第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節 4 コラム7)

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第3節 分野別の施策の実施の状況

4 生活環境

コラム7 「バリアフリー化への取組」

ア 公共交通機関におけるバリアフリー化への取組

福岡市交通局では、平成17年2月開業した「福岡市地下鉄七隈(ななくま)線」(橋本~天神南、12km)について、高齢者や障害者など誰もが利用しやすく、「人にやさしく、地域に根ざした公共交通機関」を目指し、開業前から高齢者等からのヒアリングや障害者団体との意見交換を行うなど、多岐にわたる意見を聴取し、トータルデザインに反映させて整備を進めた。

具体的には、高齢者や障害者が移動しやすいよう、全駅にエレベーターを設置している。また、高齢者がつまずいたりせず、車椅子でもスムーズに乗降できるよう、すべての駅ホームを直線にすることにより、ホームと車両との間の隙間、段差の解消を図った(車両との隙間は5~6cm、段差は5mm程度)。

さらに、コンコースや連絡通路の壁に手すりを設置するとともに、階段の両側に2段手すりを設置した。

なお、列車との接触事故やホームからの転落事故を防止するため、全駅に可動式ホーム柵を設置するなど、安全対策に努めている。

(第4回バリアフリー化推進功労者表彰 内閣府特命担当大臣表彰受賞)

福岡市地下鉄七隈線

【公共交通機関におけるバリアフリー化については、第2章第3節4(2)イ「公共交通機関のバリアフリー化、歩行空間の形成、道路交通環境の整備」を参照。】

イ 大規模商業施設におけるバリアフリー化への取組

平成12年11月にオープンした「イトーヨーカ堂・木場店(東京都江東区)」では、小さな子どもから高齢者に至るまで誰にでも安全・安心に利用できるユニバーサルデザインによる店づくりを進めている。

通路は、車いすが十分に余裕をもってすれ違えるだけのスペースが確保されているほか、トイレも車いすのまま利用できるようになっている。

また、手が届きやすいよう陳列棚を低めにするなど、高齢者の視点に立った応対に努めている。

同店は、バリアフリーをもう一歩推し進め、高齢者や障害者だけでなく一般利用客にとっても利用しやすい「ユニバーサルデザイン」のモデル店舗として位置付けられており、食料品についても、高齢者が食べる量に合うよう、バラ売りや少量サイズの品揃えの充実を図っている。

ある社員は「今は、おいしいものを少しずつ食べたいという、高齢者を始めとしたお客様のニーズにお応えする品揃えに努めています。」と語る。

その後、新設された店舗はすべて同店の店舗設計に倣っている。

(スペースが確保された通路)

(少量から選べる品揃え)

【建築物のバリアフリーについては、第2章第3節4(2)ウ「建築物・公共施設等の改善」を参照。】

「首都圏等からの移住」

昭和22(1947)年から24(1949)年の第一次ベビーブームに生まれたいわゆる「団塊の世代」が、平成19(2007)年から一斉に退職期を迎える。人口減少などに悩む一部の自治体では、こうした「団塊の世代」の移住をすすめることで、地域の活性化を図ろうとする動きがみられる。

北海道庁では、平成16年度に、首都圏等に住む「団塊の世代」などを対象として、北海道への移住に関する意識調査を行った。その結果、北海道に「住んでみたい」、「一時的に住んでみたい」とした人が約5割、「季節や期間限定であれば住んでも良い」とした人も含めると全体の約8割が道内への移住に高い関心が寄せられていることが分かった。

このため、平成17年度からは、「北の大地への移住促進事業」を立ち上げ、道内の市町村及び民間企業と連携して、「団塊の世代」の移住促進対策を始めた。

平成17年10月には、首都圏での「移住フォーラム」を開催したほか、テレビや新聞、雑誌などのメディアを通じて、退職後の移住先としての北海道のPR活動を行った。また、移住者を受け入れる市町村の具体的な情報を提供するため、専用のホームページを設け、これらの地域の生活情報などを発信している。

さらに、平成17年中には、民間企業に委託して「お試し暮らしツアー」も実施した。短期間での募集となったが、短期滞在型(3泊4日程度)のツアーには19組30名、長期滞在型(3週間~1ヶ月程度)には13組28名の申し込みがあり、いずれも参加者の好評を得ている。

道庁では、平成19年~21年の3年間で、無職の3,000世帯(毎年1,000世帯)が、60歳で完全移住した場合、その生涯を通じて約5,700億円の経済波及効果があると試算している。

今後の課題について、道庁の担当者は、「今いる住民が暮らしやすい街づくりをすすめることが、安心して移住できる街づくりにもつながる」とした上で、「公共サービスの充実にも限界があり、不動産のあっせんや生活支援サービスの提供などでは民間企業等によるビジネスの展開も不可欠。また、コミュニティでの活動を活性化して、地域ぐるみの受け入れ体制を整えることも重要」としている。

こうした「団塊の世代」の移住をすすめようとする取組は、青森県や新潟県など、他の自治体でも活発化しており、今後、全国的に広がっていくことが予想される。

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