平成16年度において講じようとする高齢社会対策 

第2 分野別の高齢社会対策

 平成16年度の主な新規施策を各分野別に挙げれば、次のとおりである。

1 就業・所得

○ 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等を行った事業主に対しては、継続雇用定着促進助成金の支給を行うとともに、平成16年度から高齢短時間正社員制度を導入・適用した事業主に対して加算措置を講ずる。
○ 平成16年度から、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構において、中高年齢者の募集・採用から職場定着するための体制づくりに係る好事例の収集・分析等を行い、また、これらを活用した個別企業に対する相談・援助等の支援や幅広い普及啓発を行う。
○ 平成15年10月から「仕事と生活の調和に関する検討会議」を開催し、雇用管理の在り方全般について幅広い検討を行っており、報告書の取りまとめを行った後、その内容を踏まえて、所要の措置を講じていくこととしている。

2 健康・福祉

○ 利用者のサービス選択に資する情報開示を進め、適切な選択を通じて介護サービスの質の向上を図るため、平成15年度に行った「介護保険サービスの質の評価に関する調査研究」((社)シルバーサービス振興会で実施)の検討結果を踏まえ、訪問介護、介護老人福祉施設等7サービスを対象とする情報開示の標準化(第三者評価)モデル事業を実施する。
○ 痴呆性高齢者グループホームの外部の第三者によるサービス評価については、平成17年度以降のすべての自治体での実施に向けてグループホーム外部評価機関立ち上げ支援事業のほか、グループホーム開設予定者等の研修事業を実施する。
○ 平成14年度に策定した「健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針(医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針)」(15年3月28日閣議決定)に基づき、具体的な改革の内容について引き続き検討を進める。
○ 平成16年度においては、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づき、地方公共団体及び企業において具体的な取組方策を掲げた行動計画を当該年度中に策定することとされている。
 さらに、現行の新エンゼルプラン及び待機児童ゼロ作戦が平成16年度末に終了することを受け、市町村及び都道府県行動計画等を踏まえ、17年度以降の必要な支援を検討することとしている。

3 学習・社会参加

○ 社会教育施設が地域の拠点となって他機関等と連携により様々な支援機能を持つ課題解決型機関としての新たなサービスを構築し社会教育の活性化を図る。
○ 国民生活審議会総合企画部会において「コミュニティの再興と暮らしの構造改革」をテーマに、NPOの先進的取組等を手掛かりに、コミュニティ再興を実現する方策等について調査審議を行う。また、認定NPO法人制度の一層の定着のために普及啓発を進めるとともに、現行制度の実態についての調査を実施する。

4 生活環境

○ 高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)に基づく高齢者向け優良賃貸住宅制度により、民間の土地所有者等が供給する、高齢者の身体機能の低下に配慮した設備・仕様を備えた賃貸住宅に対して整備費補助、家賃減額費補助等を行い、平成16年度には2万3,000戸を供給する。
○ 通過交通の排除を徹底して、車よりも歩行者等の安全・快適な利用を優先し、沿道と協働した道路緑化、無電柱化等による質の高い生活環境を創出する「くらしのみちゾーン」を形成する。このため、平成15年6月に登録した42地区に加え、商店街にも対象を拡大して意欲の高い地区を募集し、合意形成支援等ソフト面を含めた支援を実施する。
○ 平成15年の消防審議会の答申等を踏まえ、住宅用火災警報器等の設置義務化の推進など住宅防火対策の充実を図るとともに、「住宅防火基本方針」(13年4月消防庁策定)に基づき、訪問防火指導など高齢者等を中心とした住宅火災による死者の低減を図る。
○ 平成14年度までに行った、老人福祉法(昭和38年法律第133号)で定める老人福祉施設等以外の新たな高齢者居住施設(グループハウス、シルバーハウジング等)に対する防火安全対策の在り方について、検討結果を踏まえ、技術基準の整理等を行い必要な措置を講ずる。

5 調査研究等の推進

○ 平成15年4月に、ヒトの遺伝情報であるヒトゲノムの精密解読が完了したことを踏まえ、我が国の強みをいかして、複雑な生命機能の解明や、画期的な創薬の実現につながる成果等が期待されるゲノムネットワーク研究を推進するとともに、「第3次対がん10か年総合戦略」に基づき、がんに係る基礎研究の成果を着実に新たな治療法につなげる橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)を推進する。また、個人個人にあった予防・治療を可能とする医療(テーラーメイド医療)や幹細胞を用いた再生医療の実現に向けた研究開発やタンパク質の構造・機能の解析等を引き続き推進する。

 

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