第2章 高齢社会対策の実施の状況 


コラム5 「認知症予防等への取組」

ア デイサービスにおける機能訓練
 静岡市の「NPO法人スリーA」が運営する「予防デイサービス『折り梅』」では、要支援から要介護3までの介護保険認定者を対象に、通所介護として、アクティビティーや頭の体操など独自のリハビリテーションを通じて脳を活性化させ、認知症の進行悪化を食い止めるための事業を実施している。
 ここの利用者は、忙しい。朝のバイタルチェックから始まって、午前中は指足運動、お手玉渡しゲーム等の機能訓練、散歩などを行い、昼食を挟んで、午後は太鼓などのリズム運動、回り将棋等を用いての頭の体操、風船サッカーなどの機能訓練等を行う。最後に利用者全員がその日の活動で思ったことなどを思い思いに語り合うお茶会が終了するころに、家族が迎えに来る。6人の職員が見送りや送迎をして1日が終了する。あっという間の1日である。
 リハビリテーションの各プログラムが、時間を区切って実施されることで利用者の集中力が増すとともに、踊りが排泄動作の訓練になっているなどそれぞれに目的を持っているのが特徴である。
 現在は、20名の利用者が10名ずつに別れて、それぞれ週2回通所している。
 同法人の担当者は、「認知症の方は家族との間がうまくいかないなどで愛情に飢えている。物理的訓練も大事だが、受け容れてあげる心、すなわち『優しさのシャワーによる癒し』が必要で、存在を受け容れてあげれば特異な行動は少なくなります。」と話している。
 今後は、介護予防にも力を入れ、認知症の進行予防に一層重点を置いていくこととしている。

コラム5 デイサービスにおける機能訓練

イ 思い出ふれあい事業
 愛知県師勝町(平成18年3月の市町村合併により現在は北名古屋市)では、平成14年度から「回想法事業(思い出ふれあい事業)」を実施している。回想法とは、かつて自分が体験したことを語り合ったり、過去のことに思いを巡らせることにより、脳を活性化させ、気持ちを元気にする心理的アプローチで、60年代に欧米で始まったものである。
 本事業では、10人程度の参加者が輪になって、洗濯板や蚊帳など今日ではあまり見かけなくなった道具や昔の風景などを題材に、参加者が自分の経験や思い出を述べていく。参加者どうしは初対面であるにもかかわらず、話題に共感する部分が多いためか、すぐに打ち解けていく。予定時間の1時間はあっという間に過ぎてしまう。
 本事業は、週1回、1クール8回としているが、幼いころの思い出を共有することでクール終了時には幼なじみのような関係が築かれ、終了後も独自に活動を続けるグループも少なくない。
 また、同町が平成14年度に本事業参加者と非参加者との間で比較したところ、参加者には認知機能の改善に一定の効果が見られたという。
 さらに、本事業の特徴として、国の有形文化財である旧加藤家住宅を実施場所として利用している点があげられる。昔ながらの住まいを感じることができる環境で、事業実施に適している。
 同町では、「認知症であるとないとにかかわらず、高齢者全般を対象とした予防ツールとして広めていきたい」と話している。

コラム5 思いでふれあい事業

ウ 子どもとのふれあいを通じた取組
 三重県桑名市にある認知症対応型グループホーム「ひかりの里」では、放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施場所を同一敷地内に併設し、小学校低学年の児童と高齢者がふれ合う取組を行っている。
 高齢者は、子どもの遊び相手になったり、宿題をみてあげたりするほか、夏休みなどには一緒に食事を作ったり、外出している。
 こういった活動を通じて、高齢者は子どもを見守り、きちんと出来た時には褒めてあげるなど、親身になって接することに自然に努めるようになる。その結果、高齢者自身が模範となるべく自己を律するようになり、自信と活力を取り戻していく効果が認められている。
 他方、子どもにとっても、高齢者と過ごすことで、自然に「しつけ」が身に付くほか、社会性も涵養されてくる。
 こうして、「ひかりの里」の高齢者と子どもがなじみの関係になることで、ケアや子育ての相乗効果が表れるが、あまり数が多くなるとなじみの関係をつくることが難しいといった課題もある。
 同ホームの担当者は、「全身で叱り心から褒める高齢者は子育ての貴重な社会資源であり、活用しないのはもったいない。高齢者に残された能力は高い。」と話している。

コラム5 活動風景(グループホーム「ひかりの里」)

【認知症予防の取組については、第2章第3節2(3)ウ「認知症高齢者支援対策の推進」を参照。】


 第3節 分野別の施策の実施の状況

目次 前の項目に戻る     次の項目に進む