第2章 高齢社会対策の実施の状況 

(2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進

 高齢者等誰もが社会の活動に参加・参画し、社会の担い手として役割と責任を果たしつつ、自信と誇りと喜びを持って生活できる社会の実現に向けて、平成16年6月に決定された「バリアフリー化推進要綱」(バリアフリーに関する関係閣僚会議決定)を指針として、政府一体となって社会のバリアフリー化の推進に取り組んでいる。

ア 高齢者に配慮したまちづくりの総合的推進
 高齢者等すべての人が安全・安心に生活し、社会参加できるよう、自宅から交通機関、まちなかまでハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を推進する必要がある。このため、高齢者に配慮したまちづくりを総合的に推進し、地域全体を面的に整備している(表2−3−39)。

表2−3−39 高齢者に配慮したまちづくりの総合的な推進
事業の名称
事業の概要
健やかで活力あるまちづくり基本計画策定・普及啓発推進事業  高齢者が地域社会の中で安心して生活できるよう、地方公共団体が行う高齢社会に対応した地域社会の形成に関する基本計画の策定を促進する。
人にやさしいまちづくり事業  高齢者に配慮したまちづくりの推進を図り、高齢者の社会参加を促進するため、市街地における高齢者等の快適かつ安全な移動を確保するための施設の整備、高齢者等の利用に配慮した建築物の整備等を行う。
バリアフリーのまちづくり事業  障害者や高齢者などの当事者自らが実地に点検・調査を行い、これを反映させたバリアフリーのまちづくりに関する基本計画を策定するとともに、これに基づき必要な既存公共施設の環境改善を実施し、併せてバリアフリー化された施設等の情報を提供することにより、すべての人々が暮らしやすいバリアフリーのまちづくりの整備を図る。
共生のまちづくり推進  地方公共団体が行う、高齢者、障害者、児童などすべての人が自立していきいきと生活し、人と人との交流が深まる共生型の地域社会を実現するための取組に対し、支援を行う。
資料:厚生労働省、国土交通省、総務省

イ 公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備
 高齢者の自立と社会参加の要請に対応するため、高齢者が安全かつ身体的負担の少ない方法で移動できるよう、公共交通機関のバリアフリー化と歩行環境の改善に向けて、様々な施策を講じている。

(ア)交通バリアフリー法
 「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(平成12年法律第68号。以下「交通バリアフリー法」という。)は、交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設・大改造及び車両等の新規導入に際し、移動円滑化基準への適合を義務付けるとともに、鉄道駅等の旅客施設を中心とした一定の地区において、市町村が作成する基本構想に基づき、旅客施設、周辺道路、駅前広場等の重点的・一体的なバリアフリー化を進める制度を導入することを内容としている。
 同法に基づき、バリアフリー化の目標や交通事業者等が講ずべき措置、基本構想の指針等を示した、移動円滑化の促進に関する基本方針(平成12年国家公安委員会、運輸省、建設省、自治省告示第1号)が策定されている。(表2−3−40)。このうち、平成16年10月に、市町村が作成する基本構想の指針となるべき事項について、重点整備地区内の建築物も含めた一体的なバリアフリー対応について配慮されるよう基本方針を改正しその旨を明確化した。
 交通バリアフリー法に基づく基本構想については、約400の市町村が作成ないしは作成を予定しており(平成17年10月末日現在)、これまでに、大阪府柏原市、神奈川県小田原市、愛知県名古屋市等の197市町村(基本構想数は226)において作成されたものを受理した(17年12月末日現在)。

表2−3−40 交通バリアフリー法に基づく基本方針に定められたバリアフリー化の目標
○ バリアフリー化の目標
1 旅客施設
 2010年までに、1日当たりの平均的な利用者の数が5,000人以上の原則としてすべての鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル及び航空旅客ターミナルについて、
  (1)段差の解消
  (2)視覚障害者誘導用ブロックの整備
  (3)身体障害者用のトイレの設置
等のバリアフリー化を実施する。
 
2 車両等
 2010年までに、以下のバリアフリー化を達成する。 
      
車両等の種類
車両等の総数
バリアフリー化される車両等の数
      
鉄軌道車両
約51,000
約15,000(約30%)
乗合バス車両
約60,000
原則として、10〜15年で低床化された車両に代替
 
(うちノンステップバス)約12,000〜15,000(20〜25%)
旅客船
約1,100
約550(約50%)
航空機
約420
約180(約40%)
  
3 一般交通用施設 
 重点整備地区の主要な特定経路を構成する道路、駅前広場、通路等について、原則として2010年までに移動円滑化を実施する。
  
4 2010年までに、音響信号機、高齢者等感応信号機等の信号機の設置、歩行者用道路であることを表示する道路標識の設置、横断歩道であることを表示する道路標示の設置等のバリアフリー化を原則としてすべての特定経路を構成する道路において実施する。
資料:国家公安委員会、総務省、国土交通省

(イ)ガイドライン等の策定
 公共交通機関の旅客施設、車両等について、バリアフリー化の望ましい内容を示し、交通事業者等がバリアフリー化を進める際の目安としてもらうことにより、利用者にとってより望ましい公共交通機関のバリアフリー化が進むことが期待される。このため、旅客施設については、平成13年8月に策定した「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」に基づきバリアフリー化を実施するとともに、本ガイドラインの検討過程において残された課題に対応するため、14年10月に「旅客施設における音による移動支援方策ガイドライン」を策定し、同年12月には、視覚障害者誘導用ブロックに関するガイドラインを取りまとめた。
 車両等については、平成12年12月に策定した「旅客船バリアフリー〜設計マニュアル〜」、13年3月に策定した「公共交通機関の車両に関するモデルデザイン」、15年3月に策定した「次世代普及型ノンステップバスの標準仕様」、17年3月に策定した「旅客船バリアフリーハンドブック」に基づきそれぞれバリアフリー化を進めた。このうちノンステップバスについては、16年1月に標準仕様ノンステップバスの認定制度を創設した。また、18年3月には、「旅客船のバリアフリー化に関する事例集」を策定した。
 さらに、歩行空間について、交通バリアフリー法に基づく道路の移動円滑化基準の具体的な考え方等を解説した「道路の移動円滑化整備ガイドライン(平成14年12月策定)」を踏まえ、バリアフリー化を推進している。また、重点整備地区以外の歩道においても、バリアフリーの観点を踏まえた整備を行うため、「歩道の一般的構造に関する基準」(国土交通省都市・地域整備局長、道路局長通達)を平成17年2月に改正した。

(ウ)公共交通機関のバリアフリー化に対する支援
 高齢者の移動の円滑化を図るため、駅・空港等の公共交通ターミナルのエレベーターの設置等の高齢者の利用に配慮した施設の整備、ノンステップバス等の車両の導入などを推進している(表2−3−41)。

表2-3-41 高齢者等のための公共交通機関施設整備等の状況
表2-3-41 高齢者等のための公共交通機関施設整備等の状況

 鉄道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナルにおけるエレベーター等バリアフリー施設の整備については、補助や日本政策投資銀行等による低利融資による支援を行うとともに、鉄道駅におけるエレベーター等の設置について、税制上の特例措置を講じている。
 また、ノンステップバス、低床型路面電車等の車両の導入に対しては、補助及び日本政策投資銀行等による融資を行っているほか、ノンステップバス、リフト付バス・タクシー、スロープ付タクシー、低床型路面電車の導入について、税制上の特例措置を講じている。
 そのほか、狭軌の路面電車の超低床を実現するため、低床型路面電車(LRT)の狭軌超低床化に関する技術開発を支援している。

(エ)歩行空間の形成
 交通事故が多発している住居系地区や商業系地区において、面的かつ総合的な事故対策の実施により歩行者等の安全通行を確保するあんしん歩行エリアを中心に、〔1〕幅の広い歩道等の整備、〔2〕歩道の段差・勾配等の改善、〔3〕上下移動の負担を軽減するためのスロープや昇降装置付きの立体横断施設の設置、〔4〕歩行者用案内標識の設置、〔5〕歩行者等を優先する道路構造の整備、〔6〕自転車道等の設置による歩行者と自転車交通の分離、〔7〕生活道路における通過交通の進入及び速度の抑制並びに幹線道路における交通流の円滑化を図るための信号機、道路標識、道路構造等の重点的整備、〔8〕バリアフリー対応型信号機の整備、〔9〕歩車分離式信号の運用、〔10〕携帯端末を用いて安全な通行に必要な情報提供、信号機の青時間の延長等を行う歩行者等支援情報通信システム(PICS)の整備、〔11〕信号灯器のLED(発光ダイオード)化を推進し、高齢歩行者等の安全の確保を図っている。
 また、路側帯の拡幅による歩行者通行環境の整備と車道の中央線抹消による車両の走行速度の抑制対策を実施している。
 また、住居系地区等において、通過交通の排除を徹底して、車よりも歩行者等の安全・快適な利用を優先し、沿道と協働した道路緑化、無電柱化等による質の高い生活環境を創出する「くらしのみちゾーン」を形成するため、平成17年10月までに意欲の高い52地区を登録し、合意形成支援等ソフト面を含めた支援を実施している。
 さらに、積雪や凍結に対し、鉄道駅周辺や中心市街地等特に安全で快適な歩行空間の確保が必要なところにおいて、歩道除雪の充実、消融雪施設等の整備を行っている。
 そのほか、最先端の情報通信技術(IT)を活用して、高齢者等の歩行安全を確保するため、携帯端末を用いた情報提供、移動支援に関する研究開発等を推進している。

(オ)道路交通環境の整備
 高齢者が安心して自動車を運転し外出できるよう、ゆとりある道路構造の確保や視環境の向上、疲労運転の防止等を図るため、生活道路における交通規制の見直し、付加車線(ゆずりあい車線)の整備、道路照明の増設、道路標識の高輝度化・大型化、道路標示の高輝度化、信号灯器のLED化、「道の駅」等の簡易パーキングエリアの整備等、道路交通環境の整備を行っている。

(カ)交通バリアフリーのためのソフト面の取組
 国民一人一人が交通バリアフリーについての理解を深めるとともに、ボランティアに関する意識を醸成し、だれもが高齢者等に対し、自然に快くサポートできるよう、高齢者等の介助体験・疑似体験等を内容とする「交通バリアフリー教室」や、ボランティアの普及促進策の検討を行うため「バリアフリーボランティアモデル事業」を実施するなどソフト面での取組を推進している。

ウ 建築物・公共施設等の改善
 「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(平成6年法律第44号。以下「ハートビル法」という。)に基づき、高齢者等が円滑に利用できる建築物の建築を促進するため、不特定多数の者又は主に高齢者等が利用する特定の建築物の一定の新築・増改築の際に建築主に基準への適合義務を課すことにより、建築物のバリアフリー化を推進している(図2−3−42)。また、優良な建築計画については所管行政庁が認定をすることができ、これにより認定を受けた一定の建築物については、補助制度、融資制度、税制上の特例等の支援措置を講じ、整備の促進を図っている(図2−3−43)。

図2−3−42 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物のイメージ
図2-3-42 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物のイメージ

図2−3−43 ハートビル法に基づく認定実績
図2-3-43 ハートビル法に基づく認定実績

 さらに、ユニバーサルデザイン等の観点から配慮が望ましい事項の紹介(乳幼児連れの人への対応、災害時の避難安全確保の在り方、便所におけるオストメイト(人工肛門保持者等)対応の在り方、ホテル客室内のきめ細やかな対応の在り方等)や優れたバリアフリー対応建築物の具体例の紹介を加えた建築設計標準の普及を推進している。
 窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、高齢者等すべての人が円滑かつ快適に施設を利用できるよう、窓口業務を行う事務室の出入口の自動ドア化、多機能トイレの設置等による高度なバリアフリー化を目指した整備を推進している。
 また、既存施設について、自動ドア、エレベーター等の改修を積極的に実施している。

エ 福祉施策との連携
 高齢者に配慮したまちづくりを一層効果的に推進していくため、福祉施策との連携を図りつつ、施策を展開している。
 大規模な公共賃貸住宅の建て替えに際して、社会福祉施設等の併設を原則化しているほか、高齢者等が利用する社会福祉施設を中心市街地等の利用しやすい場所に適正に配置するため、市街地再開発事業等において社会福祉施設等を一体的に整備する場合、補助の上乗せを行っている。
 農山漁村においては、ほ場整備等による福祉施設の用地の創出、農園等との一体的整備を行った。

オ ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進
 高齢者、障害者のみならず可能な限りすべての人を対象に想定し、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方で、公共交通機関や主な駅周辺等の歩行空間、病院等の不特定多数の方が利用する建築物等に関するバリアフリー施策を総点検し、今後の社会資本整備、公共交通行政分野における取組方針を「ユニバーサルデザイン政策大綱」として平成17年7月に公表した。
 今後、本大綱に基づき、すべての人々が安心して生活できるよう、公共施設等のバリアフリー環境の整備を一層推進していくこととしている。
 その一環として、公共交通機関や建築物等のバリアフリー化、一定の地域内におけるこれらの施設等及びこれらの間の経路の一体的・連続的なバリアフリー化を促進し、バリアフリー施策を総合的に展開するため、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律案」を第164回国会に提出した。

 第3節 分野別の施策の実施の状況

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