第3章 高齢社会対策の実施の状況

5 調査研究等の推進

 「調査研究等の推進」については、高齢社会対策大綱において、次のような方針を示している。
 科学技術の研究開発とその活用は、高齢化に伴う課題の解決に大きく寄与するものであることから、高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究、高齢者の利用に配慮した福祉用具、生活用品、情報通信機器等の研究開発など各種の調査研究等を推進するとともに、そのために必要な基盤の整備を図る。

(1)各種の調査研究等の推進

ア 高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等
 痴呆、悪性新生物(がん)等の高齢期にかかりやすい疾患については、メディカル・フロンティア戦略の一環として研究を推進するとともに、長寿科学総合研究事業等において調査研究が行われており、平成13年度までに、免疫不全症の治療法開発の進展、アルツハイマー病の早期確定診断法の開発、骨粗しょう症治療のガイドラインの作成等に関する研究が推進されている。また、長寿医療の専門家で研究班を組織し、老年病の成因、診断、治療、第3章高齢社会対策の実施の状況予防等に関する基礎的、臨床的研究を推進している。
 また、高齢者の死亡原因は、がん、脳血管疾患、心疾患が上位を占めており、高齢期の健康状態と生活習慣病や慢性疾患の予防・治療は深く関係していることから、これらに対する調査研究が重要である。
 このため、がんについては、平成6年度から「がん克服新10か年戦略」を推進し、がんの本態解明の研究の充実、がん克服を主眼とした臨床や予防研究の重点的な推進を図っている。13年8月には、15年度以降のがん研究の中長期的な方策についての検討を開始した。
 生活習慣病や慢性疾患については、画期的・独創的な新薬の開発に向けて、創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業を行っている。
 また、がん及び心筋梗塞、要介護状態の大きな原因となる脳卒中、痴呆及び骨折について、ゲノム科学やタンパク質科学など先端科学を用いた治療技術・新薬の研究や、自己修復能力を用いた再生医療の実現のための研究等を行っている(表3-5-1)。

表3−5−1 豊かで活力ある長寿社会に向けた総合的戦略の推進〜メディカル・フロンティア戦略の推進〜  <CSVデータ>

メディカル・フロンティア戦略とは
豊かで活力ある長寿社会を創造することを目指して、働き盛りの国民にとっての二大死因であるがん及び心筋梗塞、要介護状態の大きな原因となる脳卒中、痴呆及び骨折について、地域医療との連携を重視しつつ、先端的科学の研究を重点的に振興するとともに、その成果を活用し、予防と治療成績の向上を果たすため、総合的な戦略である「メディカル・フロンティア戦略」を推進する。
(1)ゲノム科学やたんぱく質科学を用いた治療技術・新薬等の研究の推進
・新しい治療技術・新薬等の研究開発の推進
・研究推進のための基盤整備
医薬基盤技術研究施設の整備、長寿医療に関する基本計画の策定、がん予防研究センター(仮称)の検討
(2)疾病予防、健康づくり対策の推進
保健婦等による健康教育の充実、ヘルスサポーターの養成による地域における健康づくりの推進など
 
(3)質の高いがん医療の全国的な均てん、心筋梗塞・脳卒中の早期治療体制の推進
・質の高いがん医療の全国的な均てん
・心筋梗塞・脳卒中の早期治療体制の整備等
・ITの活用による医療提供体制の整備
(4)総合的な痴呆対策の推進と骨折による寝たきり予防対策の充実
老人性痴呆疾患センターの整備の推進、痴呆介護技術等に関する研究と指導者の養成、痴呆性高齢者グループホームの整備の推進、高齢者ITケアネットワーク支援事業など
(参考)がん、心筋梗塞等に係る高度先端医療機器の開発(経済産業省)特別枠10.8億円(その他、平成12年度補正予算計上分6.8億円)
メディカル・フロンティア戦略の目標:2005年までの5か年計画
●がん患者の5年生存率(治ゆ率)の20%改善
●心筋梗塞・脳卒中の死亡率の25%低減(年間5万人以上)
●自立している高齢者の割合を、5年後に90%程度(現在約87%)に高め、疾病等により支援が必要な高齢者を70万人程度減らすこと
資料:厚生労働省

 また、アルツハイマー病などの神経変性疾患や生活習慣病の克服に資する、関連遺伝子の探索や機能解明研究などを推進した。
 さらに、テーラーメイド医療(個人に合った副作用のない医療)の実現に不可欠である、個人間での遺伝子の異なる部分の探索については、平成13年度中に当初の目標の15万箇所の探索を完了した。

 

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