第1章 高齢社会対策の方向

4 やや少ない社会参加

 一人暮らし高齢者の就業状況をみると、男性では23.0%、女性では13.3%が有業者(ふだん収入を得ることを目的として仕事をしている者)となっており、その割合は一般世帯(二人以上の世帯)よりも低い(表1−3−9)。

表1−3−9 高齢者単身者の有業・無業の状況  <CSVデータ>

  単身世帯 一般世帯
総数 有業者 無業者 総数 有業者 無業者
実数(千人) 総数 736 169 567 7,455 3,074 4,370
65〜74歳 418 134 283 5,035 2,519 2,515
75歳以上 318 35 284 2,410 555 1,855
総数 2,466 327 2,140 9,110 1,632 7,478
65〜74歳 1,175 251 925 5,345 1,328 4,017
75歳以上 1,291 76 1,215 3,765 304 3,461
割合 総数 100.0% 23.0% 77.0% 100.0% 41.3% 58.7%
65〜74歳 100.0% 32.1% 67.7% 100.0% 50.0% 50.0%
75歳以上 100.0% 11.0% 89.3% 100.0% 23.0% 77.0%
総数 100.0% 13.3% 86.8% 100.0% 17.9% 82.1%
65〜74歳 100.0% 21.4% 78.7% 100.0% 24.8% 75.2%
75歳以上 100.0% 5.9% 94.1% 100.0% 8.1% 91.9%
資料:総務庁「就業構造基本調査」(平成9年)
注:「一般世帯」とは二人以上の世帯のことを指す。

 また、単身の高齢者(60歳以上)の社会参加の状況をみると、何らかのグループ活動に参加している者は43.2%、参加していない者は56.8%となっており、他の家族形態と比較すると、参加している者の割合が低い。活動の内容別にみると、「町内会・自治会活動」が18.0%と最も高く、「趣味活動」(16.2%)、「健康維持活動」(9.9%)と続く。しかし、他の家族形態と比較すると、それぞれの活動に参加している者の割合は低く、単身高齢者の活動性の低さが目立つ(図1−3−10)。

図1−3−10 参加しているグループ活動  <CSVデータ>

家族形態別にみた高齢者が参加しているグループ活動を示したグラフ

 一人暮らし高齢者の近所付き合いをみると、「付き合いはない」者は男性で13.2%、女性で6.4%となっており、夫婦暮らしの男性1.5%、女性2.4%に比べて高く、特に男性の一人暮らしで高い。「お互いに訪問し合う人がいる」は、女性の一人暮らしでは50.4%と、夫婦暮らしの者(男性46.8%、女性47.2%)と同程度の割合となっているが、男性の一人暮らしでは28.7%となっている。この背景には、(1)子供などの同居家族がいない分、近所の人と付き合うきっかけが少なくなること、(2)男性の場合、職場中心の生活が続いていたため、職業生活からの引退後に、近所との付き合いがうまくとれないケースが多いことなどが考えられる(図1−3−11)。

図1−3−11 近所付き合い  <CSVデータ>

家族形態別にみた高齢者の近所付き合い程度の構成割合を示したグラフ

 一人暮らし高齢者の心配事の相談相手としては、子供(男性36.5%、女性63.7%)、兄弟姉妹(男性30.5%、女性28.2%)に次いで、友人・知人(男性19.2%、女性20.2%)、隣近所の人(男性7.8%、女性10.9%)が挙がっており、友人・知人や隣近所の人を挙げる割合は、夫婦暮らしの者よりも高い。一方で、「相談する人はいない」は男性で24.0%、女性で6.4%となっており、高齢単身女性は夫婦世帯に住む者よりも若干高い程度であるが、高齢単身男性はこれを大きく上回る水準となっている(図1−3−12)。

図1−3−12 相談相手(複数回答)  <CSVデータ>

家族形態別にみた高齢者の相談相手を示したグラフ

 また、一人暮らし高齢者の緊急時の連絡先としては、子供(男性50.3%、女性71.9%)、兄弟姉妹(男性35.9%、女性31.2%)に次いで、隣近所の人(男性16.8%、女性26.2%)、友人・知人(男性21.O%、女性14.4%)が挙がっており、友人・知人や隣近所の人を挙げる割合は、夫婦暮らしの者よりも高い(図1−3−13)。

図1−3−13 緊急時の連絡先(複数回答)  <CSVデータ>

家族形態別にみた高齢者の緊急時連絡先を示したグラフ

 一人暮らし高齢者の外出の頻度などについてみると、「ほとんど毎日外出する」、「ときどき外出する」を合わせると、単独世帯に住む者の94.4%に上り、他の家族形態に比べて若干高くなっている(図1−3−14)。

図1−3−14 外出の頻度  <CSVデータ>

家族形態別にみた高齢者の外出頻度の構成割合を示したグラフ

 外出の手段としては、「徒歩」が71.2%と、他の家族形態に比べて高い一方、「自転車」、「自分で運転する自動車」はそれぞれ20.3%、11.8%と、他の家族形態に比べて低くなっている。これは、一人暮らしの者はより高齢の者が多く、(1)これらの世代では女性を中心に運転免許を持つ人が少ないこと、(2)免許を保有、自転車に乗れる場合でも、事故やけがなどの心配から運転などを控えること、などが背景にあるものと思われる。また、「家族などの運転する自動車」も9.9%と他の家族形態に比べて低くなっている。反面、「バス」、「タクシー」を外出手段とする者の割合が他の家族形態に比べて高くなっており、「バス」を挙げた者は34.9%、「タクシー」を挙げた者も10.8%を占めている(表1−3−15)。

表1−3−15 外出手段(複数回答)  <CSVデータ>

  単身世帯 2人以上の世帯
夫婦二人世帯 本人と子の世帯 本人と子と孫の世帯 その他
徒歩 71.2% 61.4% 56.3% 59.3% 58.8%
自転車など 車いす 0.9% 0.6% 0.4% 0.7% -
電動三輪車 - 0.1% 0.2% 0.3% 1.0%
自転車 20.3% 28.1% 26.3% 27.6% 20.6%
バイク、スクーター 3.3% 4.7% 6.8% 5.0% 3.1%
自動車 自分で運転する自動車 11.8% 38.3% 35.1% 31.0% 47.4%
家族などの運転する自動車 9.9% 16.4% 21.0% 33.3% 11.3%
電車バスなど バス 34.9% 21.8% 18.8% 20.3% 16.5%
電車 17.9% 16.7% 13.1% 9.5% 11.3%
タクシー 10.8% 4.5% 6.3% 7.1% 12.4%
その他 4.7% 1.3% 2.9% 1.6% 1.0%
無回答 - 0.1% 0.4% 0.3% 1.0%
資料:内閣府「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」(平成13年)
注:60歳以上の者を対象とした集計結果

 このように、一人暮らし高齢者は、就業や社会活動などへの参加の割合が他の家族形態の者より低く、近所付き合いも少ないが、相談相手や緊急時の連絡先として隣近所の人を頼る割合は高い。また、外出手段としては徒歩が多く、自転車や自動車が少なくなっているため、運転してくれる同居家族がない一人暮らし高齢者、特に自分では運転しない後期高齢者や女性高齢者は、外出に不便を感じる場合が少なくないと考えられる。

(新大綱に基づく施策の方向)
 誰とどのような社会的つながりを持つかはライフスタイルの選択にかかわるものではあるが、同居家族のいない一人暮らし高齢者では、心配事の相談相手や緊急時の連絡先として隣近所の人を挙げる人が多いことから、安全や福祉という観点から、近所付き合いや社会参加の促進のための環境整備を図る。
 単身であっても就労している若い時期から地域参加の時間がもてるよう、働き方の多様化・柔軟化、労働時間の短縮に引き続き取り組み、職住近接のまちづくり等を進める。
 また、一人暮らしの高齢者を対象として、ふれあいのための会食や外出支援などのきめ細かなサービスが地域の実情に応じて提供されるよう、地域福祉を推進する。このため、市町村による地域福祉計画の策定を支援する。

 

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