第3節  分野別の施策の実施の状況 1  就業・所得 ○ 少なくとも65歳までの雇用の場を確保する企業の割合は、平成16年1月現在で69.2%と高い割合を示しているが、希望者全員を対象として65歳までの雇用を確保する企業の割合は26.9%にとどまっている(図2−3−1)。 図2−3−1 65歳までの雇用を確保する企業割合 ○ 少子高齢化の急速な進行等を踏まえ、平成16年6月に成立・公布された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(平成16年法律第103号。以下「改正高年齢者雇用安定法」という。)により、18年4月から、少なくとも年金支給開始年齢までは働き続けることができるようにするため、男性の年金の支給開始年齢の引上げに合わせ、平成25年にかけて段階的に65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置を事業主が講ずることが義務付けられた。 ○ 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等を行った事業主を対象として、継続雇用定着促進助成金の支給を行うとともに、平成16年度からは、高齢短時間正社員制度を導入・適用した事業主に対しては加算措置を講じている。 ○ 改正高年齢者雇用安定法により、平成16年12月から、事業主都合の解雇等により離職する中高年齢者が希望するときは、事業主は、その職務の経歴、職業能力等の再就職に資する事項や再就職援助措置を記載した書面(求職活動支援書)を作成し、当該中高年齢者に交付することが義務付けられた。 ○ 改正高年齢者雇用安定法により、平成16年12月から、シルバー人材センターは、届出により、臨時的・短期的又は軽易な業務に関する就業に係る一般労働者派遣事業を行うことが可能となった。 ○ 平成16年度からは、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向け、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構において、中高年齢者の募集・採用から職場定着するための体制づくりに係る好事例の収集・分析等を行い、これらを活用した個別企業に対する相談・援助等の支援や幅広い普及啓発等を行う、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた基盤づくり事業(エイジフリー・プロジェクト)を実施している。 ○ 平成16年度は、13年5月に策定された「第7次職業能力開発基本計画」(計画期間:13〜17年度)を踏まえ、雇用・能力開発機構都道府県センターにおけるキャリア形成支援コーナーの運営、キャリア・コンサルティングを担う人材の養成、個々の労働者のキャリア形成を支援する事業主に対して、キャリア形成促進助成金の支給等を行った。 ○ 第162回国会に、「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(平成4年法律第90号)について、計画的な労働時間の短縮を図る法律から、個々の労働者の健康や生活に配慮した労働時間、休日及び休暇の設定を図る法律へと改めるための改正を含む「労働安全衛生法等の一部を改正する法律案」を提出した。 ○ 公的年金制度の基本的な考え方や重要性について国民、特に若い世代の理解を得るため、年金週間(11月6〜12日)等において、その広報、普及を行うとともに、国民年金保険料の納付率の向上を図るため、コンビニエンスストアでの保険料収納などを開始したほか、年次目標を盛り込んだ行動計画を策定し、未納者に対する納付督励等の着実な実施を図ることとした。 ○ 少子高齢化が急速に進行している中で、将来にわたって持続可能な安心できる制度を確立するため、平成16年6月に、1)将来の保険料上昇をできる限り抑制しながら、保険料負担の上限を固定、2)基礎年金の国庫負担割合を引上げ、3)積立金を活用、4)負担の範囲内で給付水準(年金額の伸び)を調整(際限ない給付の低下は防止)などを内容とした国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号。以下「平成16年年金改正法」という。)が成立した。 ○ 年金額等については、物価の変動に応じて自動的に額を改定することとなっているが、物価が下落した平成12年度からの3年間は特例措置に基づいて据え置かれ、15年度においては、本来であれば過去3年分と合わせてマイナス2.6%の改定を行うところを、14年分の消費者物価の下落分(マイナス0.9%)のみの改定を行った。   平成16年度においても、特例として、15年の消費者物価の下落分(マイナス0.3%)のみの年金額等の改定を行った。   平成17年度の年金額については、16年の消費者物価が前年から変動しなかったため、改定は行わず、16年度と同じ額となる。 ○ 平成16年7月には、内閣官房長官の下に「社会保障の在り方に関する懇談会」を設置し、公的年金制度の一元化を含めた社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方など一体的な見直しの議論を開始し、16年12月には議論の整理を行った。 ○ 企業年金制度については、公的年金制度改革に併せて検討を行い、平成16年年金改正法の中で1)厚生年金基金の免除保険料率の凍結解除、2)確定拠出年金の拠出限度額の引上げ及び中途引出しの要件緩和、3)確定給付型の企業年金制度の通算措置の拡充など、企業年金制度の安定化と充実を図るための見直しを行った。 ○ 平成14年に都道府県社会福祉協議会において、所有する住居に将来にわたり住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯に対し、当該不動産を担保として生活資金の貸付けを行う長期生活支援資金貸付制度を創設したところであり、16年12月31日現在、44の都道府県において貸付業務が開始され、232件の貸付決定がなされている。 〇 高齢者の財産管理の支援等に資する認知症高齢者等の権利擁護のための成年後見制度について周知を図っている。