第1章 高齢社会対策の方向

5 まとめ −要介護等の高齢者の現在と将来−

(現状)
 要介護者等の家族形態は一人暮らしから三世代同居まで多様であるが、要介護度の重い者は三世代同居に多い。主に介護している家族は女性が多く、高齢者も少なくない。また、要介護度の重い高齢者を介護している家族の中には、ほとんど終日介護に当たり、健康状況も良くない者もいる。介護者の負担が重いために施設入所を希望する者もいる。また、要介護者に対して憎しみを感じたり、虐待につながる場合もある。
 サービスの利用状況は様々であるが、サービスヘの満足度は比較的高い。サービスに対する苦情には質や管理者等の対応に対するものが多い。
 住宅設備や道路等の地域の状況は、多くの場合、要介護者等の利用に配慮したものになっていない。健康・体力に自信がないと、学習・社会活動にも参加しにくい。

(将来像)
 手すりの設置、段差の解消など、高齢者に適した住宅が整備され、自宅内で転倒して骨折することは少なくなる。また、様々な生活用品も誰にとっても安全で使いやすいものとなっている。このため、要介護等の状態になって自宅で生活する場合でも、自立した生活がしやすく、介護もしやすい。また、訪問介護や通所介護などの良質なサービスを利用することにより、要介護者等の生活の質が改善され、介護する家族の負担も軽減される。
 施設で生活する場合でも個室があり、小規模ユニットでのケアがなされ、身体拘束は廃止されることにより、自宅での生活に近い生活を送ることができる。
 痴呆介護についての研究も進み、痴呆等がある場合でも適切な介護を受けることにより、施設、在宅を問わず、要介護者等の生活の質も改善され、家族の負担も軽減される。
 家族の負担の軽減、介護従事者の研修、高齢者の人権に関する意識の向上などにより、虐待や財産権の侵害なども少なくなり、また、人権侵犯があった場合の救済も速やかに行われるようになる。
 また、道路等も、歩道の幅が広がり、段差が改善されるなど、要介護等の高齢者も利用しやすいものとなり、要介護等の状態になっても外出し、地域の人たちと触れ合い、生活を楽しむことができるようになる。また、情報通信機器を活用して、外出しなくても、健康チェックなどの医療サービスを受けたり、友人と交流したり、様々な活動に参加したりすることもできるようになる。

 

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