4 住宅・生活環境におけるバリアフリー化の状況 (住宅の状況)  要介護者等のいる世帯の住宅状況をみると、持ち家に住む割合は85.8%となっている(図1-4-19)。 図1-4-19 要介護者等のいる世帯における住居の種類  住居の設備等の状況についてみると、介護のための専用室のある世帯の割合は70.1%である。また、要介護者等が生活しやすい住宅設備の状況を具体的にみると、洋式便器が装備されている世帯は49.6%と半数近いが、「手すりを付けている」世帯は玄関では18.2%、トイレ33.5%、浴室31.9%、階段18.1%、「入り口に段差がない」が玄関9.8%、居室22.3%、トイレ17.4%、浴室11.4%となっている。その他に「引き戸など利用しやすい扉」が12.3%となっている。いずれの設備も多くても3割程度にとどまっている(図1-4-20)。 図1-4-20 要介護者等のいる世帯における住居の設備状況  3で述べたように、骨折・転倒は、要介護状態になった主な原因の上位(男性4番目、女性3番目)に挙がっているが、自宅内でこの1年間に転んだことのある高齢者は、男性9.4%、女性18.2%であり、また、転んだ者のうち、男性で2人に1人、女性で4人に3人がけがをし、特に女性では5人に1人が骨折している(表1-4-21)。 表1-4-21 自宅における転倒事故  高齢者の半数近くは、住宅の構造・設備について将来改造の希望を持っている。具体的には、「手すりを設置したい」(男性20.5%、女性20.7%)、「住宅内の床の段差をなくしたい」(男性19.0%、女性18.2%)の希望が多いほか、「浴槽を入りやすいものにしたい」(男性11.7%、女性8.5%)、「浴室に暖房装置を付けたい」(男性8.5%、女性7.6%)、「玄関から道路までの段差をなくしたい」(男性8.2%、女性7.9%)、「トイレに暖房を付けたい」(男性7.9%、女性6.7%)、「緊急通報装置を付けたい」(男性7.5%、女性8.0%)が挙がっている(表1-4-22)。 表1-4-22 住宅改造の希望(65歳以上)  また、虚弱化したとき望む居住形態としては、「現在の住居にそのまま住み続ける」が最も多く、男性で36.5%、女性で39.4%となっている。次いで、「現在の住宅を改造し住みやすくする」ことを男性で24.1%、女性で16.3%が希望している。そのほか、「公的介護専門施設に入居する」(男性11.5%、女性11.2%)、「公的なケア付き住宅に入居する」(男性5.5%、女性5.1%)とケア付き住宅や介護施設を望む者も少なくない。一方で、「分からない」とする者も男性で18.2%、女性で21.1%も存在する(図1-4-23)。 図1-4-23 虚弱化したときに望む居住形態(複数回答) (地域の状況)  高齢者の屋外における転倒事故についてみると、この1年間に転んだことのある高齢者は、男性9.4%、女性14.9%であるが、転倒した場所についてみると、車道と分離された専用歩道(男性22.4%、女性27.5%)、車道と分離されていない道路(男性21.1%、女性22.3%)などの道路での転倒が多い。また、屋外の階段(男性22.3%、女性10.8%)、建物敷地内(男性15.3%、女性18.9%)での転倒も多い(図1-4-24)。 図1-4-24 転倒の経験の有無と転倒した場所(複数回答)  地域において不便な点を具体的に挙げている高齢者は、男性で33.7%、女性で37.5%である。具体的に不便な点として多くの者が挙げている項目は、「日常の買い物に不便」(男性24.5%、女性37.1%)、「医療機関への通院に不便」(男性29.2%、女性35.1%)、「交通機関が高齢者に使いにくい」(男性23.4%、女性25.6%)、「交通事故にあいそうで心配」(男性21.O%、女性23.6%)などとなっている(図1-4-25)。 図1-4-25 地域の不便な点(複数回答)  また、高齢者が学習・社会活動に参加していない理由として、男性33.6%、女性43.2%が「健康・体力に自信がないから」を挙げている(前掲表1-2-13→31ページ)。  このように、要介護者の住宅で、段差の解消や手すりの設置など要介護者が生活しやすい設備になっている割合は低い。  住宅内での転倒事故は要介護状態になる原因にもなっており、高齢者に適した住宅設備の整備は要介護の予防という観点からも重要になっている。  一方、高齢者の半数は住宅の構造・設備について将来改造を希望しており、虚弱化したときに現在の住宅を改造して住み続けることを希望する者は5人に1人となっている。また、ケア付き住宅や介護施設を希望する者も少なくない。  また、高齢者の道路等での転倒事故も多く、要介護状態の予防のためには、高齢者が安心して外出できる地域環境の整備も重要になっている。 (新大綱に基づく施策の方向)  高齢者の居住に適した住宅の設計指針の普及、融資制度の活用、住宅リフォーム市場の整備等により、手すりの設置、広い廊下幅の確保、段差の解消などが行われ、転倒などを予防し、要介護者が生活しやすい住宅の建設や改良を促進する。あわせて、誰にとっても安全で使いやすいユニバーサルデザインの生活用品等の研究開発を促進する。  また、高齢者に適した賃貸住宅を増やすため、民間による供給を融資等の支援制度により促進する。また、高齢者の身体機能の低下に配慮した公共賃貸住宅の建設や改良を推進する。また、「ゴールドプラン21」に基づき、介護施設やケアハウスなどを整備する。 ユニバーサルデザインとその取組  「ユニバーサルデザイン」とは、まちづくり、ものづくり、情報やサービスの提供などのあらゆる分野において、年齢、性別、障害の有無等にかかわりなくすべての人が使いやすいデザインを目指す考え方である。  具体的には、@誰にも公平に使用できること、A使う上での自由度の高さ、B簡単で直感的に分かる使用法、C必要な情報がすぐ分かること、Dエラーヘの寛容性、E低い身体的負荷、F近づいて使える大きさと空間、の7原則が提唱されている。  福岡県福間町は、平成13年に、住民等の参画も得て「福間町ユニバーサルデザイン計画」を策定し、ユニバーサルデザインによるまちづくりに向けた取組を行っている。  この計画は、「『今あるもの』と『これからつくるものを結ぼう』」、「みんなでできることからはじめよう」などの視点から、一人ひとりの心がけや、建築物、交通施設、道路などの整備において配慮すべき基準を示すとともに、住民、事業者、行政それぞれの役割について自覚を呼びかけている。また、町内の2つの駅周辺を重点整備地区としており、その整備計画は交通バリアフリー法に基づき市町村が作成する基本構想(→175ページ参照)の第1号となった。  ユニバーサルデザインに配慮した道路に関する基準等を整備し、段差の改善、幅の広い歩道などを整備し、さらに、高齢者が交通量の多い道路でも安全に横断できるよう、バリアフリー対応型の信号機を整備するなど、高齢者も安心して外出できるようにする。  駅などにエレベーターを設置し、低床車両を整備するなど、公共交通機関を高齢者を含むすべての人が利用しやすいものにしていく。病院、劇場等の公共性の高い建築物、窓口業務を持つ官庁施設等についても同様に、すべての人が利用しやすいものにしていく。  また、情報通信技術を活用した在宅の学習・社会参加や健康管理システムの研究開発を促進する。