第2節 活動的な高齢者  今後増加が予想されている活動的な高齢者はどのようなニーズを持ち、それに対応して今後どのような施策を講じていくのかを本節において概観する。分析に当たっては、統計の利用可能性などの理由から、主として65〜74歳のいわゆる前期高齢者の状況をもって活動的な高齢者の状況に代えるが、施策を推進するに当たっては、第1節でみたとおり、75歳以上でも半分以上の者は健康上の問題で日常生活に影響はなく(前掲図1-1-14)、男性で16.0%、女性で5.9%は労働力として活動している(前掲図1-1-17)というように、健康で様々な活動に積極的に参加している後期高齢者も決して少なくないことに十分留意する必要があろう。 1 子供からの自立と家庭内での役割  前期高齢者の家族構成についてみると、男性で88.7%、女性で63.0%の者に配偶者がある。男性で46.9%、女性で34.4%が夫婦だけで暮らしているのに対し、男性で41.8%、女性で43.6%が子供と同居している。一人暮らしの者は男性で6.9%、女性で17.9%と女性の方が多い。前期高齢者は夫婦で子供から自立した生活を送っている者が多いことが分かる(表1-2-1)。 表1-2-1 前期高齢者の男女・配偶者の有無・家族形態別割合  次に、家族に関する前期高齢者の意識をみると、「子供や孫とはときどき会うのがよい」が男性で43.5%、女性で42.4%となっており、「子供や孫とは、いつも一緒に生活できるのがよい」を若干上回っている(前掲表1-1-6)。一方で、現在、子と別居している前期高齢者のうち、男性で45.9%、女性で43.7%が将来、子との同居を希望している。将来同居を希望している者(現在同居している者も含む。)の15.1%は、現在の住宅を建替え又は増改築するつもりであり、3.9%は子供の家に引っ越すつもりである(表1-2-2、図1-2-3)。 表1-2-2 将来の同居・別居の希望(前期高齢者、現在の子との同居別居) 図1-2-3 住宅に関する計画の有無(子と同居(希望)の者)  また、前期高齢者自身の家族や親族の中での役割についてみると、男女ともに「家族・親族の話し相手」としての役割を担う者が多い(男性31.6%、女性23.5%)。また、男性の場合、「家計の支え手」(43.0%)、「家族や親族の長」(29.8%)としての役割を、女性の場合、「家事の担い手」(76.5%)、「小さい子供の世話」(10.9%)としての役割を担っている者も多い。なお、「病気の家族の世話や介護」を挙げた者は男性で5.9%、女性で7.6%である。一方、「特に役割がない」者は、男性で24.6%、女性で11.8%となっている(図1-2-4)。活動的な高齢者は、家族内の世代間相互支援という観点からは、若い世代から支えられるというより、むしろ相談相手や小さい子供の世話役として、若い世代を支える役割を果たしている場合も多いといえよう。  また、主な介護者の約8割を占める女性のうち、33.9%が65歳以上であることから、老親等の介護などより上の世代を支える役割を家庭内で果たしている場合もあることが分かる(後出図1-4-3→50ページ)。 図1-2-4 家族・親族の中での役割(前期高齢者)  このように、活動的な高齢者の家族形態は多様であるが、多くは子供とは別居し、夫婦で暮らしている。しかし、将来的には子供と同居を希望して、そのために住居の建替え等を考えている者もいる。また、家族や親族の中では話し相手などのほか、孫の世話や老親の介護など上下の世代への支援の役割を担っている者もいる。 (新大綱に基づく施策の方向)  活動的な高齢者が、多様な家族構成等に応じて、子や孫との世代間の連帯を深めていくことができるようにするための条件整備として、子や孫の世代との同居、隣居等のニーズに対応するため、これに適した住宅の建設や増改築を融資制度の活用等により促進するとともに、公共賃貸住宅においても同居に適した面積の広い住宅の供給を進め、また優先的に親子が近隣に入居できるような対応を行う。また、携帯電話などの情報通信機器等を活 用して子や孫の世代との交流を深める機会の確保を図る。  前期高齢者とその老親等の世代との家族内での連帯を支援するため、介護負担が過重にならないよう、在宅介護サービスの充実などを進める。