第2章 高齢社会対策の実施の状況(第3節 2(1))

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第3節 分野別の施策の実施の状況

2 健康・福祉

(1)健康づくりの総合的推進

ア 生涯にわたる健康づくりの推進

生涯にわたる健康づくりを推進するために、平成12年から、9分野70項目の目標を掲げた「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を推進しており、14年には、「健康日本21」を中核とする国民の健康づくり・疾病予防をさらに積極的に推進するため、「健康増進法」(平成14年法律第103号)が制定され、15年5月に施行された(図2-3-11)。

図2-3-11 生活習慣病対策の基本的な枠組み

平成16年5月には、生活習慣病対策の推進と介護予防の推進を柱とした「健康フロンティア戦略」が取りまとめられ、同戦略に基づく施策を重点的に展開している。

また、「食育推進基本計画」(平成18年3月食育推進会議決定)に基づき、家庭、学校・保育所、地域等における食育の推進、食育推進運動の全国展開、生産者と消費者の交流促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化、食文化の継承のための活動への支援、食品の安全性の情報提供等を実施した。

さらに、食育推進の一環として、健康づくりに資する食生活の実現を図るため、「何を」「どれだけ」食べたらよいかを示した「食事バランスガイド」を、多様な媒体等を活用して周知するとともに、中食・外食産業や小売業における普及・活用を促進した(図2-3-12)。

図2-3-12 高齢者を対象としたポスター

また、健康な高齢期を送るためには、壮年期からの総合的な健康づくりが重要であることから、市町村が実施主体となり、40歳以上の者を対象に、老人保健法(昭和57年法律第80号)に基づく健康教育、健康診査、機能訓練、訪問指導等の保健事業を総合的かつ着実に推進している(表2-3-13)。

表2-3-13 保健事業の一覧
医療等以外の保健事業は、市町村が実施主体となり、40歳以上(平成18年度から、健康教育、健康相談、機能訓練及び訪問指導については64歳までの者を対象。)の居住者に対して行われる。
種類等 対象者 内容
健康手帳の交付
・老人保健法の医療の受給資格がある者
○医療受給者証及び医療の記録並びに医療の記録の補足
・健康診査の受診者、要介護者 等で希望する者
○健康教育、健康相談、健康診査、機能訓練、訪問指導の記録
・介護予防事業の参加者
○生活習慣行動等の把握
○生活習慣病の予防及び老後における健康の保持と適切な医療のための知識等については、市町村が創意工夫し作成
健康教育
・個別健康教育
・40歳以上65歳未満の者のうち基本健康診査の結果「要指導」の者等
○個人の生活習慣を具体的に把握しながら、継続的に個別に健康教育を行う
・高血圧個別健康教育
・高脂血症個別健康教育
・糖尿病個別健康教育
・喫煙者個別健康教育
・集団健康教育
・40歳以上65歳未満の者
○健康教室、講演会等により、以下の健康教育を行う
・歯周疾患健康教育
・骨粗鬆症(転倒予防)健康教育
・病態別健康教育
・薬健康教育
・一般健康教育
健康相談
・重点健康相談
・40歳以上65歳未満の者
○幅広く相談できる窓口を開設し、以下の健康相談を行う
・必要に応じ、その家族等
・高血圧健康相談・高脂血症健康相談・糖尿病健康相談・歯周疾患健康相談・骨粗鬆症健康相談・病態別健康相談
・総合健康相談
○対象者の心身の健康に関する一般的事項に関する指導、助言
健康診査 基本健康診査
・基本健康診査
・40歳以上の者
○必須項目
・問診(生活機能に関する項目含む)・身体計測(身長、体重等)・理学的検査(視診、打聴診、腹部触診等)・血圧測定・検尿(糖、蛋白、潜血)・循環器検査<血液化学検査>(血清総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪)・肝機能検査(血清GOT、G PT、γ-GTP)・腎機能検査(血清クレアチニン)・血糖検査
○選択項目〔医師の判断に基づき実施〕・心電図検査・眼底検査・貧血検査(赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値)・ヘモグロビンA1C検査・血清アルブミン検査
・訪問基本健康診査
・40歳以上の寝たきり者等
○基本健康診査の検査項目に準ずる
・介護家族訪問健康診査
・40歳以上で家族等の介護を担う者
○基本健康診査の検査項目に準ずる
歯周疾患検診
・40,50,60,70歳の者
○検診項目・問診
・歯周組織検査
骨粗鬆症検診
・40,45,50,55,60,65,70歳の女性
○検診項目・問診
・骨量測定
健康度評価
○健康度評価のための質問票の配布
・生活習慣病の予防に関する健康度評価
・40歳以上の者
○質問票の回答結果及び基本健康診査の結果等並びに問診等の方法による食生活、運動、休養等に関する個人の生活習慣を把握、評価し、当該対象者にふさわしい保健サービスを提供するための計画を策定
・介護を要する状態等の予防に関する健康度評価
・40歳以上65歳未満の者
・生活習慣行動の改善指導
・40歳以上の者
○個人に即した具体的な生活習慣改善方法の提示
肝炎ウイルス検診 節目検診
○C型肝炎ウイルス検査
「40歳で老人保健法に基づく基本健康診査の受診者」
・HCV抗体検査
・HCV抗原検査(必要な者のみ)
節目外検診
・HCV核酸増幅検査(必要な者のみ)
「平成19年度の基本健康診査においてALT(GPT)値により要指導とされた者及び平成14年度から平成18年度までの本事業に基づく肝炎ウイルス検診の対象者であって、受診の機会を逸した者
○HBs抗原検査(必要な者のみ)
(注)節目検診については基本健康診査とあわせて実施
受診指導
・基本健康診査の結果「要医療」等と判定された者
○医療機関への受診指導
機能訓練
・40歳以上65歳未満の者で疾病、外傷その他の原因による身体又は精神機能の障害又は低下に対する訓練を行う必要がある者
○市町村保健センター等適当と認められる施設で実施
・転倒予防、失禁予防、体力増進等を目的とした体操
・習字、絵画、陶芸、皮細工等の手工芸
・レクリェーション及びスポーツ、交流会・懇談会等
訪問指導
・40歳以上65歳未満の者であって、その心身の状況、その置かれている環境等に照らして療養上の保健指導が必要であると認められる者
○家庭における療養方法等に関する指導
○介護を要する状態になることの予防に関する指導
○家庭における機能訓練方法、住宅改造、福祉用具の使用に関する指導
○家族介護を担う者の健康管理に関する指導
○生活習慣病の予防に関する指導
○関係諸制度の活用方法等に関する指導
○認知症に対する正しい知識等に関する指導
注1 介護家族健康教育・介護家族健康相談・機能訓練B型については、平成13年度から費用負担を介護予防・地域支え合い事業で対応してきたが、同事業が平成17年度をもって廃止されたことから、これら3事業については老人保健事業では実施しない。
注2 65歳以上の介護予防に資する事業については、平成18年度から地域支援事業(介護予防事業)へ移行。

高齢化の進展の中で、経済社会の活力を維持し、生活者の健康の維持・増進に係る多様なニーズに対応するサービスであって、世界最高レベルの品質で、かつ、疾病・介護予防や健康増進も含めたシームレスなサービス提供がなされる、健康サービス産業の創出に資する事業について支援を行う「サービス産業創出支援事業」を実施(平成18年度、68件の応募の中から11件を採択)、その成果をモデル事業として全国に普及し、新たな雇用とサービス産業の創出を促進した。

イ 健康づくり施設の整備等

都道府県レベルで地域における健康づくりを推進するための技術的中核施設である健康科学センターの整備支援を実施するとともに、一定の要件を満たした運動施設及び温泉施設を健康増進施設として認定している(平成19年3月現在、運動型健康増進施設を407件、温泉利用型健康増進施設を30件認定)。また、15年7月に健康増進施設認定規程(昭和63年厚生省告示第273号)を改正し、温泉利用施設の新たな普及版(「温泉利用プログラム型健康増進施設」)の認定を行うこととした(平成19年3月現在20件認定)。また、医師、保健師等の地域保健関係職員に対する研修事業などを行い、健康づくりの支援の役割を担う人材確保や育成を進めている。

さらに、健康づくりを総合的に推進するため、海岸浴のための施設と連携した海岸づくりを行うほか、散歩や散策によって健康づくりができるよう歩行者専用道等の整備を図っている。

また、自然との触れ合いの中で健康づくりができるよう、そのための機能を備えた水辺空間の整備など、必要な施設等の整備等を推進している。

そのほか、高齢者の健康づくりの場としての森林の利用を推進するため、健康づくりに資する森林の整備を推進するとともに、森林体験活動の場となる実習林や体験施設などの整備等を実施した。

ウ 介護予防の推進

介護保険制度を予防重視型のシステムへ転換するため、平成17年6月に成立した「介護保険法等の一部を改正する法律」(平成17年法律第77号。以下、「介護保険法改正法」という。)において、新予防給付サービスや地域支援事業を創設し、18年度以降、要介護度が軽い者に対する介護サービスをより介護予防に効果的なものに見直すとともに、要介護・要支援になるおそれのある者を対象とした介護予防事業等を実施している(図2-3-14)。

図2-3-14 介護保険法等の一部を改正する法律(概要)

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