4 高い就業希望  平成13年の前期高齢者の労働力率は、男性で41.9%、女性で20.4%となっており、後期高齢者(男性16.0%、女性5.9%)と比較すると2.5〜3倍となっている(前掲図1-1-17→15ページ)。  また、「一般論として何歳まで仕事をするのがよいか」という問いに対して、60歳以上の高年齢層では「年齢にこだわらず、元気ならいつまでも働く方がよい」とする者が最も多く、33.4%である。また、「70歳くらいまで」、「75歳くらいまで」も、合計すると26.4%となっている。退職年齢を70歳代又は「元気ならいつまでも」と考えている者を合わせると約6割であり、40〜59歳の中高年齢層(約4割)と比べると、60歳以上の者の方が引退時期は遅い方がいいと考えていることが分かる(表1-2-8)。 表1-2-8 望ましい退職年齢  高齢者が働いている理由をみると、60歳代後半では、「経済上の理由」が男性で61.8%、女性で51.8%と最も多くなっている一方で、「健康上の理由」、「生きがい・社会参加のため」、「頼まれたから・時間に余裕」も男女ともにそれぞれ10%を超え、合計すると30%を超える者が「経済上の理由」以外の理由を挙げている(図1-2-9)。 図1-2-9 高年齢者の就業理由  働いていない前期高齢者のうち男性で22.4%、女性で10.0%は、働くことを希望している。しかし、実際に求職活動している者は、同じ年齢層の男性で8.5%(就業希望者の38.0%)、女性で2.6%(就業希望者の26.2%)となっており、就業を希望していながら、仕事を探していない者が多い(前掲表1-1-18→15ページ)。  65歳以上の完全失業者について、仕事に就けない理由をみると、「求人の年齢と自分の年齢とが合わない」が半数で最も多く、「希望する種類・内容の仕事がない」、「条件にこだわらないが仕事がない」と回答している者もいる(表1-2-10)。 表1-2-10 仕事に就けない理由別完全失業者数(高齢者)  また、65〜69歳の者が高年齢者の就業促進にとって必要であると考える施策についてみると、「高年齢者対象の求人の掘り起こし」(男性41.5%、女性33.9%)、「65歳程度までの継続雇用についての企業への働きかけ」(男性34.1%、女性29.0%)、「募集・採用における年齢差別の禁止」(男性25.9%、女性27.1%)が多くなっている(図1-2-11)。 図1-2-11 高年齢者の就業促進に必要だと思われる施策(65〜69歳、複数回答2つまで)  このように、高齢者特に前期高齢者は就業意欲が高く、経済上の理由だけでなく、健康の維持などからも就業を希望している。しかし、年齢が合わないなどの理由で仕事に就きにくいため、就業を希望しながら求職活動をあきらめている人も少なくない。 (新大綱に基づく施策の方向)  活動的な高齢者の就労意欲に応じるために、65歳までは安定的な雇用が確保できるよう、事業者に対し、定年の引上げや継続雇用制度の導入について啓発・指導を行う。また、離職した者が円滑に再就職できるよう、在職中からの再就職援助、的確な職業相談や職業紹介、職業能力開発や求人開拓を行う。  また、健康や体力に応じた多様な働き方を促進するとともに、地域社会への参画を促す観点から、臨時的・短期的な就業機会を提供するシルバー人材センター事業の積極的な展開を図るほか、高齢者の起業を援助し、特に、介護や日常生活支援のような地域住民のニーズに密着した仕事の開発を支援する。  さらに、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、募集・採用における年齢制限を緩和するよう、指針に基づき、事業主に対する啓発・指導を行う。また、年齢にかかわりなく働ける社会にするための条件整備について検討を進める。 保育をサポートする「おばあちゃん先生」  熊本県津奈木町の町立津奈木保育園では、3人の高齢者が「おばあちゃん先生」として、保育の手伝いを行っている。  これは、津奈木町においても核家族化が進み、高齢者と一緒に暮らす家庭が非常に少なくなっていることなどから、園児に「おばあちゃんの温かさ」を知ってもらおうと、平成13年4月から始めたものである。  60代半ばから後半のこの3人の女性は、いずれも一人暮らし又は夫婦のみの二人暮らし。非常勤の保育助手として採用され、朝タそれぞれ2時間程度、保育園で勤務している。  人生経験をいかした穏やかな保育は、保護者の間でも好評である。子供たちもよく懐いており、「おばあちゃん先生」の温かさに触れることによって、より伸び伸びとした振る舞いが見られるようになっている。  また、3人の高齢者にとっても、「自分自身の健康にも留意するし、社会に役立ちたいという気持ちも湧く」、「保護者の方も子育ての話を喜んで聞いてくれ、必要とされていると感じることで気持ちが若返る」、「元気な子、泣いてくる子、甘えん坊の子、しっかりした子などいろいろなタイプの子供と触れ合うことが、日々の喜びになっている」など、保育の現場に携わることで生活に大きな充実感が与えられている。