第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節 1 コラム4)

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第3節 分野別の施策の実施の状況

1 就業・所得

コラム4 「高齢者雇用への取組」

ア 日本アトマイズ加工(株)

千葉県野田市で金属粉末の製造・販売を行っている「日本アトマイズ加工株式会社」では、平成15年4月から高齢者の継続雇用制度を導入している。

同社の定年は60歳であるが、希望すればだれでも65歳まで働き続けることができる。勤務形態は、高齢期の体力などを考慮し、フルタイム、短時間勤務、隔日勤務からの選択制で、本人の希望が尊重される。

賃金は、フルタイムで定年時の80~100%、働く意欲と能力があれば、原則として定年前と同じ待遇を受けられる。

従業員数は現在77人で、そのうち、60歳以上は10人(13.0%)。その多くが職人的な技術・経験を必要とする仕事に従事しており、若年者とペアを組んで作業に当たっている。

「65歳まで賃金がもらえ、生活設計が楽になったことはもちろんですが、自分が培ってきた技術を、若い世代にじっくりと伝えていく時間をもらえたことがうれしいです。」とは現場で働く高齢者の声。

コンピュータによる自動化が不可能な、匠の領域を含む金属粉末の製造工程。熟練の高齢者は貴重な戦力であると同時に、優れた技能を次代に伝える「技のかたりべ」として重要な存在だ。

(平成17年度高年齢者雇用開発コンテスト 厚生労働大臣表彰優秀賞受賞)

イ アキモク鉄工(株)

秋田県能代市で産業機械や橋梁、水門等の製造を行っている「アキモク鉄工(株)」では、全従業員56人のうち55歳以上が21.4%の12人、60歳以上が5人という状況である。

同社の定年は60歳であるが、平成15年2月から高年齢者の継続雇用の導入を図り、希望者全員を65歳まで再雇用し、65歳を超えても健康に問題がなければ年齢に関係なく勤務できることとしている。再雇用の従業員については、所得水準を年金と合わせて60歳定年時の水準を維持することとしている。

一方、製造部門では、高年齢者と若年者の組み合わせによるグループ編成の下で作業を行うことにより、技術や技能を伝承する体制を取っているが、この方法は、全従業員を対象にした提案制度での提案を受けて会社が採用したものである。

また、同社では、従業員、特に高齢者の健康と安全を確保することが会社の健全性に大きく関わると考え、月1回、第3木曜日に産業医を招き生活習慣病を中心とする検診を行っている。

再雇用として勤務を継続しているある従業員は「作業ごとにマニュアルはあるが、橋梁の取り付けなど現場での作業については、思わぬトラブルが発生することもあり、マニュアルですべての出来事をカバーすることはできない。加えて、即座の対応が必要であることも多く、その場で適切に対応していくにはやはり経験に基づく判断と確実な対応が必要だと思う。若い従業員には、自分たちベテランの仕事を見てノウハウを身につけてほしい」と話している。

(平成17年度高年齢者雇用開発コンテスト 高年齢者雇用開発協会会長表彰優秀賞受賞)

【高齢者の就業に係る政策については、第2章第3節1(1)「高齢者の雇用・就業の機会の確保」を参照。】

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