第1章 高齢化の状況 

(2)「労働力減少社会」に向けた企業の対応
 本章第1節でみたように、我が国の労働力人口は、60歳以上の者の割合が高まるとともに、今後その総数が減少していくことが見込まれている。
 労働力人口の減少は、労働時間の趨勢に大きな変化がないことを前提にすれば、潜在的な労働投入量の減少により経済成長にマイナスの影響を持つことになる。これに対処するには、技術革新等によって労働生産性の上昇を図ることや、高齢者等による一層の能力発揮が必要となる。
 そこで、企業に対するアンケート調査の「今後の労働力減少社会へ対応等」についての設問(いずれも、厚生年金の定額部分の支給開始年齢が65歳となる2013年頃を念頭に回答するよう求めたもの)への回答結果に基づき、高齢者の能力発揮を取り巻く状況等について見てみる。
 まず、今後の労働力減少の下での「人材確保の困難度」については、「大きな変化はなし」とする企業が40.2%と最も多いが、「より困難になる方向」は34.9%あり、約3社に1社を占める。企業規模別にみると、企業規模の大きい企業ほど「より困難になる方向」との回答が多い傾向がある(図1−3−3)。

図1−3−3 人材確保上の困難
図1-3-3 人材確保上の困難

 採用方法については「中途採用・通年採用が中心」31.7%、「新卒・定期採用が中心」が14.8%となっているが、一方で、新卒採用と中途採用との併用型を指向する企業も多く、「新卒・定期採用が中心だが、中途採用・通年採用を拡大」(31.1%)と「中途採用・通年採用が中心だが、新卒・定期採用を拡大」(14.5%)が合わせて4割を超えている。
 「非正規労働・外注の活用」については、「大きな変化なし」が45.4%で最も多く、次いで「拡大する方向」が37.1%となっている。
 「高齢者の活用」、「女性の活用」については、いずれも、「大きな変化なし」が最も多く(59.1%、63.1%)、これに対し、「拡大する方向」(24.0%、27.4%)は約4社に1社にとどまっている。
 「外国人労働者の活用」については、「その他」が59.5%と最も多く、次いで「大きな変化なし」が30.8%となっている。
 なお、「非正規労働・外注の活用」、「高齢者の活用」、「女性の活用」、「外国人労働者の活用」は、いずれも、企業規模が大きい企業ほど「拡大する方向」とする企業が多い傾向がみられる(表1−3−4)。

表1−3−4 今後の人材活用の変化の方向
表1−3−4 今後の人材活用の変化の方向

 また、「定年制度」については、「基本的に変化なし(勤務延長・再雇用等で対応)」が68.0%であり、他方、「引き上げる方向」は15.9%、「個別化(複線化)する方向」は6.2%、「廃止の方向」は0.8%にとどまっている。
 「賃金制度」については、「大きな変化なし」が42.5%、次いで「賃金カーブがよりフラットになる方向」が34.5%となっている。
 「正規・非正規社員の業務の違い」については、「大きな変化なし」が48.9%で最も多く、次いで「より一体化・混在化が進む方向」(26.0%)が「より区分化(棲み分け)が進む方向」(15.4%)を10ポイントほど上回った。また、「正規・非正規社員の賃金・処遇の違い」については、「大きな変化なし」が63.7%で最も多く、「縮小する方向」と「拡大する方向」との間では前者がやや多い(12.5%、9.0%)(表1−3−5)。

表1−3−5 賃金・処遇制度等の変化の方向
表1−3−5 賃金・処遇制度等の変化の方向

 以上の調査結果からは、多くの企業が今後の人口減少下での労働力の確保に対する問題意識を有しつつも、将来に向けて高齢者の雇用を拡大したり、定年制度を見直すといった方針には必ずしもつながっていない現状がうかがわれる。
 ただし、規模の大きな企業ほど、人材確保が「より困難になる方向」とする割合が高く、また、高齢者を始め、女性、非正規労働・外注の活用について「拡大する方向」とする割合も高い。これまで、規模が比較的小さな企業において人材確保がより困難で、高齢者の活用度合が高い傾向がみられたが、今回の調査結果は、特に規模の大きい企業において、人材活用システムの大きな見直しが求められる可能性を示すものとみることができる。
 【平成18年4月1日から、16年6月に成立した改正高年齢者雇用安定法に基づき企業に義務付けられる高年齢者雇用確保措置と、その取組状況については、第2章第3節1(1)「高齢者の雇用・就業の機会の確保」を参照。】

 第3節 人口減少社会における高齢者の能力発揮

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