリスクが高い。これは、雇用主による差別、及び職場が障害者を受け入れる体制になっていないことなどを始めとする職場での差別も一因である。

  4. 目標1:高齢者の貧困の削減
    行動
    (a) 2015年までに極貧状態で生活している人々の比率を半減させる。
    (b) 貧困削減目標を実現するための政策とプログラムの対象者に高齢者を含める。
    (c) 雇用、所得獲得機会、融資、市場及び資産に対する高齢者の公平なアクセスを推進する。
    (d) 貧困除去戦略及び実施プログラムの中で、高齢女性、最も高齢の高齢者、障害を抱えた高齢者及び独居高齢者の具体的なニーズに取り組む。
    (e) 貧しい高齢女性のニーズを明らかにするための重要な手段として、必要に応じて、かつ、適切なすべてのレベルにおいて、年齢とジェンダーに関連する貧困指標を作成するとともに、既存の貧困指標を活用して、年齢グループごと及び性別ごとに見直しを行うことを奨励する。
    (f) 高齢者、特に女性高齢者が、貧困を除去するための開発努力に対する貢献度を高め、しかも、これらの開発努力から利益を得られるようにするために、高齢者のエンパワーメントを拡大する革新的プログラムを支援する。
    (g) 国際的に合意された目標に従って貧困を除去するための各国の努力を支援するために、国際協力を強化する。かくして、高齢者に対する持続的な社会的、経済的支援を実現する。
    (h) ますますグローバル化する経済への参加を阻害する障害に取り組む開発途上国の能力を強化する。かくして、貧困、特に高齢者の貧困を削減するための開発途上国の努力を支援する。

論点7:所得保障、社会的保護/保障、貧困予防

  1. 拠出型であるか否かを問わず、所得保障及び社会的保護/保障に関する制度としては、非公式なものと高度に設計されたものとがある。これらの制度は、経済的繁栄と社会的統合の基盤となるものである。

  2. グローバル化、構造調整プログラム、財政上の制約及び高齢者人口の増加は、正式な社会的保護/保障システムに大きな圧力を加えるものであると考えられている場合が多い。適切な所得保障を持続可能な形で行うことは非常に重要である。正式な社会的保護/保障システムの対象者が限定されている開発途上国では、人々は、非公式な家族の支援を阻害するような市場ショックや個人的災難に対して脆弱である。市場経済移行国では、経済改革により、あらゆる層の国民、特に高齢者や子供のいる多くの家族が貧困化した。超インフレーションが発生した国では、年金、障害者保険、健康保険及び貯蓄はほとんど価値がなくなった。

  3. 女性、特に高齢女性の貧困率上昇の問題に取り組むためには、適切な社会的保護/保障制度が必要である。

  4. 目標1:すべての労働者が、必要に応じて、年金、障害保障、及び健康便益を含む基礎的な社会的保護/保障を受けられるような計画の推進
    行動
    (a) すべての人々が、高齢になった場合に適切な経済的、社会的保護を受けられるようにすることを目指す政策を策定し、実施する。
    (b) 社会的保護/保障システムにおける男女平等を確立する。
    (c) 妥当な場合には、公式・非公式部門で増えつつある労働者を社会的保護/保障システムの対象者とする。
    (d) 非公式部門で働いている労働者を対象とした革新的な社会的保護/保障プログラムを検討する。
    (e) 低熟練の高齢労働者の雇用を推進するプログラムを導入し、社会的保護/保障制度にアクセスできるようにする。
    (f) 年金制度、及び妥当な場合には障害保障の完全性、持続可能性、支払能力及び透明性を確保する。
    (g) 民間年金、補完的年金、及び妥当な場合には障害保障に関する規制の枠組みを確立する。
    (h) 社会的保護/保障に関するすべての分野を対象として、高齢者にアドバイスとカウンセリングを提供する。

  5. 目標2:社会的、経済的に弱いグループに特段の注意を払いながらの、すべての高齢者への最低所得の保障
    行動
    (a) 妥当な場合には、拠出型ではない年金制度と障害保障制度の確立を検討する。
    (b) その大半が女性でしかも一人暮らしで貧困に陥りやすい、他に支援手段を持たない高齢者に最低所得を提供するための社会的保護/保障システムが存在しない場合は、緊急にそれらのシステムを確立する。
    (c) 年金システムないし障害保障を改革する場合には常に、高齢者の生活水準に配慮する。
    (d) 超インフレが年金、障害保障又は貯蓄に与える影響を緩和するために、必要に応じて措置を講じる。
    (e) それぞれの任務を考慮して、国際機関、特に国際金融機関に対して、開発途上国と必要性の高いすべての国が、特に高齢者のために基本的な社会的保護を実施する努力を行う際にこれを支援するよう要請する。

論点8:緊急事態

  1. 自然災害や人道上の緊急事態においては、高齢者が特に脆弱な状況にあるということを認識しなければならない。何故なら、高齢者は、家族や友人から離れて孤立している可能性があることと、食糧や避難所を見つけることがより困難であるからである。同時に、高齢者には、一次介護の役割を引き受けてもらうこともできる。政府と人道救援機関は、高齢者が緊急事態への対処や復興・再建においても積極的な役割を果たすことができるということを認識しなければならない。

  2. 目標1:自然災害その他の人道的緊急事態時及びその後における、高齢者による食糧、避難場所、医療及びその他のサービスへの公平なアクセス
    行動
    (a) 武力紛争や外国による占領などの事態においては、障害を被った高齢者に対する身体的、精神的なリハビリ・サービスの提供を始め、高齢者を保護・支援するための具体的な措置を講じる。
    (b) 国連総会の決議に従って、各国政府に対して、国内で孤立している高齢者を保護・支援するとともにこれらの高齢者に人道的支援や人道的緊急支援を提供するよう要請する。
    (c) 緊急事態においては、高齢者の居場所と身元を確認し、ニーズ評価報告書にこれらの高齢者が貢献できることと、何に対して脆弱なのかを記載するようにする。
    (d) 高齢者特有の身体上の問題や健康上の問題、及び基本的なニーズ支援を高齢者の要求に合わせる方法に関して、救援機関職員の認識を高める。
    (e) 適切なサービスが利用できるようにし、高齢者がこれらのサービスに物理的にアクセスできるようにし、かつ、必要に応じて、高齢者をサービスの計画作成と提供の作業に参加させる。
    (f) 不慣れな新しい環境の中でさらに歳を重ねることになる、異なった文化的背景を有する高齢の難民は、特に社会的ネットワークと追加的支援を必要としていることを認識し、かつ、これらの高齢の難民が上記のサービスに物理的にアクセスできるようにする。
    (g) 防災、救援作業員の訓練、及びサービス・物品の利用可能性などに関する災害救援計画の中では、高齢者の支援に明確に言及すると共に、この支援に関する国家的なガイドラインを策定する。
    (h) 高齢者が家族や社会との関係を取り戻し、かつ、外傷性ストレス障害を克服するのを支援する。
    (i) 災害発生後、高齢者が詐欺的行為による金銭搾取の対象にならないようにするためのメカニズムを作る。
    (j) 緊急事態においては高齢者が身体的、精神的、性的又は金銭的虐待の対象になることがあることに対する認識を高めると共に、このような事態を抑止する。特に、女性のリスクが大きいことに留意する。
    (k) プログラムの作成と実施に関するあらゆる側面に、より多くの高齢難民を参加させる。たとえば、活動的な高齢難民が自立するのを支援し、また、最も高齢の高齢者に対する地域的な介護活動を改善する。
    (l) 復旧や長期的開発に役立つような方法での国際協力を強化する。例えば、自然災害を被ったか、人道上の緊急事態にあるか、又は、紛争後の状態にある国々に対する人道的支援を分担し、かつ、これを調整する。

  3. 目標2:緊急事態後の、コミュニティの再構築・再生及び社会構造の再建における高齢者の貢献性の高揚
    行動
    (a) 脆弱な高齢者の身元確認及び救助などを始め、高齢者を地域救援・復興プログラムの実施の際に参加させる。
    (b) 教育、コミュニケーション及び紛争解決に関して、高齢者が家族や地域のリーダーとして活動できる潜在力を持っていることを認識する。
    (c) 所得創造、教育及び就職斡旋などを含む復興プロジェクトを通じて、高齢者の経済的自立を支援する。この場合、高齢女性の特別なニーズに配慮する。
    (d) 孤立しているか、又は土地・その他の生産手段や個人的資産を失った高齢者に、法的アドバイスや情報を提供する。
    (e) 自然災害やその他の人道上の緊急事態において実施される人道支援プログラムでは、高齢者に特に配慮する。
    (f) 緊急事態後に高齢者による貢献が成果を上げた事例から得られた教訓を、必要に応じて共有し適用する。

B.優先すべき方向性2: 高齢期にわたる健康と福祉の増進

  1. 健康は、各人の貴重な資産である。同様に、国民全体の健康の度合いが高いことは、経済成長と社会開発にとって重要なことである。健康で長生きすることによる利益は、すべての人類が共有するには至っていない。これは、次の事実によって明らかである。すなわち、すべての国々、特に開発途上国と一部の地域では、未だにすべての年齢層において高い罹病率と死亡率を示している。

  2. 高齢者は、リハビリや男女別の医療を始め、予防的及び治療的医療を受ける完全な権利を有している。高齢者がすべての医療・病気予防サービスを受けられるようにするためには、生涯を通じての健康増進・病気予防活動において、自立の維持、病気や障害の予防、病気や障害に関わる治療を受けるようになる事態を遅らせること、及び、既に障害を抱えている高齢者の生活の質を改善することなどに重点を置く必要があるということを認識しなければならない。医療・その他サービスの中には、高齢者の特別なニーズを充足するための要員訓練と施設を含めなければならない。

  3. 世界保健機構(WHO)は、健康とは、身体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態を言うと定義している。つまり、単に病気にかかっていない状態を意味するものではない。健康で幸福な状態で高齢期を迎えるためには、生涯を通じた個人の努力が必要であると共に、そのような努力が報われるような環境が必要である。健康な生活の維持は、個人の責任において行われるべきものである。政府は、健康で幸福な状態で高齢期を迎えることを可能にするような環境を整備する責任がある。人道的及び経済的な理由により、高齢者が他の年齢層の人々と同じように予防、治療、リハビリを利用できるようにする必要がある。同時に、高齢者の特別なニーズを充足できるような医療サービスを提供することも必要である。この場合、妥当であれば、大学の授業と医療システムに老年医学を導入することも考えるべきである。政府以外の重要な関係者は、非政府組織や家族である。これらの人々は、健康的な生活を維持することに関して各人を支援すると共に、政府と緊密に協力して、支援環境を整備することができる。

  4. 現在、世界のあらゆる地域で疫学的な変化が生じている。病気の主流が、伝染病や寄生虫病から慢性病や消耗性疾患に変化しているのである。しかし、多くの開発途上国や市場経済移行国は、非伝染性の病気に加えて、新たに発生するか又は再発生しているHIV/エイズ、結核及びマラリアなどの伝染病と闘うという二重の負担を強いられている。

  5. 高齢者に対する介護と治療の必要性が高まっているので、適切な政策が求められている。適切な政策がなければ、大きなコスト増が発生する可能性がある。健康の増進や病気の予防、支援技術、リハビリ介護、精神衛生に関するサービス、健康なライフスタイル及び支援的な環境の推進を始め、生涯にわたる健康の増進を図る政策は、加齢に伴う障害の程度を引き下げ、かつ、予算を節減することができる。

論点1:生涯を通じた健康と福祉の増進

  1. 健康増進に関する政策は、人々に対し、それぞれの健康状態を管理し改善することを奨励するというものである。健康増進に関する基本戦略は、「健康増進に関するオタワ宣言(1986年)」(※6)で定められている。健康寿命を伸ばし、すべての人々の生活の質を改善し、死亡率と罹患率を引き下げ、平均余命を伸ばすとした目標は、国際人口開発会議(1994年)の場で設定された(※7)。これらの目標は、公衆衛生と適切な保健医療の利用可能性を改善するためにWHOが推奨した施策の実行を通じて、効果的に達成することができる。

  2. 健康増進のための活動、及び、高齢者が公平に保健医療や生涯を通じての病気予防ためのサービスを利用できることは、健康な状態で高齢期を迎えるための基本である。生涯という観点からは、健康増進と病気予防のための活動においては、自立の維持、病気や障害の予防と遅延、治療の提供、及び、すでに障害を抱えている高齢者の機能と生活の質の改善に重点を置く必要があることを認識する必要がある。

  3. 健康状態を維持・強化するためには、個人の健康に影響を与えるための特定の活動だけでは十分ではない。健康は、物理的環境、地理、教育、職業、所得、社会的地位、社会的支援、文化及びジェンダーを始め、環境、経済及び社会に関する様々な決定要素の影響を強く受けている。高齢者の経済的・社会的状況を改善することによって、これらの人々の健康を増進することができる。法律や提供されるサービスが改善されたにも関わらず、多くの分野では、女性に対しては、依然として、生涯を通じての公平な機会は与えられていない。女性に関しては、高齢期の福祉を確保するための生涯を通じたアプローチが特に重要である。何故なら、女性は、生涯を通じて障害に直面し、その社会的、経済的、身体的及び精神的な福祉に対する累積的な悪影響が高齢期になって出てくるからである。

  4. 子供と高齢者は、その中間の年齢層の人々に比べて、様々な形態の環境汚染に対して影響を受けやすい。したがって、子供と高齢者は、最低水準の汚染からも悪影響を受ける可能性がある。環境汚染のために医療が必要になることで、生産性が低下し、人々の生活が加齢と共に悪影響を受ける。栄養失調と栄養不良は、高齢者のリスクを高めるものであり、高齢者の健康と活力に悪影響を与える可能性がある。高齢者に病気、障害及び死亡をもたらす主な原因は、特に栄養、運動及び禁煙に重点を置いた健康増進/病気予防施策を通じて緩和することができる。

  5. 目標1:高齢期における疾病リスク及びそれに伴う潜在的依存を増大させる蓄積要因の減少
    行動
    (a) 高齢者、特に貧しい人々や疎外されている人々の健康状態を改善するために、貧困削減政策に重点を置く。
    (b) 高齢になるにしたがって、家族や地域社会が介護や保護を提供できるよう、必要に応じて条件を整備する。
    (c) 高齢者の健康状態を改善し、障害や死亡率を削減するために、目標、特に性別ごとの特性を考慮した目標を設定する。
    (d) 高齢期に病気や障害を引き起こすような、主な環境的、社会・経済的要素を特定し、これらに取り組む。
    (e) 健康増進、健康教育、予防策などに関する情報を提供するキャンペーンにおいて、健康に良くないダイエット、運動不足及び喫煙や酒の飲みすぎなどの不健康な習慣に起因する既知の主要リスクに重点を置く。
    (f) アルコールの取り過ぎを防止し、また、あらゆる年齢層の人々によるタバコ製品の利用中止を促進してタバコ製品の利用と間接喫煙を減少させるために、総合的な施策を講じる。
    (g)  幼年期から生涯を通じての環境汚染による影響を削減するため、法的・行政的施策を策定・実施し、また、キャンペーンをはじめとする広報活動や健康増進活動を実施する。
    (h) 業界と専門家団体の参加を得て規制措置及び教育的措置を講じることによって、すべての医薬品の一層安全な利用を推進し、かつ、処方薬の誤用を削減する。

  6. 目標2:高齢者の不健康を回避する政策の開発行動
    (a) 病気や障害の発生を予防ないし遅らせるための早期対策を講じる。
    (b) 予防措置として、成人を対象とした予防接種プログラムを推進する。
    (c) 高齢者が、男女の特性に配慮した初期予防・検診プログラムを利用できるようにする。
    (d) 高齢者に健康な生活と自己管理についてカウンセリングやアドバイスを行う保健・社会サービス及び介護の専門家に対して、訓練を行い、優遇策を講じる。
    (e) 社会的孤立や精神障害に起因する危険性に留意する。さらに、互助活動や近隣訪問プログラムを始めとする地域相互支援グループの活動に対する支援、及び高齢者によるボランティア活動への積極的参加の推進を通じて、高齢者の健康リスクを緩和する。
    (f) 社会的孤立を抑止し、自立を支援するための戦略として、高齢者による市民活動や文化活動への参加を推進する。
    (g) あらゆる年齢層の人々の傷害を防止することを目的とした国内・国際安全基準を厳格に実施し、かつ、必要に応じて強化する。
    (h) 不慮の傷害について、その原因をよく理解すること、及び、歩行者を保護する施策を講じ、転落防止プログラムを実施し、家庭内での火災などの災害を削減し、安全に関するアドバイスを提供することによって、これを防止する。
    (i) 高齢者が病気にかかるのを防止するための政策に活用することを目的として、高齢者に共通する病気に関する統計指標をあらゆるレベルで作成する。
    (j) 高齢者に対して、運動やスポーツを行うなどの活動的で健康な生活を維持ないし開始することを奨励する。

  7. 目標3:すべての高齢者による、食糧と適切な栄養へのアクセス
    行動
    (a) 高齢者に清潔な水と安全な食糧を公平に提供する活動を推進する。
    (b) 国内レベルと国際レベルの両方で、安全で栄養的に適切な食糧を確保することによって、食糧の安定供給を実現する。この場合、食糧と医薬品が政治的圧力の手段として使用されないようにする。
    (c) 幼児期から生涯にわたって健康を維持できるような適切な栄養を与える活動を推進する。この場合、生涯を通じて男性と女性に固有の栄養上のニーズを充足することに特に留意する。
    (d)  できれば地元の食品を使用して、適切なカロリーが摂取でき、主要栄養素及び微量栄養素が不足しないようなバランスの取れた食事を取ることを奨励する。この場合、栄養基準量に関する国家目標を策定する。
    (e) 高齢者のための健康増進・病気予防プログラムを策定・実施する場合には、栄養不足とこれに起因する病気に特に留意する。
    (f) 高齢者及び私的介護者を含む一般国民に対し、水分、カロリー、タンパク質、ビタミン及びミネラルの適切な摂取など、高齢者に特有の栄養ニーズに関する教育を行う。
    (g) 摂食を阻害し栄養失調を引き起こす可能性のある疾病を防止し治療するため、安価な歯科治療の提供を推進する。
    (h) 高齢者に特有の栄養ニーズを、すべての医療従事者、介護従事者及び専門家を対象とした訓練プログラムのカリキュラムの中に含める。
    (i) 病院やその他の介護施設では、高齢者に対して、入手可能な栄養と食糧を適切かつ十分に提供する。

論点2:ヘルスケア・サービスの普遍かつ均等なアクセス

  1. 高齢者に対する医療とリハビリに投資することによって、これらの人々が健康で活発に活動できる年数を延ばすことができる。究極の目標は、健康増進や病気予防から、プライマリ・ヘルスケア、救急治療、リハビリ、慢性病に対するコミュニティー・ケア、障害を抱えている人々を含めた高齢者に対する身体的・精神的なリハビリ、及び、痛みを伴うか、又は、不治の疾病で苦しんでいる高齢者に対する苦痛緩和医療(※8)などの提供に至るまで、ヘルスケア・サービスなどを連続的に提供することである。高齢者に対する効果的な介護は、身体的、心理的、社会的、精神的及び環境的要素を組み合わせたものでなければならない。

  2. プライマリ・ヘルスケアは、現実的で科学的な根拠があり社会的にも受け入れ可能な方法と技術に基づいて行われる重要な医療であって、地域社会の個人と家族が普遍的に利用可能なものである。またこれは、地域社会や国が、その開発のすべての段階において、自立と自決の精神をもってこれを維持できるようなコストで行われるものである。高齢者は、医療を受けようとする場合、資金的、身体的、心理的及び法律的な障害に直面する可能性がある。さらに、高齢者に対する医療は若年層の人々に対する医療に比べて価値が低いと考えられることもあることから、高齢者は、医療を受ける場合において、年齢による差別あるいは加齢による障害があることによる差別を受ける可能性もある。

  3. 我々は、開発途上国と後発開発途上国を苦しめている公衆衛生問題、特に、HIV/エイズ、結核、マラリア及び他の伝染病に起因する問題の重大性を認識している。我々は、世界貿易機関(WTO)の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」を、これらの問題に取り組むための各国の活動と国際的な活動の中に含める必要があることを強調する。

  4. 知的所有権の保護は、新たな医薬品の開発にとって重要である。我々は、開発が価格に与える影響について懸念が示されていることも認識している。我々は、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」は、加盟国が公衆衛生を保護するための措置を講じるのを阻止するものではないこと、また阻止すべきではないことに同意する。したがって我々は、同協定に関する公約を再確認しつつ、公衆衛生の保護に関する各国政府の権利、特にすべての人々による医薬品の利用を促進する各国政府の権利を支援するような方法で、同協定を解釈し実施することができるものであること、また、解釈し実施すべきであることを確認する。

  5. 各国政府は、医療基準を設定・監視すること及びあらゆる年齢層の人々に医療を提供することに関して、大きな責任を有している。政府、非政府組織や地域の団体を始めとする市民社会及び民間部門の間のパートナーシップは、高齢者に対する医療と介護の提供の面で貴重な貢献を行うことができる。しかし、家族や地域社会が提供するサービスは効果的な公衆衛生システムを代替することはできないということを認識することが極めて重要なことである。

  6. 目標1:高齢者がヘルスケアへの普遍かつ均等にアクセスできるようにするための、年齢、ジェンダー、その他言葉面での不自由を含むあらゆる理由に基づく社会的、経済的不平等の除去
    行動
    (a) 高齢者のためにヘルスケアとリハビリに関する資源を公平に配分するための施策を講じる。この場合、特に貧しい高齢者に対する資金配分を増やすと共に、農村・遠隔地域などのような医療水準が低い地域に対する資金配分を増やし、必須医薬品や治療手段が安価に利用できるようにする。
    (b) 料金の引き下げ又は廃止、保険制度の適用、及び他の資金支援措置を通じて、貧しい高齢者や、農村・遠隔地域に住んでいる高齢者が公平に医療を受けられるようにする。
    (c) 必須医薬品や治療手段が安価に利用できるようにする。
    (d) 医療やリハビリの効果的な利用と選定に関し、高齢者に情報を提供する。
    (e) 年齢による差別、または、その他の形態の差別が行われることなく、高齢者がプライマリ・ヘルスケアを受けられるようにすることを国際社会の義務とする。
    (f) 高齢者によるプライマリ・ヘルスケアの利用率を高め、年齢による差別又はその他の形態の差別を排除するための措置を講じる。
    (g) 農村地域での医療に関する地理的・交通的制限を削減するために、利用可能であれば、遠隔治療や遠隔研修などの技術を活用する。

  7. 目標2:高齢者のニーズを満たすためのプライマリ・ヘルスケアの開発・強化と、その過程への高齢者自身の参加
    行動
    (a) プライマリ・ヘルスケアを普遍的に公平に利用できるようなものとするための施策を講じ、高齢者のために地域医療プログラムを確立する。
    (b) 地域社会が高齢者に医療支援サービスを提供するのを支援する。
    (c) 妥当かつ有用である場合には、プライマリ・ヘルスケアプログラムの中に伝統的な医療を含める。
    (d) プライマリ・ヘルスケア従事者とソーシャルワーカーに対して、基本的な老年学及び老人病学に関する訓練を行う。
    (e) 特に医薬品会社などの民間企業に、開発途上国の高齢者を特に苦しめている病気に対する医薬品を安価に提供するための研究に投資を行ってもらうための制度と優遇策をあらゆるレベルで奨励する。また、WHOに対し、保健に関する研究の分野での公共部門と民間部門によるパートナーシップの改善を検討するよう要請する。

  8. 目標3:高齢者のニーズを満たすための、一連のヘルスケア・サービスの開発
    行動
    (a) 高齢者に対するヘルスケアとリハビリに関する適切な基準を設定するために、適切なレベルで規制の仕組みを策定する。
    (b) 地域別の医療プログラムを策定、実施及び評価するための系統的なニーズ評価基準を定めた地域開発戦略を実施する。この基準には、高齢者の意見も反映させなければならない。
    (c) プライマリ・ヘルスケア、長期的な介護、社会サービス及び他の地域サービスの間での調整を改善する。
    (d) 苦痛緩和医療8の提供、及びその総合的医療への統合を支援する。このために、苦痛緩和医療のすべての提供者を対象として、苦痛緩和医療8の訓練に関する基準を策定し、かつ、総合的なアプローチを奨励する。
    (e) 医療制度の下で、予防と治療を始めとするすべての医療を確立し、その調整を行う。医療には、プライマリ・ヘルスケア、救急治療、リハビリ、長期的な治療及び苦痛緩和医療8が含まれる。高齢者の様々な医療ニーズに対処するために、資源を柔軟に活用する。
    (f) 老年学に基づいた専門的医療を開発し、かつ、これらの活動とプライマリ・ヘルスケアや公的介護との調整を改善する。

  9. 目標4:高齢者の初期及び長期の介護サービスの開発や強化への巻き込み
    行動
    (a) 公的介護、ヘルスケア及びリハビリに関するプログラムの計画、実施及び評価を行う場合に、高齢者を参加させる。
    (b) 医療提供者/公的介護者に対し、高齢者に対する医療についての決定を行う場合に、高齢者を全面的に参加させることを奨励する。
    (c) 高齢者による自己管理を推進し、かつ、医療や社会奉仕活動において、高齢者の体力や能力を活用する。
    (d) 医療政策を策定する場合、高齢者のニーズや考え方を反映させる。

論点3:高齢者とHIV/エイズ

  1. 高齢者がHIV/エイズに感染しているかどうかの診断は困難である。何故なら、感染の兆候は、高齢者に発症する他の免疫不全症候群と誤診される可能性があるからである。高齢者は、HIVに感染するリスクが高まる可能性がある。その理由は、高齢者は、一般的に広報活動の対象にならないので、HIVからどのようにして自分を守るべきかに関する情報が得られないからである。

  2. 目標1:感染者及び感染者又は残された家族に対するケアを行っている高齢者のための、HIV/エイズが高齢者の健康に及ぼす影響の評価の改善
    行動
    (a) 高齢者のHIV/エイズ感染率を把握できるようにするために、HIV/エイズ・データの対象を拡大する。
    (b) 高齢の介護者の健康状態とニーズに関する定量的・定性的データを収集するなど、HIV/エイズ患者の高齢介護者に特に注意を払う。

  3. 目標2:HIV/エイズに感染した高齢者やエイズ感染者の介護を行う人々に対する適切な情報、介護技術訓練、治療、医療ケア及び、社会的サポートの提供
    行動
    (a) 現地の感染状況を反映させて、必要に応じて公衆衛生・予防戦略を改定する。一般住民を対象としたHIV/エイズの予防とリスクに関する情報は、高齢者にも伝達すべきである。
    (b) 効果的な介護ができるようにするために高齢者に訓練を行うと共に、高齢者自身の健康と福祉に対する悪影響を緩和する。
    (c) エイズ治療と支援戦略では、HIV/エイズに感染している高齢者のニーズにも配慮する。

  4. 目標3:HIV/エイズを含む慢性病の子供の介護者、及び彼らの里親としての役割を果たせるようにするための、高齢者の貢献度の高揚と認識
    行動
    (a) 「HIV/エイズに関するコミットメント宣言」(※9)に従って、高齢者、特に介護者の役割を果たしている高齢者にHIV/エイズが与える経済的影響を調査する。
    (b) 高齢の介護者が子供や孫のニーズを充足するのを支援するために、「ミレニアム宣言」に従って、これらの人々に現物支援、医療及び融資を行う政策を実施する。
    (c) 政府機関、及び、HIV/エイズに感染した子供、若者、高齢者のために活動を行っている非政府組織の間の協力関係を強化する。
    (d) すべての諸国において、特にHIV/エイズに対する感染率の高い諸国において、高齢者が社会的・経済的開発に貢献していることを理解し、明らかにするための調査を奨励し、その調査結果を広く公表する。

論点4:介護者及び保健医療専門家に対する訓練

  1. 世界的に、高齢者のための活動を行っているすべての医療専門家を対象として、老人病学及び老年学分野の教育を行う機会を拡大し、社会サービスの分野の専門家を対象として、高齢者の健康に関する教育プログラムを実施する機会を拡大する緊急の必要性がある。私的介護者も、高齢者の介護に関する情報を入手したり基本的訓練に参加する必要がある。

  2. 目標1:高齢者のニーズに応えるための、保健医療の専門家やその他の従事者に対する、より充実した情報や訓練の提供
    行動
    (a) 医療専門家、公的介護専門家及び私的介護者を対象として、老年学及び老人病学を始め、高齢者に対する医療と介護の分野の教育・訓練プログラムの実施を推進する。すべての諸国、特に開発途上国によるかかる活動を支援する。
    (b) 医療専門家と公的介護専門家を対象として、高齢者の医療/福祉/介護に関する総合的アプローチ、及び加齢の社会的・心理的側面を考慮した教育プログラムを継続的に実施する(※10)
    (c) 老年学及び老人病学を専攻する学生を増やすために特別措置を講じることによって、老人医学及び老年学に関する専門的教育を拡大する。

論点5:精神衛生における高齢者のニーズ

  1. 世界的に、精神衛生上の問題は、障害と生活の質の低下をもたらす主原因となっている。精神衛生上の問題は、加齢に伴う必然的な結果ではないことは明白である。しかし、人口の高齢化と共に、精神障害を有する高齢者の数が大幅に増加する可能性がある。様々な喪失感と生活の変化は、精神障害を引き起こす可能性が高い。適切な診断が行われない場合には、治療が不適切になるか、全く治療が行われないか、あるいは、不要な入院につながる可能性もある。

  2. かかる病気に対処するための戦略としては、薬物療法、心理的支援、認識訓練プログラム、介護を行う家族と介護スタッフに対する訓練、及び入院治療などがある。

  3. 目標1:予防から早期準備、治療サービスの提供、高齢期における精神衛生及び上の問題管理までを含む、包括的な精神衛生上のケアサービスの開発
    行動
    (a) 高齢者の精神障害の予防、早期発見及び治療を改善するための国・地域レベルでの戦略を策定し、実施する。この戦略には、診断方法、適切な薬物療法、心理療法、及び専門家や一般介護者に対する教育が含まれる。
    (b) アルツハイマーや他の精神障害の進行度を早期に評価・診断できる能力を高めるための効果的戦略を、必要に応じて策定する。患者、医療専門家及び介護者のニーズを満たすことができるようにするために、精神障害に関する研究を学際的に行う必要がある。
    (c) アルツハイマー病や痴呆による精神障害を有する人々が、可能な限り長く自宅で生活できるように支援するためのプログラムを実施し、これらの人々の医療ニーズに対処する。
    (d) 自立を支援するためのプログラムを開発し、患者、家族及びその他の介護者のために休息介護を提供する。
    (e) 退院した患者の社会復帰を支援するための心理療法プログラムを開発する。
    (f) 不要な入院を避けるために、地域社会による総合的介護を開発する。
    (g) 安全と治療と提供し、かつ、精神障害で苦しんでいる高齢者のニーズを満たす上で高齢者の尊厳を維持できるような施設を設立する。
    (h) 精神障害の症状、治療、結果及び回復見通しに関する情報を公表する。
    (i) 長期介護施設に入院している高齢者に精神衛生に関する医療を行う。
    (j) 医療専門家に対して、すべての精神障害及び鬱病の発見に関する訓練を継続的に行う。

論点6:高齢者と障害

  1. 障害の発症率は、加齢と共に高くなる。女性は、特に高齢期に障害にかかりやすい。これは、男女間で平均余命に格差があること、病気に感染しやすいこと、及び生涯にわたって男女格差を受けてきたことにもよるものである。

  2. 障害による影響は、障害を有する人々に対する否定的な固定観念によって悪化することが多い。この固定観念により、障害者の能力が過小評価され、また、障害者の能力を十分に発揮させないような社会政策が講じられる可能性がある。

  3. 障害を抱えた高齢者の自立を促進し、これらの高齢者が社会のあらゆる分野に十分に参加できるようにするためには、すべての高齢者を支援する施策と環境が必要になる。計画段階及び意思決定段階では、認識障害を有する人々の高齢化の問題に配慮する必要がある。

  4. 目標1:生涯を通じた最大限の身体機能の維持と、及び障害を持つ高齢者の完全な社会参加の促進
    行動
    (a) 障害問題に取り組む国の政策・プログラム調整機関は、そのアジェンダの中に、障害を有する高齢者の問題を含めるようにする。
    (b) 健康、環境及び社会に関する要因を考慮して、必要に応じて、性別及び年齢に配慮した、障害の治療と予防に関する、国・地域レベルの政策、法律、計画及びプログラムを策定する。
    (c) 障害を持つ高齢者のために、身体的・精神的リハビリを行う。
    (d) 障害の原因に関する情報、及び生涯を通じて障害を予防ないし管理するための方法に関する情報を提供するための地域プログラムを開発する。
    (e) 障害の発生又は悪化を防止するために、高齢者に配慮した基準や環境を創造する。
    (f) 障害を持つ高齢者の自立の妨げになる障壁を少なくし、自立を促進するような住宅の開発を奨励する。可能であれば、及び一般の人々が利用する商業用施設やサービスと同様に、共用空間や交通、その他のサービスを整備する。
    (g) 障害を持つ高齢者が、サービスや支援を受け、社会に十分に参加することができるようにするために、リハビリ、適切な介護及び支援技術の提供を推進する。
    (h) 国際協定や国際法に従って、社会で最も脆弱な人々を含めたすべての人々が差別を受けることなく医薬品や医療技術を利用することを推進し、また、不利な環境に置かれた人々を含めたすべての人々がこれらを利用するのを推進する。
    (i) 障害を持つ高齢者とその介護者による自助団体の設立を奨励し、促進する。
    (j) 生産的な活動を行うことができ、しかも有償労働またはボランティア活動を行うことができる障害を持つ高齢者を、雇用主が受け入れることを奨励する。

C.優先すべき方向性3:活動可能かつ支援的な環境の確保

  1. 社会開発のための支援的環境の推進は、「世界社会開発サミット」で合意された中心的目標の1つであった。この目標は、社会開発に関する国連総会の第24回特別総会で改定・強化されたものである。この公約には、次のような枠組み条件が含まれていた。1) 「ミレニアム宣言」で確立された、参加型で透明で責任のある政治システム、及び国内・国際レベルでの公正な統治。2) すべての人権が不可分で相互依存的で相互関連性を有するものであることに対する認識。3) 政府開発援助と債務軽減を通じて、開発途上国に対する支援を拡大すること。4) 環境、経済及び社会に関する政策の間の重要な相互関係に対する認識。5) 開発途上国と市場経済移行国による先進国市場への参入の改善。6) 国際金融危機による悪影響の緩和。このような支援環境の要素の実現及びその結果としての経済成長と社会開発によって、現在の国際行動計画の中で合意された目標と政策の実現が可能になる。

  2. 社会開発のために国内・国際資源を動員することは、「高齢化に関する国際行動計画2002」を実施するための重要な条件である。1982年以降、既存の資源の効果的で効率的な活用を推進するための改革は、大きな関心を集めた。しかし、多くの国々では、国の歳入が不十分であること、及び人口転換や他の要因に起因する社会サービスや社会保護システムの新たな問題のために、社会サービスと社会保護システムに十分な資金を配分することができていない。また、重債務開発途上国が直面している債務負担の増加は持続不可能なものであり、人間優先型の持続可能な開発と貧困削減の実現にとっての大きな障害の1つになっているとする見方が、広い範囲で受け入れられている。多くの開発途上国と市場経済移行国では、債務返済額が過度の水準にあるために、社会開発を促進し、基本的サービスを提供する能力が大幅に制約されている。

  3. 我々は、「ミレニアム宣言」の目標を始め、国際的に合意された開発目標の実現に必要な資源が大幅に不足するとの現在の見通しに、懸念を持って留意する。「ミレニアム宣言」の目標を始め、国際的に合意された開発目標を実現するためには、先進国と開発途上国の間で新たにパートナーシップを構築する必要がある。我々は、健全な政策、あらゆるレベルでの公正な統治及び法治主義を追求することを公約する。さらに、我々は、国内資源を動員し、国際的な資金フローを引き付け、開発のエンジンとしての国際貿易を促進し、開発、持続可能な負債金融、債務救済のための国際的な資金・技術協力を拡大し、かつ、国際的な通貨、金融、貿易システムの統一性と一貫性を強化することを公約する。

  4. すべての人々?女性と男性、子供、若者及び高齢者?のために結合力のある参加型社会を創造するために、政策とプログラムを強化することに関する公約も重要である。高齢者の環境にかかわらず、すべての人々には、それぞれの能力を高めることができるような環境の中で生活する権利がある。一部の高齢者は高度な身体的支援と介護を必要とするが、多数の高齢者はボランティア活動などの活発で生産的な活動を実施したいと考えており、またその能力がある。高齢者の能力を高め、高齢者による社会への貢献を支援するような政策が必要である。このためには、安全な飲料水や適切な食品などの基本的サービスの提供も必要である。また、生涯にわたっての開発と自立を推進し、互恵主義と相互依存に基づいた社会制度を支援するような政策も必要である。各国政府は、このような支援的環境を強化し、市民社会と高齢者自身も参加させるような政策を策定・実施する上で中心的な役割を果たす必要がある。

論点1:住宅と生活環境

  1. 住宅と生活環境は、高齢者にとっては特に重要である。生活環境には、利便性と安全性、住宅を維持するための資金負担、及び、住宅によってもたらされる重要な情緒的・心理的安心感などの要素が含まれる。優れた住宅は健康と福祉を増進することができると認識されている。また、高齢者には、可能な限り、居住する場所を選択する権利を付与することも重要である。これは、政策とプログラムに組み込む必要がある要素である。

  2. 開発途上国及び一部の市場経済移行国では、人口の急速な高齢化が生じているほか、都市化が進行し、都市部の多くの高齢者が居住できる安価な住宅とサービスが不足している。さらに、農村地域でも、大家族という伝統的環境ではなく、孤立した環境の中で高齢期を迎える人々の数が増加している。孤立した高齢者は、適切な交通手段や支援が受けられない場合が多い。

  3. 先進国では、既存の環境と交通システムが高齢者にとって大きな問題になっている。住宅の開発は、一般的には、交通手段を有する若い家族を対象として行われている。農村地域では、交通が問題になっている。何故なら、高齢者は公共輸送に依存する割合が高いが、農村地域では公共輸送が不十分な場合が多いからである。また、一部の高齢者は、子供が独立した後、あるいは、配偶者が死亡した後には維持できないような住宅に住み続ける場合もある。

  4. 目標1:高齢者個人の好みや高齢者にとって手に入れやすい住宅の選択肢が与えられるといった配慮を行うことによる、コミュニティにおいて、(在宅で)高齢期を迎えることへの対応の促進
    行動
    (a) 年齢による差別のない地域社会の開発を推進する。
    (b) 高齢者を家族や地域社会に融合させるのを支援するための多くの部門の活動を調整する。
    (c) 数世代の住民で構成された地域社会を支援するために、交通、保健、衛生及び安全などに関する地域インフラに対する投資を推進する。
    (d) 高齢者による財・サービスの利用を容易にするような政策を導入し、そのための優遇策を支援する。
    (e) 高齢者に公営住宅を公平に配分する。
    (f) 居住施設、長期的介護及び社会参加の機会を統合するために、安価な住宅と社会支援サービスを連動させる。
    (g) 高齢者に配慮したバリアフリー住宅の設計を推進し、公共の建築物や空間もバリアフリーにする。
    (h) 高齢者、その家族及び介護者に対して、選択可能な住宅についての有用な情報とアドバイスを適時に提供する。
    (i) 高齢者のための住宅は、これらの人々の介護と文化的活動のニーズに適切に配慮したものでなければならない。
    (j) 高齢者用の住宅に関する選択肢を拡大する。

  5. 目標2:高齢者、特に障害を持つ高齢者のニーズに考慮することによる、自立した生活を促進するための住環境デザインの改善
    行動
    (a) 新たな都市空間は、移動や利用の妨げにならないようにバリアフリー化する。
    (b) 自立的生活の支援を目的とした技術やリハビリの採用を支援する。
    (c) 住宅と共用空間の設計を改善して、複数世代が同居できるようにする。
    (d) 高齢者がその住宅を移動や利用の妨げにならないようにバリアフリー化することを支援する。

  6. 目標3:高齢者にとってアクセスや快適性の面ですぐれた交通手段の利用性の改善
    行動
    (a) 農村・都市地域における効率的な公共輸送の利用可能性を高める。
    (b) 都市地域において、公共部門と民間部門による地域中心の企業やサービスなどの代替的輸送手段を開発する。
    (c) 高齢の運転者の訓練・評価、安全な道路の設計、及び高齢者や障害者のニーズに配慮した新たな種類の車両の開発などを奨励する。

論点2:介護と介護者支援

  1. 介護を必要とする人々に対する高齢者による介護の提供、あるいは、高齢者に対する介護の提供は、特に開発途上国では、家族または地域社会が行うことが多い。家族と地域社会は、HIV/エイズの予防並びにHIV/エイズ患者に対する介護、支援及び治療において重要な役割を果たしている。介護者が高齢である場合、これらの介護者のための支援策を提供すべきである。高齢者が介護を受けている場合、予防、治療、介護及び支援を効果的に行うために、人的資源と保健・社会インフラを整備する必要がある。このような介護システムは、この介護を必要とする人々が全人口に占める比率が増加するので、公共政策によって強化しなければならない。

  2. 公的介護政策が整備されている諸国においても、世代間の結びつきと互恵主義により、ほとんどの介護は私的に行われている。私的介護は補完的な性格のものであるので、専門家による介護に取って代わることはできない。すべての諸国では、地域社会の中で高齢期を迎えることが理想である。しかし、多くの国では、介護者に報酬が支払われない家族介護が、新たな経済的、社会的負担を生み出している。特に、ほとんどの私的介護を提供している女性には損失が生じていることが、今では認識されている。女性介護者は、労働期間が短いために年金拠出額が少ないことによる金銭的不利益を被り、昇進をあきらめ、低所得に甘んじている。また、女性介護者には、仕事と家事を両立させるために、ストレスによる身体的・感情的な損失が発生している。子供の保育と高齢者の介護を行っている女性にとっては、特に負担が重くなっている。

  3. 世界の多くの国、特にアフリカでは、HIV/エイズの流行により、既に困難な状況下にある高齢女性は、HIV/エイズに感染した子供や孫、及びエイズが原因で孤児になった孫の世話をせざるを得ないという更なる負担を強いられている。成人の子供がそれぞれの高齢の両親の世話をするのが当然であるにも関わらず、多くの高齢者は、予期せず、虚弱な子供の世話をするか、あるいは、親代わりとなって孫の面倒を見ざるを得ない状況に置かれている。

  4. 過去20年間、地域介護と在宅で高齢期を迎えることが多くの政府の政策目標となってきた。その根拠は、資金的なものであることもあった。何故なら、家族が大部分の介護を行うという前提に立つと、地域介護は施設介護よりコストが低くなると考えられたからである。適切な支援が行われない場合、介護を行う家族の負担は過重になる可能性がある。また、公的な地域介護システムが存在する場合でも、このシステムは、資金と調整が不足しているために、十分な能力がない場合が多い。その結果、虚弱な高齢者や介護者にとっては、施設介護が望ましいものとなる。様々な問題を考慮すると、家族介護から施設介護に至るまで、介護に関する各種の選択肢が存在することが望ましい。最終的に自らのニーズの評価とサービス内容の検討に高齢者が参加することは、最も効果的な選択肢を決定するために重要なことである。

  5. 目標1:様々な主体による高齢者介護サービスと及び介護者支援の提供
    行動
    (a) 地域介護を提供し、家族介護を支援するために施策を講じる。
    (b) 入院や老人ホームへの収容を遅らせ、自立的生活を行う能力を高めるために、一人暮らしの高齢者に対する介護の質を改善し、かつ、地域による長期介護を改善する。
    (c) 訓練、情報、及び心理的、経済的、社会的、法律的な仕組みを通じて、介護者を支援する。
    (d) 一般的な支援が利用できないか、実施されていないか、又は好ましいものではない場合、高齢者に支援を行うための施策を講じる。
    (e) 文化や環境が異なる場合における介護システムの比較研究を促進する。
    (f) 認識障害を抱えている人々に対する高齢の介護者の特別なニーズを充足するための戦略を策定・実施する。
    (g) 公的介護制度の下で質の高い介護を確保するための基準と仕組みを確立し、実施する。
    (h) 家庭内の高齢者を介護する家族の能力を高めるために、公的及び私的な社会支援システムを確立する。例えば、増加する虚弱な高齢者に対して、長期的な支援とサービスを提供する。
    (i) 適切な施策を通じて、高齢の女性と男性の自立を促進する。また、これら高齢者の生活の質を高め、可能な限り、希望がある限り長期間、これら高齢者が地域社会の中で自立して生活できるようにするための条件を整備する。
    (j) 仕事と家事を両立させるための施策を講じて、介護責任を男女間で平等に分担できるようにすることに配慮しつつ、地域介護の提供を促進し、かつ、家族介護に対する支援を促進する。

  6. 目標2:高齢者、特に女性高齢者の、介護者としての役割に対する支援
    行動
    (a) 高齢の介護者、及びその介護を受けている家族の双方に対する、休息サービスなどの社会的支援、アドバイス及び情報の提供を奨励する。
    (b) 介護を行っている高齢者、特に高齢の女性を支援する方法を検討し、これら高齢者に固有の社会的、経済的及び心理的なニーズを充足する。
    (c) 孫を世話する祖父母の積極的な役割を強化する。
    (d) 介護提供計画では、高齢の介護者の数が増加することを考慮に入れる。

論点3:ネグレクト(放置)、虐待及び、暴力

  1. 高齢者に対するネグレクト(放置)、虐待及び暴力は、身体的、心理的、情緒的及び資金的なものを始め、様々な形態を取る。これらの行為は、あらゆる社会、経済、民族及び地域で発生する。人々の回復能力は加齢とともに衰えるので、虐待を受けた高齢者は、精神的衝撃に起因する身体的又は精神的障害から完全に回復することはない。恥ずかしさや恐怖のために助けを求めようとしたがらないため、精神的衝撃の影響は悪化する可能性がある。高齢者に対する虐待、詐欺商法及び犯罪行為を予防するために、地域社会は協力しなければならない。専門家は、家庭、地域社会及び施設において公的・私的介護者からネグレクト(放置)、虐待及び暴力を受ける可能性があるということを認識する必要がある。

  2. 高齢の女性は、地域社会での差別及び女性の権利の無視により、身体的・心理的虐待を受けるリスクが高い。伝統的又は慣習的な有害な慣行により、高齢の女性に対する虐待と暴力が行われることもある。これらの行為は、貧困や、法的保護が利用できないことによって悪化することが多い。

  3. 女性の貧困は、経済的機会と自立の欠如、信用、土地所有、遺産相続などの経済的資源が得られないこと、教育・支援サービスが利用できないこと、及び意思決定過程への参加率が極めて低いことなどに直接関連している。貧困も、女性が性的搾取を受けやすい状況に追い込む可能性がある。

  4. 目標2:高齢者に対する、あらゆる形態のネグレクト(放置)、虐待及び暴力の排除
    行動
    (a) メディアやその他の意識向上キャンペーンを通じて、高齢者に対する虐待及びその様々な特徴と原因に関して、専門家と一般国民の関心を高める。
    (b) 女性の健康と福祉に有害な寡婦儀式を廃止する。
    (c) 高齢者に対する虐待を廃止するための法律を策定し、この法律に基づく努力を強化する。
    (d) 高齢者を対象とした有害な伝統的慣行を廃止する。
    (e) 地域イニシアティブなどを策定することによって高齢者に対する虐待の問題に取り組む場合、政府と非政府組織などの市民社会の協力関係を強化する。
    (f) 一般国民の意識を高めることを通じて、あらゆる形態のネグレクト(放置)、虐待及び暴力に対する高齢の女性のリスクを緩和し、特に緊急事態の下では、高齢の女性をかかるネグレクト(放置)、虐待及び暴力から保護する。
    (g) 高齢の女性と男性に対するあらゆる形態の暴力の原因、性格、程度、深刻さ及び影響に関する研究を奨励し、研究や調査の結果を広く公表する。

  5. 目標2:高齢者虐待に対処するための支援サービスの整備
    行動
    (a) 虐待の犠牲者のためのサービスを確立し、虐待者のリハビリ施設を設立する。
    (b) 保健・社会サービス専門家及び一般国民に対して、高齢者に対する虐待が行われている可能性のある事例を報告することを奨励する。
    (c) 保健・社会サービス専門家に対して、虐待を受けたと思われる高齢者に保護や支援が受けられることを知らせることを奨励する。
    (d) 介護専門家に対する訓練の中に、高齢者に対する虐待の問題への対処を含める。
    (e) 高齢者に詐欺商法に関する情報を提供するためのプログラムを策定する。

論点4:高齢者のイメージ

  1. 高齢化を前向きに考えることは、「高齢化に関する国際行動計画2002」の重要な側面の一つである。人生経験に基づく権威、知恵、尊厳及び節度は、歴史的に見て、高齢者に対する尊敬の源泉となるものであった。一部の社会では、このような価値は無視されていることが多い。そして高齢者は、医療その他のサービスの必要性が高まるために国の経済力を弱めていると見なされることが極めて多い。健康な状態で高齢期を迎えることは高齢者にとってはますます重要になっているが、国民が医療、年金及びその他のサービスの規模とコストに大きな関心を持っているために、高齢化には負のイメージが伴うこともある。高齢者を、貴重な貢献を行うことができる、魅力的で、多様で、創造力のある個人と見なすことは、一般国民からも受け入れられるべきである。高齢の女性は、特に誤解や否定的な固定観念の対象となりやすい。高齢の女性は、その貢献、能力、知恵及び人間性を踏まえて評価されるのではなく、弱くて、自立性がない存在として評価されることが多い。このため、地域や国のレベルでも、排他的な慣行が強まっている。

  2. 目標1:高齢者の権威、知恵、生産性及びその他の重要な貢献に対する一般認識の高揚
    行動
    (a) 各個人及び国民全体が、高齢者の過去と現在の貢献を認識し、偏見や社会通念と闘い、高齢者を尊敬、感謝、尊厳及び思いやりを持って遇する責任があるとする政策的枠組みを策定し、これを広い範囲で推進する。
    (b) マスメディアに対して、障害を抱えている高齢者を始め、高齢の女性と男性の知恵、能力、貢献、勇気及び機知を強調することによって、これら高齢者のイメージを改善することを奨励する。
    (c) 教育者に対し、高齢者を始めあらゆる年齢層の人々が行ってきた貢献を認識し、これを授業の中で取り上げることを奨励する。
    (d) メディアに対し、固定観念を繰り返すことを止め、人類が大きな多様性を持つものであることを示すことを奨励する。
    (e) メディアは変革の先駆者であり、農村地域などの開発戦略の中での高齢者の役割を強化することができるということを認識する。
    (f) 高齢の女性と男性がそれぞれの活動や懸念をメディアを通じて公表することを促進する。
    (g) メディア及び民間・公共部門に対し、職場での年齢による差別を排除し高齢者に関する前向きのイメージを強調することを奨励する。
    (h) 高齢の女性による貢献についての前向きのイメージを強調し、これらの女性の自尊心を高める。

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3 実践とフォローアップ

  1. 「高齢化に関する国際行動計画2002」の実施に当たっては、将来の人口転換に対処し、かつ、高齢者の技術と活力を活用するために、あらゆるレベルで継続的な活動が必要になる。新たな課題に対処するためには、系統的な評価も必要になる。また、国際社会は開発途上国が高齢化に対処するための政策を実施するのを継続的に支援するという重要な役割を有している。

  2. 「高齢化に関する国際行動計画2002」の実施に当たっては、人間の尊厳、人権、公平性、尊敬、平和、民主主義、相互責任、協力、及び、人々の多様な宗教的・倫理的価値観や文化的背景の尊重に基礎を置きつつ、高齢者の社会的な発展を推進するための、政治的、経済的、倫理的及び精神的なビジョンが必要になる。

国の行動

  1. 各国政府は、「高齢化に関する国際行動計画2002」の様々な勧告を実施する上で最大の責任を有している。同計画を効果的に実施するためには、まず始めに高齢化と高齢者の懸念事項を国の開発のための枠組みや貧困削減戦略の中に位置付ける必要がある。プログラムの改革、資源の調達及び必要な人的資源の開発も、同時に必要になる。同計画の進展を左右するのは、政府、あらゆる市民社会、民間部門による効果的なパートナーシップ、並びに、民主主義、法治主義、すべての人権の尊重、基本的自由、国内・国際レベルを含めたあらゆるレベルでの公正な統治に支えられた支援環境である。

  2. 非政府組織は、政府が「高齢化に関する国際行動計画2002」を実施し、その評価を行い、かつフォローアップを行うのを支援するという重要な役割を有している。

  3. 「高齢化に関する国際行動計画2002」に関する制度的なフォローアップを推進するためには、必要に応じて、高齢化問題を担当する機関や全国協議会を設立するなどの努力が必要である。高齢化問題に関する全国協議会には、市民社会の様々な部門、特に高齢者の団体などの代表者を参加させる。この全国協議会は、貴重な貢献を行うことが可能であり、また、高齢化問題に関する国の諮問・調整機構として機能することができる。

  4. 同計画を実施するために必要になる他の重要な要素は、高齢者の効果的な組織化、高齢化に関する教育、訓練、調査活動、並びに、政策の決定、モニタリング、評価に必要な性別と年齢に関する具体的な情報などの全国的データの収集と分析である。実施状況に関する独立的で公正なモニタリングも価値のあるものであり、独立機関が実施することができる。政府は市民社会と同様に、高齢者を代表し支援する団体の資源の活用を、優遇策を講じることによって促進することができる。

国際行動

  1. 我々は、グローバル化と相互依存は、貿易、投資、資本移動、情報技術を始めとする様々な技術の発展を通じて、世界経済の発展及び世界の人々の生活水準の改善のための新たな機会を生み出していると認識している。同時に、深刻な金融危機、不安定、貧困、疎外、社会内部の不公平を始め、深刻な課題も残されている。後発開発途上国を始めとする開発途上国及び一部の市場経済移行国には、世界経済への全面的な統合と参加を阻害する大きな障害がある。社会的・経済的発展の利益がすべての諸国に及ぶものでない限り、あらゆる国や地域ではますます多くの人々、もしくは地域全体までもが世界経済から取り残されることになるであろう。我々は、様々な人々と諸国に影響を及ぼしている障害を克服し、かつ、すべての人類のために、実現可能なことはすべて実現させるために、直ちに行動を起こさなければならない。

  2. グローバル化は機会と難問をもたらす。開発途上国と市場経済移行国は、これらの機会と難問に対処する上で特別な困難に直面している。グローバル化は、完全に統合的で、公平なものでなければならない。開発途上国と市場経済移行国がこれらの機会と難問に効果的に対処できるよう支援するためには、これらの諸国の完全で効果的な参加を得て、国内・国際レベルで政策や施策を策定し実施する必要がある。

  3. 各国の開発努力を補完するため、開発途上国、後発開発途上国及び市場経済移行国が「高齢化に関する国際行動計画2002」を実施するのを支援する国際協力を強化することが重要である。また、支援や金融支援の重要性を認識する他に、下記の事項も重要である。

    • 国際的な通貨、金融及び貿易国際システムの統一性、統治及び一貫性を強化する緊急の必要性があることの認識。我々は、このためには、世界経済の統治の改善、及び開発促進における国連の指導的役割を継続して強化していくことの重要性を強調する。さらに、国レベルでは、関係するすべての省庁と機関の間の調整を強化する必要がある。また、「ミレニアム宣言」の開発目標―持続的な経済成長、貧困根絶及び持続可能な開発―を事業レベル又は国際レベルにおいて達成するために、国際機関の政策とプログラムの調整を促進しなければならない。
    • 透明性を高め、しかも、開発途上国と市場経済移行国による効果的な参加を得て、維持されなければならない国際金融システムを改革するために進められている重要な努力に対する認識。この改革の大きな目的の1つは、開発と貧困根絶のための金融を強化することである。また我々は、開発を支援する国際金融システムの重要な構成要素として、各国の開発に重要な貢献を行う健全な国内金融部門を確立するとした我々の公約を強調する。
    • 総合的で公平で持続性のある開発指向の方法で、後発開発途上国、低所得開発途上国及び中所得開発途上国の債務問題に効果的に取り組むための迅速な協調的活動の要請。この協調的活動は、例えば、各プロジェクトに関する債務スワップなどの既存の秩序ある債務削減手法を始め、これらの諸国の債務を長期的に持続可能なものにすることを目指した、国内・国際レベルの様々な施策に関するものである。
    • 開発途上国が、「ミレニアム宣言」の目標を始め、国際的に合意された開発目標を達成するためには、政府開発援助とその他の資源を大幅に増額する必要があることに対する認識。

    我々は、開発途上国に対する政府開発援助を国民総生産(GNP)の0.7%とし、かつ、後発開発途上国に対する政府開発援助をGNPの0.15%とする目標の達成に向けて、まだ実施していない先進国に対し、具体的な努力を開始することを強く要請する。また、開発途上国に対し、政府開発援助を開発目標の達成のために効果的に活用する努力を一段と強化するよう要請する。

  4. 先進国と国際開発機関が的を絞って国際協力を強化し、公約を効果的に履行すれば、「高齢化に関する国際行動計画2002」の実施が可能になるであろう。国際金融機関と地域開発銀行は、開発途上国と市場経済移行国による「高齢化に関する国際行動計画2002」の実施支援の一環として、高齢者が開発のための資源として認められ、しかも、政策やプロジェクトにおいて然るべく配慮されるよう、融資と補助金に関するそれぞれの方針を検討し、調整する必要がある。

  5. また、国連の基金とプログラムは、国レベルのものを含め、そのプログラムとプロジェクトに高齢化に関する問題を統合することを公約することが重要である。開発途上国において高齢化に関する訓練と能力開発を特に推進する団体に対し、国際社会と国際開発機関が支援することも、極めて重要である。

  6. 高齢化に関する国際協力の他の優先事項には、経験/最善の慣行/研究者/研究成果の共有ないし交流、政策やプログラムの策定を支援するためのデータ収集、所得創出プロジェクトの確立、及び情報の公開が含まれなければならない。

  7. 国連行政調整委員会(United Nations System Chief Executives Board for Coordination)は、そのアジェンダの中に「高齢化に関する国際行動計画2002」の全システムにおける実施を含めなければならない。「高齢化に関する世界会議」の準備のために国連組織の中に設置された専門部局は、維持・強化する必要がある。同計画を実施するための国連組織の責務も、強化する必要がある。

  8. 国連組織の中での高齢者問題の専門部局である経済・社会問題局(Department of Economic and Social Affairs)の高齢化に関するプログラムの主な活動は、次の事項を始め、「高齢化に関する国際行動計画2002」の推進に関するものとなる。すなわち、政策の策定・実施のためのガイドラインの作成、高齢化に関する問題を開発アジェンダに統合する手段の推奨、市民社会や民間部門との対話への参加、及び情報交換である。

  9. 国連の地域委員会(regional commissions)は、「高齢化に関する国際行動計画2002」に基づいて地域別の行動計画を作成する責任を有している。国連の地域委員会は、要請に基づいて、各国の機関が高齢者に関する活動を実施し、そのモニタリングを行うのを支援しなければならない。国連経済社会理事会は、この点に関する地域委員会の能力を強化することができる。各地域の非政府組織も、「高齢化に関する国際行動計画2002」を推進するためのネットワークを構築する際に、支援を受けられなければならない。

研究

  1. すべての諸国、特に開発途上国における、高齢化に関する総合的で多角的で専門的な研究を奨励し、促進する必要がある。年齢とジェンダーに配慮したデータの収集と分析を含む研究は、効果的な政策の策定に必要な重要な証拠を提供することができる。「高齢化に関する国際行動計画2002」に関する研究の主な任務は、必要に応じて、同計画の中で定められた勧告と行動の実施を促進することにある。信頼できる情報が利用できるということは、新たな問題を特定し、勧告を採択する上で不可欠である。必要に応じて、主要指標を始め、総合的で実用的な評価手法を作成し利用することは、適時の政策対応を行うために必要なことである。

  2. 高齢化に関する政策対応を支援し、「高齢化に関する国際行動計画2002」の目標を達成するためには、高齢化に関する国際的な研究が必要である。これにより、高齢化に関する研究を各国間における調整が促進されるであろう。

世界的調査、モニタリング、及び評価、改定

  1. 「高齢化に関する国際行動計画2002」の実施状況を加盟国が系統的に見直すことは、高齢者の生活の質を改善するために重要なことである。各国政府は、他のステークホルダーと協力して、見直しを図るための適切な手順を決定することができる。加盟国の間で定期的に調査の結果を共有することも、有益なことである。

  2. 社会開発委員会(Commission for Social Development)は、「高齢化に関する国際行動計画2002」の実施状況のフォローアップと評価を行う責任を有している。同委員会は、「高齢化に関する国際行動計画2002」に含まれている人口高齢化の様々な問題をその作業の中に統合しなければならない。調査と評価は、国連総会のために効果的なフォローアップを行う上で重要になる。そのための手法は、早急に決定する必要がある。

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(※1) 「高齢者問題世界会議報告書」、ウィーン、1982年7月26日〜8月6日、(国連刊行物、販売番号 E.82.1.16)、第VI章、第A項を参照。
(※2) 国連総会決議46/91、付属書
(※3) 「社会開発に関する世界サミット報告書」、コペンハーゲン、1995年3月6〜12日、(国連刊行物、販売番号 E.96.IV.8)、第I章、決議1、付属書I。
(※4) 「社会開発に関する世界サミット報告書」、コペンハーゲン、1995年3月6〜12日、(国連刊行物、販売番号 E.96.IV.8)、第I章、決議1、付属書I。
(※5) 国連総会決議S-24/2、付属書。
(※6) WHO/HPR/HEP/95.1
(※7) 国際人口開発会議の報告書、カイロ、1994年9月5〜13日、(国連出版物、販売番号 E.95.XIII.18)、第I章、決議1、付属書。
(※8) WHOによれば、「苦痛緩和医療」は、治療処置で効果を上げることができない病気を有する患者に対し、積極的に全面的な介護を提供することであると定義されている。たとえば、この医療では、病気による痛みや症状を抑制し、かつ、患者とその家族に対し、心理的、社会的及び精神的な支援が提供される。
(※9) 国連総会決議 S-26/2、付属書。
(※10) 国連総会決議 55/2。

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