第1章 高齢社会対策の方向

5 まとめ −一人暮らし高齢者の現在と将来−

(現状)
 一人暮らしの高齢者は経済的に豊かな者がいる一方で、特に女性を中心に経済状況が良くない者も多い。他の高齢者に比べて賃貸住宅に住む者が多いが、賃貸住宅では居住水準が不十分で構造や設備に問題がある場合も少なくない。民間賃貸住宅では、入居を断られることもある。
 他の高齢者に比べてより高齢の者が多いこともあって、健康状況が良くない者がやや多くなっている。就業や社会活動への参加は他の高齢者に比べて少なく、近所付き合いも少ない。相談相手や緊急時の連絡先として隣近所の人を頼る割合は高い。
 外出は徒歩が多く、自分や家族の運転する自動車の利用が少ない。その分、他の高齢者に比べてバスやタクシーの利用が多くなっている。

(将来像)
 生涯を通じて女性の職業能力開発の機会が増え、職業生活と家庭生活の両立や子育て後の適正な待遇での再就職が容易になることにより、賃金や被用者年金への加入期間の男女間格差が少なくなる。また、働き方の違いなどによる年金制度上の不合理な取扱いが生じなくなる。これらにより、低所得の一人暮らしの女性高齢者の経済状況は改善される。
 賃貸住宅も高齢者に配慮した構造設備のものが増え、民間賃貸住宅でも入居拒否に遭うことはなくなり、生活支援サービスが付設された高齢者向け住宅に住む、気の合った友人と一緒に住む等、多様な住まい方が選択できるようになる。
 労働時間や通勤時間の短縮により、就労している若い時期から地域の人たちと付き合いを続ける人も多く、また、高齢期になって地域での様々な交流活動に参加して新しい友人を得る人も多い。外出などの日常的な支援や緊急時の連絡ネットワークも整備されていることにより、安心して地域で暮らすことができる。

まちぐるみで高齢者の生活を支援
 石川県金沢市では、昭和9年に方面委員(現在の民生委員)が中心に築き上げた「善隣館」以来の小地域福祉活動の精神を引き継いだ活動の一つとして、「まちぐるみ福祉活動推進事業」が行われている。
 この事業では、「まちぐるみ福祉活動推進員」として、民生委員児童委員を中心に、住民約2,600名が市長及び金沢市社会福祉協議会会長の委嘱を受け、高齢者(一人暮らし、高齢者のみ世帯、寝たきり・痴呆等)等に対して定期的に訪問・声かけ・見守り活動を実施している。
 民生委員児童委員は、担当地域の対象となる一人暮らし高齢者世帯、高齢者夫婦世帯などを定期的に訪問して実態を調査し、把握した世帯のマップを作成するとともに、高齢者の氏名、緊急連絡先、日常生活の活動の状況などを記した台帳を作成し、緊急時の親族・主治医等への連絡、見守り活動などに活用している。
 また、痴呆の程度が重い高齢者や近所と関わりを持つことが困難な高齢者などの場合は、平成11年度に構築した地域型在宅介護支援センターや保健師との連携システムにより支援活動を行っている。

写真 活動パンフレットの写真

 

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