65歳以上の高齢者人口は,「人口推計」(総務庁)でみると, 1,976万人(平成9年10月1日現在)となっており,総人口(1億 2,617万人)に占める割合(高齢化率)は15.7%となっている。1年前の8年10月1日現在の同調査と比較すると74万人の増,高齢化率 0.6ポイントの上昇である。
今後の高齢化の推移を「日本の将来推計人口」(平成9年1月推計,中位推計)(厚生省)でみると,65歳以上の高齢者人口及び高齢化率は,平均寿命の伸長や低い出生率を反映して今後も上昇を続け,平成27年(2015年)には,高齢者人口は3,188万人となって高齢化率は25%を超え,国民の4人に1人以上が65歳以上の高齢者という本格的な高齢社会が到来するものと予測される。
高齢者のいる世帯について,「国民生活基礎調査」(平成8年)(厚生省)でみると,65歳以上の者のいる世帯数は 1,359万世帯であり,全世帯( 4,381万世帯)の31.0%を占める。
65歳以上の者のいる世帯の内訳は,「単独世帯」が 236万世帯(17.4%),「夫婦のみの世帯」が 340万世帯(25.0%),「親と未婚の子のみの世帯」が 185万世帯(13.6%),「三世代世帯」が 432万世帯(31.8%)であり,65歳以上の者のいる世帯における三世代世帯の割合が低下し,単独世帯及び夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている。
我が国の平均寿命については, 最近の状況を「平成8年簡易生命表」(厚生省)でみると,平成8年 (1996年) には男性が 77.01年 (前年より0.63年の延び) ,女性が 83.59年 (同0.74年の延び) となっている。
出生の最近の状況を「人口動態統計」(平成8年)(厚生省)でみると,平成8年の出生数は 120万 6,555人で7年と比べて1万 9,491人増加し,出生率(人口千人当たりの出生数)は,8年は 9.7で,7年の 9.6をわずかに上回った(9年推計値 119万人, 9.5)。また,合計特殊出生率は,平成8年は1.43で,過去最低であった7年の1.42とほぼ同じとなっている。なお,8年は「うるう年」であったが,仮に「うるう年」でないとしてその補整を行うと合計特殊出生率は1.42となる。
我が国では婚姻外での出生が少なく,既婚者の出生児数は大きく低下していないことから,出生率低下は,主として初婚年齢の上昇 (晩婚化)や結婚しない人の増加(非婚化)によるものと考えられる。晩婚化・非婚化の進行に伴い, 結婚する人が減り, 結婚に伴う出生が減少して,出生率が低下する。
未婚率の推移を「国勢調査」 (総務庁) でみると,昭和50年頃から25〜39歳の男性及び20歳代の女性で上昇が際立っている。また,生涯未婚率は,「人口統計資料集」(平成9年) (厚生省) によれば,平成7年(1995年) に男性8.92%,女性5.08%と上昇してきており,初婚年齢も上がってきている。
平成9年(1997年) の労働力人口総数(15歳以上労働力人口) は, 6,787万人であったが, そのうち60歳以上は 910万人であり,13.4%を占めた。労働力人口の高齢化は着実に進んでおり,労働力人口総数が21世紀に入ると減少していくと予想される中で,今後一層進展していくものと見込まれる。
高齢化の進行に伴い,社会保障給付や公的な負担の増大,さらに家族の私的な負担の高まりが予想される。租税負担,社会保障負担及び財政赤字を合わせた国民負 担率(対国民所得)は,昭和45年度(1970年度)の24.9%から平成10年度(1998年 度)の50.7%(当初見込み。ただし,財政赤字のうち,国鉄長期債務及び国有林野 累積債務の一般会計承継に係る分という特殊要因を除いた場合には44.2%) へと上 昇している。
高齢者世帯の年間所得(平成7年の所得)について,「国民生活基礎調査」(平成8年)(厚生省)でみると, 333.8万円であり,公的年金・恩給が58.7%を占める。高齢者世帯の年間所得は全世帯の半分程度に過ぎないが,世帯人員一人当たりでは大きな差はみられなくなる。
高齢者の就業状況について,「高年齢者就業実態調査」(平成8年)(労働省)でみると,男子の場合,就業者の割合は,60〜64歳で70.0%,65〜69歳で53.4%である。不就業者であっても,60〜64歳の不就業者 (30.0%) のうち6割以上が,65〜69歳の不就業者 (46.6%) のうち4割近くが就業を希望している。
女子の場合,就業者の割合は,60〜64歳で41.1%,65〜69歳で28.1%である。不就業者であっても,60〜64歳の不就業者 (58.9%) のうち3割以上が,65〜69歳の不就業者(71.9%)のうち2割以上が就業を希望している。
高齢者の就業意欲を外国と比較してみると,「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成7年度)(総務庁)によれば,我が国は,アメリカ,ドイツ等より仕事を続けている者の割合は高く,今後も仕事を続けたいという意欲もアメリカと並び高くなっている。
65歳以上の要介護等の高齢者の割合について,人口千人当たりの数でみると,在宅の要介護者は49.3, 特別養護老人ホームの在所者は12.1, 老人保健施設の在所者は 6.0となっている。また, 病院・一般診療所に6か月以上入院している65歳以上の高齢者は, 人口千人当たり15.6となっている。これらの割合は, 年齢階層が上がるにつれて大きく上昇する傾向がある。
65歳以上の死亡者の生前の状況やその死亡者の介護者の状況等を調査した「人口動態社会経済面調査」(平成7年度)(厚生省)によると, 主に介護をしていた者については, 「世帯員」が66.8%,「世帯員以外の親族」が 5.5%,「病院・診療所の職員」が16.4%などとなっている。
「世帯員」又は「世帯員以外の親族」であった主な介護者の平均年齢は60.4歳であり, これが「妻」では71.4歳, 「長男の妻」54.2歳, 「長女」54.3歳となっている。
親や配偶者など家族が寝たきりになった場合,主にどのように介護すべきかについて,「中高年齢層の高齢化問題に関する意識調査」(平成10年)(総務庁)でみると,40〜59歳の者では,「家族,親族が面倒をみて不足分を福祉施策活用」が47.2%と最も多く,次いで「家族,親族が面倒をみるべき」33.5%の順となっている。一方,60歳以上の者では「家族,親族が面倒をみるべき」が46.2%と最も多く,次いで「家族,親族が面倒をみて不足分を福祉施策活用」31.0%の順となっている。
65歳以上の者で在宅の寝たきり者について,その寝たきりの期間を,「国民生活基礎調査」(平成7年)(厚生省)でみると,「3年以上」の占める割合が,半数近くになっている。
高齢者の社会的活動への意識について,「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成7年度)(総務庁)でみると,同好会,サークル活動や種々の行事,催し物への参加を通じて,社会とのかかわりを持って生活したいと思うかについては,意欲を示す者が7割を超える。
高齢者の各種サークルや団体への参加状況について,「高齢者の地域社会への参加に関する調査」(平成5年)(総務庁)でみると,60歳以上で何らかのサークルや団体に参加している者は63.0%となっており,参加している者は1人で平均 1.8種類の団体に参加している。
高齢者が居住地域に感じる問題点について,「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成7年度)(総務庁)でみると,「医院や病院への通院に不便」が22.9%と最も多く,次いで「日常の買物に不便」20.6%,「水害,地震など自然災害が心配」20.2%となっている。自然災害への関心は,阪神・淡路大震災の影響のためか,前回調査から大きく上昇した。
高齢者が現在住んでいる住宅に感じる問題点について,同調査でみると,「住まいが古くなりいたんでいる」19.3%,「住宅の構造や設備が高齢者には使いにくい」13.5%,「住宅に関する経済的負担が重い」11.5%などとなっている。
高齢者世帯の住宅について,最低居住水準を満たしているかを「住宅統計調査」(平成5年) (総務庁) でみると,高齢者夫婦主世帯(夫婦のいずれかでも65歳以上の夫婦世帯) では99.2%,65歳以上の高齢者単身主世帯では95.0%が水準を満たしている。ただし,借家に住む世帯では,水準を満たしていない世帯が,高齢者夫婦主世帯で 3.6%,高齢者単身主世帯で12.3%ある。
高齢者の交通安全に関して,65歳以上の高齢者の交通事故死者数を「交通事故統計」(平成9年)(警察庁)でみると, 3,152人で交通事故死者全体の32.7%を占めている。交通事故死者数は,平成4年までは16〜24歳の若者が多かったが,5年以降,高齢者が若者の死者数を上回るようになっている。
高齢者と犯罪,災害に関し,犯罪による65歳以上の高齢者の被害について「犯罪統計書」(警察庁)で刑法犯被害認知件数をみると,平成8年は 102,654件である。7年に比較すると 8,459件, 9.0%上昇した。被害認知件数全体に占める割合も増加傾向にある。
また,「消防白書」(自治省)によると,65歳以上の高齢者の火災による死者数(放火自殺者を除く。)は,平成8年で 657人であり,全死者数の約半分を占めている。